日常編1

 ふと見たもの。それは、不思議でいて何処か悲しい光景だった。
 目を覚ますと、涙が流れている。正雪は、部屋にあるティッシュで涙を拭く。
 時刻は、今午前五時。まだ起きるには、少し早い。しかしこのまま寝れる気もしないのど起きることにした。
 部屋をでると書庫から明かりが。この時間に誰だろうと部屋を覗くと、友美と正宗が何かをしていた。
「これだよ!! 姫!!」
「良かったわね梅干しの作り方の本見つかって!!」
「これで改良できる!! ありがとう!!」
 どうやら梅干し作りの本を探していたらしい。
 ガタッとドアが音を立て、友美は、顔を上げると、正雪に気づいた。
「おはようー」
「おはようございます……」
 薄暗く分かりにくいが正雪の目には、涙が。友美は、慌てて彼女の所に。
「どうしたの!?」
「……夢を見たようで……で涙が」
「夢」
 友美は、腕を組むと、考える。
「正雪さんよかったら」
「ありがとう日向殿」
 椅子を引いてくれた正宗に礼を言うと書庫にはいり、椅子に座った。
「怖い夢でも見たのかい??」
「怖いというか……苦しく……悲しいと……いくべきか」
 友美は、紅茶をいれると、正雪にだした。
「ダージリンだから落ち着く香りだと思うわ」
「かたじけない姫」
「姫ありがとう」
「いいわよ正宗」
 正宗にも紅茶をいれると、だし、友美も座る。
「うまい……」
「落ち着いた??」
「少しは……」
「ならよかったわ」
 友美は、微笑むとまた考え出した。
「姫分かるかい??」
「正宗今検索してる……あーこれか……」
 友美は、机を指で叩くと、正雪と正宗の前に映像が。
「姫これは……」
「ちょっとした灯影ー」
「本当に姫には、まだまだ驚かされる……」 
 本当に目の前の女性は、不思議だなと正雪は、思いながら、映像に目をやった。
「正雪これであってる??」
「あぁ……」
「見事に盗賊を皆殺しか……僕なら動きをとめるくらいでとどめとくかな……」
「私もよ。まぁ足の骨は折るけど」
 あくまでも動きをとめることに友美もそして正宗も注視するようだ。
 正雪は、目を伏せる。友美は、そんな彼女をみて話すか悩んだ。自分もこの男と同類だと。
 溜め息を友美は、着くと、口を開けた。
「正雪」
「なんだろうか」
「私も宮本伊織とは、同類よ」
「え??」
「優しくみえても殺すことは、厭わない。なにより戦いを求める獣がなかにいる。命のやり取りでした味わえない快楽と高揚感。私は、それを本能的に求めてるから」
 友美は、あえて言った。彼女がこの事を嫌っていると分かっていながら。
 友美の話を聞き、正雪は、言った。強い言葉で。
「姫は、そんなことない!!」
「えっ……??」
 サーヴァントとマスターが互いの記憶を夢見る事があるように、式神というのも同じことがあると正雪は、知った。
 そのうえで一人で生きていける自由をくれようとしてくた主の側に今は、いることを決めた。全てを知ったうえで。
「なら何故あのような悲しい顔を……何度もしてきたのだ……」
「正雪……」
「そうだよ姫!! 戦闘が好きだとしても本当の獣は、殺すことを楽しむ。姫は、そこは、楽しまないどころか避けている。だからこそ、圧倒する力で怯ませるか、戦意喪失を狙う。だよね!!」
「正宗……」
 少しは、変われたようで安心した。友美は、微笑む。
「ありがとう」
 友美は、なにを話そうとしていたのか忘れてしまった。いけない。論点がずれる。
「もしかするのカヤという妹を自ら殺せば彼も変わるのかしら……」
 いや分からない。楔がなくなり、野獣が自由になるだけだろう。
「姫??」
「なにもないわ」
 友美は、誤魔化すように笑った。
「で正雪は、このボケナスの盗賊皆殺しでショックを??」
「それもあるが、私も縛られるのかと……」
 友美は、続きを確認し、かれかと納得した。
 たぶん彼が鬼だと正雪は、すでに知っている。それでも自分の恋心は、大切にしたいと今も大切にしている。
 となると残るところは、一つ。やはり魔術師は、嫌いだ。見ていると吐き気がする。
「縛るくらいなら創らなければいいのに……」
「姫??」
「正雪ごめんなさい」
 いけない今は、冷静に。
「私は……そもそも縛れないもの」
「それは、どういう……」
「私の式神契約は、気が向いたら力を貸してね!! って感じのものなの」
 正雪は、正宗を見ると、彼も頷いていた。
「僕達刀剣男士もそうさ!!」
「なんと……」
「だから命令を聞けとか縛ることは、出来ないわ。厳密には、出来るけどしないから」
 あくまでも彼等が自由に楽しく生きれるための保険。それが友美の式神契約にたいするモットーだ。
「やはり……皆姫のあり方や人柄に惹かれ……手を貸しているのだな……」
「そうなのかしら……」
「そうだよ姫」
 正宗が言うのならそうなのだろう。
「ならよかったわ」
「少し話をして楽になった……」
「それは、よかったわ」
 友美は、立ち上がる。
「じゃ私執務あるから」
「わかったよ姫!!」
「了解した」
 友美は、微笑むと書庫を出ていった。
「正雪さんも一回寝る??」
「もう目が覚めてしまったゆえ……着替えて……朝の仕度をするかな……」
「そっか!! 僕は、蛍を起こして梅干しの試食をしてもらおうかな!!」
「試食……」
 蛍いわく酸っぱすぎて食べなくないと言っていた正宗の梅干し。これは、朝から蛍が吠えそうだ。
 正雪は、使ったコップをもち、書庫をでるとキッチンに。
 コップを洗いそして食洗機にいれようとしたとき、和室から光が出てきた。
「正雪!?」
「おはようございます」
「おはよう……」
 光は、キッチンに来ると彼女の手を見る。 
「光殿??」
「ハンドクリーム塗った??」
「うむ??」
「塗ってないな??」
「あぁ……」
「なら塗っといて!! 荒れちゃうから!!」
「光殿ハンドクリームとは……??」
 光は、寝起きの頭で考えた後、言った。
「馬油だ」
「馬油か」
「そう」
 とりあえずキッチンに置いてある馬油の瓶を棚から取り出すと、光は、黙々と正雪の手に塗りだした。
「光セクハラ」
 困惑している正雪を見かねて、水郷は、出てくると光にいう。
「なぜセクハラなんだ水郷!!」
「前みて!!」
 ほほを赤く染め目を伏せている正雪。光は、しばらくとまったのち言った。
「ごめん」
「その……気にしないで……」
「……とりあえず塗っておいたからあとは、刷り込んでおいてくれ。正雪の手は、綺麗だから荒れるとたいへんだしな」
 光は、微笑むとキッチンを出た言った。
「……光殿も……フラグとやらを立てるのが上手いような……」
 しかし友美いわく天真爛漫な光なので思ったことを素直に言っただけかもしれない。なんなら彼は、既婚者だ。
 手を擦り、馬油を刷り込むと、正雪は、部屋に戻った。
「む??」
「正宗!! 起こさないで~!!!! 俺遅くまで仕事を!!!」
「蛍起きないと生活リズム崩れるよ!!! だから起きてー!!!!」
「朝からむさ苦しい!!」
 隣から蛍の雄叫びが聞こえ、正雪は、笑った。
「今日も平和な日になりそうだ」
 さて本日は、どんな楽しい日になるのか。正雪は、その事に心を弾ませ、そして部屋に戻ったのであった。



 
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