日常編1

 縁側で書物を読んでいるととなりに誰か来た。正雪は、顔を上げると隣に居たのは、水色の袴と白銀の着物と、水色の羽織を着た光だった。
「光殿!?」
 驚く正雪に光は、苦笑いを浮かべていた。
「何故光殿が……」
「ちょっと呼ばれて……」
「呼ばれたとは、誰に……」
 正雪がそう言ったとき、目の前に誰か立った。
「俺だー!!!! 大包平だー!!!!」
 大声に正雪は、ビックリし、光は、立ち上がる。そして次の瞬間ゴツンと音が響いた。
「大包平五月蝿い!!!!」
 光の拳骨に大包平は、グハッといい、そのまま地面にのめり込む。
「まったく」
「主……手加減……してくれ……」 
「本当に大包平は、面白いな」
 何時のまにやら鶯丸が隣に。正雪は、ビックリしていると、光が隣に座った。
「まったく……」
「光殿……その……確認なのだが……鶯丸殿は、光殿の刀剣で間違いないか??」
 光は、頷く。
「そうだ」
 以前話したときにいってくれたが、聞き間違いでは、なかったようだ。
「主は、ひょんなことから俺を顕現させたんだ」
「ひょんなこと??」
「以前に穢れが溜まった本丸に関して調べていたんだ。その時に興味本意で鍛刀したら出てきたんだ。鶯丸が」
 まさかのまさかに正雪は、驚いた。光にもそんな一面があるのかと。
「大包平に関しては、主が政府主催の連帯戦に姫から刀剣を借り、自ら出陣し迎えたんだ。熱にうなされながらな」
「鶯丸余計なことを言うな!!」
 光は、突っ込むなか、正雪は、彼でもそんなことをするのかと。
 普段の光から想像するに、自ら出陣するなど想像もつかないからだ。
「因みに何故大包平殿を??」
「鶯丸がずっと大包平の話をしていたんだよ。だからようやく政府も顕現出来たと情報をえたとき、これは、手に入れないとと思って。ずっと待っていたから」
 刀剣を思っての行動に、正雪は、なんとなく光の事が少しだけ分かった。
 彼は、もしかすると大切な存在のためなら頑張れる人なのだろうと。
「光殿は、優しいな」
「だろ?? 正雪」
 鶯丸がそういうなか、大包平は、たんこぶを作り、なんとか起き上がる。
「だが手厳しいぞ……」
「そうなのか?? 大包平殿」
「俺は、毎回拳骨入れられてるからな」
「それは、大包平が頑固で口で言っても伝わらないからだ」
 鶯丸が笑いだすなか、その通りすぎて大包平は、言い返せなかった。
「光殿と鶯丸殿、大包平殿は、本当に仲がいい」
「それは、そうだろ!! この大包平の主だからな!!」
「どこからその自信が来るんだ大包平!!」
「五月蝿い!! 鶯丸!!」
 大包平が鶯丸に突っかかるなか、光は、溜め息をつくと、正雪の持つ本に目をやった。
「歴史の教科書??」
「あぁ。私は、江戸初期の頃ならともかくそれ以降の歴史は、まったく分からないゆえ……今学んでいるんだ」
「そういうことか」
 光は、微笑む。
「けっこう変わってるだろ??」
「とても。私が生きていた時よりも過去の歴史もはるかに色々なものが明かになり、読んでいて面白い」
 正雪の時代では、分からなかった歴史のなぞがひともとかれていたりするので、教科書を読んでいて楽しい。
「そうか」
「しかし……江戸幕府が二百六十年以上続いたのには、驚いた……私が生きていた時には、考えもしなかった。そんなに続くなど……」
「正雪が生きていた時は、平和とは、思わなかっただろうが、結果として江戸の世は、泰平の世ともいえたんだ。天草の乱から以降、幕末まであれ以上の乱は、あまり起こってないから。まぁ大塩平八郎こ乱などは、あったが、天草の乱に比べれば小さいかな……」
「やはりあの乱は、悲惨だったのだな」
 師が命をおとした島原天草一揆。あれは、本当に悲惨だった。
