後日談
最近国広は、思うことがある。たぶん懐かれている。主が突然寄越してきた元代理審神者に。
今も執務室の長椅子に座り、豚のぬいぐるみを愛でいる。しかし愛でるのは、いいとして、何故ここなのかと国広は、聞きたい。
「正雪」
「どうされた国広殿」
「あんたここにずっといるより、他のところに行った方がいいだろ。他の連中もあんたと話したいだろうし」
気遣いのつもりで国広は、言ったが、正雪は、何故かガーンとショックを受け、しょぼんとしてしまった。
「うむ……」
「……いたいならいればいい」
「了解した」
またぬいぐるみを撫ではじめると、正雪に国広は、溜め息をついた。自分は、懐かれるようなやつじゃないと思いながら。
「国広ちょっといい??」
しばらくして清光が執務室に。ちょこんと座っている正雪を一目見ると、国広の所へ。
「完全に懐かれてるじゃん」
「……懐かれてないといいたいが……」
「無理無理。正雪さん真っ先にここへ来て、一通り皆に挨拶したら、絶対ここに戻って来るもん」
「そうだな」
そう屋敷に彼女が来るときは、先ずここへ来て、国広に挨拶をし、その後皆のところへ挨拶をしたのち、またここへ戻って来る。
国広としては、せっかく来たのだか、他のところへいってもいいのではと思う。
「清光俺は、懐かれるようなやつか??」
この山姥切国広いい意味でほかの山姥切国広と違いすぎる。普段は、仕事に追われているが、面倒みもいいやつだ。
清光は、国広の行動を思い出しながら言った。
「懐かれるようなやつだよ。思い出してみなよ。国広ずっと正雪さん守ってるじゃん」
「それは、責任者としてだ!! 俺は、仮にもこの組織を管理してるんだぞ!! 国永や藤四郎が巻き起こす事件を防ぐこも仕事だ!!」
「だとしても国広ずっとそばに置いてるしね」
「そばに何故か居るだけだ!!」
そういるだけ。友美に頼まれたの様子をよくみては、いるが、ここまで一緒にいるつもりは、なかった。
正雪は、清光と国広の会話を聞きながら、目を伏せる。
ここの刀剣男士たちは、皆優しい。親しいと言われればまだ親しくは、ない。
そうなるとよく話をし、親しいと言えるのは、国広くらいだ。
ついつい心地よいのと自分にできることを考えた結果この執務室に彼女は、いることにしている。
やはりそれでは、駄目なのだろう。正雪は、立ち上がると、豚のぬいぐるみをもち、部屋を出ていった。
「正雪さん!?」
「……清光が余計なことを言うからだろ」
「なんで俺のせい!?」
確かに清光のせいでは、ない。国広は、溜め息をつくと立ち上がった。
「あとあと光忠に文句を言われるのも困るからな」
本日やる分に関しては、正雪の手伝いもあり、終わっている。
国広は、清光と執務室を後にすると、正雪を探した。
「台所にもいない……」
「道場にもな……」
いったい何処に行ったのだろうか。屋敷のそとに出ていなければいいが。
その後と広い屋敷のなかを国広たちは、探し、いたのは、なんと庭のすみにある花畑だった。
「物吉がいっていた所だな……」
「こんなところあったんだ」
国広たちの声が聞こえ、正雪は、まずいとその場を離れようとしたが、すぐに手を誰かに掴まれた。
「国広殿……」
「まったくあんな様子で出ていかれたら気になるだろ。その……俺もすまなかった。あんなことを言ってしまって……」
「……かまわない。気にしていないから」
「嘘つけ」
国広は、そういうと、豚をのぬいぐるみをみる。
「伊織ピグレットも嘘は、つくなと言ってるぞ」
「国広殿……ぬいぐるみと話せるのか??」
清光が背後で笑いをこらえているのがわかる。国広は、どうしたものかと頭を悩ませた。
相手は、純粋無垢。へたに嘘は、つけないし、かといって傷つけたくもない。
「話せないが……感じるというか……」
「ふむなるほど」
「とりあえず俺も悪かった。あんたは、好きにすればいいから!!」
「ありがとう」
正雪が微笑むので、国広は、ホッとしたがこのとき事件がおきた。
なんと正雪のもっていたぬいぐるみが突然国広に体当たりをし、国広は、意識を失った。
