日常編1
普段から書庫は、物静かな場所だ。主からばみちゃんなら安心して任せられるとここの管理を任されてからとくに出陣や任務などがないとき、骨喰は、ここにいる。
足音が聞こえ、書庫の入り口をみると、正雪がいた。真剣な顔をし。
「正雪戻ってきたのか??」
「骨喰殿貴殿にお願いしたき、義がある」
「なんだ」
「これか、一殿に話をしに行く。話さなくていい。隣にいてくれぬか!!」
骨喰は、しばらくポカーンとするといった。
「え??」
「その……姫から一殿と対峙すり時は……粟田口と……行けばよいと助言をもらい……」
「で俺と??」
「そうだ。私は、粟田口の刀剣達と、あまり親しくない……骨喰殿とは、万屋に行ったりもしたことがあるので……その……」
「兄弟達の中では、話しやすいか」
「あぁ。薬研殿がいればその……」
「まぁ薬研の方が適任だろうな」
古株の五虎退は、屋敷におらず、一期も不在だ。
骨喰は、しかたがないかと一肌脱ぐ事にした。
「分かった」
「かたじけない!! その……」
「なんだ??」
「一殿が好まれる菓子とはあるだろうか……」
正雪は、茶菓子を用意し、話しに行こうとしているようだ。
骨喰は、しばらく考える。
「食べれればそれでいいという感じだな」
「む!?」
「一さんは、その日暮らしという感じだったからな。あるものは、なんでも食べている。一兄もどうすべきか何時も悩んでいる」
「……なるほど」
友美から聞く話しでも過酷な過去を持っていた一。計画のためすべてを削り、用意周到に支度をしていたのだろう。
「ふむ……なら南蛮の菓子でもいいだろうか……豊臣秀吉公が好んだものとか……」
「それもありかもな」
「骨喰殿は、豊臣にあったとか!! そのなにか……」
「……カステラや金平糖を秀吉は、好んでいたな」
「やはりか……」
「あぁ」
昔のことを思い出すのは、辛い。だが正雪にそれは、関係のないことだ。
骨喰は、必要な情報だけ与えるとあえて、彼女に顔を見せなかった。
「骨喰殿……」
「大切なのは、過去より今だ……」
「すまない。貴殿は、大阪の陣で焼けたのであったな……」
「気にするな。あんたには、関係のない話だ。それよりも今は、一さんの事だろ??」
長いときを生きてきたからこそ、辛いこともそして楽しいのとも自分より彼らは、経験してきた。
正雪は、頷くと。
「そうだな……ひとまずカステラを準備するか……といっても無いのだが……」
「万屋に行くか??」
「その時も惜しいといえる……」
さてどうしたものかと考えていると書庫に誰か入ってきた。
「話しは、聞きました。よろしければこちらを」
正雪は、顔を上げるとそこには、江雪が。
「江雪殿……」
「天照様から頂きましたが、私がいただくよりも一殿の為に使ってください」
テーブルに置かれたカステラの、箱をみて正雪は、驚く。
「そういうわけには、こちらは、貴殿の……」
「一殿の件に関しては、私も関係者です。彼が敵であり、そして保護され、あそこまで立ち直ったこと、その過程もすべてしっています。だからこそ、少し力を貸させてください正雪殿」
「江雪殿もその頃から居たのだな」
「えぇ。この組織では、古株になりますから」
正雪は、戸惑ったが力を借りることにした。
「ありがとう江雪殿。こちらのカステラ有り難く使わさせてもらおう」
「えぇ。彼は、失うこと、そして己が残ったことへの恐怖と後悔で日々苦しんでいる。少しは、はれるといいのですが……」
「……そうだな」
江雪は、では、といい去っていった。
「正雪」
「なんだ骨喰殿」
「あんたならもしかすると、少しは、一さんを変えられるかもしれない」
「というと……」
「姫が選んだからだ。ここの代理に」
友美ならば見越して選んでいるはずだ。
正雪は、頷く。
「だといいのだが……」
