後日談
国広は、困っていた。
「国広殿私も連れていってくれ!!」
真剣な顔をし、前に座っている正雪。そして出陣時の姿をしている国広。これだけで彼女がなにを申し出てるのか分かるだろう。
「審神者とは、基本本丸にいるもんなんだが」
「だが……先日貴殿は、無理をしなければ戦っていいと申していたではないか……」
「あれは、あちらから襲ってきた場合だ」
やめてくれ困った主と同じことはと。国広は、そう思いながら、いうが、正雪は、諦めそうにない。
「なんて頑固なんだ」
「それは、貴殿もだろ」
バチバチと火花を散らす国広と正雪。それをみていた光忠は、苦笑いをしていた。
「ほら……国広君……正雪さんもそう言ってるし……」
「光忠もし正雪が拐われたらどうする。そこか、酷いめにあったら……俺は……」
「それは遡行軍相手には、ないと思うけど……」
「なら怪我でもしたら!!」
いいたいことは、分かる。正雪は、要ると判断した場合自分が傷つくことをいとわない。軍師として人を傷つけるてしまう作戦を立案した場合は、躊躇するが、自分が傷つく場合は、躊躇しないのだ。
「怪我は……」
「よくいう、場合によっては、自己犠牲もいとわんだろ!! その体は、そんな無理がきくもんじゃない!!」
たぶん国広は、知っているえい月の義の事を。
正雪は、目を伏せる。
「しかし……私は……なにもなせていない……ここで……甘やかされている……だけだ……」
「……正雪さん」
光忠は、傾きかけていたが、国広は、違う。
「泣き落としは、効かんぞ」
「む……」
「正雪さんがそんなことすると!? 国広君!!」
「げんにやってるだろ」
国広は、話を切り上げるように立ち上がったな、正雪は、そんな国広になんと飛び付いた。
「頼む!! 国広殿!!」
「……はぁ」
何故姫といい代理といいうちの上は、こうもおとなしく出来ないのか。
「わかった」
「かたじけない!!」
「ただし条件がある」
「条件??」
さて条件とは、なんだろうかと、光忠と正雪は、思ったが出陣先でわかった。
「国広殿!! これでは、私は、飼い犬ではないか!!」
正雪は、可愛らしい兎のぬいぐるみのリュックをせよわされその先には、ひもがついていた。そのひものさきは、国広の手首に。
プイッと怒る代理主に国広は、言った。
「暴走防止だ」
「私を幼児扱いしないでくれ!!」
「十分幼児だ」
三十路の正雪と刀として二百年以上生きている国広。確かに彼からすれば、正雪などまだ子供だろう。
「まさか螢君のハーネスが役に立つとはね……」
「光忠殿どうにか言ってくれぬか!!」
「流石に危ないからここ……」
国広が正雪を連れていきたくなかった理由は、ここは、異去だったからだ。
異去。今回偵察がてらに国広、光忠で様子を見に来たのである。
「なんで審神者がここに来るわけ」
監視である火車切りは、苛立ちを隠さないで言った。
「ついてきた。それだけだ」
「あんたら分かってるのか?? ここは……」
「……分かってる」
国広は、短く答えると提灯をもち、歩き出した。
正雪は、静かでそれでいて悲しげしかし安らかな空気に少し驚く。まるでこれは……
「……」
「大丈夫かい??」
「光忠殿……あぁ……」
大丈夫かと問われれば平気だがこの空気直人では、耐えられないだろう。
己の中のあるものが疼くのが分かる。
「しかし……こんなところにあるのか??」
「情報だとあるみたいだよ!!」
迷わぬよう提灯の灯りを頼りに進む。いったい何を二振は、探しているのだろう。
「国広殿何を探しているのかな??」
「曜変天目」
正雪は、驚いた顔をした。
「なぬ!? それは確か家光公が稲葉気に下賜したとされるあの曜変天目か!!??」
「そうだが……」
「何故この様なところに……」
現在では、完成品は、三碗しか残っていない曜変天目茶碗。全て国宝に指定され、作られた中国ですらその製法は、失われた。
日本のある窯元が再現を試みているが、それでも国宝として残るものには、到底及ばない代物と今は、なっている。
正雪は、考えながら、歩いていると、なにやら声をかけられた気がした。
「正雪聞くな。そして無視しろここは、そうでなければ連れていかれる」
