日常編1

 はりつめた空気が和室に流れ、静寂が支配していた。
 正雪の前には、こんのすけが。こんのすけは、真剣な顔をし告げる。
「代理様」
 皆には、恩がある。常々にその恩を返したいと思っていた。今これが出来るのは、自分だけ。
 正雪は、目を伏せるという。
「皆の霊力枯渇が……この……身で解決でき役立つなら……や……」
 こんのすけがこれでいいと思ったとき、和室の障子が飛んだ。
 正雪は、驚き、こんのすけは、体を震わせる。
 障子が壁にたたきつけられドンと音がし、畳に落ちるとゴゴゴという効果音と共に、国広が凄い殺気と共に、表れた。
「山姥切国広……」
 国広は、こんのすけを捕まえると言う。殺気を秘めた瞳で。
「おい。こいつになにをさせようとしている」
「それは……」
「国広殿!! その私は……」
 正雪がなにか言おうとした時、友美も姿をみせ、正雪を守るように彼女の所へ行き、肩を引き寄せた。
「姫……」
「国広殺りなさい」
「姫!?」
「あぁ」
 国広が、本体を抜き、こんのすけは、その隙に逃げようとしたが、そのこんのすけに向かって剣を振り上げ下ろした。 
「国広殿!! やめるんだ!!」
 正雪の声が響くなか、ことっと落ちた。こんのすけの首が。
「えっ……」
「国広よくやったわ」
「姫こいつはどうする」
「送りつけてやりなさい」
「分かった」
 神とは、時に冷酷非常だ。それは、人よりも。
 何故このようなことが起こってしまったのか。
 正雪が、衝撃から身動きがとれないなか、国広は、慣れた手付きで、こんのすけの体と首を桶にいれ、部屋を出ていった。
 残された深紅の水溜まりは、畳にしみる。  
 正雪は、呟く。冷たい声で。
「姫……これは、どういうことだ……」
 友美は、冷たい眼差しで見られてもなにも言わなかった。
「姫!! 由を言わぬか!!」
 ここまで冷たい正雪を見たことがない。たぶん彼女は、盈月において源頼光に向けた眼差しは、こうであったのだろう。
 友美は、ただ、彼女を抱き締めることしか今は、しなかった。
 何故主は、こんのすけを殺したのか。それなのに、何故こうして自分を抱き締めているのか正雪には、理解できなかった。したくなかった。
 優しい主の中にある伊織と同じものを見た気がしたからだ。
「まめ??」
 たまたま部屋にはいってきたまめのすけは、悲惨な光景に首をかしげる。
「こんのすけ先輩は??」
「私ならここにいますよ??」
 そして和室にはいってきたこんのすけに正雪は、ほっとしてしまった。
「こんのすけ……よかった……」
 しかしそうなるとあのこんのすけはという,なぞが。
「こんのすけこの事を刀剣たちに伝えなさい」
「姫様これは……」
「侵入者よ。狙いは、代理」
 こんのすけは、青を青ざめると頷き凄い勢いで和室を飛び出した。
「姫それは……」
「あとで理由は、話すわ。その前にここを片付けないと」
 友美は、正雪から離れるとまめのすけを抱き上げ、指を動かす。すると畳は、綺麗なり、障子ももとに戻った。
「全刀剣につぐ。今すぐに高御座に集まりなさい」
 友美は、正雪が始めてみるほどに冷たい瞳をしていた。
「うちの可愛い子にてを出すなんて覚悟しときなさい……」
 友美は、まめのすけを正雪に渡すと、部屋を出ていった。
「いったい何が……」
 相手の狙いが自分ということ、そしてこの高天ヶ原に侵入してきたということだけわかる。
 正雪は、まめのすけを抱き締めた。
「代理さま??」
「まめのすけ……私は……」
 これからどうするべきなのか。正雪がそう悩むなか、高御座のある部屋には、刀剣たちが集まっていた。
「姫こんのすけから聞きましたが……」
「太郎たぶん相手は、知ってるんだと思うわ。正雪の事を……」
 どうやって知り得たか分からない。だが相手の狙いは、たぶん彼女の力だろう。
 友美は、この経緯を全て話した。
「それって正雪さんのホムンクルスとしての力だよね姫」
「えぇ藤四郎。でも使い方次第では、無限に霊力をもつ……というか……私の力の断片を使える……人形が量産できる……」
