日常編2

 事件は、突然起きる。
「さてと国広に書類を確認してもらって……

 友美は、のんびりと書類片手に屋敷の廊下を歩いていた。
「ひめ!! 」
 声が聞こえ、辺りを見渡しても特になにもない。友美は、首をかしげたとき、服の裾を引っ張られた。
 下を見ると何やら布の塊が動いていた。
「これ……正雪の羽織……」
 友美は、まさかとしゃがむと羽織を取る。すると羽織の中から小さな女の子が。
「ありゃ」
「ひめ!!」
 小さくなっている。正雪が。見つけたのが自分でよかったかもしれない。
 友美は、辺りをキョロキョロ見渡し、誰もいないことを確認すると、正雪を抱っこし、屋敷の自分の部屋に連れていった。
「ひめ……わたし……」
「大丈夫!! とりあえず安心してね!!」 
 友美は、座布団の上に正雪をおろすと、箪笥から子供用の着物を引っ張り出した。
「念のために置いててよかった~」
 友美は、取り出した着物を正雪に着せた。
「よし!!」
 可愛らしい桃色羽織に水色の着物をきた正雪。友美は、満足げに微笑むが、正雪は、どこか不安げだ。
「ひめ……もどる??」
「もどるわよ。でも時間は、かかるかな」
 この感じからして、記憶も知識もある。ただ、体が小さくなり、脳の処理が追い付かず、言葉づかいや言動は、幼くなっているようだ。
「うむ……」
 正雪は、しょぼんとする。
「心配??」
「うん……」
「みんなを驚かせちゃうから??」
「うん」
 友美は、優しく笑う。
「大丈夫よ。うちの子達は、小さい子に慣れてるから」
 友美は、そういうと立ち上がる。
「とりあえず正雪の着物は、何時もどるか分からないから着替えられるように持ち歩くことにしようね」
 風呂敷と書類を持つと、友美は、正雪を抱っこした。
「ひめあるく!!」
「ちょっとごめんね。とりあえず国広には、説明しないと」
 友美は、微笑むと慣れた手付きで、正雪を抱っこし、部屋をでた。
 友美は、何一つとして驚くこともなく慣れた手付きで正雪に接してくれた。
 友美の温もりと香りを感じながら、正雪は、思う。もしかすると母の愛とは、こんな感じなのかもしれないと。
 自分は、母の愛など知らない。もしかすると父の愛というのも知らないとも言える。 
 不安そうに友美の服を握る正雪を見て、友美は、優しくいった。
「大丈夫よ。正雪」
「ひめ……」
「何かあってもお母さんが守ってあげるから」
 友美は、はっとした顔をし、頬を染めた。
「ごめんなさい……つい子供達に言うみたいに言ってしまったわ……」
 幼い我が子によくこう言っていた。
 怖いことが起こるの、子供達も不安な顔をしていた。その度に友美は、抱き締めて、大丈夫、お母さんが守ってあげるからと、言っていたのだ。
「ひめ……」
 友美は、微笑むと歩みを止めた。
「国広少しいい??」
 執務室につき、友美は、声をかけ、中に。
「姫なんだ??」
「書類の事と、このこの事よ」
 国広は、友美が抱っこしている幼子を見て、驚く。
「正雪!?」
「そう。とりあえず力が不安定になって小さくなってしまったみたい。じきにもどるだろうけど、国広には、説明しとかないとって」
 やはり驚かれた。そりゃそうだいきなり小さくなってしまったのだから。
 不安そうに瞳を揺らす正雪に、国広は、椅子から立ち上がると、彼女の所へ。
「姫いいか??」
「もちろん」
 国広は、腕を広げると、慣れた手付きで、正雪を抱っこした。
「くにちろどの……」
「どうした?? 国広になにかお願いか??」
 友美は、懐かしい光景に目を細めた。
「国広螢にも同じことしてたわね」
「そりゃ小さい子に俺と言ってもな。なら国広といった方がいいだろ??」
「まぁそうかもね」