キリスト教そして藩への不満。様々な要因があり、幕府に反旗を翻す事になってしまった。その結果女子供関係ないし、幕府軍に皆殺され、墓などなく、遺体は、埋められた。
思い出すだけで心が苦しくなる。
「正雪大丈夫か??」
「すまない光殿……」
 しかし歴史を学ぶに連れ、その後の戦の事も正雪は、知った。戊辰戦争そして日清戦争や日露そして太平洋戦争。
 自分が死んでから世界を巻き込む戦が何度もあった。
 何故人は、戦をするのだろう。 
 歴史とは、面白いがその反面正雪は、問いたくなる。何故かと。
「光殿は、何故……人は、戦をすると思う??」
 光は、難しい質問にどう答えるか悩んだ。
「……大義のためともいえるかな」
「大義……」
「結局戦には、様々なことが暗躍する。国の利権だったり、信念だったり、経済を動かすためだったり……そして各々に大義があると言い張る。結局上からすれば民が死のうとその大義が一番になってくるからな」
「……そのような大義要らぬ」
「間違いない」
 光は、微笑むと次は、妖しげな笑みを浮かべ言った。
「神子とした言うのなら人が生まれ持った業と因縁によるもの……」
 光は、続けた。
「この世の法則は、因果応報。やって来たことが返ってくる。歴史とは、まさにそれを体現しているともいえる」
「因果応報……」
「そう」
 なら自分は、どうなるのだろう。正雪は、目を伏せ考えていると光がいった。
「畜生から人間に上がったかな」
「えっ??」
「ホムンクルスは、結局は、人にすきにされる立場ともいえる。なら畜生だろう」
「畜生となるの……仏教では、人の下になる……」
 仏教における、世界としては、仏、天、人、畜生、修羅、餓鬼、地獄となる。
 死して四十九日が過ぎると、その者が持つ因縁、業により次の行き先が決まる。
 正雪は、驚いた顔をした。
「私は……上がっていたのか……??」
「場合によっては、天かも。こうして神々といるから」 
 鶯丸と大包平をみて、彼女は、更に驚いていた。
「まさか……この創られた魂で……」
「ほら!! それ言わない!!」
「すまぬ……」
 光に怒られた。正雪は、少ししょぼんとすると、鶯丸が菓子を差し出してきた。
「かたじけない……」
「食べて元気だせ」
「うむ」
 正雪がおかきを食べるなか、光は、大包平に聞いた。
「で大包平どうしたんだ??」
「主少しばかり歴史の改変がありそうなんだ」
「歴史の改変か」
 何やら話し込んでいる光と大包平。正雪は、また本をよみ始めたときある単語が聞こえてきた。
「なら出陣するか」
「出陣!?」
 周りが、正雪の大声に驚くなか、彼女は、立ち上がり、光にせまる。
「連れていっては、くれぬか!?」
「えっ??」
「光殿!! お頼み申し上げる!!」
「えっ!!??」
 いやいやさすがに危ないだろうと光は、思うが、鶯丸は、呑気に笑い、大包平は、呆れていた。
「主国広が五月蝿いぞ……」
「見事にな」
「知ってる!! 国広が過保護なのも!!」 
 一先ず正雪から光は、距離をとる。
「無理だ」
「うむ……」
「怪我したら痛い思いをするのは、正雪だから!!」
「それならば平気だ!!」
「それ平気だ!! じゃないだろ……」
 大包平の突っ込みに正雪は、フリーズした。確かにと。
「主だがついてくると思うが??」
「だよな。鶯丸」
 たぶんついてくる気がする。身を隠してでも。
 光は、溜め息をこぼすといった。
「分かった。とりあえず鶯丸から離れない!!」
「かたじけない光殿!!」
「はぁ……鶯丸頼んだ」
「分かった主」
「主鶯丸に守りを任せていいのか??」
「大声で吠えまくる刀剣の横綱よりは、ましだ」 
 大包平は、固まった。主それ酷くないかと思いながら。
「とりあえず国広に言ってくるか……準備しだい玄関で落ち合おう。あと正雪は、隠しとくように」
 光は、そういうと去っていった。