正雪は、こくりとうなづくとそのまま国広と光忠の間を歩いた。
「鳥羽にきたけど、この辺りだったよね??」
「そうだな」
静かな世界から突然敵が襲ってきた。
光忠が先陣を切り、敵を迎え撃つが、数が多いのと、地味に手強い。しかし主を守りながらとなるとこうなるかと思ったとき、国広がなんととんでもない戦いかたをしていた。
「国広殿何処にも行かないからおろしてくれ!!!! うわぁ!!!」
なんと正雪をせよって戦っていたのだ。
「ここは、特殊だからな」
「そういって貴殿そもそも降ろすきないだろ!? 他の場所でも!!」
「あぁ」
国広は、短く答えるとまた敵を切る。するとなにやら黄金に輝く欠片が。
「これは……」
「曜変天目茶碗の欠片だ!!」
「そのまま物が落ちるんじゃないのか」
欠片として落ちるとは、正雪は、これをどうするのかと疑問に思った。しかしその欠片は、この世界には、似つかわしい暖かな物だった。
「もしや……記憶か??」
「かもしれない。とりあえず持っててくれ」
正雪は、頷くと光忠がリュックに欠片をいれた。
その後も鳥羽を探索し、襲ってくる敵を切り伏せ、欠片を集める。その間正雪は、魔術によるバックアップをし、二振は、戦いやすくなっていた。
「正雪さんありがとう」
「私は、これしかさせえもらえぬからな……国広殿のお陰で……」
「十分助かってるぞ」
「むむむ……私は、貴殿達と肩を並べて……」
「機会があればな」
「その機会を貴殿は、作らぬだろ……」
なんだろう正雪と国広のやり取りを見ていると微笑ましい。
光忠は、泣いた。
「国広君!! 成長したね!! 昔話卑屈だったのに……」
「おい。それ初めの頃だけだっただろ!!」
「だとしてもだよ!!」
光忠と国広の会話を聞きながら、正雪は、信じられなかった。この国広が卑屈だなんて。
「……卑屈」
「正雪いいか。他の山姥切国広とあっても皆が俺のようだとは、思うな」
「承知したが……卑屈なのか?? その他の山姥切国広は……」
「面倒な程にな。なおかつ長義も面倒だ」
ここに長義がいたら怒るだろうなと正雪は、思っていた。
「もしや……もしやなのだが……山姥切は、卑屈かつ、拗らせているのが普通……なのか??」
国広と光忠は、見合わすとといった。
「普通だな」
「普通かな」
どうやら自分は、まだまだ知らないことが多いようだ。
正雪は、そう思いつつ足でかるく、国広に降ろせと催促してみたが無視された。
「むむむ……」
「国広君正雪さんすごく不満げな顔してるけど……」
「さっきから髪も引っ張られてるからな」
しかし国広は、涼しげな顔をしていた。
「これは……姫の子供ちゃん達効果だね……」
「怪獣にくらべたら正雪は、可愛いもんだからな」
今度は、はちまきを引っ張られているが気にしない。
正雪は、不満そうな顔をするという。
「私を頼りにしてくれても……」
「頼りにしてるぞ」
絶対にてきとうに答えていると正雪は、思った。
「ライダーは、もう少し……」
「そのライダーに裏切られたマスターが何をいうんだ」
傷に塩を塗られ正雪は、萎れた。
「国広君そのライダーって……」
「源頼光だな。別の名を丑御前」
「なら髭切君と膝丸君が知ってそうだね」
「この世界のならな」
国広は、友美と同じでどうやら光忠達にさ、見えないものが見えるときがあるらしい。
「なるほどね」
「源氏に由来する刀もいるのか??」
「正雪さんいるよ!!」
「膝丸、髭切、獅子王がそれだ。うちに獅子王は、いないが、髭切と膝丸は、いる。そのうち話せるときもあるだろう」
「そうか」
もしかすると頼光の話しも聞けるかもしない。
正雪は、機会があればな話したいなと思った。
その後も鳥羽を探索し、出てくる敵を倒し、欠片を集めた。
「けっこう集まったね」
「とりあえず屋敷に帰って組み立てるか」
「だね」
先程よりましとは、いえ、やはりここは
気味が悪い。正雪は、来た道をふりかえろうとしたが、国広にいわれた。
「絶対にふりかえるな。ここは、そういうところだ。あんたも分かってるだろ」
正雪は、頷くと。
「私も経験した……身だからな……」
まるで眠るように安らかに。最期とは、そうなのだとあの時知った。