「姫その風呂敷は??」
「正雪の着物よ。ほら何時もどるか分からないから」
「なるほど」
 友美は、その後仕事の話しもしたが、国広は、ずっと正雪を抱っこしたままだ。
「国広変わるわ」
「いい」
「えっ!?」
「本日営業終了だ」
「国広!?」
 国広は、正雪と風呂危機を持つと、そのまま逃走してしまった。
 残された友美は、ため息をつくと、椅子にかけた。
「とりあえずとっととやるか……」
 にしてもなんだろう。嵐が起こる気がする。そう思いながら、友美は、仕事を始めた。
 
  国広に抱っこされ正雪は、屋敷の中を移動していた。
 すれ違う刀剣男士達に国広が、事情を説明していた。
「正雪さんこんなに可愛いわだー!!」
 毛利が瞳を煌めかせ言うなか、正雪は、危機感を感じ思わずプイッと顔をした。
「正雪さん!?」
「毛利怖いか??」
「うん……」
 違うと言いたかったのにうんと言ってしまった。
 正雪は、何故とないしん思ったが、国広は、そりゃそうだよなと毛利に背を向けた。
「国広さん!?」
「毛利の小さいこ好きは、狂喜じみてるからな。ほらもう怖くないぞ」
 毛利がガーンと落ち込むなか、正雪は、微笑む。
「くにちろどの」
「どうした??」
 正雪は、指を指すとこの先には、光忠が。
「光忠」
「国広君……この可愛い子は……もしかして……正雪さん!?」
 国広は、頷くと、光忠は、やって来た。
「可愛い……」
 光忠殿と言いたいのに口が動かない。正雪は、どうしようと考えていると、光忠は、しゃがみ正雪と目をせんを合わせた。
「僕は、みっちゃんだよ!!」
「光忠記憶と知識は、そのままだぞ」
「だとしてもさ。光忠って言いにくいからね!!」
 螢も小さい頃は、みっちゃんと呼んでくれていた。今もだが。
 正雪は、いいのかと思いつついった。
「みっちゃん」
「そう!! みっちゃん!!」
 光忠は、嬉しそうに微笑む。
「そうだ!! せっかくだしこれからお菓子を作ろうかな!!」
「ならケーキがいい」
「僕は、クッキーで!!」
 光忠は、困ったように笑う。
「君達ね……ここは、正雪さんに譲るってことしないのかな??」
「提案するのは、自由だからな」
「そうですよ!! 光忠さん!!」
 確かにそうなのだが、光忠は、困ったように笑うと、正雪にきく。
「だって。正雪さんどうかな??」
 国広と毛利をじっと見ると、正雪は、悩む。
「……うむ」
「光忠」
「両方だね!? よし!!」
 なぜそうなるのか。正雪は、グルグル色々考えるも、頭からボカンと煙が。そして。
「うぅ……」
 何故か泣き出してしまった。自分でも 分からない事態に、正雪は、困惑した。
「正雪さん……」
「毛利とりあえず姫を呼んできてくれ」
「姫をですか??」
「姫なら原因が分かるはずだ。普通の子供ならともかく小さくなった場合は、俺にも分からんからな」
「分かりました!!」
 毛利が友美を呼びに行き、国広は、くずる正雪をあやす。
「国広君急いで作るから!!」
 光忠は、というとすごい勢いで台所に。
「……くに……ちろ……どの……うっ……」
「大丈夫だから」
 優しく正雪の頭をなぜ、食堂に国広は、向かうとすぐに毛利がやって来た。友美を連れて。
「姫」
 友美は、ぐずる正雪を見て、微笑む。
「本当に優しいんだから」
 友美は、そういうと毛利と国広にいった。
「正雪たぶん2人が食べたいものを言ったからどちらを優先すべきか悩んだみたい」
「え??」
「なるほど」
「精神と頭は、年相応だけど、体の年齢に引っ張られて表現が出来なくて、泣くことになったみたいよ」
 正雪は、コクりと頷く。
「ひめ……」
 友美は、優しく正雪を抱っこした。
