後日談
何時も山姥切国広の執務室は、書類で溢れていた。
山姥切長義は、それが気にくわなかった。政府で彼は、書類仕事なんかもやっていたのでこんなことにならないだろうと思っていたからだ。
「国広!!」
突然執務室に表れた長義に国広は、呆れていた。今度は、何をする気かと思いながら。
「俺にもやらせろ!! 国広、君の業務を!!」
国広は、しばらく思考が止まった。そういえばこいつは、この業務をやったことがなかったなと思いながら。
「分かった」
あっさり許可され長義は、拍子抜けした。国広なら駄目だというと思っていたからだ。
「とりあえず説明するからこれを見ろ」
国広が差し出したファイルを長義は、国広の説明を受けながら、全て読んだ。
「……想像以上にやることが多いな」
「当たり前だろ。この組織の運営から労働環境の管理、天照大神との連絡やらその他諸々あるんだからな」
それを一振でこなしている国広は、異常だと長義は、思ったが、彼に出来るのなら自分にも出来ると思った。
「俺は、長義が受け持ってる経理業務を今日は、してくる。困ったことがあったら正雪にでも言ってくれ。あいつならある程度のことは、分かると思うぞ」
国広は、そういうと、執務室を出ていった。
「何故正雪さんが出てくるのか……」
主が突然寄越した魔術師の少女。確かに頼りには、なるようだがそれでも国広が何故彼女を信頼しているのか不思議だ。
長義は、とりあえず目の前の書類を片付けることにした。国広に出来て、自分に出来ないなど彼に負けたようでしゃくにさわるからだ。
席に着き、いざ、書き物を長義は、はじめたがその内容に彼は、絶句するのは、そのしばらく後の事だった。
何時も長義が座っている席に国広がいる。財務と経理の責任者として長義と普段仕事をしている博多は、不思議そうに国広を見ていた。
「国広なんで居ると??」
「長義が業務を変われとな」
国広は、書類を確認し、計算しながら、話をする。
その早さに博多は、目を疑った。
「どうした??」
「国広はやすぎたい!!」
国広は、首をかしげながら、作業を続けた。そして終わると、すかさず博多は、全てを確認した。絶対に間違ってると思いながら。しかし全て確認を終え、博多は、目を見開いていた。
「あっとると!?」
「何故驚くか分からん」
こいつ常識がかけている。博多は、そう思うなか、国広が仕事をしているのを呆然と見ることしか出来なかった。
「博多君!! 食事の予算に関して……」
光忠が博多を訪ね部屋にやってきたが、国広の姿を見て驚く。
「国広君がここに!!??」
「長義に変われと言われた」
光忠は、すぐに顔が青くなる。
「それって大丈夫かい!? 長義君が!!」
光忠は、この組織で三番目に顕現した刀剣であり、初期からのことをよく知っている。
国広だけが生き残った友美のしごきあれを経験していない長義にこの組織の要は、なかなか重荷では、ないだろうか。
「しらん。だがあいつのやる気をむげにしたくない。まぁ最悪姫にやってもらえばいい」
国広は、簡単にいうが、その友美が来ればさらに大変なことになる。天照が。
「天照様がしばらくまた荒れそうだね……」
「それが日本の総氏神の役目だからな」
友美が終わらせた仕事が天照のところにまいこみ、それでさらに彼女は、多忙になる。
「姫にやらせたらそれこそ、高天ヶ原の中枢は、仕事まみれになると」
「まぁそれでいいだろ。どうせ主以外暇だからな。なんなら旦那を投下してさらに多忙にするか??」
光忠は、更に顔を青ざめる。
「それこそ、天照様倒れるから!!」
「まぁ平気だろう主なら」
「国広、天照様のことこき使いすぎ!!」
そうだろうかと国広は、思いながらもては、動かしていた。
「とりあえずこれで全て終わりだな」
博多の机の上に帳簿を乗せると国広は、立ち上がる。
「国広君どこに??」
「休む。まぁ屋敷のどこかには、いる」
国広は、そういうと、部屋をでていってしまった。
帳簿を確認し、博多は、いった。
「完璧」
「さすが国広君」
光忠は、そういいつつもやはり心配していた長義を。倒れないといいなと思いながら。
本日も屋敷に来ていた正雪は、何時ものように国広の執務室に向かっていた。
「姫から饅頭を貰ったし……国広殿と……」
何時もよくしてくれる国広に少しでもお礼が出来たらと正雪は、思ってもってきた。
執務室に入ると、見慣れた金髪は、なくあったのは、銀髪だった。
「なに!? 何故こうなる!!」
書類の山で唸るのは、長義だ。正雪は、驚いた顔をするとその場を離れようとし、視線に貫かれた。
「国広じゃなくてがっかりしたか」
苛立ちを隠しきれていない声色に正雪は、たじろぐ。
「邪魔をしては、いけないと……」
「邪魔ね」