一が関わろうとすること事態が珍しい事だ。たぶん彼女の何が一を変えれる。そんな気が骨喰は、していた。
「一先ず一殿を捕獲する!!」
「正雪だんだん表現が姫に似てきたな」
「む!?」
「とりあえず見つければいいんだな」
「うむ……」
「この時間ならあまり皆がいかない庵にいるだろう」
骨喰は、立ち上がると、正雪もカステラを持ち立ち上がった。
「では、よろしくお願い申し上げる」
「あぁ」
さていよいよ一と話す。正雪は、覚悟を決め、書庫を出ると彼をさがし始めた。
爽やかな初夏の風がこの庵には、入ってくる。母屋から離れているのもあり、あまり刀剣達も近寄らない。ときより来るのは、粟田口の刀くらい。
一は、ただ静かに庭を眺めていると誰かきた。
「姫」
庵の入り口に立っていたのは、かつての敵であり今の主だ。
友美は、微笑むと、中には、入らずにいった。
「あと少ししたらここに来客が来ると思うわ」
一は、目を伏せる。
「私のような者に来客ですか……その方変わり者ですね……」
「なら私も変わり者ねー わざわざ貴方の所に来てるのだから」
「貴女が常識はずれなのは、今に始まった話では、ないでしょう。敵であった私を引き取るなんて普通では、出来かねますが??」
友美は、楽しげに笑うといった。
「確かに!!」
「しかし姫がわざわざいいに来るということは……あの代理ですか??」
「そうかもしれないわ」
あえて友美は、認めなかった。一は、大きなため息をつく。
「彼女と私は、正反対だと思いますが」
「案外そうでもないわよ。正雪は、己の信念の為ならば邪道な事も出来るもの……あくまでもあまり信念を曲げない程度だけど……」
黙る一に友美は、続けた。
「一もまた烈士たるものでしょう?? 彼女を助けるために……あんな大勝負までするんだから……」
「そのような綺麗なものでは、ありませんよ。私のは、えごと……罪滅ぼしです……助けをもとめていた主を助けられなかった……駄目な刀剣の……」
「私には、こうして話してくれるのにー他の子達にも話をしたら……」
「貴女だからこそです。姫」
「そう。一先ず私は、たまたま通りかかり、伝えただけだから」
「そういうことにしておきます」
友美が去ったのちしばらくして複数の足音が聞こえた。
一は、横目で庵の入り口を見ると、骨喰と正雪が。
「一殿少しよろしいか」
本当に諦めの悪い。一は、なにも言わなかったが、正雪は、ならと入ってきた。
一の前に骨喰と並び正雪は、腰を下ろした。
「貴方もこりませんね」
「それが今の私に出来る最善の事だから」
「……」
もと主も言っていた。今の私に出来る最善策だからと。なのにたどった末路は、とても無惨なもの。
「そう言って最善では、ないと思わないのですか??」
「もちろん思う。だからこそ、皆の力を借りてここに来たのだ。貴殿と話をしたく」
一は、驚いた。彼女が自ら考え、そして悩み来たと思ったからだ。
「……すべて一人でやる方と思ってましたが」
「そのような力私には、ない。増殖の件で更に思いしった」
正雪は、困った顔をし言う。
「だからこそら奢らず私は、皆の力を借りる。もちろん自分で出来ることは、するけれど」
「貴女は……」
思っていたよりも彼女は、神に近い。感覚的にそう感じていた。
「正雪は、少なくとも己の業、悪縁は、分かったものから認めて、変わっていっている。その時点であんたの元主とは、違うと思う。一さん」
骨喰からみてもそうなのだ。悔しいが、彼女は、違う。なにもなも自分の予想と。奢り、見下していたのは、自分の方だ。
「神の目に止まり、なおかつ手を差し伸べられる方は……やはり違うのだな……」
元主は、慢心していたのだろう。そして己の業と悪縁を認めなかった。
付喪神からすらば、何故助けてくれないと高位の神に言いたかった。しかし今なら分かる。