それまで苦しかったのに、その時は、全てが穏やかにそして終わりが来る。
やはりここは、そのような場所。もしかすると付喪神の墓場なのかもしれない。
「国広殿は、怖くないのか??」
「俺達は、折れたとしても姫がここへは、越させないだろう」
「国広殿……」
「僕たちの主は、凄いからね」
「そもそも折れる前にぶん投げられ手入れされるだろうな」
国広は、真顔でいうとまた歩き出した。
「確かに!! 姫ならそれだね!!」
「確かに友美なら……そうするな……」
国広と光忠は、驚いた。正雪が主を真名で呼んだので。しかし彼女が主を気に入り、親しみを込め名で呼ぶことを彼らは、知っていた。
「パニックにならなくても姫を真名で呼ぶんだな」
「あれは……」
「もうピグレットは、こりごりかな!!」
「すまぬ……」
正雪の頭から湯気が出ているが、二振は、微笑むのみ。
提灯を頼りに、来た道を帰り、火車切のところまで戻ってきた。
「あんた審神者をおんぶするんだったら連れてくるなよ」
「それは、それは、これは、これだ」
火車切が正雪を見て呆れた顔をしていたが、国広は、スルーした。
「ってあんなら二振で鳥羽にいったのかよ……非力な主つれて……」
正雪は、この時胸に冷たい刃を突きつけられるような感覚になった。確かに刀剣男士に比べれば非力だろうが、やはり現実を突きつけられると苦しい。
目を伏せ悲しげな顔をする正雪を見て光忠は、何かを言おうとしたが、代わりに国広がすべていった。
「あんたらにとっては、非力にみえるだろうが。主は、あんたを折れるくらいは、できると思うぞ」
「はぁ??」
そんなわけと思ったが、火車切は、気づいた。審神者の懐に入っている簪に。
「……そういうことかよ」
「話が通じるのは、助かる」
国広は、それだけいうと、歩いていく。光忠が最後の手続きをし、国広達は、帰路についた。
「国広殿あの言の葉は……」
屋敷に帰り、曜変天目を組み立てるか国広に正雪は、聞いた。
「事実をいったまでだ。あんたは、間違いなく実力がある」
「国広殿……」
「だが身をかえりみなさすぎる」
国広は、頭をかくと言う。
「それにあんたに痛い思いをして欲しくないからな」
国広は、ため息をこぼした。
「出来ん」
正雪は、組み立てられない国広をみて、おいてあった書を読みそして言った。
「私にやらせてもらっても??」
「いいが……」
「ありがとう」
光忠が茶を持ってきた。二振は、正雪の手元に注目する。
繊細な手付きで、術式を組み、発動させると、組だった曜変天目が。
「凄いね正雪さん!!」
「ありがとう光忠殿。魔術を扱うのもあり、生前から繊細な作業は、いささか得意だ」
だからこそ、機転もきかせられ、的確なサポートが異去で出来たともいえる。
「いささかってあんたそうとうだろ」
「国広君すこし力業のとこもあるしね」
「あのように美味しい茶をいれれるのに……」
「細かいの分野が違うからな」
国広は、そういうと曜変天目を手に取る。
「光忠これどうするんだ??」
「せっかくだしお茶碗につかう?? それか……次郎さんの盃とか??」
「盃…‥茶碗!? それは、いかん!! 国宝を!!」
「正雪といっても記憶を集めて作った物だからな。まぁ床の間に飾るか、出陣で敵に投げつけるか、ストレス発散ようか」
「どれもダメだと思うのだが!!??」
「まぁ床の間に飾ろうよ!! それが一番!!」
適切に保管がいいのではと正雪は、思ったが、曜変天目は、光忠により、何処かに運ばれた。
「あれそんなに凄いのか」
「至高の逸品だ!! 武骨者の私ですら知ってるものだ!!」
「武骨者ってあんたそうとう美に精通してると思うが??」
さらりと誉められ、正雪は、ほほを赤く染めた。そんな彼女をみて、国広は、笑う。
「国広殿は、フラグとやらを立てるのがうまいな……」
「勝手にフラグをたてまくるあんたに言われたくない」
屋敷に元気な正雪の声が響く。光忠は、その声をきいて微笑む。
「これは、なかなかの茶碗だな」
「宗近おじいちゃんでしょう?? 正雪さんが欠片をつけてくれたんだ」
「ほう……あの娘が……」
本当にこの組織は、面白い。宗近も正雪と国広の声を聞きながら、思うと、微笑むのであった。 そして平和も感じながら。
