日常編2

 今日は、屋敷が慌ただしい。
 正雪は、そう感じながら、国広の執務室に向かっていた。
「国広殿今日は、少し騒がしくないか??」
 執務室に着き、正雪は、聞くと、国広は、言った。
「明日から研修生を受け入れるからな」
「研修生を!?」
 驚く正雪に国広は、頷く。
「といってもこの屋敷では、なく天照大神の方でだ」
「その研修生とやら神なのかな??」
「いや人だ」
 正雪は、更に驚く。そもそもこの場所に入れるものも限られるからだ。
「それ問題は……」
「ないだろう。一応筋は、通している」
「なら文句が上がれば……天照大神に言えとなるか……」
「そうだ」
 しかしまた研修生とは、突然な話だ。ふと脳裏に夏の顔が浮かんだがまさかと正雪は、その考えを頭から消した。
「そのまさかだがな」
「む!?」
「政府からの打診だ。で姫が天照大神に掛け合ってOKが出たんだ」
「それはよかった」
 これで彼女の夢がまた少し叶うところまで近づいた。
 正雪は、嬉しそうに微笑むが、国広は、違った。
「よかったのか。なんなのか。なんでブラック本丸の浄化に興味をしめしたのか。普通に審神者をすればいいものを」
 国広のこの言葉には、少しばかり呆れが含まれていた。
 彼は、自分よりも戦場を踏んできている。闇に対峙をするより普通の審神者として生きる方が幸せともいえるのだろう。
「国広殿……」
「とりあえずあっちですべてやるそうだ。こっちでは、時より刀剣を派遣するくらいになる」
 正雪は、少し寂しそうに答えた。
「そうか」
「正雪も仕事があるだろ」
「それは……」
 確かに仕事は、あるが、そこまでの事を正雪は、していない。
 そもそもここは、正雪がいなくてもまわるのだから。
「私は、そこまでの事は、していない」
「俺の手伝いに、刀剣達のケアやらやってるだろ。後は、存在が癒しだからな」
 さらりと国広は、いったが、正雪は、彼の言葉に固まった。
「むむ??」
「だから癒しだってー」
 そこに表れた包丁は、固まっている正雪にいうと、執務室に。
「国広!! その研修生って人妻??」
「独身」
 包丁には、この言葉がダメージになるので、国広は、短くいうと、立ち上がり、包丁を執務室から放り出した。
「まったく。粟田口は、比較的いいやつら揃いなのに、包丁だけは、困る」
 子供らしいと正雪は、思うが確かに五虎退に比べると少し手を焼くとも言える。
「国広殿なぜ包丁殿は、人妻好きなのだ??」
「徳川家康が人妻付きだからだったらしい」
「大御所様の影響か……」
 なら友美が危険なのでは、ないだろうか。
「人妻といえば、姫が……」
「姫に関しては、包丁的に論外らしい」
 来たとき、はじめは、皆がバグだと思った。しかし包丁の事を解明していくなか、友美に関しては、そもそも包丁は、人妻認定しないことが分かったのだ。
「これも天照大神の加護??」 
「高皇産霊尊の加護か呪いだろ」
 正雪は、まさかの神の名に開いた口が塞がらない。
「……え??」
「知らなかったのか」 
 なら深く言わないほうがいいだろう。
「国広殿それは、どういう事だ!!」
 正雪が聞きに来てるがスルーする。あえて彼女に背を向けると、背中をポンポンと叩かれる。
「国広殿!!」
「そこちょうど凝ってるんだ。もう少し叩いてくれ」
「国広殿!!」
 むすっとする正雪に国広は、優しく笑っていた。
「そうだ!! 国広が正雪さんと結婚すれば正雪さん人妻になるじゃん!!」
 そしてこの人妻好きは、ネバーギブアップの精神が強かった。
 戻ってきた包丁は、なが椅子に座り、言うと、正雪は、ほほを赤く染めた。
「神の伴侶など勤まるわけなかろう!!」
「宮本伊織のも無理だと思うがな」
「むっ!?」
 国広は、呆れた顔をすると、包丁の首根っこを掴んだ。