そもそも高位の神が、手を差し伸べるほどなら生きながらにして地獄には、いかないと。
「一殿??」
泣き出す一に正雪は、困った。おろとろし、とりあえず持っていた手ぬぐいをもち、彼のとなりにいくと頬を拭いた。
「失礼する」
骨喰は、困った顔をし、一は、呆れていた。
「親しくもない男には、手ぬぐいを渡すぐらいにしなさい」
「……すまない。つい」
この娘は、優しい。しかし純粋すぎる。これは、他の刀剣達が過保護になるのも分かる。
「……これは、これで……困った方ですね……」
「しかし一殿は、悪い刀ではないゆ……」
「私これでも下手人ですが」
「むっ!? しかし……しかしなのだが……」
「すべての者が親愛に親愛を返してくれるわけでは、ないのですが??」
「うむ……」
しかし本能的に一は、大丈夫だと正雪は、思ってしまったのだ。
「その……カステラを……」
正雪は、話を切り替えようとカステラを一の前に。
一は、じっとみると言う。
「いただきます。ですが私だけでは、食べきれませんから。残りは、何とかしてください」
骨喰と正雪は、顔を見合わすと微笑む。
「では、茶にしよう!!」
「それは、けっこうです」
「そうか……」
しょぼんと落ち込む正雪だが、骨喰は、カステラを取り分ける。
「一さん」
「ありがとう骨喰」
「では……」
「えぇ」
落ち込む正雪を骨喰は、連れ、庵を後にした。
残されたカステラをみながら、珍しく一が笑った。
「本当に困った代理だな」
しかし悪くは、ない。彼は、珍しくそう思えた。
正雪自身は、駄目だったと思うだろう。しかし間違いなく彼女は、一に少しだけ変化を与えることが出来た。
友美と粟田口以外には、あまり話そうとしない彼が話をし、なおかつ普段は、受け取らない贈り物を受け取ると言う選択肢をしたのだから。
骨喰に連れられ、正雪は、国広の執務室に来ていた。
「絶対に惨敗のようなきがする……」
長椅子に座り萎れる正雪に国広は、何時もの事と判断し、友美は、笑っていた。
「正雪そんなことは、ない」
「だが……」
「一が粟田口以外から贈り物を受け取るってだけでも凄いことなのよー」
友美は、カステラを食べながら言う。
「そうなのか……姫??」
「そう!! ねぇ!! 江雪!!」
「えぇ。私が何度か贈っても受け取りませんでしたから」
正雪が心配で様子を見に来た江雪もカステラを食べる。
国広は、何故何時もここは、こうなるのかと思いながら、書き物をしていた。
「そうなのか……」
正雪は、ふと国広が、目に入り、切り分けたカステラの乗った皿をもつと、国広の所へ。
「国広殿」
「ありがとう」
「休まなくていいのか??」
「あと少しだからやってしまう」
「分かった」
正雪は、茶をいれた湯呑みも机に置くと、席に戻った。
「江雪このカステラ美味しい!!」
「それは、よかった。日々の探求のかいがあります」
「早く来るといいね」
「姫……」
友美が何故そういうのか正雪以外の者達は、しっている。
江雪は、微笑むといった。
「えぇ。何時か。私もまだまだ時がありますから」
「やっぱり鍛刀やるべきかしら……」
「姫そうなると大変なことになるかと」
「江雪やっぱり??」
「えぇ。皆待っていますから」
江雪と友美の会話を聞きながら、ようやくなんの事なのか、正雪は、分かった。
「骨喰殿その……江雪殿にも兄弟が??」
「あぁ。小夜左文字と、宗三左文字だ。この組織には、来てないがな」
「もしやカステラを探求しているのは……兄弟のため??」
「かもしれない」
どうなのかは、江雪にしか分からない。まだ来ていない兄弟を待つのも辛いだろう。だが一度出会った者を亡くすのはもっと……
「……」
「正雪さんどうされましたか??」