「国広殿私も連れていってくれ!!」
真剣な顔をし、前に座っている正雪。そして出陣時の姿をしている国広。これだけで彼女がなにを申し出てるのか分かるだろう。
「審神者とは、基本本丸にいるもんなんだが」
「だが……先日貴殿は、無理をしなければ戦っていいと申していたではないか……」
「あれは、あちらから襲ってきた場合だ」
やめてくれ困った主と同じことはと。国広は、そう思いながら、いうが、正雪は、諦めそうにない。
「なんて頑固なんだ」
「それは、貴殿もだろ」
バチバチと火花を散らす国広と正雪。それをみていた光忠は、苦笑いをしていた。
「ほら……国広君……正雪さんもそう言ってるし……」
「光忠もし正雪が拐われたらどうする。そこか、酷いめにあったら……俺は……」
「それは遡行軍相手には、ないと思うけど……」
「なら怪我でもしたら!!」
いいたいことは、分かる。正雪は、要ると判断した場合自分が傷つくことをいとわない。軍師として人を傷つけるてしまう作戦を立案した場合は、躊躇するが、自分が傷つく場合は、躊躇しないのだ。
「怪我は……」
「よくいう、場合によっては、自己犠牲もいとわんだろ!! その体は、そんな無理がきくもんじゃない!!」
たぶん国広は、知っているえい月の義の事を。
正雪は、目を伏せる。
「しかし……私は……なにもなせていない……ここで……甘やかされている……だけだ……」
「……正雪さん」
光忠は、傾きかけていたが、国広は、違う。
「泣き落としは、効かんぞ」
「む……」
「正雪さんがそんなことすると!? 国広君!!」
「げんにやってるだろ」
国広は、話を切り上げるように立ち上がったな、正雪は、そんな国広になんと飛び付いた。
「頼む!! 国広殿!!」
「……はぁ」
何故姫といい代理といいうちの上は、こうもおとなしく出来ないのか。
「わかった」
「かたじけない!!」
「ただし条件がある」
「条件??」
さて条件とは、なんだろうかと、光忠と正雪は、思ったが出陣先でわかった。
「国広殿!! これでは、私は、飼い犬ではないか!!」
正雪は、可愛らしい兎のぬいぐるみのリュックをせよわされその先には、ひもがついていた。そのひものさきは、国広の手首に。
プイッと怒る代理主に国広は、言った。
「暴走防止だ」
「私を幼児扱いしないでくれ!!」
「十分幼児だ」
三十路の正雪と刀として二百年以上生きている国広。確かに彼からすれば、正雪などまだ子供だろう。
「まさか螢君のハーネスが役に立つとはね……」
「光忠殿どうにか言ってくれぬか!!」
「流石に危ないからここ……」
国広が正雪を連れていきたくなかった理由は、ここは、異去だったからだ。
異去。今回偵察がてらに国広、光忠で様子を見に来たのである。
「なんで審神者がここに来るわけ」
監視である火車切りは、苛立ちを隠さないで言った。
「ついてきた。それだけだ」
「あんたら分かってるのか?? ここは……」
「……分かってる」
国広は、短く答えると提灯をもち、歩き出した。
正雪は、静かでそれでいて悲しげしかし安らかな空気に少し驚く。まるでこれは……
「……」
「大丈夫かい??」
「光忠殿……あぁ……」
大丈夫かと問われれば平気だがこの空気直人では、耐えられないだろう。
己の中のあるものが疼くのが分かる。
「しかし……こんなところにあるのか??」
「情報だとあるみたいだよ!!」
迷わぬよう提灯の灯りを頼りに進む。いったい何を二振は、探しているのだろう。
「国広殿何を探しているのかな??」
「曜変天目」
正雪は、驚いた顔をした。
「なぬ!? それは確か家光公が稲葉気に下賜したとされるあの曜変天目か!!??」
「そうだが……」
「何故この様なところに……」
現在では、完成品は、三碗しか残っていない曜変天目茶碗。全て国宝に指定され、作られた中国ですらその製法は、失われた。
日本のある窯元が再現を試みているが、それでも国宝として残るものには、到底及ばない代物と今は、なっている。
正雪は、考えながら、歩いていると、なにやら声をかけられた気がした。
「正雪聞くな。そして無視しろここは、そうでなければ連れていかれる」
