日常編2

 正雪は、知ってしまった。
「管狐が後三種類いると!?」
「えぇ。正雪殿」
 縁側で正雪は、小狐丸と話をしていた。
「なんと……」
「確かくろのすけ、もものすけ、 きゅうのすけと言ったかと……」
 こんのすけもそしてまめのすけも可愛いのになんと更に三匹。これは、正直会ってみたい。
「小狐丸殿、どうにかして一目見れないだろうか……」
「政府管轄の管狐ゆえ、難しいかも知れませんね……」
 正雪は、ショボンとなった。
「うむ……」
「もものすけは、広報専門。くろのすけ、は、本丸の視察、そしてきゅうのすけは、今刀剣の勉強をしているとか……」
 こんのすけとまめのすけだけでも可愛い。となるの絶対に残り三種類も可愛いとわかる。
 正雪は、どうしたものかと考える。
「小狐丸少しいいかい??」
 この声はと顔を上げると長義が小狐丸と何やら話をしている。
 政府の管狐ならと正雪は、ひらめいた。
「長義殿!!」
 突然声を上げた正雪に長義と小狐丸は、驚いた。 
「どうされました正雪殿」
「どうした正雪さん……」
 正雪は、立ち上がると真剣な顔をし、言った。 
「長義殿に頼みたい義がある!!」
「というと……」
 正雪は、真っ直ぐに言った。
「もものすけ、くろのすけ、きゅうのすけに会わせては、くれぬか!?」 
 小狐丸は、ため息をこぼし、長義は、困惑していた。
「はぁ??」
 思わず言ってしまった。
「その……難しいのなら……気配遮断し潜入をするが……」
「諦めませんな!?」
「小狐丸殿そりゃ諦めることなど出来ぬ!! それに魔術なら霊力関知を潜り抜けれるだろうから!!」
 長義は、頭を抱えた。そういえば国広が正雪は、動物が好きだといっていたような。そして頑固とも。
 諦めの悪いことは、いいことだが、まさかこんか無茶まで言い出すなんて。
「正雪さんその潜入方法さ、辞めておけ」
「長義殿……」
 落ち込む正雪に長義は、いった。
「正々堂々正面から行こうじゃないか!!」
「えっ!? 行けるのですか!? 長義殿!!」
「小狐丸まぁな。それに正雪さんは、政府にそうとう恩を売ってる。これくらいの事頼んでも問題ないだろう」
 正雪は、首をかしげながら、思っていた。そんなに恩を売るようなことをしただろうかと。
「恩を売るなど……たまたま遡行軍を……応戦しただけだ……」
「それが政府にとっては、そうとうな事なんだ。とりあえず政府に掛け合っておくから」
 正雪は、嬉しそうに微笑むと、長義は、思わず顔が緩んでしまった。
 可愛い。こんなことで喜ぶ彼女が。
「おやおや……長義殿も虜ですか……」
「否定は、しないが、肯定もしない」
 長義は、そういうと去っていった。
「本当に長義殿は、優しいお方だ」
「彼がここまでするのは、貴女だからですよ。正雪殿」
 小狐丸は、そういうと立ち上がった。
「というと……」
「言葉の意味そのままです。貴女は、我々にとっては、可愛い……妹のような存在ですから……」
 可愛らしい子供といえば正雪が怒るのであえて、小狐丸は、妹といった。
 正雪は、少し恥ずかしそうに視線をそらした。
「妹等とは……」
「まぁ比喩ですので、気にせずに」
「うむ……」
「では、私は、これか、出陣ですのでまた」
「ご武運を小狐丸殿」
 小狐丸は、微笑むと、去っていった。残された正雪は、国広の執務室に。
 執務室につくと長義にお願いしたことを国広に話した。
「長義にそんなことを頼んだのか!?」
「その……どうしても会いたくて……よくよく考えたら……無茶だっただろうか……」
「無茶では、ないが、清麿や正秀に頼んでもよかったと思うぞ。あいつらももと政府所属だったからな」
 正雪は、驚いた顔をした。その様子からして知らなかったようだ。
「清麿殿は、そうだったときいていたが……正秀殿も……」
「あぁ。長義より頼みやすいと思うが。まぁ長義は、正雪には、とことん甘いからいいが」
「む??」
 そんなに甘いだろうか、正雪は、首をかしげる。