ようやく意識を取り戻したとき、違和感を覚えた。
地面が近い。国広は、まさかと辺りを見ると、清光と正雪がほっとした顔をしていたが。
「国広よかった!! 当然豚になるし!! 意識なくすし!!」
「国広殿その……すまない……何故かピグレットぬいぐるみが……」
国広は、体を起こす。
「ぶひ!!」
「手鏡を!? はいこれ」
清光に手鏡をだしてもらい、鏡に写る自分を見て、国広は、困ったかおに。
鏡には、見事に正雪がもつ人形と同じ豚が写っていた。
「清光殿どうにかならぬのか!?」
「うーん。分からないな……」
「むぅ!!??」
「この組織で一番力のある刀剣は、国広だからねぇーその国広がこうなったら、それこそ、姫か蛍じゃないと解けないかも」
正雪は、そんなと、落ち込む。その間にもなんとぬいぐるみは、今度は、清光に体をぶつけ、今度は、清光がピグレットになってしまった。
「ぶひ」
「ぶひー!!!!」
なく清光と呆れる国広。しかしどちらもピグレットなのでかわいい。
正雪は、ぬいぐるみを持つと、次に国広そして清光を抱き上げた。
「ぶひ!!??」
「ぶひ……」
「清光殿おとなしくしてくれ!! 国広殿は、呆れないでくれ……」
思ったよりかるく、なんとか、執務室に二頭を運べた。
部屋の隅で落ち込む清光とながいすわり、タブレットで仕事をしている国広。
ピグレットになっても個性は、でるようだ。
「うむむむ……どうしたものか……」
ぬいぐるみは、あれから、動かないが、原因は、間違いなくあのぬいぐるみだ。
正雪は、魔術でぬいぐるみを解析してみたが、とくに変なところは、ない。
「あきらかに意識をもって動いていたな……」
そこも加味し、さらに分析してみたが、不思議な力の痕跡だけが出てきた。
「魔術……いや違う……これは……」
魔力とは、少し違うこの感覚。正雪にとっては、慣れ親しみのある感覚だ。
「……神力か」
しかし神の力でもぬいぐるみに意識を宿すことなど簡単には、出来ないはず。
「ぶひ」
「国広殿??」
タブレットで仕事をしていた国広は、突然長椅子なら降り、本棚の一番上を見ていた。
「端のあの書物か!!」
正雪は、取ろうとしたが、そもそも背が届かない。
「む……」
どうしたものかと悩んでいると、光忠が書物を取ってくれた。
「はい正雪さん」
「ありがとう光忠殿」
「どういたしまして。そういえば国広君しらないかい??」
「国広殿ならここに」
光忠は、正雪が抱えたピグレットをみて、驚く。しかし間違いなく力の気配は、国広のものだ。
「国広君が、キルケーのピグレットに!!??」
「光忠殿もキルケーを知っているのか!?」
「まぁね。でもなぜ……キュケーオンを食べてないはず……」
光忠がどうしてかと悩んでいる間に、またしても、ぬいぐるみが動きだした。
「光忠殿!! 逃げてくれ!!」
「えっ!?」
正雪の警告むなしく、光忠にぬいぐるみがクリンヒット。見事にピグレットになってしまった。
目を覚ました光忠は、鏡をみて、驚くと冷や汗を流した。
「ぶひぶひー!!!!」
「夕食のしたくができてない……と」
おかしい普通ならば清光のように落ち込むが、国広しかり、光忠しかり気にする所は、仕事のことばかり。
ある意味図太いのだろうか。
「とりあえずヒントだ」
正雪は、国広の指定した書物を読み、ある答えがでた。
「星属性……??」
正雪が首をかしげたとき、執務室のそとから声が聞こえ、慌てて向かうと、なんとぬいぐるみが次々に刀剣男士を襲い、皆がピグレットに。
「ぶひぶひー!!!!!」
「水心子殿!!??」
清麿がピグレットになってまで、落ち込む水心子を励ましている。ほかのところに行くと、宗近は、ピグレットになっても鶯丸と茶を飲んでるは、道場では、兼定と安定が互いの頭をぶつけ合い、闘牛ならぬ、闘豚をしてる。
正雪は、理解の出来ない事態に困惑しはじめた。
「普通困惑せぬか!!??」
「ぶひ」
「慣れっこだから特になにも思わないと!?」
