日常編1

 時の政府には、多くの刀剣男士と審神者がこの日集まっていた。
 定期的におこなわれる会議があるからだ。
 みたことがない刀剣男士に正雪は、キョロキョロ辺りを見渡していた。
「誠に……多いこと……」
「今日は、会議だからね主」
「こんなに集まってることでも少ないよね??」
「そうなのかい??」
「そうなのか??」
 清麿は、特命調査を受け持つ部署にいたことを蛍は、忘れていた。 
 正雪と清麿の反応にこれは、しかたがないと、ため息をこぼす。
「そうだよ。まぁ俺がここに来たのもそんなに多くないけど、この中では、一番多いよ!!」
「演練の時よりも多いな……」
 これだけの審神者が歴史を守っている。正雪は、凄いなと感心していた。
「主珍しく女性物の着物だね」
「何時もの袴じゃないね」
 今の正雪は、髪を結い上げ、何時もの浅葱色の羽織に、若草色の着物と紫の袴とショートブーツをはいていた。
「何時もの姿は、男装ゆえ……姫から着物を借りた。えーとーこういうのを大正ロマン風といっただろうか……」
「確かに明治、大正の女学生って感じだね!!」
「面だけは、何時ものだけど。耳飾りも外してるんだ……」
「目立つと思って……その私は、今日あくまでも審神者ゆえ……」
 清麿は、正雪がなにを言いたいのか分かった。
「カモフラージュだね!!」
「そうだ」
 確かにあの耳飾りは、普段の正雪の色味からして補色になり、目立つ。
 蛍は、周りの審神者達をみながら、正雪を見ていった。
「でも刀持ってるの正雪くらいだよ??」
「それは……まぁそうなのだが……一応武士だから!! 私は……」
「お姉ちゃんそこ弱々しく小声にならない」
「うむ……」
 しかし審神者で刀を携えているのは、自分くらいで正雪は、少しまずいかなと思っていた。
「一先ずいこう……清麿殿その……蛍……」
 普段蛍を呼び捨てにしないので少し違和感がある。蛍は、おぼつかない正雪を楽しそうにみていた。
「お姉ちゃん慣れてよね!!」
「助力する……」
 なれない。神を呼び捨てにするなど、正雪は、失礼なことをしていると内心冷や汗をかく。
「大丈夫だよ主」 
「清麿殿……」
「じゃいこう」
「そうだな」
 政府の建物に入り、手続きをすませると、予想通り清麿の本体は、使用制御されてしまった。
 正雪の打刀と脇差しは、あえて魔術で見えないようにしていたので、そのまま中に通じるゲートを通過できた。
「あの源清麿……何か下げてるぞ……」
「まさかあの元本丸の生き残りか!?」 
 ゲートを潜り、中に入るとこんか政府職員の声が聞こえてきた。
 蛍から外した方がいいと言われたが、証をあえて清麿は、着け、ここに来た。
 政府職員は、みなあの元本丸を悪くいい恐れる。しかしその事実は、まったくの正反対だった。
 少しでもふしょく出きれば。嫌な噂を。清麿は、そう思うなか、正雪は、しゅうし冷たい眼差しを職員達を向けていた。
「人とは、自らより優るものに……劣等感をいだく……本当に……醜いものだ……」
 ポツリ正雪が呟くと、清麿は、驚いた顔をしていた。
「主がそんなことを言うなんて……」
「私は、貴殿が思っているほど綺麗では、ない……非道な手も使ってきた……」
 面で見えにくいが正雪が悲しげに笑っているのだけは、分かった。
「お姉ちゃんのいう、非道ってそこまでじゃないと思うけど~」
「蛍……」
「とりあえずあいつらは、ほっといたらいい!! どうせ自己肯定感なんて紙みたくて、プライドだけキリマンジャロ並みにお高い奴らだから!!」
「それキリマンジャロに失礼だよ?? 蛍!! あそこは、白く輝く山って言う意味だから……」
「さすが清麿物知り!!」 
「ありがとう蛍」
「その……キリマンジャロ……とは??」
 蛍と清麿は、きょとんとしたのちハッとした。そういえば正雪は、江戸初期の人。キリマンジャロなんて聞いたこともないと。
「珈琲のことだろうか……光殿が言っていたのを聞いたことが……」
「珈琲の名前としては、知ってるのに!!」
