日常編1

 ふと正雪は、思った。
「組織でもっと皆の手助けをするには……」
 これしかないと。思い立ったが吉日。正雪は、友美にある術を教えてもらった。
「正雪それ本当にやるの??」
 心配そうな友美に彼女は、いう。
「もちろん。さすれば皆にもっと貢献できるから」
「うーん私は、やめた方がいいと思うわよ??」
「しかし一度は、やってみないと」
「分かったわ……とりあえず……いざったときは、とめるからね??」
「あい分かった」
 友美がとめてくれるのなら安心だ。正雪は、早速翌日事を起こしてみた。

 朝今日も仕事がたまってると国広は、思いながら、執務室に来た。
 何時もなら無人の部屋にいたのは、正雪。早朝からいて驚いたが、彼女が居ることは、国広の日常になっていたので、とくに気にしなかった。
「国広殿おはようございます」
「おはよう正雪」
 さて席に着き、書類を持ったとき、国広は、目の前の光景を疑った。思わず目を擦るもとくに変化は、無い。
「国広殿??」
「正雪……」
「なんだろうか」
「なぜ、あんたが二人いるんだ」
 首をかしげる二人の正雪。国広は、近くにいた正雪をじっとみる。
「その……皆の力になりたいと……」
「まさか……五蘊盛苦·夢幻泡影を使ったのか!?」
 友美いわく使えないとの事だったが、万が一ということもある。
 国広は、恐る恐る聞くと正雪は、言った。
「そもそも……人の身であれは、無理だ」
「なら何故増えてるんだ」
「姫から増殖する術を学んだのだ」
「増殖!?」
「分身といっただろうか……その術を……さすれば、皆の手助けが出来るかと……」
 しかしこの術には、デメリットもある。国広は、友美な、そこは、説明してるだろうと
思った。
「正雪デメリットの事を聞いたか?? 姫から」
「むろん!! しかし……何事もせねば……身に付かぬ……」
 しかしそのデメリットは、間違いなく今も正雪を蝕んでいるはずだ。
 国広は、正雪が意志がつよく、悪い言い方をすれば頑固と知っている。ならここは、好きにやらせるのも得策だろう。
「そういえば姫が銀狐を連れていけと狐を……」 
 国広は、長椅子で寝ている狐を見て、驚く。
「まさかこいつが出てくるとは」
「その……こんのすけやまめのすけとは、違うのか?? 同じように見えるが……」
「姫と契約してる式だぞ。それに尻尾が二本だ。こんのすけよりも神格は、上だ」
「なるほど」
 呑気に寝ている銀狐をみたいても凄いとは、思えない。だが光がまさにこのような感じだったので見かけで判断しては、いけないことを正雪は、知っている。
「で正雪……何体に分裂した……」
 国広が、聞いた頃、台所では、光忠がアワアワしていた。
「正雪さん危ないよ!! いいから座ってて!!」
「おみおつけくらいなら……」
 そう言いつつ野菜が見事な残骸に。
「なぜ……」
「疲れてるのかもしれないね!! 一先ず座ってて!!」
「うむ……」
 確かに以前は、普通に包丁を使えていたが、なぜ今は、使えないのか。光忠は、不思議に思いながら、食事の用意を開始し、また別の場所では。
「うわぁー!!!!」
「和泉守殿!!」
 兼定が、何故か正雪に投げ飛ばされていた。
「剣術じゃなく体術って……」
「何故か剣が使えなく……」
 何故だろうか、正雪が困惑するなか、別の場所でも大変なことに。そしてそれらは、すべてすぐに国広のもとに連絡が。
「……正雪!! 何体に分裂したんだ!!」
 恐ろしい鬼の形相の国広に正雪は、ブルブル震えた。
「十体……」
 震える声でいうと、国広は、すぐに連絡をした。各所に。
「由井正雪を確保しろ!!」
 連絡を受けた刀剣達は、急いで見かけた正雪を捕まえ、国広の執務室に連れてきた。
「国広君これで全員かな??」
 ちょこんと正座させられた十人の正雪をみて、国広は、頷く。
「ありがとう光忠」
「しかし国広どうすんだこれ……」
「兼定それが問題だ」
 正雪達は、おろおろしているが、本当に大変なのは、ここからだ。
「姫様!! 集まりました!!」
 銀狐が突然そう言うと、友美が姿を見せた。
「やっぱり……」
「姫!!」
 主の登場に国広達は、驚くが、友美は、困った顔をしていた。
「一先ず正雪の起こした事件は、片付けてきたわ」 
「ありがとう姫」
「でも問題は、これからよね……」
 正雪達は、顔をうつむく。
「とりあえず国広と光忠、兼定は、朝御飯食べてきた、後は、私がやるから」
 三振は、頷くと、執務室を後にした。
 怒られる正雪達がそう思ったとき、友美は、優しい口調でいった。
「正雪ゆっくり……片付けをするように……」