それは、どういうことかと国広に正雪は、聞きたかったが、そんなこと言ってる暇は、ない。
今任務で帰ってきてない刀剣男士達だけが、ピグレットにならないですんでいる。
正雪は、先ずは、と屋敷の門を閉め、次に任務に出てる刀剣達に状況の連絡と帰還はするなと通達を出した。
「問題は、これをどうするか……」
大広間に集められたピグレット達は、好き勝手に過ごしていた。
喧嘩をするものから、落ち込んでいるもの、仕事をするものから雑談をしているもの。
ある意味適応力が高すぎる。
「あのぬいぐるみは、どこに……」
先ずは、ぬいぐるみを探さなくては、しかし探す手だてがないと途方にくれていると、国広ピグレットが正雪の袴の裾を引っ張る。
「ぶひぶひ」
「いけるのか??」
「ぶひ」
国広ピグレットは、そういうと、皆に何かを伝え、ピグレット達は、部屋を飛び出していった。
正雪は、国広達のあとをおうと、応接間で、ぬいぐるみは、ピグレット達に囲まれていた。
「今捕獲する!!」
網をとり出し、正雪は、ぬいぐるみに向かって網を投げると、ぬいぐるみは、捕獲された。
「ぶひ!!」
暴れるぬいぐるみを正雪は、抱っこするが、困ったかおに。
「姫からの贈り物をこのようにしてしまった……」
こうなってしまったら燃やさなくては、ならないのだろうか。
その場に座り込むと、正雪は、悲しそうに呟く。
ピグレット達は、そんな正雪を励ますように彼女にすりすりしていた。
「ぶひ」
「姫に連絡を??」
「ぶひ」
一先ず正雪は、友美に連絡をした。
「はーい」
「姫!!」
主の声に思わず張っていたものが緩みかける。
友美は、どこか不安そうな正雪の声色にただ事じゃないと判断した。
「すぐに行くから!!」
友美は、そういうと通話を切った。
「すぐに来るそうだ国広殿……」
顔が真っ青な正雪を国広ピグレットは、心配そうに見ていた。
「ぶひ」
「……ありがとう」
この事態を引き起こしたのは、自分だと今ならわかる。友美には、真実を伝えるがどう罪滅ぼしをすればいいか。
契約を切られるだけならいい。もし自害などと言われたら。
不安と恐怖から小さく体を丸めた。
「正雪!!」
友美の声が聞こえ、正雪は、体をビクッとさせた。
ピグレット達に囲まれ小さく縮こまっている正雪に友美は、困ったように笑うと、彼女の所へ。
優しく背中をさすると座った。
「大丈夫」
「友美……私は……」
彼女が自分の事を名で呼ぶのは、はじめてだ。何時もは、凛としている彼女だが、取り乱すこともあるようだ。
「正雪とりあえず落ち着いて!! 皆がかわいいピグレットで心配してるわよ」
見渡すとピグレット達が心配そうに自分を見ている。
国広ピグレットも頷くとので、一先ず深呼吸を正雪は、した。
「ふぅ……」
「落ち着いた??」
「一応……姫その……」
「大丈夫!! 皆戻せるから!!」
友美がそういい、指を動かすとポンっと音と共に皆ながらもとに戻った。
「戻った~!!! 姫ありがとう!!」
清光は、嬉しそうにいう。
「正雪さんよかったね!!」
「清光殿……その……すまない……」
「いいって!! 気にしない気にしない!!」
清光は、そういうと、部屋をでていき、その後も他の刀剣達と正雪は、その後も会話をし、皆は、じゅんじに部屋をでていき、残ったのは、光忠と国広だけ。
「正雪さん大丈夫かい??」
「あぁ光忠殿」
「ならよかった」
光忠は、そういうと、部屋をでていった。
「姫たすかった」
「いいわよ国広」
「国広殿すまなかった」
「気にするな。こういう時もある。とりあえず俺は、執務室に戻る」
国広は、そういうと、部屋をでていき、残ったのは、友美と正雪だった。
「姫その……私は、どう償えば……」
「償い!? そんなのないない!! 力の暴走なんて、よくあることだし!! とりあえず正雪そのぬいぐるみは、もとに戻ってるから」
ぬいぐるみは、普通のぬいぐるみに戻っていた。
「うっ……姫……」
とうとう、泣き出した正雪に友美は、優しく微笑むと抱き締めた。
「怖かったわよね……大丈夫……正雪は、やれることをしたわ……」