正雪は、こくりとうなづくとそのまま国広と光忠の間を歩いた。
「鳥羽にきたけど、この辺りだったよね??」
「そうだな」
静かな世界から突然敵が襲ってきた。
光忠が先陣を切り、敵を迎え撃つが、数が多いのと、地味に手強い。しかし主を守りながらとなるとこうなるかと思ったとき、国広がなんととんでもない戦いかたをしていた。
「国広殿何処にも行かないからおろしてくれ!!!! うわぁ!!!」
なんと正雪をせよって戦っていたのだ。
「ここは、特殊だからな」
「そういって貴殿そもそも降ろすきないだろ!? 他の場所でも!!」
「あぁ」
国広は、短く答えるとまた敵を切る。するとなにやら黄金に輝く欠片が。
「これは……」
「曜変天目茶碗の欠片だ!!」
「そのまま物が落ちるんじゃないのか」
欠片として落ちるとは、正雪は、これをどうするのかと疑問に思った。しかしその欠片は、この世界には、似つかわしい暖かな物だった。
「もしや……記憶か??」
「かもしれない。とりあえず持っててくれ」
正雪は、頷くと光忠がリュックに欠片をいれた。
その後も鳥羽を探索し、襲ってくる敵を切り伏せ、欠片を集める。その間正雪は、魔術によるバックアップをし、二振は、戦いやすくなっていた。
「正雪さんありがとう」
「私は、これしかさせえもらえぬからな……国広殿のお陰で……」
「十分助かってるぞ」
「むむむ……私は、貴殿達と肩を並べて……」
「機会があればな」
「その機会を貴殿は、作らぬだろ……」
なんだろう正雪と国広のやり取りを見ていると微笑ましい。
光忠は、泣いた。
「国広君!! 成長したね!! 昔話卑屈だったのに……」
「おい。それ初めの頃だけだっただろ!!」
「だとしてもだよ!!」
光忠と国広の会話を聞きながら、正雪は、信じられなかった。この国広が卑屈だなんて。
「……卑屈」
「正雪いいか。他の山姥切国広とあっても皆が俺のようだとは、思うな」
「承知したが……卑屈なのか?? その他の山姥切国広は……」
「面倒な程にな。なおかつ長義も面倒だ」
ここに長義がいたら怒るだろうなと正雪は、思っていた。
「もしや……もしやなのだが……山姥切は、卑屈かつ、拗らせているのが普通……なのか??」
国広と光忠は、見合わすとといった。
「普通だな」
「普通かな」
どうやら自分は、まだまだ知らないことが多いようだ。
正雪は、そう思いつつ足でかるく、国広に降ろせと催促してみたが無視された。
「むむむ……」
「国広君正雪さんすごく不満げな顔してるけど……」
「さっきから髪も引っ張られてるからな」
しかし国広は、涼しげな顔をしていた。
「これは……姫の子供ちゃん達効果だね……」
「怪獣にくらべたら正雪は、可愛いもんだからな」
今度は、はちまきを引っ張られているが気にしない。
正雪は、不満そうな顔をするという。
「私を頼りにしてくれても……」
「頼りにしてるぞ」
絶対にてきとうに答えていると正雪は、思った。
「ライダーは、もう少し……」
「そのライダーに裏切られたマスターが何をいうんだ」
傷に塩を塗られ正雪は、萎れた。
「国広君そのライダーって……」
「源頼光だな。別の名を丑御前」
「なら髭切君と膝丸君が知ってそうだね」
「この世界のならな」
国広は、友美と同じでどうやら光忠達にさ、見えないものが見えるときがあるらしい。
「なるほどね」
「源氏に由来する刀もいるのか??」
「正雪さんいるよ!!」
「膝丸、髭切、獅子王がそれだ。うちに獅子王は、いないが、髭切と膝丸は、いる。そのうち話せるときもあるだろう」
「そうか」
もしかすると頼光の話しも聞けるかもしない。
正雪は、機会があればな話したいなと思った。
その後も鳥羽を探索し、出てくる敵を倒し、欠片を集めた。
「けっこう集まったね」
「とりあえず屋敷に帰って組み立てるか」
「だね」
先程よりましとは、いえ、やはりここは
気味が悪い。正雪は、来た道をふりかえろうとしたが、国広にいわれた。
「絶対にふりかえるな。ここは、そういうところだ。あんたも分かってるだろ」
正雪は、頷くと。
「私も経験した……身だからな……」
まるで眠るように安らかに。最期とは、そうなのだとあの時知った。