彼女は、決して悪くない。長義は、ため息を着いたとき、頭に何か触れた。
「貴殿は、頑張っている。私にも何か手伝わせてくれぬだろうか……」
撫でられる頭に長義は、少し困った顔をしたが、すぐに言った。
「ありがとう。ならこの件は、分かるかい??」
「これは……国広殿がたしか……」
国広の言ったとおり、正雪は、全てでなくてもしっかりとこの組織のことを把握し、国広が何を今進めていたかも覚えてした。
長義は、正雪のても借りながら、書類を片付けはじめた。
「まったく終わらん……」
昼過ぎになっても書類がまったく減らない。長義は、溜め息を着くと、正雪が茶を出してくれた。
「饅頭??」
「本当なら国広殿にと思ったのだが、貴殿に。疲労には、甘いものがいいから」
長義は、複雑そうな顔をし饅頭を食べた。
「うまい」
「よかった」
正雪は、長椅子に腰掛け、微笑むと、茶を飲む。
「長義殿昼食に行かれては……」
「それなら君もだろ」
「私は、平気だから」
長義は、饅頭を食べ、立ち上がると、正雪の手を掴んだ。
「ホムンクルスと君を一緒にするな!!」
「それは……」
「人の身は、食べなければ死ぬ。君は、自分をもう少し大切にしろ!!」
長義は、そういうと食堂まで正雪を引っ張っていく。
国広がこの少女に過保護になる理由が分かる。まだ自分がホムンクルスだと思っている節がある。確かに生前のあり方では、そうであった今は、違う。
長義に手を引かれ、正雪は、目を伏せた。まだ自分でも信じられていない節がある。死んだはずの自分が肉体を与えられ生きていることが。しかも人として。
「長義殿……そのすまない……」
「謝られる筋合いは、ない」
前から聞こえる長義の、声は、どこか悲しげだ。
正雪は、胸が痛む。目の前の刀剣のつくも神は、とても優しい神。なのに彼を悲しくさせてしまったと。
食堂に着くと、光忠と国広がいた。
「長義君待ってたよ!!」
「ありがとう光忠」
長義は、手を離すと、正雪から離れ、席に着き、光忠が出してくれた食事を食べはじめた。
残された正雪は、気まずそうに立ち尽くしていると、国広が声をかける。
「姫から饅頭を貰ったんだろ??」
「何故それを……」
「姫から聞いたんだ。今朝旦那に怒られて少し正雪が凹んだるだろうからと連絡があったぞ」
そう今朝長義と同じことを光に言われた。
正雪は、左手首に触れた。
「……」
「正雪さん??」
「光忠殿……なにもない……本当に……」
しかし彼女の表情から何もないわけがないと分かる。
国広は、立ち上がる。
「光忠台所借りるぞ」
「分かったよ国広君」
国広は、正雪をつれ、台所に。そして椅子に彼女を座らせると、おにぎりを握りはじめた。
「何があった」
「……それは……」
彼にならはなしてもいいだろう。正雪は、思い口をひらいた。
「今朝包丁を使ったときに……手首を切ってしまって……そのままにしてしまい……光殿に……」
不注意で包丁が、床に落ち、その際にかるく手首を切ってしまった。
正雪からすればこれくらい治ると思っていたが、それを発見した光に言われた。
「何故言わないんだ!! 手首は、へたをしたら出血多量でショック死するぞ!!」
正雪からすればすぐに塞がると思った。しかしその後光は、その事に気づいたのか更に言った。
「もう……ホムンクルスじゃないんだ。正雪頼むから……怪我をしたら言ってくれ……すぐに手当てしないと人の体は……思ったよりも弱いんだから」
その時の悲しげな表情は、正雪が嫌いと思っている事だった。
「私は……悲しませてしまった……」
「だから昼食の時も来てなかったのか」
「その、昼食に関しては、長義殿を手伝っていたゆえ……」
「腹は、減ってなかったのか??」
「……」
黙る正雪に国広は、溜め息を着く。
「減っていたが、長義に気を遣ったのか」
「……うむ」
出来上がった小さなおにぎりを国広は、皿に乗せ、正雪にだした。
「一口サイズ……」
「少食のあんたには、とりあえずこういうのもありかなと。普通のものがいいなら作るが」
「気遣いいたみいる」
出されたおにぎりを食べると、少しだけ気持ちがホッとした。
「腹が減ると気が滅入るものだからな」
「そうだな」
「そういえば何故朝から台所に立ったんだん??」
「その……おみおつけを作ろうと……」
国広は、頭の中の辞書をひらいた。
「おみおつけ……味噌汁か」
「さよう。せてめそれくらいしたいと……」
「で見事に失敗したと」
「うむ……結局光殿が作ってしまったから……」
「旦那なら治ったらやっていいと言わなかったか??」
「言っていたが……はたしてやらせてもらえるか……」
「旦那ならやらせたくれるだろ」
「本当だろうか……」
「本当だ。旦那も姫も自分のマイナス面を認めて、変わろうとするやつには、手を貸してくれるからな」