幼い頃の自分を思い出しながら、友美は、言う。
「いっぱい泣いていいから」
幼い頃天照そして光によく言われた言葉を今度は、自分が言う。それだけ成長出来たんだなと思いながら、優しく正雪の背中を撫でる。
「姫……」
赤く腫れぼったくなった目元をした正雪。友美は、ハンカチで彼女の目元を優しく拭いた。
「本当にいいこ」
友美は、そういうと正雪の頭を撫でる。まるで幼児をあやすように。
「姫その……私の力は……」
自分の中にある不思議な物体。魔力とは、違うそれを正雪は、なんとなくだが、認知している。
伊織を助ける際には、訳もわからずただ、力が示すようにそれをつかった。
「……星というもの……なのか??」
「国広がもしかして書物を見せたの??」
「あぁ」
友美は、どう説明すべきかと考えた。
「正雪は、魔術にもそれぞれ属性があることを知っているわよね」
正雪は、元素変化の魔術を得意とする。彼女は、馴染みのある言葉に頷いた。
「もちろん」
「魔力にも属性があるように神力……神の力にも属性があるの。国俊のように炎だったり、国広のように大陽……光だったりね」
どちらも正雪は、見たことがあった。
「星というのは、属性ということ??」
「まぁそういうことね。しかも厄介な……」
友美は、困ったように笑う。
「厄介とは……」
「私の力の断片ってこと」
「む??」
正雪は、首をかしげる。そもそも彼女は、友美の力をまったく知らない。
「……根源」
「根源……根源!!??」
「そう。まぁ天地開闢やら……色々関係してくるけど!! そういうこと!! だから今回は……正雪がぬいぐるみに動いてほしい。ピグレットに囲まれたい、可愛いと考えたのが……力的にならやってやろう!! ってこんなことになってしまったみたい……」
友美は、苦笑いを浮かべるが正雪は、開いた口が塞がらない。しかし全て納得できた。
国広達に各々新たな力を与えられること、自分が新たに肉体を手に入れられたこと。その全てに説明がつくのだ。
「とりあえず宇宙に関係してるとか、色々あるから!! 星って呼ばれることもあるみたい!!」
友美は、アワアワしながら、説明した。
「姫それこそ、これをどうにかしなくては、私は、さらに大事件を起こすのでは!?」
「それは、大丈夫よ!! あくまでも断片だから!!」
しかしこれは、訓練は、必要には、なってくる。
「とりあえず……特訓する??」
「もちろん!!」
友美は、だよねと思いつつ、どうすべきかさらに悩む。なにせ友美は、感覚で全て把握しているのだ。
「とりあえず正雪力を認知して、スイッチ切れば暴走は、なくなるわ!!」
「わかった」
集中すると、箱が見えた。正雪は、箱の蓋を閉めると、漏れていた神力が消えた。
「これでいいのか……」
「たぶん!!」
「姫その特訓に関しては……」
「蛍に頼むといいわ。蛍も同じだから」
蛍が以前同じと入っていたことを思い出し、正雪は、ホッとした。
「蛍殿なら……安心だ……」
「ならよかったわ」
友美は、そういうと立ち上がる。
「さて私は、また、帰るわね」
「姫その……」
「どうしたの??」
「私も共に……」
服の袖を掴まれ、友美は、驚いたが、すぐに正雪を抱き締めた。
「もちろん!! 帰ったらケーキ食べようね!!」
「姫!?」
「その前に国広に挨拶してくる??」
「なら」
正雪は、ぬいぐるみをもち、国広のところに。彼は、正雪が来ると、顔を上げた。
「もう帰るのか??」
「本日は」
「そうか」
「その国広殿ありがとう……やはり貴殿は、優しい……本当に素敵だな……」
国広は、顔を赤くすると、正雪は、微笑み言う。
「またよろしくお願い申し上げる」
「あぁ」
正雪は、そういうと荷物をもち、執務室を出ていき、友美と帰っていったが、国広は、その後溜め息をついていた。
「本当に……自覚してくれ……」
清光には、懐かれていると言われたが、もしかすると自分が彼女の事をほっておけないのだろう。危なっかしので。
「過保護なのかもな……」