それまで苦しかったのに、その時は、全てが穏やかにそして終わりが来る。
やはりここは、そのような場所。もしかすると付喪神の墓場なのかもしれない。
「国広殿は、怖くないのか??」
「俺達は、折れたとしても姫がここへは、越させないだろう」
「国広殿……」
「僕たちの主は、凄いからね」
「そもそも折れる前にぶん投げられ手入れされるだろうな」
国広は、真顔でいうとまた歩き出した。
「確かに!! 姫ならそれだね!!」
「確かに友美なら……そうするな……」
国広と光忠は、驚いた。正雪が主を真名で呼んだので。しかし彼女が主を気に入り、親しみを込め名で呼ぶことを彼らは、知っていた。
「パニックにならなくても姫を真名で呼ぶんだな」
「あれは……」
「もうピグレットは、こりごりかな!!」
「すまぬ……」
正雪の頭から湯気が出ているが、二振は、微笑むのみ。
提灯を頼りに、来た道を帰り、火車切のところまで戻ってきた。
「あんた審神者をおんぶするんだったら連れてくるなよ」
「それは、それは、これは、これだ」
火車切が正雪を見て呆れた顔をしていたが、国広は、スルーした。
「ってあんなら二振で鳥羽にいったのかよ……非力な主つれて……」
正雪は、この時胸に冷たい刃を突きつけられるような感覚になった。確かに刀剣男士に比べれば非力だろうが、やはり現実を突きつけられると苦しい。
目を伏せ悲しげな顔をする正雪を見て光忠は、何かを言おうとしたが、代わりに国広がすべていった。
「あんたらにとっては、非力にみえるだろうが。主は、あんたを折れるくらいは、できると思うぞ」
「はぁ??」
そんなわけと思ったが、火車切は、気づいた。審神者の懐に入っている簪に。
「……そういうことかよ」
「話が通じるのは、助かる」
国広は、それだけいうと、歩いていく。光忠が最後の手続きをし、国広達は、帰路についた。
「国広殿あの言の葉は……」
屋敷に帰り、曜変天目を組み立てるか国広に正雪は、聞いた。
「事実をいったまでだ。あんたは、間違いなく実力がある」
「国広殿……」
「だが身をかえりみなさすぎる」
国広は、頭をかくと言う。
「それにあんたに痛い思いをして欲しくないからな」
国広は、ため息をこぼした。
「出来ん」
正雪は、組み立てられない国広をみて、おいてあった書を読みそして言った。
「私にやらせてもらっても??」
「いいが……」
「ありがとう」
光忠が茶を持ってきた。二振は、正雪の手元に注目する。
繊細な手付きで、術式を組み、発動させると、組だった曜変天目が。
「凄いね正雪さん!!」
「ありがとう光忠殿。魔術を扱うのもあり、生前から繊細な作業は、いささか得意だ」
だからこそ、機転もきかせられ、的確なサポートが異去で出来たともいえる。
「いささかってあんたそうとうだろ」
「国広君すこし力業のとこもあるしね」
「あのように美味しい茶をいれれるのに……」
「細かいの分野が違うからな」
国広は、そういうと曜変天目を手に取る。
「光忠これどうするんだ??」
「せっかくだしお茶碗につかう?? それか……次郎さんの盃とか??」
「盃…‥茶碗!? それは、いかん!! 国宝を!!」
「正雪といっても記憶を集めて作った物だからな。まぁ床の間に飾るか、出陣で敵に投げつけるか、ストレス発散ようか」
「どれもダメだと思うのだが!!??」
「まぁ床の間に飾ろうよ!! それが一番!!」
適切に保管がいいのではと正雪は、思ったが、曜変天目は、光忠により、何処かに運ばれた。
「あれそんなに凄いのか」
「至高の逸品だ!! 武骨者の私ですら知ってるものだ!!」
「武骨者ってあんたそうとう美に精通してると思うが??」
さらりと誉められ、正雪は、ほほを赤く染めた。そんな彼女をみて、国広は、笑う。
「国広殿は、フラグとやらを立てるのがうまいな……」
「勝手にフラグをたてまくるあんたに言われたくない」
屋敷に元気な正雪の声が響く。光忠は、その声をきいて微笑む。
「これは、なかなかの茶碗だな」
「宗近おじいちゃんでしょう?? 正雪さんが欠片をつけてくれたんだ」
「ほう……あの娘が……」
本当にこの組織は、面白い。宗近も正雪と国広の声を聞きながら、思うと、微笑むのであった。 そして平和も感じながら。