「国広!?」
「よし!! 一の所へ行こう!!」
 包丁は、顔を青ざめ暴れるが、国広にそのまま引きずられていき、正雪は、慌てて着いていった。
 着いたのは、一の私室。一期と話をしていたのか。二振は、包丁と真顔の国広を見てすべて察した。
「包丁がすみません!! 国広殿!!」
「後は、私がやりましょう」
 一は、包丁を受け取る。
「一さんごめんなさい!!!」
 なく包丁に一は、冷たく言った。
「それを言うのなら国広にだ。まったく」
「そうだよ包丁」
 一期も今回は、味方してくれないと分かり、包丁は、更に泣き出した。
 正雪は、さすがに不憫だと言葉を発しようとした。
「その……包丁殿は……」
「貴女に国広と結婚しろと馬鹿げたことを言ったのでしょう??」
 正雪は、頷くことしか出来なかった。彼女の性分じょう嘘は、あまり着きたくないので。
「正雪さんまで!?」
「そりゃそうだよ包丁」
「さて。覚悟は、出来てるな??」
 包丁の悲鳴が屋敷に響く。見事に一にお灸をすえられ包丁は、灰になった。
「国広、正雪さんごめんなさい……」
 そして最後の気力で謝ると、包丁は、その場に倒れ混む。
「最期は……人妻の……優しさに……包まれたかった……」
 ここまで人妻好きとは、この根性には、正雪も感服してしまうほどだ。
「寝ただけです」
「包丁は、何時もこうだから」
 一と一期は、そういうとため息をついた。
「そうなのか……」
「正雪退いてるな」
「こればかりは……ふむ……」
 短刀は、可愛い子達もいると思っていたが見かけだけ可愛いもいるとこの時学んだ。
「国広殿明日からの新参研修ですが我々に出来ることは、ありますか??」
 一期も国広は、いった。
「あちらですべてやるそうだ」
 一が茶をのみながらいう。
「珍しいですな。高天ヶ原の神がじかに教えるなど」
「……天照大神の遠縁だそうだ。それに霊力に関しては、あちらの方が得意だろ」
 正雪は、驚いた顔をした。
「……それは、誠か??」
「姫が言っていた。間違いないだろう」
 友美は、人には、見えないものが見えるらしく。もしかすると何かみたのかもしれない。
 正雪は、目を伏せる。
「皇族の血筋か……私など……」
「その研修生は、あんたには、そう見てほしくないと思うぞ」
 正雪は、はっとした。
「正雪も今更ホムンクルスと見て欲しいか??」
「それは、困る」
「だろ?? なら一個人としてみてやれ」
 正雪は、頷く。
「そうだな。ありがとう国広殿」
 やはり彼女もまたそのように見てしまうのかと一は、思った。
「古代インカの王族のようと言えば聞こえはいいが……主のしたことは……」
 一の悲しげな声に正雪は、切ない顔をしていた。
「一殿……」
「姫からは、聞いてます。私は、会いには、行きませんよ。そもそも会う資格もありませんから」
 一は、そう言うと部屋をでていった。
「一殿の傷は、まだまだ深そうだ……」
「一期そりゃそうだろ。主を救えなかったとあいつは、思ってるんだからな」
 確かに救えなかったかもしれない。だが救えたともいえるだろう。最期は、家族と居られたのだから。
「国広殿……しかし彼は、結果として主を救えたとも……」
「いえるだろうが、本人がそう見ない限り、俺達は、何も出来ない」
 国広は、ため息を着くと一期に邪魔したといい部屋をでていった。
「一期殿私に出来ることは、あるだろうか……」
「正雪殿は、今のままで、大丈夫かと。一殿もその方がよさげですから」
「そうか。ありがとう」
 正雪も頭を下げると部屋を後にした。
「少しでも会えるといいな……」
 そう呟くと、正雪は、国広の執務室へと戻ったのであった。一度でいいからここで彼女と語り合いたいなと思いながら。
 
8/12ページ
スキ