 しかしそれは、英霊由井正雪の話だ。友美がどう話すべきかと悩んでいると国広が入ってきた。
「姫相手方に送りつけぞ」
「ありがとう。こちらの居場所は、分からないようにした??」
「あぁ」
 刀剣たちは、友美が指示したことが容易に想像でき身震いした。
「姫よ送ったのか??」
「宗近もちろん。私に喧嘩を売ったんだなら。さて相手にどう苦しんでもらおうかしら」
 これは、そうとう友美は、ご立腹だ。宗近、髭切は、笑っていたが、他の者たちは、身震いしている。
「それは、さておき、結界に異常は??」
「無かったよ姫ちゃん!!」
「ありがとう次郎ちゃん」
 なら相手は、どのように侵入したのだろうか。
「まさか……こんのすけだから、出来た……」
 この屋敷には、強い結界がはられている。普通は、侵入することは、不可能に近いがこんのすけは、違う。
 天照が外に出れるようにとこんのすけの出入りを自由にしていた。そしてこんのすけに、友美は、渡してなかった。紋章を。
「盲点だったわ……」
「姫まさか印をこんのすけに渡してなかったのか!?」
「国永まさにそれ。で天照が結界をいじったのがまさかの事を招くなんて……」
 こりゃこんのすけにも渡さなければ。友美は、部屋の隅にいるこんのすけに手招きした。
「姫様??」
「とりあえずこれ渡しとくわ。ごめんなさい……ついつい政府の犬と思ってたから」
 こんのすけは、渡された印に驚いた。
「姫様……」
「もう貴方もこの組織の仲間だものね」
 友美は、優しく頭を撫でるこんのすけの。
 そして手を動かし、結界を書き換えた。
「まめのすけには、もう渡してあるし……これで侵入は、出来ないわね」
 だからといって安心では、ない。
 友美は、微笑む。恐ろしく冷たい笑みで。
「ここからは、貴方たちに任せるわ」
 友美は、続けていう。
「生かして捕えなさい。そして苦しめ、すべての証拠を持ってきなさい。これは、主命よ」
 こうなった友美は、誰にもとめられない。また、本人が動かないだけましだ。
 刀剣たちは、頭を下げるといった。
「御意」
 彼らもまた怒っていた。仲間に手を出され。
「姫瀕死でも生きてればいによね??」
「藤四郎……少しは、手加減してね?? 政府につき出さないとダメ出し」
「分かってるよ!!」
 友美は、これは、自分が考えている以上に彼らは、怒っているようだ。
 刀剣達が部屋から出ていき、友美は、苦笑いをしていた。
「国広は、行かないの??」
「あいつをとめれるのは、俺だけだろ」
「そうね……」
 あの子は、正々堂々を好む。たぶん自分が狙われたと分かれば相手だかに自ら乗り込むだろう。正面から。
「烈士ねぇ……」
 志を貫くもの。またを頑固という。友美は、困ったように笑う。
「来たみたいよ」
 高御座の部屋に正雪が入ってきた。日本刀を携えて。
「姫私にも出陣の許可を」
「それは、駄目」
 友美は、冷たくいう。
「相手の狙いは、私なのだろ?? なら……」
「だからよ。それにたぶん行ったら貴方が傷つく」
 友美は、国広に視線を向けると、国広は、話し出した。
「相手の狙いは、あんたの宝具だ」
「私の……宝具……??」
 正雪は、自分がどのような宝具を英霊としてたら持っているか知っているが、彼女自身は、使えない。
「たぶんこんのすけの言っていたことは、事実よ。相手は、霊力が枯渇し、政府に露見しないために霊力の高く、純粋な審神者達をさらい使い潰してきた」
「姫それは……」
「これを見て」
 正雪は、手渡されたタブレットをみた。そこには、不審な遺体が発見されたという記事が。
「何体も……そして一定期間に……」
「姫と俺は、数ヵ月前から調べていたんだ」
「変異の骨喰と鯰尾政府に引き渡したのもそれが理由のひとつなの。彼女達は、霊力が高い。だから万が一を考えてね。それに相手がここを調べていたのも気になったから」
 そして狙った獲物は、政府に引き渡された。そして都合よく表れた代理。その代理は、また霊力も高く変な存在だ。
 調べあげ利用するのは、想像出来ることだ。
「相手は、私を調べあげ……そしてサーヴァントを知った……」
