後日談

 国広に付き合い万屋に正雪は、来ていた。先に買い物を終え、外で国広を待ちながら、通りを、眺める。
 何度来ても思うがここには、多くの刀剣男士と審神者がいる。
 見たこともない刀剣もいるのでキョロキョロしてしまっていた。
「兄弟であるぞ!!」
「だが……」
「いいから!! 兄弟行こう!!」
 見慣れた青年と見たことがない青年二人が。
 どうやら兄弟と言ってみるところを見るに彼らは、刀剣男士だろう。
「山姥切国広は……布をかぶっているものなのか……??」
 正雪のしる山姥切国広は、布は、執務室に置いては、いるが使っているのを見たのは、一度だけだ。
「ふむ……」
 しばらく観察していると頭を撫でられた。
「すまない」
「国広殿」
 今回不審者対策に国広は、本体を正雪に預けていた。そのうえ布面までしているので、ある程度は、効いたようだ。
「変なやからに声かけられてないな??」
「あぁ」
「ならよかった。まったく姫もいきなり、たい焼きと栗饅頭買ってこいって……」
「姫らしいな」
「まったく」
 そういいつつも国広は、しっかり仕事をしている。
「そういえば先程から何を見てるんだ??」
「国広殿あの三振組は……」
 正雪が見ていた先を国広は、見ると言う。優しい眼差しをしながら。
「俺の兄弟だな大きい方が山伏国広、小さい方が堀川国広だ」
「なるほど。そういえば、刀剣にも兄弟というものがあるのか??」
「あぁ。同じ刀派、刀工に打たれた 刀剣達は、家族みたいなもんだからか」
「なるほど」
 家族は、いたがそれでもそこまでの繋がりがあったかといわれれないだろう。
 生前の事を思い出しながら、そういう存在は、師だけだったと正雪は、少し寂しくなった。
「……いいものだな」
「そうだな」
「国広殿は、会いたいと思わないのか??」
「そりゃ共に居れたらとも思うがうちには、初期からいないからな。慣れた」
 国広は、そういうと、歩き出す。
「国広殿その……」
「なんだ??」
「あの布をかぶっているのが山姥切国広でいいのかな??」
「あぁ。あの面倒くさいのがな」
 国広は、呆れた顔をしている。そんなにも面倒なのだろうか。
 すれ違いざま正雪は、ちらっと山姥切国広をみると目があってしまった。
 鋭く近寄りがたい雰囲気に思わず身がすくむ。
「なんだ」
 気づかれてしまった。何を返そうかと悩んでいるとそれに気づいた国広は、正雪の前に。
「すまない。うちの主が」
「貴方は……他の本丸の兄弟!!??」
「まさかこんな兄弟をみる日が来るとは」
 国広は、訳が分からんと困惑しする。
「はぁ……それより山姥切国広は、大丈夫か?? うちの主が珍しいからとみていたようだが……」
 そりゃこの山姥切国広が普通なら兄弟が珍しいのも無理は、ない。
 堀川と山伏は、兄弟もあそこまで成長できるのかと驚きを隠せなかった。
「すまぬ。兄弟の目付きが悪いだけだ」
「そうそう!! 兄弟気にしてませんから!!」
「気にしてるだろ!?」
 国広は、山姥切国広をみながら言うと、彼は、布を更に深くかぶる。
「写しの俺なんか……が珍しいとは……変わった主だな……」
 国広は、溜め息をつく。
「はいはいそうだな」
「山姥切国広殿すまない……貴殿が美しく思わず……」
 この時正雪以外のものの空気が凍った。
 堀川と山伏がどうしたものかと山姥切国広をみた時彼は、目を伏せ更に深く布をかぶっていた。
「適当なことを……俺なんか綺麗じゃない!!!」
「兄弟!!」
「すみませんでは!! 待って!! 兄弟!!」
 走り去った山姥切国広をおい、山伏と堀川も走っていった。
 残された正雪は、悲しそうな顔をし、国広は、溜め息をつく。
「言っただろ面倒だと」
「うむ……しかし……私は彼を傷つけた……」
「……あんたは、悪くない。悪いのは、卑屈なあいつだ」
 本当にそうなのだ。正雪は、悪くなく、山姥切国広にみていた理由を述べたのみ。
「拗らせすぎてるんだ。山姥切という名と逸話のお陰でな」
「国広殿……」
「だからあんたは、笑ってろ。さもないと姫からしつこく聞かれるぞ。どうしたのか」