「大包平殿……」
「主め……絶対にやっぱり大包平だと。言わせてやる!!!!!」
 思ったよりも元気だった。
「主は、日頃から大包平を褒めて伸ばしているからな。自己肯定感は、マシマシだ」
「ふむ……」
 刀剣男士との関わりかたとは、色々あるのだなと思いながら、正雪は、出陣の支度を始めた。

 したくをおえ、玄関で待っていると光がやって来た。
「主は国広には、なんと言ったんだ??」
「鶯丸と大包平をつれ、出るとだけな」
「それだけか。あんたなら全て話すと思ったが」
 大包平に光は、ニヤリと笑う。
「嘘は、ついてない。俺達は、確かに出る。ただ一人知らぬまに着いてきた……だろ??」
「なるほど」
「大包平余計なことは、言うなよ」
「分かっている鶯丸」
 なかなか迫力があり、正雪は、緊張していた。帰ってきたら国広に怒られないかと。
 因みに国広は、すでに光から聞いており、旦那なら大丈夫だろうと許可したことを光以外の皆は、しらない。
「主国広から許可は、おりてるのでは、ないか??」
 鶯丸をのぞいては。
「まぁな。でも言わない方が緊張感出るだろ??」
「なるほど」
 鶯丸は、楽しげに正雪と大包平をみる。
「では、いくか」
「だな」
 玄関をで、鳥居を潜り、やって来たのは、幕末の函館だった。
「ここは……」
 始めてみる景色に正雪は、心を踊らせたが、微かにする火薬の香りにすぐにここが戦場だと分かった。
「大包平偵察を。鶯丸は、待機だ」
「わかった」
 大包平は、すぐに偵察に、そして光も何処かに行ってしまった。
 残された鶯丸と正雪は、その場に待機と言うことだったが、それでは、いけないのではと正雪は、思った。
「私も偵察を……」
「正雪動かない方がいい」
「え??」
 鶯丸は、辺りを見渡し言う。
「主が動くなと言ったと云うことは、何かある。あの人は、いい目を持っているからな」
「視力がいいのか??」
「術者としての目だ。姫ほどでは、ないが、色々な物を見ているからな」
「術者としての目……」
 皆が口を揃えて、光は、強いというが、正雪は、まだ信じられていなかった。
 鶯丸とその場に待機することに正雪は、したが、鶯丸は、飲んでいた。のんびりと茶を。
「鶯丸殿……ここは……戦場では……??」
「まぁそうだな。新撰組副長土方歳三がこの五稜郭の戦いで命を落とすからな」
「なのに……なぜ茶を??」
「戦場だからと飲んでは、いけないわけでは、ないからな」
 だからといって呑気に飲んでいるのもどうかと思う。
 のんびりとする鶯丸に困惑していたとき、正雪は、気づいた真後ろに敵がいると。
「鶯丸殿!!」 
 のんびりと茶を飲んでる鶯丸に敵が切り着けようとしたとき、かきんと音が。
「鶯丸のんびり茶を飲んでる場合かー!!!!!」
 大包平が遡行軍を倒したのた、突っ込みをいれていた。
「大包平の見せ場を作ったまでだ俺は」
「そうか!!」
「絶対にサボる口実では……」
 さすがの正雪でもわかる。これは、サボるための口実だと。
 何より鶯丸は、確実に楽しんだいる大包平こ一喜一憂を。
 そう考えていたとき、正雪の背後に敵が、刀を抜き、なんとか受け止めた。
「どりゃ!!!」
 敵を切り、黒い塵が。正雪は、魔術を使い大包平をサポートし、襲ってくる敵に斬り倒した。
「もうそろそろか……」
 鶯丸は、立ち上がる。
「大包平!!」
「分かった!!」 
 大包平は、正雪をなんと担ぐ。
「大包平殿!?」
「少し下がるぞ!!!!」
「私は、荷では、ないのだがー!!??」
 正雪は、抗議したが、おかまいなしに、大包平が鶯丸の所へはしり、そして次の瞬間襲ってきた敵襲がすべて動きが止まった。 
 時が止まったのかと思ったが、よくみると遡行軍の身体には、細い鋼の糸が。
「鶯丸もう少し下がった方がいいだろ」