「本当にいいこね……大丈夫。みっちゃんが今頑張って作ってるからね!!」
 やはり安心する。これも神子の力だろうか。
 うとうとし始めた正雪を友美は、慣れた手付きで、あやすとしばらくして寝てしまった。
「姫凄いです……」
「これでも子供を4人育ててるもの」
 正雪と違ってやんちゃだけども。
 友美は、椅子に座り、優しく正雪の背中を撫でる。
「小さい子……やっぱり可愛いです……」
「だな」
 毛利にとっても国広にとっても至福の時かもしれない。
「国広君、毛利君……」
 光忠は、食堂にクッキーとマドレーヌを持ってやって来たが、椅子に座る友美を見て、声を小さくした。
「寝ちゃったんだね」
「光忠そうよ」
 可愛い正雪に三振りは、目を細めた。
「姫正雪さん戻りますよね??」
「えぇ毛利君。たぶんもうそろそろかなぁー」
 友美は、そういうと風呂敷を持ち立ち上がる。
「光忠、国広、毛利君。着いてきたら殺すから」
 友美の笑顔が恐ろしいほどに怖い。三振りは、頷くと、友美は、子守唄を歌いながら、屋敷の奥へと消えていった。
「あのーあれ着いていったら……」
「毛利君たぶんそれをした……」
「俺達どころか本霊が消されるだろうか」
 顔を青ざめる光忠と国広に、毛利は、身震いしかできなかった。
 そう友美は、そんな人物だ。特に大切なものを守る時は。
 そしてしばらくして友美は、戻ってきた、もとに戻った正雪と共に。
「光忠殿、国広殿、毛利殿、すまなかった!! 色々と迷惑を……」
 頭を下げる正雪に三振は、いう。
「むしろ癒しだったよね!!」
「ですよ!! 正雪さん!!」
「それより光忠がクッキーとマドレーヌを作ってくれた。食べよう」
 変に態度が違えば正雪が気にするだろうと普段通りに三振は、接した。
 正雪は、心配そうに友美を見たが、友美は、微笑む。
「姫……」
「さぁ!! マドレーヌ食べましょう!!」
 友美は、そういうと正雪の背中を押した。
 椅子に座ると正雪の前にクッキーとマドレーヌが。
「クッキー美味しいですよ!!」
「マドレーヌもうまいぞ」
「かたじけない」
 クッキーとマドレーヌをたべ優しい味わいに正雪は、心が温かくなった。
「光忠殿とてもうまい」
「それは、よかった!!」
 小さくなって更に分かったが本当に彼らは、優しい。
 小さい自分のために光忠が両方作ってくれ、国広と毛利は、自分に優しくしてくれた。
 もしかすると家族の愛とは、このようなものかのだろうか。
 正雪は、笑っている光忠、国広、毛利を見た後友美を見た。
 彼女に抱っこされたり、話しかけられていたときのあの温かな気持ちは、なんかのだろうか。
 心地よく安心できるあの感覚。正雪は、友美を見ながら考えていると、友美が笑った。
「私の顔になにか着いてる??」
「すまない!! なにも!?」
「そう。ちなみに正雪それは、母の愛かもね」
「母の愛……」
「私これでもお母さんだから」
 正雪は、目を伏せる。もしそうだとするなか、母とは、とても安心でき、優しくそれでいて安心できる存在なのだと初めて知った。
「そうか」
「母の愛なら光忠もあるんじゃないのか??」
「国広君!? 僕は、料理や家事が好きなだけだからね!?」
「国広、光忠は、オトメン!!」
「姫それも違うからね!?」
「生活力が高いんですよね!!」
「そう!! 毛利君!!」
「ふむ……なるほど」
 楽しげに話す友美達を見ながら、正雪は、思った。生前の自分には、この光景など想像も出来なかっただろうと。
「幸せ……だな……」
 そう呟く正雪を見て、友美達を微笑む。よかったと安心した顔をしながら。

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