「江雪殿なにも……そのもし……機会があれば御兄弟の事……を聞いても??」
「もちろんいいですよ」
友美は、江雪と正雪の会話を聞きながら、目を伏せる。しかしその瞳は、冷たい。
「……姫」
「分かってるわ」
分かっているしかし嫌いなものは、嫌いなのだ。
「姫??」
「ごめんなさい!! つい……」
力を込めすぎたのか、使っていた湯呑みが真っ二つに割れた。
友美は、唖然とし、骨喰は、呆れ、江雪と正雪は、アワアワとしていた。
「姫怪我を!!」
正雪が、顔を青ざめる。友美は、手元をみると血が。
「大丈夫よ」
指を動かすと怪我は、治った。
「ほらね!!」
自分には、人として自覚しろと言うが、友美は、自分に関しては、無頓着というか、人という自覚がない時がある。
正雪は、少し悲しい顔をした。
「姫……頼むから突然いなくならないで……」
友美は、驚いた顔をすると微笑む。
「いなくならないわ」
安心さすように友美は、いった。
「姫頼むからそれだけは、するな」
「そうだ姫」
「ですよ姫」
国広、骨喰、江雪にまで言われ、友美は、不服そうな顔に。
「皆して言わないで!! 分かってるわ!! もう!!」
それに消えることなんて出来ない。光の事、子供達の事様々な大切なことが今は、出来ているからだ。
「色々ぜんかがあるからだろ」
「国広……」
「ですね」
「あぁ」
「江雪!! ばみちゃんまで!!」
友美は、頬を膨らますと、三振は、笑った。
「ふふふ姫らしいな」
「正雪そこ笑わない!!」
「すまぬ……」
友美は、そういうと微笑む。
「まぁいいけど」
話しながら、友美は、感じていた。一の変化を。
「……彼もまた進み始めた」
今度は、正雪の話では盛り上がる骨喰と江雪。二振に誉められ、顔を真っ赤にしている正雪をみて、友美は、微笑むと、国広もわらっていた。
「国広よかったわね」
「あぁ」
本当によかった。友美と国広は、微笑みあうと、正雪達の会話を聞き、そして和やかな雰囲気のなか、目を細めるのであった。
足音が聞こえ、書庫の入り口をみると、正雪がいた。真剣な顔をし。
「正雪戻ってきたのか??」
「骨喰殿貴殿にお願いしたき、義がある」
「なんだ」
「これか、一殿に話をしに行く。話さなくていい。隣にいてくれぬか!!」
骨喰は、しばらくポカーンとするといった。
「え??」
「その……姫から一殿と対峙すり時は……粟田口と……行けばよいと助言をもらい……」
「で俺と??」
「そうだ。私は、粟田口の刀剣達と、あまり親しくない……骨喰殿とは、万屋に行ったりもしたことがあるので……その……」
「兄弟達の中では、話しやすいか」
「あぁ。薬研殿がいればその……」
「まぁ薬研の方が適任だろうな」
古株の五虎退は、屋敷におらず、一期も不在だ。
骨喰は、しかたがないかと一肌脱ぐ事にした。
「分かった」
「かたじけない!! その……」
「なんだ??」
「一殿が好まれる菓子とはあるだろうか……」
正雪は、茶菓子を用意し、話しに行こうとしているようだ。
骨喰は、しばらく考える。
「食べれればそれでいいという感じだな」
「む!?」
「一さんは、その日暮らしという感じだったからな。あるものは、なんでも食べている。一兄もどうすべきか何時も悩んでいる」
「……なるほど」
友美から聞く話しでも過酷な過去を持っていた一。計画のためすべてを削り、用意周到に支度をしていたのだろう。
「ふむ……なら南蛮の菓子でもいいだろうか……豊臣秀吉公が好んだものとか……」
「それもありかもな」
「骨喰殿は、豊臣にあったとか!! そのなにか……」
「……カステラや金平糖を秀吉は、好んでいたな」
「やはりか……」
「あぁ」
昔のことを思い出すのは、辛い。だが正雪にそれは、関係のないことだ。
骨喰は、必要な情報だけ与えるとあえて、彼女に顔を見せなかった。