今回の事件で改めて、国広は、そう思ったが、彼は、笑った。まぁいいかと思いながら。
今も執務室の長椅子に座り、豚のぬいぐるみを愛でいる。しかし愛でるのは、いいとして、何故ここなのかと国広は、聞きたい。
「正雪」
「どうされた国広殿」
「あんたここにずっといるより、他のところに行った方がいいだろ。他の連中もあんたと話したいだろうし」
気遣いのつもりで国広は、言ったが、正雪は、何故かガーンとショックを受け、しょぼんとしてしまった。
「うむ……」
「……いたいならいればいい」
「了解した」
またぬいぐるみを撫ではじめると、正雪に国広は、溜め息をついた。自分は、懐かれるようなやつじゃないと思いながら。
「国広ちょっといい??」
しばらくして清光が執務室に。ちょこんと座っている正雪を一目見ると、国広の所へ。
「完全に懐かれてるじゃん」
「……懐かれてないといいたいが……」
「無理無理。正雪さん真っ先にここへ来て、一通り皆に挨拶したら、絶対ここに戻って来るもん」
「そうだな」
そう屋敷に彼女が来るときは、先ずここへ来て、国広に挨拶をし、その後皆のところへ挨拶をしたのち、またここへ戻って来る。
国広としては、せっかく来たのだか、他のところへいってもいいのではと思う。
「清光俺は、懐かれるようなやつか??」
この山姥切国広いい意味でほかの山姥切国広と違いすぎる。普段は、仕事に追われているが、面倒みもいいやつだ。
清光は、国広の行動を思い出しながら言った。
「懐かれるようなやつだよ。思い出してみなよ。国広ずっと正雪さん守ってるじゃん」
「それは、責任者としてだ!! 俺は、仮にもこの組織を管理してるんだぞ!! 国永や藤四郎が巻き起こす事件を防ぐこも仕事だ!!」
「だとしても国広ずっとそばに置いてるしね」
「そばに何故か居るだけだ!!」
そういるだけ。友美に頼まれたの様子をよくみては、いるが、ここまで一緒にいるつもりは、なかった。
正雪は、清光と国広の会話を聞きながら、目を伏せる。
ここの刀剣男士たちは、皆優しい。親しいと言われればまだ親しくは、ない。
そうなるとよく話をし、親しいと言えるのは、国広くらいだ。
ついつい心地よいのと自分にできることを考えた結果この執務室に彼女は、いることにしている。
やはりそれでは、駄目なのだろう。正雪は、立ち上がると、豚のぬいぐるみをもち、部屋を出ていった。
「正雪さん!?」
「……清光が余計なことを言うからだろ」
「なんで俺のせい!?」
確かに清光のせいでは、ない。国広は、溜め息をつくと立ち上がった。
「あとあと光忠に文句を言われるのも困るからな」
本日やる分に関しては、正雪の手伝いもあり、終わっている。
国広は、清光と執務室を後にすると、正雪を探した。
「台所にもいない……」
「道場にもな……」
いったい何処に行ったのだろうか。屋敷のそとに出ていなければいいが。
その後と広い屋敷のなかを国広たちは、探し、いたのは、なんと庭のすみにある花畑だった。
「物吉がいっていた所だな……」
「こんなところあったんだ」
国広たちの声が聞こえ、正雪は、まずいとその場を離れようとしたが、すぐに手を誰かに掴まれた。
「国広殿……」
「まったくあんな様子で出ていかれたら気になるだろ。その……俺もすまなかった。あんなことを言ってしまって……」
「……かまわない。気にしていないから」
「嘘つけ」
国広は、そういうと、豚をのぬいぐるみをみる。
「伊織ピグレットも嘘は、つくなと言ってるぞ」
「国広殿……ぬいぐるみと話せるのか??」
清光が背後で笑いをこらえているのがわかる。国広は、どうしたものかと頭を悩ませた。
相手は、純粋無垢。へたに嘘は、つけないし、かといって傷つけたくもない。
「話せないが……感じるというか……」
「ふむなるほど」
「とりあえず俺も悪かった。あんたは、好きにすればいいから!!」
「ありがとう」
正雪が微笑むので、国広は、ホッとしたがこのとき事件がおきた。
なんと正雪のもっていたぬいぐるみが突然国広に体当たりをし、国広は、意識を失った。