 もしかするのあの神域でサーヴァントとである由井正雪が捕まり、宮本伊織が負傷したのもこの件が絡んでいるのだろうか。
 正雪はタブレットを友美に渡すと日本刀に手をかけた。
「このような非道な行い……許せぬ……」
「とりあえず正雪は、ここにいなさい。私も今回ばかりは、ここにいるから」
「だが……」
「刀剣達が怒り沸点越えちゃってて……正雪がいったら……それこそ……相手死ぬわ……それに証拠が消えたら……政府に裁いてもらえないし……」
 あくまでもここで自分達がとどめをさせば相手と同じことになる。
 友美は、そのように考えていた。それにたぶん他のまだ死んでいないが、既に人では、ない者達を正雪には、みせたくない。
「姫……」
「姫ついたみたいだぞ」
 友美は、この時恐ろしいほど美しい笑みを浮かべる。
「さて地獄を見てもらいましょう」
 友美がそう告げたころ、ある本丸では、男が逃げていた。
「俺を守れ!!」 
 霊力が枯渇し、動けぬ刀剣をゆっくり迫る宗近に向け、差し向けるが、宗近は、軽くよる。
「よくもまぁ彼女に目を付けたよねー」
 男の首筋に刃が。
 髭切は、微笑む。
「鬼を切れって事かな」
「であろうな」
 宗近も刃を首筋に当てるという。
「ひぃ!!」
「さて全て話してもらおうか」
 男は、諦め話し出した。
 その内容を宗近を通し友美は、聞いたが胸くそ悪い物だった。
「国広正雪をこの場から話して」
「分かった」
「姫何故……私も聞いた方が……」
「……国広」
 国広は、正雪の手を掴むと、連れ出す。時より正雪が抵抗したが、それも無視して。
 部屋に友美だけになる。友美は、声を出した。
「そんなに欲しかったの?? 審神者の……地位が」
 万年人手不足の審神者は、霊力さえあればでき、その地位は、高いともいえる。
 突如として廊下に響く音なの声に男は、身震いした。
「ありゃー姫出てきちゃった」
「これは、俺たちよりキツいぞ??」
 不気味に笑う宗近と髭切に男は、恐怖から動けなくなった。
「だからって一人のホムンクルスに目を付けるなんて……なおかつ同じ名の人も……」
「ホムンクルスなどしょせんは、目的のために作られた人形だろうが!! 何が悪い!!」
 宗近があえて、男の首筋に刃をつけ、赤い雫が流れる。
「あの娘は、違うのにな??」
「結局容姿で選んでるよねー」
 他の刀剣達からの連絡も来ている。やはりおとこなら刀剣の餌に。女なら強姦してから餌にされていたようだ。
 友美は、告げた。
「宗近お願い」
 命令と共に、恐ろしいほど強い闇の気配がする。男は、この時見た。月夜に浮かぶ月を。しかし冷たく恐ろしい月を。
「うわぁー!!!!」
 男の声と共に、何が男を飲み込みそして男は、廃人に。
「何度見ても怖いねぇー宗近のそれ」
「俺もそう思う」
 笑う宗近だが髭切からすれば、本当に底知れぬ男だと呆れた。
 全ての調査を終え、刀剣達は、政府の職員に全てを伝え、男を引き渡すと、帰還した。
「まさか俺達が追っていた事件を……」
「これがあの組織の本気だ」
 使われた山姥切国広と長義は、恐ろしさを感じていた。証拠が見つからないと動けないと思っていた事件をあの組織は簡単には解決したのだから。
「敵にまわしたくないやからだ」
「だな」
 廃人の男を見てそういうと、長義と山姥切国広さ、調査と後始末をし始めた。

 事件より数日後、政府からのニュースの記事には、でかでかと事件解決と犯人の顔が載っていた。
「国広殿その……被害者達は……」
「助かったものは、治療したのち本丸に帰ったそうだ」
 執務室でまめのすけを肩にのせ、正雪は、国広に茶を出していた。
 国広は、茶を飲みながら、記事を正雪に見せた。
「よかった……」
「だが無惨な亡骸も出てきたそうだ」
「そうか……その刀剣達は……」
「保護されたらしい」
 その後の処分に関して国広は、あえて言わなかった。
 この事件だけでも正雪にとっては、衝撃的な事だから。
「私は……また、狙われるのだろうか……」
「いやないだろう。相手は、サーヴァント由井正雪の宝具が狙いだからな」
「国広殿その……五蘊盛苦·夢幻泡影とは……増殖するとしか私は……知らないのだが……」