「そんなこと……」
「ある。あいつ正雪の事を気に入ってるからな」
 そんなことないだろうと正雪は、思いながら、国広の仕事を手伝っていると夕方になり、長義が凄い勢いでやって来た。
「国広!! 正雪さん借りるぞ!!」
「わかった」
 国広にそういうと、正雪をつれ、執務室を出た。
「正雪さんOKがでた」
 廊下にでて、長義は、すぐに話をはじめた。
 正雪は、驚いたのち、瞳を煌めかせた。
「長義殿!! ありがとうございます!!」
「日取りに関しては、何時でもいいな??」
「先方の都合がいいときでいい。私のわがままなのだから」
「ならそう伝えておく。日程が決まったらまた教える」
「了解した」
 長義は、そういうと去っていった。執務室から話を聞いていた国広は、優しく笑っていた。
「長義も成長してるな……」
 以前の彼ならこんなことしなかっただろう。友美のつれてきた正雪は、この組織を少しづついい方向にやはり変えるように働いているようだ。
 本人は、気づいていないが。
「とりあえず光忠にいってその日は、いなり寿司弁当をつくってもらうか……」
 国広は、そう呟くとさっそく行動に移した。
 しとしとと雨が降るなか、傘をした正雪は、エコバックを持ち買い物に来ていた。
「今の傘は、こんなにも軽いのか……」
 番傘の重さを思い出しながら、傘をさし、歩いていると目の前に人影が。
 誰だろうかと警戒し視線を上げると長義だった。
「長義殿??」
「驚かせてすまない。姫に聞いたら買い物に行ってると聞いて、追いかけてきた」
 そこまでするということは、緊急の用だろうか。
「長義殿何があった」
 真剣顔をし、正雪は、聞くと、長義は、答えた。
「決まったぞ」
「決まった??」
 長義は、自慢げにいった。
「狐に会いに行く日だ!!」
 正雪は、ぱっと明るい顔になる。
「なんと!!」
「どうしても早く伝えたくてね。姫にもそこまでの事かと言われたが」
 しかし長義にとっては、そこまでの事なのだ。正雪を喜ばせたいから。
「ありがとう。長義殿」
「で日程だが……」
 正雪は、傘を長義も入れるようにさした。
「長義殿肩が濡れているでは、ないか……」
「あっ」
 急いでいたせいか傘を持ってきていたかった。
「まぁ布を外套がわりにすれば……」
「それでもこの雨だと無理がある」
 濡れている長義に正雪は、そういうと、微笑む。
「この傘は、貴殿が使ってくれ。私は、かまわないから」
 長義は、驚いた顔をするといった。
「なにいってる!! それは、駄目だ!!」
「しかし私には、姫からのつかいが……」
 正雪は、いま近所のスーパーまでお茶菓子を買いに行く途中だ。
 困った顔をした正雪に長義は、言った。
「なら俺も行けばいいだろ」
「む!?」
「なら正雪さんの悩みは、解決だ」
「しかし……貴殿が風邪を……」
「それくらいなんとかなる」
 なんともならないと思うと正雪は、思いながらも、長義が意外に頑固なのを彼女は、知っているのでしかたがないと共に行くことにした。
 スーパーにつき、中に入ると何時もよりも視線を感じた。
 正雪は、辺りを見渡すと皆の視線は、長義に向いていた。
 水も滴るいい男とは、このようなことを言うのだろう。
 正雪は、刀剣男士達の顔のよさに改めて感心しながら、和菓子コーナーに。
「……柏餅と……草餅……」
 頼まれた菓子を籠に入れていると、長義が不思議そうに見ていた。
「姫なら和菓子屋のを買うかと思ったが……スーパーのも買うのか」
「どちらもと姫は、言っていた」
「いがいだな」
 長義のなかでは、友美は、しみせと言われる和菓子屋の和菓子を食べるイメージがあった。案外庶民的なんだなと改めて主の事を知った。
「イケメンだね……」
 そんな声が聞こえ、長義は、何故か正雪を見ていた。
 制服では、なく何時もの羽織袴姿。
 やはり彼女は、服装によっては、秀麗でも男に見えるようだと思っていた。
「そうか……それは、男装だったか……」