「確かにとびそうだな」
 鶯丸と大包平は、更に距離をとる。大包平の肩から正雪は、あの糸は、なにかと考えていた。 
 微かかに感じる力の気配。これはと思ったとき、目の前で飛び散った敵の肉片が。
「えっ……」
 何が起こったのか、鶯丸達がみている方向をみると、上空に光がいた。
「光殿??」
「鶯丸土方歳三のところにまだいる!! 俺さ、そちらへ行く!! あとは、頼んだ!!」
「了解した」
 光は、そういい、更なる戦場の方へと飛んでいった。
「追わなくていいのか!?」
「追えば俺達も肉片になるぞ正雪」
 大包平は、冷静に言う。
「まさか……先程のは、光殿が??」
「あぁ。主は、隠密と暗殺術が得意だ。剣術も力量としては、同じくらいあるが、集団戦では、あのように鋼鉄の糸を使い敵を切り刻む」
 光が強いと皆がいう理由は、彼の戦術の高さもあるからだろう。
「で俺達は、時間稼ぎというわけだ」
「鶯丸殿……」
「気にくわんが。主のやり方には、間違いなく理もある。今回は、この方がよかったしな」
 ある程度走ると、大包平と鶯丸は、止まった。函館が一望できる高台。だがそこからは、悲惨な函館戦争の光景が見えた。
「……何故このように」
「俺には、分からんが、主いわく大義の為だそうだ」 
 大包平がそういったのち鶯丸が続けた。
「最後まで幕府のために戦った土方歳三という男たちの大義そして薩摩や長州が作った新政府の大義。この戦は、その大義と大義の最後のぶつかり合いだ」
 正雪は、呟く。
「そしてそれがすべて……因果応報……縁となり……この後の戦争を招く……」
 やはりまだ分からない。戦などしてもなもない民草が苦しめられるだけなのにと。
「俺達もにたようなものだを歴史を守るという大義の為に戦っているが遡行軍もまた、大義がある」
「大包平殿……」
「まぁ俺達の場合は、あっちが違ってるといいきれるがな!!」
「そうか」
 正雪には、分からないが今は、そうしておこう。そしてしばらく高台で待っていると光が戻ってきた。
「主終わったのか??」
「あぁ」  
 鶯丸に光は、短く答えると、今度は、大包平のところへ。そしてゴツン!!と大包平に拳骨を落とした。
「いったー!!!!!!」
「レディーを荷物みたく運ぶな!!!!!」
 見ていたことに驚きだ。鶯丸は、笑いだし、大包平は、不服そうな顔に。
「こいつ男だろ!?」
 光は、真顔になる。
「まさか……気づかなかったのか??」
「何が」
 光は、正雪を見ていう。
「れっきとした女の子だぞ」
 大包平は、みるみるうちに顔が青くなった。
「お前も言え!!!!」
「といわれても……知っていると思ったのだが……」
「しるわけないだろ!? そりゃ男にしては、声が高いと思ったが、そういうもんだと!!」
「まぁ乱藤四郎がいるから……分からなくもないが……国広が五月蝿かっただろ」
「あいつに目をつけられるほど俺は、正雪と関わってない!!!!」
 光は、溜め息をつき、鶯丸は、とうとうはらを抱え笑いだした。
「あはは!! さすが大包平だ!!」
「笑うな!! 鶯丸!!」
 鶯丸に突っかかる大包平。光は、呆れた顔をすると言った。
「ごめん正雪」 
「貴殿が謝ることでは」
「だが俺は、あの困った古備前コンビの主だから」
 光は、そういうと続けた。
「困ったやつらだが優しいからこれからも頼む」
「あぁ」
 本当に困ったコンビであることは、間違いない。その後無事に帰還し、国広に報告をすると、大包平と鶯丸は、何処かに消えてしまった。
「国広殿あの二振は……」
「風呂だろうな。何時も出陣のあとは、手入れした後、風呂にはいるのがあの二振の習慣だ」
「なるほど。では、光殿は……」
「旦那なら書庫だ。たぶん骨喰と新しく入れる本について話してる」
「ありがとう」