「正雪あってるわ」
 友美が執務室に入ってきた。
「五蘊盛苦·夢幻泡影。由井正雪の宝具のひとつにして彼女のあり方を表したものともいえる。霊脈に繋げば、一年に一体増殖する。そして新人類として作られた由井正雪で世界は、埋め尽くされる」
 国広は、頷き、正雪は、ぎょっとした顔をしていた。
「私が増殖……」
 考えるだけで恐ろしい。
「となると……霊力を……無限に吸いとれる……燃料が増産できる……??」
「そういうことだな」
「で犯人は……私を使いそれをしようとしていた……??」
「出来ないのにね。そうなると正雪は、強姦やらされたあと使い潰しにされることになってたわ」
「姫例えばだが……霊脈いがいに繋いだ場合は、……」
「出力によるけど、凄いスピードで増殖するわね」
 正雪は、考えるのをやめた。色々恐ろしすぎて。
「姫私は、使えないのだな??」
「ホムンクルス由井正雪としての機能だから、正雪は、使えないわ」
 正雪は、ホッとする。
「よかった……自分の意思とは、関係なしに増えるのは……困るから……」
「姫そうなのか??」
「国広そりゃね。まぁこの宝具は、由井正雪の意思関係なしに発動するから……大量に増殖、使い潰され、大きな木が出来たこともあったわねぇーそれこそ、世界を書き換えるね!! あの時正雪殺してくれー!!! って叫んでたし。宮本伊織とヤマトタケルと人類最後のマスターが頑張って助けたけどね」
 友美は、微笑みいうが、聞いていた国広は、顔を青ざめ、正雪は、身震いしていた。
「サーヴァントの私……危険すぎる……」
「ホムンクルスの頃から付いてたわよーこの機能」
「むっ!?」
「そりゃそうだろう」
 友美は、そういうと続けた。
「まぁそれをこの犯人は、しった。そして利用しようとした。宗近いわく魔術の心得もあったらしいから……何らかの手段で見たのでしょうね……」
 それが夢の力なのか、自分のような存在なのかは、べつとして。
「さて!! この件に関しては、おしまい!! 宗近がもう少し政府に力を貸すけど!!」
「姫その私は……」
 ここにいていいのかと聞こうとしたとき、友美に抱き締められた。
「そんなこと考えないの」
「姫……」
「むしろあんたが居なくなったら俺は、どうやってこの組織のやつらをとめろっていうんだ。暴動が起きるぞ」
「国広殿……」
「皆正雪のこと好きみたいだしね!!」
「え??」
「ナカツクニにいるやつらを除く全員が参加したからな」
「そうそう!! もう血の気が多いのも困りものね」
「姫血の気は多くないぞ??」
「あらそう??」
 友美と国広が話すやか、正雪は、目を伏せた。
「代理様??」
「まめのすけは……私はしらぬまに……ここにも居場所があったのだな……」
「はじめからあったまめ!!」
「……まめのすけ」
 まめのすけは、笑っていた。顔を上げると友美も微笑み国広は、呆れていた。
「なにを今さら。あんたなかなかの存在感だぞ」
「そのようなこと!!」
「あると思うわ」
「姫まで!!」
 そんなに自分は、存在感があるのだろうか。正雪は、真剣に悩む。
「国広今回の件ありがとう。でも汚れ仕事を……」
「俺達は、切るためにある。それにこんのすけは、端末だったしなあれは」
「なら本体じゃなかったのね」
「あぁ。本体は、そのあと犯人の本丸で保護されたそうだ」
「ならよかった」
 友美は、ホッとした顔をしいう。
「国広これからもよろしくね」
「当たり前だ。俺は、姫の刀剣だからな」
「そうね」
 やはり自分にとっても彼は、特別な刀剣なのだと友美は、思った。
 初期刀は、思い深い審神者も多い。それは、やはりはじめの刀だからだろう。
「国広でよかったわ」
「俺も姫が主でよかったぞ」
 微笑みあう友美と国広。正雪は、その様子を首をかしげながらみつつもなんとなくこの主従の絆を感じていた。そして羨ましいとも。
 私もいつかあのような関係なになれるのだろうか。そう思いながら彼女は、笑ったのであった。
  
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