「分かった」
 正雪が少しだけ笑ったので、国広は、安心した。のち彼らは、帰路に着いた。


 屋敷に帰ると友美が国広の執務室で仕事をしていた。
 書類の山は、すでになくもうそろそろ終わりそうだ。
「国広おかえりなさい」
「ただいま帰った姫」
「姫ただいま」
「おかえりなさい正雪!!」
 友美は、立ち上がると正雪のところへ。そして彼女を抱き締めた。
「大丈夫怖くない、怖くない」
「姫??」
「万屋で何かあったの??」
 国広と正雪は、顔を見合わすと思う。友美には、隠し事は、出来なさそうだと。
 国広は、事の経緯を簡潔にはなした。
「なるほど。普通の山姥切国広に会ったのねー」
 友美は、最後の書類も片付けながら、話を聞き、仕事を終え、立ち上がると、なが椅子に座る国広のところへ。
「正雪違ったでしょう?? 国広とその彼」
「とても」
 友美は、困ったように笑う。
「国広は、何故かこんなことになってしまったのよねぇー」
「姫のお陰だろ。まったく」
「私もそう思う姫」
 友美は、じっと国広を見ると、正雪の横に座った。
「そっか!!」
「姫その……」
 堀川派をみたとき正雪は、思ったことがあった。友美にそれをはなすと、友美は、眉を下げた。
「それは……」
「二振をここに招くことは、出来ぬのか?? 姫!!」
「それは、難しいだろうな」
 国広も同じことを言うとは。それほどに難しいことなのだろうか。
 本来どのように審神者が刀剣男士を顕現するのか正雪は、知らない。やはり神を呼び起こすのだからとても大変なことなのだろう。
「そうなのか……」
「正雪本来それ事態は、難しくないの。ただ私がやるとなるのねぇ……」
「山伏と堀川は、出ないだろうな」
「え??」
「姫見せた方がはやいぞ」
「そうね……」
 ということで友美達は、久しぶりに鍛刀部屋に。それを聞き付けた刀剣達が、集まるなか、皆期待していた。
「姫伽羅ちゃんを頼むよ!!」
「だぜ姫!!」
 友美は、そんなこと言わないでと思いつつ、深呼吸した。
「姫力まなくていいぞ」
「分かってるわよ」
 では、いざと鍛刀してみたが、出たのは、四時間。
「四時間……」
  見に来ていた刀剣達が方を落とすなか、友美は、もう一度とやってみたが、さらに出たのも四時間だった。その後もやってみるものの、出るのは、四時間。そして全て。
「俺は、三日月……」
「知ってるわ。 とりあえず国広しゅうごうで!!」
「わかった」
 ぜん三日月を友美は、国広に押し付けると、正雪をみる。凪いだ海のような静かな瞳で。
「こういうことよ」
「なるほど。その姫……縁を変えてみては……」
 友美は、ハッとした顔をした。
「宗近……」
 友美は、鍛刀部屋の異変に気づき、術で書き換え、もとに戻すと、またやってみた。
「姫三時間が出たぞ!!」
「そうね貞ちゃん」
 さて三時間誰が来るか。国広が戻ってくると、友美は、手伝い札を使い開けた。すると出てきたのは。
「僕は燭台……」
「国広習合!!」
「分かった」
 部屋にいた光忠と出てきた光忠をつれ、国広は、また部屋を出た。
「みっちゃんが増えたな」
「そうね貞ちゃん」
 その後もやってみるものの、山伏と堀川は、来なかった。
「伽羅来ないなぁ……」
「ごめんね貞ちゃん……」
「姫は、悪くないって!!」
 落ち込む友美を励ます貞ちゃん。どうにかして国広と兄弟を会わせたいと思い、友美に進言したが、やはり無理なのだろうか。
 正雪は、諦めきれないと、友美に言った。
「姫私がしても??」
「もちろん」
 どこからか、国広がこんのすけを連れてきたが、彼は、ガタガタ震えていた。
「姫なにようで!?」
「私じゃなく正雪よ。教えてあげて、鍛刀の事」
 床におろされたこんのすけさ、正雪をみて、ほっとするが、友美の気配に体を震わせる。
「姫ってそんなに怖いか?? みっちゃん」
「そんなことないよ貞ちゃん」
 管狐にしか分からないこともあるのだろう。
 正雪は、こんのすけからレクチャーされたのち、早速やってみた。
「山伏か堀川殿を……」
