代理審神者

 主と話をした正雪は、少しだけ主の事が知れやはり来てよかったと思っていた。
 屋敷に戻ってきてから、すぐに台所へと彼女は、向かっていた。
「光忠殿」
「正雪さんおかえりなさい」
 光忠は、お重を受けとると、ふたを開け、なかを確認した。
「全て食べてくれたんだね」
「とても美味しかった。ありがとう」
「そういってくれ嬉しいよ!!」
 光忠は、嬉しそうに笑うと、お重を水に浸け、他の用事を始めた。
「あの光忠殿」
「どうしたんだい??」
「その……お茶と菓子を分けていただけないだろうか……」
 正雪の様子が少しおかしいと光忠は、思うとふと懐かしい気配を感じた。
「姫が来てるのかい??」
「国広殿に話があるからと」  
 正雪は、頷きながらいうと、光忠は、腕を組み考える。
「姫が直接来るなんて……どうしたんだろう……」
「なにやら鶴丸国永殿についてとか……」
「国永おじいちゃんについてか……」
 光忠は、目の前の女性をみながら、なるほどと納得していた。
「正雪さんの為かな」
「それは、どうして……」
「国永おじいちゃん……いや鶴さんは、面白いことが好きなんだ」
「面白いこと」
 それと自分がどう関係しているのか正雪は、不思議だった。
「正雪さんは、とても素直だと思うんだ。僕は」
「ふむ……」
「人の事を疑うことを知らず信じてしまう違うかい??」
 正雪は、色々考えながらとりあえず頷くと、光忠は、困ったように笑った。
「鶴さんになにか要らぬことを吹き込まれたら、正雪さんが悲しいことになるからさ。国広君と姫は、対策をたてているんだろうね」
「鶴丸国永殿は、悪いごじんなのか??」
「悪くないよ。でも悪戯好きだからね」
 光忠は、そう言うと、カート茶菓子と急須そして茶葉と茶器をのせた。
「正雪さん少し手伝ってくれるかい??」
「もちろん」
 光忠の指示に従いながら、正雪は、手伝いを始め、その頃国広の部屋では、友美と国広が話をしていた。
「姫蛍は、連れてこなかったのか」
「連れてくるの五月蝿いからねぇー」
 友美は、困ったように笑うと国広は、ため息をこぼす。
「あとで文句言われるのは、俺なんだが」
「まぁいいじゃない。それより正雪の事なのだけど」
 正雪について、国広と友美は、話をするなか、やはり問題としてあがったのは、純粋無垢な彼女をどう守るかと言うことであった。
「姫。正雪は、何か戦う術は、あるのか??」
「えぇ。剣術そして魔術を使えるわ。後は……かけに近いものがねぇ……」
「あれの事か……」
「そう。でも国広それを聞いてどうするの??」
「いざってときのために聞いた。とりあえず国永については、何とかする」
「分かったわ」
 とりあえずなんとかなりそうだと友美は、ホッとしてしいると、光忠がカートをひいてやって来た。
「姫、国広くん アフタヌーンティーは、どうかな??」  
「あらいいわね!!」
「光忠の誘いなら受ける」
 机の上を片付けると、アフタヌーンティーセットを光忠は、その上に置いた。
「正雪さんも座って」  
 光忠の後ろから正雪は、姿を見せるの、どこに座ろうか悩みつつも友美のとなりに座った。
「さぁ出来たよ!!」
 机の上には、豪華なアフタヌーンティーセットがならびに美味しそうな軽食も並んでいた。 
「いただきます!!」
 友美は、そういうとさっそく軽食を食べ、国広もサンドイッチを食べ始めた。
「光忠のお料理美味しいわー」
「姫それは、よかった」
「あんたは、食べないのか??」
「では……」
 とりあえずクッキーを手に取り、正雪は、食べる。優しい甘味が口に広がり、思わず漏れた。
「美味しい……」
「それは、よかった」
 光忠と国広そして、友美が楽しげに話すなか、正雪は、その様子を見ていた。
 自分には、知らない彼らの紡いできた時がある。だからこそこのような親しげな仲なのだろう。
 少し寂しいかもしれない。そう思ったとき、正雪の、前に勢いよく、シュークリーム、クッキー、マフィンが出された。
「正雪も食べる??」
「シュークリーム旨いぞ」
「マフィンがいいかな?? 正雪さん!!」
 正雪は、勢いにおされていると、噂の鶴丸国永があらわれた。
「国広ー終わったぜ!!」
「国永お疲れ様」
「姫ありがとうな」
 国永と国広が話すなか、正雪は、この人が噂の鶴丸国永と少し身構える。
「分かった」
「国広それよりこのお嬢さんは??」
 国永は、正雪を興味津々に見る。
「政府の職員が来るから、その時に対応してもらう主代理だ」
「あーいってやつか」
 正雪は、頷くと、言った。
「由井正雪だ。お見知りおきを」
 国永は、なにかを察したのか、懐から巾着を出すの正雪に差し出した。
「飴食べるか??」
「飴??」
 正雪は、ふしんげに巾着を見るので、国永は、巾着を開けると、確かに中には、飴があった。
「なら一ついただこう……」
 飴を巾着からとると、正雪は、一つ食べた。甘酸っぱい味に美味しいと顔がほころぶ。
「これは……」
「国永どうしたの??」
「姫もしや、正雪は、子供たちと同じか??」
 友美は、思わず笑うと、国広は、安堵した表情になり、光忠は、はっとしたかおに。
「国永おじいちゃんそれだ!! 正雪さんをみてると何となく、ほっておけない感じがしたけど!!」
「光坊だろ?? こりゃ俺にとっての孫かもな!!」
 飴をなめながら、正雪は、首をかしげるが、さらにその仕草が国永には、なにかつぼるらしい。 
 優しく正雪の頭を撫でると言った。
「何かあったらこの鶴丸国永を頼ってくれ!!」
「分かった国永殿」
 何故か鶴丸国永に懐かれた。正雪は、そう思いながら、気遣いを無駄にしては、いけないと、先程差し出されマフィン、シュークリームそしてクッキーを皿にとると食べた。
「舶来物の菓子は、どれも美味しい」
「姫もっと色々作ってくるよ!!」
「光忠分かるけど落ち着いて!!」
 なにを思ったが光忠がお菓子を量産しそうなので、友美は、止める。
 国広は、ならと棚からあるものを出してきた。
「いちご大福製造機を使えばいいんじゃないか??」
 正雪は、思わず目を見開く。国広が持っていたのは、なんと聖杯だった。
「国広くんつくろうそれで!!」
「光坊それ本当にいいのか!?」
 刀剣達が色々話し合うなか、正雪は、視線で訴える友美に。
「まぁいいんじゃないの。願望機がここでは、いちご大福製造機になってるみたいだし!!」
「姫そんなことにつかっていいのか!?」
「気にしなーい、気にしなーい」
 次々といちご大福が、作られるなか、正雪は、唖然とその光景を見ていた。
「そういえば政府の職員って来るの明後日よね??」
 増産されるいちご大福を食べながら、友美は、言う。
「そうだ姫」
「その時の正雪の服装とかどうするの?? 顔も隠した方が言いかもだし」
 皆の視線が正雪に集まるなか、彼女は、いちご大福を一生懸命食べていた。 
「うむ??」
「とりあえず守ることは決定ね」 
「だな」
「だね」
 なにやら話がとんでもないことになっているような。
 正雪は、皆が自分のことで悩んでいるとは、あまり思わずただ、いちご大福を食べるのであった。美味しいと思いながら。

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