ようやく意識を取り戻したとき、違和感を覚えた。
地面が近い。国広は、まさかと辺りを見ると、清光と正雪がほっとした顔をしていたが。
「国広よかった!! 当然豚になるし!! 意識なくすし!!」
「国広殿その……すまない……何故かピグレットぬいぐるみが……」
国広は、体を起こす。
「ぶひ!!」
「手鏡を!? はいこれ」
清光に手鏡をだしてもらい、鏡に写る自分を見て、国広は、困ったかおに。
鏡には、見事に正雪がもつ人形と同じ豚が写っていた。
「清光殿どうにかならぬのか!?」
「うーん。分からないな……」
「むぅ!!??」
「この組織で一番力のある刀剣は、国広だからねぇーその国広がこうなったら、それこそ、姫か蛍じゃないと解けないかも」
正雪は、そんなと、落ち込む。その間にもなんとぬいぐるみは、今度は、清光に体をぶつけ、今度は、清光がピグレットになってしまった。
「ぶひ」
「ぶひー!!!!」
なく清光と呆れる国広。しかしどちらもピグレットなのでかわいい。
正雪は、ぬいぐるみを持つと、次に国広そして清光を抱き上げた。
「ぶひ!!??」
「ぶひ……」
「清光殿おとなしくしてくれ!! 国広殿は、呆れないでくれ……」
思ったよりかるく、なんとか、執務室に二頭を運べた。
部屋の隅で落ち込む清光とながいすわり、タブレットで仕事をしている国広。
ピグレットになっても個性は、でるようだ。
「うむむむ……どうしたものか……」
ぬいぐるみは、あれから、動かないが、原因は、間違いなくあのぬいぐるみだ。
正雪は、魔術でぬいぐるみを解析してみたが、とくに変なところは、ない。
「あきらかに意識をもって動いていたな……」
そこも加味し、さらに分析してみたが、不思議な力の痕跡だけが出てきた。
「魔術……いや違う……これは……」
魔力とは、少し違うこの感覚。正雪にとっては、慣れ親しみのある感覚だ。
「……神力か」
しかし神の力でもぬいぐるみに意識を宿すことなど簡単には、出来ないはず。
「ぶひ」
「国広殿??」
タブレットで仕事をしていた国広は、突然長椅子なら降り、本棚の一番上を見ていた。
「端のあの書物か!!」
正雪は、取ろうとしたが、そもそも背が届かない。
「む……」
どうしたものかと悩んでいると、光忠が書物を取ってくれた。
「はい正雪さん」
「ありがとう光忠殿」
「どういたしまして。そういえば国広君しらないかい??」
「国広殿ならここに」
光忠は、正雪が抱えたピグレットをみて、驚く。しかし間違いなく力の気配は、国広のものだ。
「国広君が、キルケーのピグレットに!!??」
「光忠殿もキルケーを知っているのか!?」
「まぁね。でもなぜ……キュケーオンを食べてないはず……」
光忠がどうしてかと悩んでいる間に、またしても、ぬいぐるみが動きだした。
「光忠殿!! 逃げてくれ!!」
「えっ!?」
正雪の警告むなしく、光忠にぬいぐるみがクリンヒット。見事にピグレットになってしまった。
目を覚ました光忠は、鏡をみて、驚くと冷や汗を流した。
「ぶひぶひー!!!!」
「夕食のしたくができてない……と」
おかしい普通ならば清光のように落ち込むが、国広しかり、光忠しかり気にする所は、仕事のことばかり。
ある意味図太いのだろうか。
「とりあえずヒントだ」
正雪は、国広の指定した書物を読み、ある答えがでた。
「星属性……??」
正雪が首をかしげたとき、執務室のそとから声が聞こえ、慌てて向かうと、なんとぬいぐるみが次々に刀剣男士を襲い、皆がピグレットに。
「ぶひぶひー!!!!!」
「水心子殿!!??」
清麿がピグレットになってまで、落ち込む水心子を励ましている。ほかのところに行くと、宗近は、ピグレットになっても鶯丸と茶を飲んでるは、道場では、兼定と安定が互いの頭をぶつけ合い、闘牛ならぬ、闘豚をしてる。
正雪は、理解の出来ない事態に困惑しはじめた。
「普通困惑せぬか!!??」
「ぶひ」
「慣れっこだから特になにも思わないと!?」
それは、どういうことかと国広に正雪は、聞きたかったが、そんなこと言ってる暇は、ない。