「骨喰殿……」
「大切なのは、過去より今だ……」
「すまない。貴殿は、大阪の陣で焼けたのであったな……」
「気にするな。あんたには、関係のない話だ。それよりも今は、一さんの事だろ??」
長いときを生きてきたからこそ、辛いこともそして楽しいのとも自分より彼らは、経験してきた。
正雪は、頷くと。
「そうだな……ひとまずカステラを準備するか……といっても無いのだが……」
「万屋に行くか??」
「その時も惜しいといえる……」
さてどうしたものかと考えていると書庫に誰か入ってきた。
「話しは、聞きました。よろしければこちらを」
正雪は、顔を上げるとそこには、江雪が。
「江雪殿……」
「天照様から頂きましたが、私がいただくよりも一殿の為に使ってください」
テーブルに置かれたカステラの、箱をみて正雪は、驚く。
「そういうわけには、こちらは、貴殿の……」
「一殿の件に関しては、私も関係者です。彼が敵であり、そして保護され、あそこまで立ち直ったこと、その過程もすべてしっています。だからこそ、少し力を貸させてください正雪殿」
「江雪殿もその頃から居たのだな」
「えぇ。この組織では、古株になりますから」
正雪は、戸惑ったが力を借りることにした。
「ありがとう江雪殿。こちらのカステラ有り難く使わさせてもらおう」
「えぇ。彼は、失うこと、そして己が残ったことへの恐怖と後悔で日々苦しんでいる。少しは、はれるといいのですが……」
「……そうだな」
江雪は、では、といい去っていった。
「正雪」
「なんだ骨喰殿」
「あんたならもしかすると、少しは、一さんを変えられるかもしれない」
「というと……」
「姫が選んだからだ。ここの代理に」
友美ならば見越して選んでいるはずだ。
正雪は、頷く。
「だといいのだが……」
一が関わろうとすること事態が珍しい事だ。たぶん彼女の何が一を変えれる。そんな気が骨喰は、していた。
「一先ず一殿を捕獲する!!」
「正雪だんだん表現が姫に似てきたな」
「む!?」
「とりあえず見つければいいんだな」
「うむ……」
「この時間ならあまり皆がいかない庵にいるだろう」
骨喰は、立ち上がると、正雪もカステラを持ち立ち上がった。
「では、よろしくお願い申し上げる」
「あぁ」
さていよいよ一と話す。正雪は、覚悟を決め、書庫を出ると彼をさがし始めた。
爽やかな初夏の風がこの庵には、入ってくる。母屋から離れているのもあり、あまり刀剣達も近寄らない。ときより来るのは、粟田口の刀くらい。
一は、ただ静かに庭を眺めていると誰かきた。
「姫」
庵の入り口に立っていたのは、かつての敵であり今の主だ。
友美は、微笑むと、中には、入らずにいった。
「あと少ししたらここに来客が来ると思うわ」
一は、目を伏せる。
「私のような者に来客ですか……その方変わり者ですね……」
「なら私も変わり者ねー わざわざ貴方の所に来てるのだから」
「貴女が常識はずれなのは、今に始まった話では、ないでしょう。敵であった私を引き取るなんて普通では、出来かねますが??」
友美は、楽しげに笑うといった。
「確かに!!」
「しかし姫がわざわざいいに来るということは……あの代理ですか??」
「そうかもしれないわ」
あえて友美は、認めなかった。一は、大きなため息をつく。
「彼女と私は、正反対だと思いますが」
「案外そうでもないわよ。正雪は、己の信念の為ならば邪道な事も出来るもの……あくまでもあまり信念を曲げない程度だけど……」
黙る一に友美は、続けた。
「一もまた烈士たるものでしょう?? 彼女を助けるために……あんな大勝負までするんだから……」
「そのような綺麗なものでは、ありませんよ。私のは、えごと……罪滅ぼしです……助けをもとめていた主を助けられなかった……駄目な刀剣の……」