「その名前の由来の山は、知らなかったのか……」
「山??」
「主キリマンジャロは、アフリカ大陸にあるタンザニアにある山の事だよ」
「タンザニア……ふむ……そのような国があるのだな……」
「そう」
 一先ず帰ったら世界の地理に関しての本を読む必要がありそうだ。
 正雪は、メモ帳を取り出すと、ボールペンで書いた。地理の本をの読むと。
「主は、勉強熱心だね!!」
「というより……常識のためだよ……」
「というと??」
「英霊として召喚された場合、条件に、よるけど、その時代の知識を与えられるんだ。でもお姉ちゃんは、違う」
「姫いわく転生だっけ……」
「そう。輪廻に干渉して友美が生前の彼女との、契約のもと、人として転生したらしいから。知識は、与えられてないんだ」
「生前の知識は、あってもその後のものは、なし……なんなら、生前のままだから足りないものは、補わなくてはいかないか……」
「そう。でもお姉ちゃんは、それを楽しんでるから、ある意味いいんだけどねー」
 清麿は、メモ帳を片付けた正雪をみて凄いなと思っていた。
「清麿殿??」
「なにもないよ。ただ主は、凄いなと思ったんだ」
「私など凄くない。まだまだ知らないことばかりだから」
「はやく行こうよー会議始まる!!」
「だね」
 蛍が先行くので慌てて追いかけると、会議室についた。
 皆が指定された席に座るなか、正雪は、係員に書類を見せると案内されたのは、後ろの方だった。席に着くと、しばらくして慌ててやって来た審神者もいた。
「すみません!!」
「落ち着いて。まだ始まってませんから」
 男性は、鶴丸国永を連れていた。そして案内された席に座り、しばらく待っていると会議が始まった。

 会議の内容は、何時もと同じだった。正雪は、なるべくメモを取るようにしていたが、他の審神者達は、タブレットをみているのみ。
 私もあれの使い方をもう少し学んどくべきだった。組織でも使っているが、書面でやり取りをする方が多い。 
 なんとかついていこうと頑張る正雪を清麿がサポートする。
「はい主。いまここ……」 
「ありがとう清麿殿」
 小声でやり取りすりと、正雪は、タブレットを確認し、そしてまた職員の話に耳を傾け、メモを取る。
「今現在これだけの本丸が遡行軍の襲撃にあっている。皆様本丸の結界の強化と警備を強くしてください」
 審神者達がざわつくなか、正雪には、疑問が。
「うちは……進撃されれば守れるのか?? 守りには、向かない作りだが……」
「そもそもある場所が場所だからね」
「そうそう」
 清麿と蛍が言うのなら安全なのだろう。
 他の審神者達が昔の日ノ本の地名を呟くなか、正雪は、驚いた。
「藩では、なく国なのだな……」
「そこは、ね」
「ふむ」
 政府職員に詰め寄る審神者が表れ、正雪は、驚く。
「なら対策は、出来てるんだろうな!!」
「こちらとしてもやりますが、各本丸で!!」
「だからそれを具体的に言ってほしいのよ!!」
 いざ戦場にたてば勝てるかは、分からない。いくら準備を整えてたとしても。
 正雪は、目を伏せる。
「主……」
「分かっている。皆ここにいる人達は……平和な世に生まれ、そして霊力があるからという理由で選ばれた審神者もいると……だからこそ、保険として……政府の策を頼るものもいると……」
 今詰め寄る審神者を見ている審神者達は、もしかすると覚悟の上で審神者になったもの達。もしくは、冷静に対応をしているもの達だろう。
「あんたは、どう思うんだ??」
 前の席の審神者に話しかけられ、正雪は、驚いた。
「その身なりからして……霊力があるからと強制的に選ばれたやつだろ??」
 スーツに身を包む男性は、正雪を見ていった。
「私は……」
「あんたのような箱入り娘は、おとなしく本丸にいな」
「それは、どういう!!」
「場合によっては、遡行軍と先陣きって戦うやつをここから選ぶ可能性もある」
 面で顔は、見えないが男は、真剣な声色で言った。
「未来ある若人に死なれたくないんだ。俺は」
「……」
 正雪は、目を見開いた。
「……それは、貴殿にも言えることだろ??」