今任務で帰ってきてない刀剣男士達だけが、ピグレットにならないですんでいる。
正雪は、先ずは、と屋敷の門を閉め、次に任務に出てる刀剣達に状況の連絡と帰還はするなと通達を出した。
「問題は、これをどうするか……」
大広間に集められたピグレット達は、好き勝手に過ごしていた。
喧嘩をするものから、落ち込んでいるもの、仕事をするものから雑談をしているもの。
ある意味適応力が高すぎる。
「あのぬいぐるみは、どこに……」
先ずは、ぬいぐるみを探さなくては、しかし探す手だてがないと途方にくれていると、国広ピグレットが正雪の袴の裾を引っ張る。
「ぶひぶひ」
「いけるのか??」
「ぶひ」
国広ピグレットは、そういうと、皆に何かを伝え、ピグレット達は、部屋を飛び出していった。
正雪は、国広達のあとをおうと、応接間で、ぬいぐるみは、ピグレット達に囲まれていた。
「今捕獲する!!」
網をとり出し、正雪は、ぬいぐるみに向かって網を投げると、ぬいぐるみは、捕獲された。
「ぶひ!!」
暴れるぬいぐるみを正雪は、抱っこするが、困ったかおに。
「姫からの贈り物をこのようにしてしまった……」
こうなってしまったら燃やさなくては、ならないのだろうか。
その場に座り込むと、正雪は、悲しそうに呟く。
ピグレット達は、そんな正雪を励ますように彼女にすりすりしていた。
「ぶひ」
「姫に連絡を??」
「ぶひ」
一先ず正雪は、友美に連絡をした。
「はーい」
「姫!!」
主の声に思わず張っていたものが緩みかける。
友美は、どこか不安そうな正雪の声色にただ事じゃないと判断した。
「すぐに行くから!!」
友美は、そういうと通話を切った。
「すぐに来るそうだ国広殿……」
顔が真っ青な正雪を国広ピグレットは、心配そうに見ていた。
「ぶひ」
「……ありがとう」
この事態を引き起こしたのは、自分だと今ならわかる。友美には、真実を伝えるがどう罪滅ぼしをすればいいか。
契約を切られるだけならいい。もし自害などと言われたら。
不安と恐怖から小さく体を丸めた。
「正雪!!」
友美の声が聞こえ、正雪は、体をビクッとさせた。
ピグレット達に囲まれ小さく縮こまっている正雪に友美は、困ったように笑うと、彼女の所へ。
優しく背中をさすると座った。
「大丈夫」
「友美……私は……」
彼女が自分の事を名で呼ぶのは、はじめてだ。何時もは、凛としている彼女だが、取り乱すこともあるようだ。
「正雪とりあえず落ち着いて!! 皆がかわいいピグレットで心配してるわよ」
見渡すとピグレット達が心配そうに自分を見ている。
国広ピグレットも頷くとので、一先ず深呼吸を正雪は、した。
「ふぅ……」
「落ち着いた??」
「一応……姫その……」
「大丈夫!! 皆戻せるから!!」
友美がそういい、指を動かすとポンっと音と共に皆ながらもとに戻った。
「戻った~!!! 姫ありがとう!!」
清光は、嬉しそうにいう。
「正雪さんよかったね!!」
「清光殿……その……すまない……」
「いいって!! 気にしない気にしない!!」
清光は、そういうと、部屋をでていき、その後も他の刀剣達と正雪は、その後も会話をし、皆は、じゅんじに部屋をでていき、残ったのは、光忠と国広だけ。
「正雪さん大丈夫かい??」
「あぁ光忠殿」
「ならよかった」
光忠は、そういうと、部屋をでていった。
「姫たすかった」
「いいわよ国広」
「国広殿すまなかった」
「気にするな。こういう時もある。とりあえず俺は、執務室に戻る」
国広は、そういうと、部屋をでていき、残ったのは、友美と正雪だった。
「姫その……私は、どう償えば……」
「償い!? そんなのないない!! 力の暴走なんて、よくあることだし!! とりあえず正雪そのぬいぐるみは、もとに戻ってるから」
ぬいぐるみは、普通のぬいぐるみに戻っていた。
「うっ……姫……」
とうとう、泣き出した正雪に友美は、優しく微笑むと抱き締めた。
「怖かったわよね……大丈夫……正雪は、やれることをしたわ……」
幼い頃の自分を思い出しながら、友美は、言う。