 さて表示された時間は、三時間だ。
「三時間だと……」
「太刀が多いです。代理殿」
「太刀か……」
 堀川国広は、脇差しなのでたぶんない。そうなるの山伏国広の可能性しか残らない。
 来てくれと正雪は、思いつつ、手伝い札を使い、出てきたのは。
「大倶利伽羅だ……」
「む……」
 正雪が固まると同時に貞ちゃんと光忠が、大倶利伽羅に飛び付いた。
「伽羅!!」
「伽羅ちゃん!!」
 違った。山伏国広では、なかった。正雪は、肩を落とすと、友美に抱きついた。
「姫……」
「正雪ありがとう」
「うむ……だが堀川殿でも山伏殿でもなかった……」
 正雪の気持ちも友美には、分かる。何度が彼女も挑戦してみたからだ。しかしこればかりは、縁の物ともいえる。
 優しく彼女の背中を撫でるの友美は、言った。
「でも見て。光忠と貞ちゃんは、すごく喜んでるわ。あの子達ずっと大倶利伽羅を待っていたから」
 光忠達は、すごく嬉しそうだが、大倶利伽羅は、迷惑そうである。
 大倶利伽羅と目が合い正雪は、彼の威圧に少し驚いた。
「あんたが俺の主か」
「私は、代理ゆえ……主は、たぶんこちら……」
 友美と目があった大倶利伽羅は、なにかを感じそして一歩ひいた。
「えっ!!??」
「馴れ合うつもりは、ない……」
「あのそういいつつ逃げないでくれる!!??」
 友美と大倶利伽羅が鍛刀部屋でおいかけっこを始めるなか、光忠と貞ちゃんそして正雪は、なんとも言えない顔をしていた。
「やはりそうなるのか……」
「姫強いからな!!」
「まぁ姫だからね」
「そこ二振と一人それで片付かないでくれる!? これでも抑えてるのよ!?」
「それで抑えてるだと……」
「伽羅ちゃん驚かないで!?」
 友美は、久しぶりの反応に肩を落とした。やはり普通は、これなのかと。
 その後大倶利伽羅は、光忠と貞ちゃんに連れられ、他の刀剣の所に。
 友美は、正雪と国広の執務室に戻ってきたが、彼女は、部屋のすみで落ち込んでいた。
「姫にもこんな時があるのだな……」
「そりゃあるぞ。まったくいつもいつも気配で怖がられる度に落ち込むんだから」
 買ってきたたい焼きと栗饅頭を国広は、机に並べる。
「姫これ食べないなら俺が食べるが」
 友美は、のろりと立ち上がると長椅子に座った。
「食べるわ!! もうやけ食いよ!!」
「自棄じゃなくても食べるだろ」
「もちろん!!」
 友美は、そういうと、茶をいれ、栗饅頭を食べ始めた。
「美味しいー」
「それは、よかったな」
「国広ありがとう!!」
 友美の機嫌がなおり、国広は、たい焼きを食べる。正雪も栗饅頭を食べ始めた。
「正雪ありがとう。あんたの気持ちは、嬉しかった」
 国広は、ポツリと呟くと正雪は、驚いた。
「国広殿……」
「機会があれば来るだろう。ここにな」
「そうそう!!」
 友美は、そういうと、正雪の頭を撫でた。
「本当にいい子!!」
「姫……」
 正雪は、目を伏せると恥ずかしそうにたい焼きを食べる。
「姫だが今回の件他の刀派のやつに火をつけたんじゃないのか??」
 友美は、正雪を抱きしめすりすりしていたが、ハッとし顔を青ざめた。
「かもしれない。もうやらないわよ!? 鍛刀!!」
「資源の問題もあるからな。まぁ聞かれたら俺から言っとく」
「お願い国広!!」
 決して正雪を離さない主に国広は、少し呆れた。しかしそのきもちもよくわかる。
「可愛いやつは、癒されるもんな」
「マジそれ!!」 
「可愛いとは……もしや……もしやなのだが……私か??」
 友美と国広は、頷くと、正雪は、更に顔を真っ赤にした。
 もしかすると友美や刀剣にとって自分は、本当に可愛く癒しのような存在なのかと思いながら。
「うむむ」
「可愛い~」
「姫あまりいうと正雪頭から湯気が出るぞ」
「それもまたよき!!」
「姫よくないのだが!?」
 間違いなく主からは、癒しにされてると正雪は、この時痛感するのであった。沈丁花の香りを感じながら。
 
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