「私には、こうして話してくれるのにー他の子達にも話をしたら……」
「貴女だからこそです。姫」
「そう。一先ず私は、たまたま通りかかり、伝えただけだから」
「そういうことにしておきます」
友美が去ったのちしばらくして複数の足音が聞こえた。
一は、横目で庵の入り口を見ると、骨喰と正雪が。
「一殿少しよろしいか」
本当に諦めの悪い。一は、なにも言わなかったが、正雪は、ならと入ってきた。
一の前に骨喰と並び正雪は、腰を下ろした。
「貴方もこりませんね」
「それが今の私に出来る最善の事だから」
「……」
もと主も言っていた。今の私に出来る最善策だからと。なのにたどった末路は、とても無惨なもの。
「そう言って最善では、ないと思わないのですか??」
「もちろん思う。だからこそ、皆の力を借りてここに来たのだ。貴殿と話をしたく」
一は、驚いた。彼女が自ら考え、そして悩み来たと思ったからだ。
「……すべて一人でやる方と思ってましたが」
「そのような力私には、ない。増殖の件で更に思いしった」
正雪は、困った顔をし言う。
「だからこそら奢らず私は、皆の力を借りる。もちろん自分で出来ることは、するけれど」
「貴女は……」
思っていたよりも彼女は、神に近い。感覚的にそう感じていた。
「正雪は、少なくとも己の業、悪縁は、分かったものから認めて、変わっていっている。その時点であんたの元主とは、違うと思う。一さん」
骨喰からみてもそうなのだ。悔しいが、彼女は、違う。なにもなも自分の予想と。奢り、見下していたのは、自分の方だ。
「神の目に止まり、なおかつ手を差し伸べられる方は……やはり違うのだな……」
元主は、慢心していたのだろう。そして己の業と悪縁を認めなかった。
付喪神からすらば、何故助けてくれないと高位の神に言いたかった。しかし今なら分かる。
そもそも高位の神が、手を差し伸べるほどなら生きながらにして地獄には、いかないと。
「一殿??」
泣き出す一に正雪は、困った。おろとろし、とりあえず持っていた手ぬぐいをもち、彼のとなりにいくと頬を拭いた。
「失礼する」
骨喰は、困った顔をし、一は、呆れていた。
「親しくもない男には、手ぬぐいを渡すぐらいにしなさい」
「……すまない。つい」
この娘は、優しい。しかし純粋すぎる。これは、他の刀剣達が過保護になるのも分かる。
「……これは、これで……困った方ですね……」
「しかし一殿は、悪い刀ではないゆ……」
「私これでも下手人ですが」
「むっ!? しかし……しかしなのだが……」
「すべての者が親愛に親愛を返してくれるわけでは、ないのですが??」
「うむ……」
しかし本能的に一は、大丈夫だと正雪は、思ってしまったのだ。
「その……カステラを……」
正雪は、話を切り替えようとカステラを一の前に。
一は、じっとみると言う。
「いただきます。ですが私だけでは、食べきれませんから。残りは、何とかしてください」
骨喰と正雪は、顔を見合わすと微笑む。
「では、茶にしよう!!」
「それは、けっこうです」
「そうか……」
しょぼんと落ち込む正雪だが、骨喰は、カステラを取り分ける。
「一さん」
「ありがとう骨喰」
「では……」
「えぇ」
落ち込む正雪を骨喰は、連れ、庵を後にした。
残されたカステラをみながら、珍しく一が笑った。
「本当に困った代理だな」
しかし悪くは、ない。彼は、珍しくそう思えた。
正雪自身は、駄目だったと思うだろう。しかし間違いなく彼女は、一に少しだけ変化を与えることが出来た。
友美と粟田口以外には、あまり話そうとしない彼が話をし、なおかつ普段は、受け取らない贈り物を受け取ると言う選択肢をしたのだから。
骨喰に連れられ、正雪は、国広の執務室に来ていた。
「絶対に惨敗のようなきがする……」