「いっぱい泣いていいから」
幼い頃天照そして光によく言われた言葉を今度は、自分が言う。それだけ成長出来たんだなと思いながら、優しく正雪の背中を撫でる。
「姫……」
赤く腫れぼったくなった目元をした正雪。友美は、ハンカチで彼女の目元を優しく拭いた。
「本当にいいこ」
友美は、そういうと正雪の頭を撫でる。まるで幼児をあやすように。
「姫その……私の力は……」
自分の中にある不思議な物体。魔力とは、違うそれを正雪は、なんとなくだが、認知している。
伊織を助ける際には、訳もわからずただ、力が示すようにそれをつかった。
「……星というもの……なのか??」
「国広がもしかして書物を見せたの??」
「あぁ」
友美は、どう説明すべきかと考えた。
「正雪は、魔術にもそれぞれ属性があることを知っているわよね」
正雪は、元素変化の魔術を得意とする。彼女は、馴染みのある言葉に頷いた。
「もちろん」
「魔力にも属性があるように神力……神の力にも属性があるの。国俊のように炎だったり、国広のように大陽……光だったりね」
どちらも正雪は、見たことがあった。
「星というのは、属性ということ??」
「まぁそういうことね。しかも厄介な……」
友美は、困ったように笑う。
「厄介とは……」
「私の力の断片ってこと」
「む??」
正雪は、首をかしげる。そもそも彼女は、友美の力をまったく知らない。
「……根源」
「根源……根源!!??」
「そう。まぁ天地開闢やら……色々関係してくるけど!! そういうこと!! だから今回は……正雪がぬいぐるみに動いてほしい。ピグレットに囲まれたい、可愛いと考えたのが……力的にならやってやろう!! ってこんなことになってしまったみたい……」
友美は、苦笑いを浮かべるが正雪は、開いた口が塞がらない。しかし全て納得できた。
国広達に各々新たな力を与えられること、自分が新たに肉体を手に入れられたこと。その全てに説明がつくのだ。
「とりあえず宇宙に関係してるとか、色々あるから!! 星って呼ばれることもあるみたい!!」
友美は、アワアワしながら、説明した。
「姫それこそ、これをどうにかしなくては、私は、さらに大事件を起こすのでは!?」
「それは、大丈夫よ!! あくまでも断片だから!!」
しかしこれは、訓練は、必要には、なってくる。
「とりあえず……特訓する??」
「もちろん!!」
友美は、だよねと思いつつ、どうすべきかさらに悩む。なにせ友美は、感覚で全て把握しているのだ。
「とりあえず正雪力を認知して、スイッチ切れば暴走は、なくなるわ!!」
「わかった」
集中すると、箱が見えた。正雪は、箱の蓋を閉めると、漏れていた神力が消えた。
「これでいいのか……」
「たぶん!!」
「姫その特訓に関しては……」
「蛍に頼むといいわ。蛍も同じだから」
蛍が以前同じと入っていたことを思い出し、正雪は、ホッとした。
「蛍殿なら……安心だ……」
「ならよかったわ」
友美は、そういうと立ち上がる。
「さて私は、また、帰るわね」
「姫その……」
「どうしたの??」
「私も共に……」
服の袖を掴まれ、友美は、驚いたが、すぐに正雪を抱き締めた。
「もちろん!! 帰ったらケーキ食べようね!!」
「姫!?」
「その前に国広に挨拶してくる??」
「なら」
正雪は、ぬいぐるみをもち、国広のところに。彼は、正雪が来ると、顔を上げた。
「もう帰るのか??」
「本日は」
「そうか」
「その国広殿ありがとう……やはり貴殿は、優しい……本当に素敵だな……」
国広は、顔を赤くすると、正雪は、微笑み言う。
「またよろしくお願い申し上げる」
「あぁ」
正雪は、そういうと荷物をもち、執務室を出ていき、友美と帰っていったが、国広は、その後溜め息をついていた。
「本当に……自覚してくれ……」
清光には、懐かれていると言われたが、もしかすると自分が彼女の事をほっておけないのだろう。危なっかしので。
「過保護なのかもな……」
今回の事件で改めて、国広は、そう思ったが、彼は、笑った。まぁいいかと思いながら。