 国広は、目を細めると執務室を出ていった正雪を見送った。 
 執務室をで、書庫に行くと、光がいた。
「光殿!!」
「正雪どうした??」
「今日は、ありがとう……その礼を伝えたく……」
「こちらこそ、ありがとう。あの二振のお守りをしてくれて」
「私が……??」
「そうだ」
 光は、微笑むと誰か書庫にはいってきた。
「正雪ここにいたのか」
「鶯丸殿」
「共に茶は、どうだ??」
 正雪は、光の方をみる。
「旦那誘われてるぞ」
 骨喰は、光に言うと、彼は、驚く。 
「何で俺まで!?」
「それは……」
 この言いにくそうな顔は、なんだろうか。光は、なにかを察すると言った。
「骨喰行ってこい!!」
「俺は、姫の刀剣で旦那の刀剣じゃない」
「逃げるな!!」
「それは、旦那だろ」
「ならここで茶にしよう」
 一同がポカーンとするなか、鶯丸は、茶をいれ始めた。
「骨喰書物が濡れないようにだけ」
「分かった」
 とりあえず濡れそうな書物は、避難させた。
「主」
 そして今度は、大包平が入ってきた。
「なんだ」
「正雪の事だが本当に女なのか?? どうにかして確認を……」
 光と骨喰は、呆れた顔をし、大包平は、気づく。本人が目の前にいたことを。
「正雪……」
「なら私が脱げばいいのか??」
 正雪の言葉に光と骨喰は、真顔になる。
「旦那大包平をしめていいか??」
「好きにしろ。折らなければな」
「分かった」
「何でそうなるんだー!!!! あと骨喰過保護すぎるだろ!!!」
「国広よりは、ましだと思うが??」
 骨喰が本体を持ち、大包平を追いかけ、大包平は、逃げた。
「正雪も脱ぐとか言わないで」
「しかし……分かりやすさといえばその方がはやいかと……」
「はやくてもだ」
 光は、困った顔をする。
「大包平は、真面目すぎるんだ。たぶん真意を再確認したかったんだろう……タイミング最悪だったが……」
 確かに振り返ってみると大包平は、何時も真面目だった。げんに友美がドラゴンを倒したという話も事実だった。そして今日の事もも。
「私を守ろうとしてくれていた……」
「仲間が傷つくのを大包平は、よしとしないからな」
 鶯丸は、茶をのみ言う。
「正雪を女と知っていたらもう少しましに担いでいただろうが」
「鶯丸あまり言わない。大包平たぶん気にしてるから」
 骨喰の襲撃を逃れ、大包平が書庫に戻ってきた。
「お疲れ大包平」
「鶯丸……」
 本当に呑気なやつだと大包平は、思いながら、息を整えると、正雪のところへ。
「すまなかった。出陣の時といい、今といい」
 頭を下げられ正雪は、戸惑う。
「戦場の事も今の事も私は、気にしてない……それに貴殿は、私を守ろうとしてくれた……お礼をいう義理は、あっても、頭を下げられる義理は、ない……」
「正雪……」
「ありがとう大包平殿」
 本当に真面目な大包平に正雪は、少しだけ親近感がわいた。
「やはり脱いで確認するか??」 
 なので少しだけからかってみた。大包平は、顔を真っ赤にするという。
「やめろ!! それだけは!!」
「冗談だ」
「冗談に聞こえない冗談をいうな!!」
 鶯丸がまた、笑いだし、光は、苦笑い。
「旦那」
「骨喰おかえり」
 骨喰は、何もなかったかのようにまた書庫の整理を始めた。
「大包平殿は、もしや光殿に似ているかもしれない」
「正雪否定は、しないけど、あそこまで真面目じゃないよ俺は」
 鶯丸と茶をのみだした大包平をみながら、光は、微笑む。その笑みは、とても優しいものだった。
「正雪は、飲んでこないのか??」
「遠慮しとく」
「そうか」
 光と正雪は、微笑みあうと彼女もまた書庫の整理を手伝い始めたのであった。
 鶯丸と大包平の楽しげな会話を聞きながら。
  
 
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