「あんた……」
 この娘身なりは、上等だがそれだけでは、ないと男は、経験から感じた。
「私はもしかするとその戦には……さんかは、出来ぬ……そもそも政府の審神者では、ないのでな」
 隣に座る清麿がつける蒼の宝石に男は、驚いていた。
「主もしかして……」
「あの本丸のやつから……」
 隣の和泉守兼定も驚くところを見るとそうらしい。
「む??」
 何故彼らは、こんな反応をするのか。正雪は、不思議そうに首をかしげ、清麿も少し戸惑っていた。
「僕達そんなに凄くないよ……??」
「よくいうぜ。ブラックといわれる本丸の処理数は、ダントツ。そのうえ、遡行軍の討伐数も凄いくせに」
「そうなのか?? 清麿殿」
「僕も分からない……」
 蛍に聞くにも、彼は、寝ていた。見事に。
 正雪の清麿の反応に、兼定は、もしかして勘違いかと思った。
「主俺の間違いかもしれん……」
「そんなはずない。あの飾り間違いなく霊力とは、別の力をかんじる」
「なら新参者か??」
「僕は、本丸の中だと新参者かな……」
「なるほどな」
 そう言われると私は、もっと新参者なのですがと正雪は、思う。
「あ……くる……」
 突然蛍は、そう呟いたが、その時爆発音と共に、建物が揺れ、警報が鳴った。けたたましいサイレンと共に。
「警報!! 遡行軍が!! 政府建物に襲撃!!」
 会議室がざわつき、悲鳴を上げる審神者まで。
 正雪は、清麿と顔を見合わせる。
「予想通り……」
「貴殿は、ここに。本体制御解除のち、来てくれ」
「分かった主」
 正雪は、立ち上がると、ざわつく審神者と刀剣男士達を押し退け、会議室をとびだした。
「お嬢ちゃん!!」
「主おうか??」
「いやまて」
 先ずは、上の命令を待たなければ。戦うにしても刀剣男士達は、いま剣が抜けず、審神者も戦えるものなど少ない。
 どうしたものか。このままでは、娘は、死ぬ。
 男は、何時もならば冷静に事を見るのにこの時だけは、できなかった。
 政府職員の制止も聞かず飛び出していた。兼定をつれ。
「さて俺も行こうかな。清麿とりあえず制御は、じきにとけるだろうから!!」
「分かったよ。蛍」
 蛍は、呑気に外へ出ると、逃げる人達とは、逆の方に歩く。
「さて!! 戦いますかね!!」 
 蛍は、手を伸ばすと、その手に大太刀が。
大太刀を構え、走り出すと、遡行軍を見つけた。
「みーつけた」
 蛍は、高く飛ぶと、遡行軍の首をはねた。
「ひぃ!!」
「はやく退避して!! それと刀剣男士を戦えるように!!」
「わかった!!」
 政府職員を逃がすと、蛍は、走る。一先ず正雪なら大丈夫だろうが、彼女を追っていった。男は、違う。
 あの人何か隠してる。正雪を見たとき、驚いていた。
 まるで亡くなった誰かに会ったような反応だった。
 蛍が走るなか、正雪は、携えていた打刀
を抜き、襲ってくる遡行軍を次々と斬り倒していた。
「まだまだいるか……」
 この程度で終わるわけがない。彼らの狙いは、集まった審神者だろう。審神者を殺れば刀剣男士達を無力化できるのだから。
 襲ってくる遡行軍を魔術で縛り付け、次々と斬る。
「お嬢ちゃん!!」
 声が聞こえ、ふりかえるとあの男が。
「今来るな!!」
 正雪の制止に男は、足を止めると、目の前に遡行軍が。まずい斬られる。そう思ったとき、目の前で遡行軍が斬られた。
「主!!」
「兼定!!」
 斬ったのは、彼では、ない。見えるのは、浅葱色の羽織を翻すあの娘だ。
「はやく皆のところに」
「だがあんたは!!」
「私は、ここで少なくとも戦える側。さすれば皆を守るため剣を取る」
 面が翻り、一瞬正雪の顔が見えた。その瞳は、戦う武士。その者だ。鋭い光と惹かれるほどの意志を宿した瞳。 
「制御を解除」
「主!!」
「やれ兼定!!」
 ようやく抜刀の解除がとかれ、審神者たちは、連れていた近侍に命じていた。遡行軍の討伐。
「審神者の皆様は、こちらに!!」
 政府職員の指示にいたが、審神者たちは、退避、残った審神者もいたが、その者たちは、歴戦の勇者として名高いもの達だ。