 頷き、ゆっくりと糸を手繰り寄せるように戻していく、しばらくし、正雪達が消え、本体だけに。その、とたん身体にガツンと衝撃が。
 正雪は、あまりの痛さに、声をだすことが出来なかった。
「そのまま深呼吸……」
 優しく背中をさすられ、正雪は、ゆっくり深呼吸をすると少しだけ痛みがましになった。
「ゆっくり……形を整えて……」 
 言われたとおり己の中の形を整えると、しばらくして痛みが無くなった。
「姫……」
「本当に無茶をして」
 脂汗をかき、顔色の、悪い正雪を友美は、横抱きにし、長椅子に横に寝かせた。
「この術は、御霊分けと一緒とあれだけ言ったのに……」
「うむ……三体までならいけたのだ……もう少し多くてもいいかと……」
「だからって十体は、無茶よ!! まったく!!」
 友美は、呆れた顔をし、正雪は、苦笑いをしていた。
「普通の分身なら簡単に消えるから頑丈なのがいいと言ってくるから教えたけど……もう!!」
「うぬぬ……すまぬ……」
 主に始めに教えてもらった普通のにすればよかったと正雪は、この時後悔していた。
「どれも劣化してたし……」
「うむ……」
「もうお願いだからこんな無茶は、しないで」
 友美は、心配そうな顔をしいうと、正雪は、頷く。
「はい……」
「しばらく休んでてね」
 友美は、そういうと執務室を出ていった。また迷惑をかけてしまった。呆れられてないだろうか。  
 鉛のように重い身体に正雪は、苦笑いをすりると、そのまま目蓋を閉じた。しばらくして、誰かの声が聞こえ、目を開けると、国広と光忠が話をしていた。
「正雪さん起きたんだね」
「大丈夫か??」
 頷くと、正雪は、身体を起こした。
「国広殿、光忠殿すまない……」
「本当にこんな無茶は、やらないでね!!」
「まったくだ。あんたに何かある方が大変なんだ。何時ものようにしていてくれ」
「光忠殿……国広殿……」
 本当に優しい付喪神に正雪は、心が温かくなった。そしてすぐに兼定が入ってきた。
「まったくだ」
「兼定殿……今朝は、すまなかった……」
「本当だぜ。お詫びにこれから稽古に付き合ってもらおうか!!」
「えっ!?」
 さすがに無理と自分でも分かる。国広が本体に手を掛けたとき、兼定は、なんと背負い投げされていた。
「グハ!!」
「そんなに暴れたいなら私が付き合うわよ?? 兼定ー」
「姫……」
 笑っていたがその顔は、とても恐ろしかった。
「遠慮します」
「あら連れないわね」
 兼定は、急いで逃げていくと、友美は、つまらなさそうな顔に。
「姫」
「光忠ご飯美味しかったわ。ありがとう!!」
「それは、よかった」
 友美は、正雪の所へ来ると、彼女をじっと見た。
「安定してきたみたいね」
「姫その……」
「皆が正雪に会いたがってるから来ると思うけどいい??」
「それは……もちろん……」
「ならそう伝えとくわね」
 友美と光忠が部屋を出ていき、しばらくして、入れ替わり立ち替わりに刀剣達がやって来た。正雪は、皆に謝るが、皆が口を揃えて心配してくれていた。
「本当に無茶しないでよ!! 正雪ちゃん!!」
「あぁ次郎殿」
「では、行きますよ次郎」
「だね兄貴!!」
「では……」
 最後に太郎と次郎がやって来て、帰っていった。正雪は、身体を横にすると深呼吸する。やはり無理をしていたのか、重い。
 そんな彼女を見ていた国広は、立ち上がる。
「国広殿茶なら私が……」
「あんたは、寝てろ」
 国広は、何かを黙々と作ると正雪の前にだした。
「姫が飲んでおけと」
「姫が……」
 正雪は、身体を起こすと、湯呑みを持つが、ツンとした匂いに顔をしかめた。
 間違いなくこれは、薬湯だ。意を決し飲むと、正雪は、不味さに顔を歪めたが飲み干し、すぐに横になった。
「不味い……」
「しかし効き目は、抜群だぞ」
「なとなくそのような気もする……」
 しかし不味いものは、まずい。こちらに背を向け、団子になっている正雪。国広は、正雪の所までいくと、彼女の頭を撫でた。
「正雪頼むから無茶は、するな……あんたは、今のままでも十分……俺達の力になってる……」
 正雪は、目を伏せた。
「まことか??」
「あぁ」
「そうか……」
 優しく頭を撫でられていると心地よく眠くなる。国広の、前ならいいだろう。そのまま正雪は、寝てしまった。
 国広は、溜め息を着く。
「その警戒心の薄さ意外は、助かってるぞ」
 もう少し自覚して欲しいとのだ。色々と。国広は、そういうと席に着き、仕事を再開した。
 はやく彼女の体調が、戻ることを祈りながら。
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