長椅子に座り萎れる正雪に国広は、何時もの事と判断し、友美は、笑っていた。
「正雪そんなことは、ない」
「だが……」
「一が粟田口以外から贈り物を受け取るってだけでも凄いことなのよー」
友美は、カステラを食べながら言う。
「そうなのか……姫??」
「そう!! ねぇ!! 江雪!!」
「えぇ。私が何度か贈っても受け取りませんでしたから」
正雪が心配で様子を見に来た江雪もカステラを食べる。
国広は、何故何時もここは、こうなるのかと思いながら、書き物をしていた。
「そうなのか……」
正雪は、ふと国広が、目に入り、切り分けたカステラの乗った皿をもつと、国広の所へ。
「国広殿」
「ありがとう」
「休まなくていいのか??」
「あと少しだからやってしまう」
「分かった」
正雪は、茶をいれた湯呑みも机に置くと、席に戻った。
「江雪このカステラ美味しい!!」
「それは、よかった。日々の探求のかいがあります」
「早く来るといいね」
「姫……」
友美が何故そういうのか正雪以外の者達は、しっている。
江雪は、微笑むといった。
「えぇ。何時か。私もまだまだ時がありますから」
「やっぱり鍛刀やるべきかしら……」
「姫そうなると大変なことになるかと」
「江雪やっぱり??」
「えぇ。皆待っていますから」
江雪と友美の会話を聞きながら、ようやくなんの事なのか、正雪は、分かった。
「骨喰殿その……江雪殿にも兄弟が??」
「あぁ。小夜左文字と、宗三左文字だ。この組織には、来てないがな」
「もしやカステラを探求しているのは……兄弟のため??」
「かもしれない」
どうなのかは、江雪にしか分からない。まだ来ていない兄弟を待つのも辛いだろう。だが一度出会った者を亡くすのはもっと……
「……」
「正雪さんどうされましたか??」
「江雪殿なにも……そのもし……機会があれば御兄弟の事……を聞いても??」
「もちろんいいですよ」
友美は、江雪と正雪の会話を聞きながら、目を伏せる。しかしその瞳は、冷たい。
「……姫」
「分かってるわ」
分かっているしかし嫌いなものは、嫌いなのだ。
「姫??」
「ごめんなさい!! つい……」
力を込めすぎたのか、使っていた湯呑みが真っ二つに割れた。
友美は、唖然とし、骨喰は、呆れ、江雪と正雪は、アワアワとしていた。
「姫怪我を!!」
正雪が、顔を青ざめる。友美は、手元をみると血が。
「大丈夫よ」
指を動かすと怪我は、治った。
「ほらね!!」
自分には、人として自覚しろと言うが、友美は、自分に関しては、無頓着というか、人という自覚がない時がある。
正雪は、少し悲しい顔をした。
「姫……頼むから突然いなくならないで……」
友美は、驚いた顔をすると微笑む。
「いなくならないわ」
安心さすように友美は、いった。
「姫頼むからそれだけは、するな」
「そうだ姫」
「ですよ姫」
国広、骨喰、江雪にまで言われ、友美は、不服そうな顔に。
「皆して言わないで!! 分かってるわ!! もう!!」
それに消えることなんて出来ない。光の事、子供達の事様々な大切なことが今は、出来ているからだ。
「色々ぜんかがあるからだろ」
「国広……」
「ですね」
「あぁ」
「江雪!! ばみちゃんまで!!」
友美は、頬を膨らますと、三振は、笑った。
「ふふふ姫らしいな」
「正雪そこ笑わない!!」
「すまぬ……」
友美は、そういうと微笑む。
「まぁいいけど」
話しながら、友美は、感じていた。一の変化を。
「……彼もまた進み始めた」
今度は、正雪の話では盛り上がる骨喰と江雪。二振に誉められ、顔を真っ赤にしている正雪をみて、友美は、微笑むと、国広もわらっていた。
「国広よかったわね」
「あぁ」
本当によかった。友美と国広は、微笑みあうと、正雪達の会話を聞き、そして和やかな雰囲気のなか、目を細めるのであった。