「うむ??」
「正雪さん女性物の着物は、着ないのか??」  
 突然の質問に困惑しながらも正雪は、答える。
「これでは、変……かな??」
「そうでは、ないが……」
 国広が何も言っていないのであまり気にしてなかったが、たぶん似合う。色々な服装が。
「……一応光殿にもこの姿で変では、ないときいていたが……」
「なら問題ないだろう。旦那のセンスは、いいから」  
 あくまでも自分の意見だと長義は、なにも言わなかったが、正雪は、やはり変なのかと少し傷付いた。
「なかなかだわ……」
 しかしこの時ふと気づいた。長義を見ている女性に。
 もしや長義は、気づいていない。自分が見られていることに。もしそうなら、正雪を見ていると勘違いを起こしたとしたら。
 正雪は、長義の言葉を思い出し思わず笑った。
「ふふふ」
「どうしたんだ??」
「いや……なにもない」
 ここでぬけているなんていえば無用な争いをうむ。
 正雪は、あえて言わず、友美から頼まれた菓子を籠にいれ、会計をした。
 スーパーを後にし、無事に帰ると、友美が困った顔をしで迎えてくれた。
「……正雪ごめんなさい。このおっちょこちょいのお陰で大変だったでしょう??」
 おっちょこちょいといわれ、長義は、不服そうだが、友美は、気にしなかった。
「そこまででもない」
「ならよかったわ」
 友美は、正雪は、おとなだなと思いながら、微笑むと、長義にタオルを渡した。
「とりあえず拭きなさいな」
「姫……」
「着替えも用意しといたから、服乾くまでいなさい」
「ありがとう」
 タオルで体を拭き、長義は、洗面所へ。正雪は、エコバックをもち、リビングに行くと、蛍が呆れた顔をしてテレビを観ていた。
「この政治家まじでアホ!! なんで国家中に寝てるの!!」
 新雑な言葉をつぶやき、お茶を飲むと正雪にきづいた。
「おかえり」
「ただいま」
 エコバックを炬燵の上に置くと友美がお茶をいれ、リビングにやって来た。
「長義ってしっかりしてるように見えて、おっちょこちょいというか……せっかちというか……」
 思わずぼやくと蛍が呆れた顔をして言った。
「長義は、せっかちだからね」
「確かに」
 正雪もこれには、同意した。
「悪かったな」
 ばつの悪そうな顔をし、長義がリビングにやって来た。
「姫服は……」
「洗って乾燥するからそのままでいいわ」
「わかった」
 友美は、そういうと、リビングをでていい、長義は、蛍のとなりに腰を下ろした。
「それ……長義の内番の服だよね??」
「何故かこれが……」
 不思議なことには、なれているつもりでもまた、なれないこともある。
 長義は、まさか国広が持ってきたのかと考えていると、答えは、すぐに出た。
「国広が突然来て帰ったのは、それを届けるためかー」
「あいつ来てたのか!? やはり……」
「来てたよ。たぶん長義の行動が分かったんじゃない??」
「そうか」
 少し悔しいがやはり頼りになる。
「そういえば長義日程の話しやらないの??」
 長義は、思い出したのか、はったし、正雪に文を見せた。
「正雪さんこの日程で問題ないか??」
 確認し、正雪は、頷く。
「その日ならば問題ない」
「ならそう返信しておく」
「かたじけない」
 蛍は、長義と正雪を見て、笑っていた。
「よかったねー!!」
「あぁ蛍殿」
 嬉しそうな正雪に蛍は、微笑む。
「長義俺もついていっていい??」
 まさかの発言に長義は、驚く。
「えっ!!??」
「いいでしょう??」 
 長義は、正雪を見ると、彼女は蛍を見ていた。
「蛍殿も来られるのか??」
「長義しだいかな」
 長義は、頷いた。ため息をついて。
「わかった」
「ありがとうー」
 正雪は、嬉しそうに微笑み、長義は、ため息をこぼした。
 この様子を廊下から見ていた友美は、1人笑っていたのであった。
「蛍ったら」
 と言いながら。
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