「主あの飛び出していったお嬢さんを追うかい??」
「その必要は、ありませんよ鶴丸彼女は……あの名高い本丸の主のようですから……」
「まさかこういう形で再会するとはね!! 主さん!!」
「乱やりなさい」
「任せて!!」
 鶴丸と乱が襲ってきた遡行軍に切り込むなか、老人と貴婦人は、互いに微笑む。
「あの本丸をご存知で??」
「乱は、そこのお嬢さんに助けられうちに来た子ですから」
「それは……」
 老人は、噂聞きいてたからいちど会ってみたいと思っていたが、結局会えずにいた。
「噂から解体されたときいていたが……」
「あらあらそんな噂が。彼らは、今政府に属してないだけですのに」
「ほう。なら飛び出しても怒られないですな」
「えぇ。だから時間稼ぎが出来たのですけどね」
 そう正雪が飛び出していなければ今ごろ被害は、甚大になっていた。
 鶴丸と乱が戦うのを横に、清麿は、走っていた。正雪のもとに。
「蛍!!」
 しかし見つけたのは、蛍だった。かえり血で真っ赤になった。
「清麿」
「正雪さんは!!」
「大丈夫!! 刀剣男士たちが来てからは、ほらあそこ」
 蛍の指差す方には、確かに正雪が。しかし今彼女は、刀を抜いていなかった。
 代わりに、それぞれの刀剣男士に向かい魔術でサポートをしていたのだ。
「あれだけの数を……」
「しかもそれぞれの刀剣にあったね。凄い分析力と冷静さだよねー」
 蛍は、微笑む。 
「清麿行ってきなよ」
「ありがとう蛍」
 清麿は、そのまま走り、正雪のところへ。
「主!!」
「清麿殿!! すまないが、これから更に来る!! 貴殿も!!」
「わかったよ」
 やる時には、やる。清麿は、本体を抜くと、遡行軍の中に。
 他の刀剣に混じり、敵を仕留めながら、その間に正雪のサポートを受けながら、分析した。敵の大将を。
 ここだ。清麿は、更に走る。そして何かを唱えたとたん霧が辺りに立ち込める。
「なんだこれは……」
 男がそう呟いたとき、刀剣男士たちも驚きの出来事が。霧の中になのに敵の場所がはっきりと分かったからだ。
 これならばいける。遡行軍を次々と倒していく。
 金属音が響くなか、清麿は、見つけた。敵の大将を。
 自分は、新々刀の名高い刀。しかし水心心のような祖でもなく、同じ刀工に打たれたのに、固有のあり方をもつ長曽祢虎徹のような
存在でもない。
 なら何があるのだろう。源清麿という刀剣には。
「負けるわけには、いかないんだ!!」
 その答えは、まだ出ていない。でもなんとなく分かることは、ある。  
 振りかざした刃が大将の首にのめり込み、骨を斬る音が聞こえる。そして敵の大将の首は、飛んだ。
 ころりと地面に落ちると、斬りもはれ。そして遡行軍も消えていた。
「勝ったのか……」
「終わったー!!!」
 そんな歓喜が溢れるなか、清麿は、目を伏せる。
「……清麿殿!!」
 正雪の声が聞こえ、顔を上げると彼女が、走ってきていた。
「主……」
「その……おめでとう!! 貴殿が大将を仕留めてくれたゆえ、被害が最小限にすんだ」
 清麿は、ほっとした顔をしいう。
「はれは、主のお陰だよ。僕は、出来ることをしただけだから」
「謙遜なさるな!! 貴殿が居たからで!!」
 正雪と清麿が互いに誉めあうなか、蛍は、隣で呆れた顔をしていた。
「それより政府から事情聴取あると思うけど??」
「むっ!!??」
「あはは……」
 顔を青ざめる正雪と苦笑いを浮かべる清麿。その後みっちりと事情聴取されたのち、すぐに解放されたが、今度は、審神者達が飛び出していった女は、誰かと探しだし大変なことに。
「まさか……僕のローブが役にやつとはね……」
「正雪隠すのにちょうどいいからね」
「すまない……清麿殿……」
「大丈夫だよ」
 色々国広がみたら突っ込まれそうだ。なんとか、背後に正雪を隠しながら、政府の建物からぬけ、蛍達は、なんとか帰路についたのであった。


 
 
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