自分もそうだったように。二人なら正雪にもそうだろう。
「ならまた頼んでみることにする」
正雪は、少し笑うとおにぎりを食べた。
「そういえば……塩引きの鮭があったな……焼こうか??」
正雪の動きが止まり、国広は、まさかとあることに気づいた。
「……もしかして塩辛すぎて苦手なのか??」
「……うむ」
「なら光忠にも伝えておく」
「助かる」
一応嫌いなものもあるのかと驚いた。
「食に無頓着なわけでは、ないんだな」
「一応……食べては、いたから……栄養を吸収しなかったが……」
「ホムンクルスとは、難儀な生き物だ。それか魔術師だからか??」
「分からない……」
「そうか」
魔術師だからでは、ないとしたら、ホムンクルスだからなのだろうか。
国広は、生前の彼女を思い出しながら、考えていた。
「あとリンゴ食べるか??」
正雪は、頷くと、手慣れた手付きで国広は、リンゴを剥く。
皿に乗せられたリンゴは、うさぎの形をしていた。
「うさぎ……」
「食べてくれ。残されたら困る」
正雪は、頷くと、リンゴを食べた。なかなか甘く美味しい。
「うまい」
「それは、よかった」
正雪がおにぎりとリンゴを食べ終えると
国広は、食器を片付けた。
「国広殿ありがとう」
「少しは、元気になったようでよかった」
正雪は、頷くと、立ち上がる。
「長義殿を手伝わなくては!!」
「その件だが俺がやるから問題ないぞ」
「なんと!?」
国広は、そういうと食堂にいき、長義と何かをはなした。
「国広君は!!」
「長義たすかった。お陰で休めた。後は、任せろ」
何故長義が突然あんなことを言い出したのか、国広には、彼の意図が分かっていた。
「次は、長義が休め」
「国広……そういう君こそ、休め分かったな!!」
「終わればな」
国広は、そういうと食堂をでていき、どうすべきか、正雪は、おろおろしていると、国広に担がれた。
「国広殿!?」
「あんたは、こっちだ。まったくほっとくと一人でまたしょぼんとしてそうだからな」
あながち間違いでは、ない、国広に担がれながら、正雪は、困った顔をしていると、長義が、追いかけてきた。
「国広休む気ないだろ!! 俺も手伝うからな!!」
「はぁ……」
増えた。また正雪だけでも大変なのに。
国広は、なんとかなるかと思いつつ執務室に。そして仕事をはじめると、長義に指示を出しつつ次々に仕事を片付け、正雪は、その間国広に任された仕事をしていた。
あっというまに書類の山は、消え、机の上には、営業終了の立て看板だ。
「はやい……」
「さすが国広殿」
国広が茶をいれている間長義と正雪は、そう言った。
「とりあえず休憩にするか」
「そうだね」
「姫からの饅頭もあるからよければ」
長椅子に腰掛け長義と国広そして正雪は、お茶をはじめた。
緑茶と饅頭が疲れた体に染みる。
「国広もう少し君は、休めないのか!!」
「努力する」
淡々としている国広にたいし、五月蝿い長義。もしかすると、長義なりに国広が心配なのだろう。
「長義殿は、本当に優しいな」
正雪に言われ、長義は、ほほを赤く染めた。
「口は、悪いが面倒みがいいのが、長義だからな」
「確かに」
正雪が笑い、国広が言うなから長義は、気まずそうに茶を飲んだ。
「ありがとう」
「そういえば姫が長義殿に関して言っていたことが……」
まさかあの事かと長義は、顔を青ざめる。
「山姥切りの逸話について、気にしているからと……」
「……姫!! 余計なことを!!」
「私は、その逸話は、長義殿のものと思っている。だから……貴殿は、消えたりしない」
友美は、言っていた刀剣とは、その逸話そして歴史から人格が形成される。
そして山姥切長義は、自分のよりも有名になった写しである山姥切国広の事が気にくわないと。
その理由としては、山姥切と名付けられた逸話も写しに取られてしまうと思っているからと。あくまでも友美の推測だが、正雪もこの話を聞いてなんとなく納得は、していた。
「君は……」
純粋だからこそ真っ直ぐに自分を見てくることができるのか。
長義は、目を伏せる。
「まったく自分の写しなら実力を認め、臆するなとこいつは、思ってるんだ正雪」
国広の言葉に長義は、顔を真っ赤にした。
「国広!!」
「ほらな」
「違う!!」
正雪は、楽しげに笑った。
「本当に仲のよいことだ」
歴史的にもこの二振の関係は、色々ある。そしてそれが彼らの形に関わってきている。
正雪は、改めてそう思いながら、言った。
「刀剣とは、やはり奥が深い。刀の歴史、そして逸話や持ち主がが関係してくるのだから」
正雪の言葉に頷く長義とどうでもよさげな国広。
そんな国広に長義が気に食わん様子だが、彼にとっては、今が大切なだけである。
また長義が国広につかかっているが、国広は、涼しげに無視していた。
刀の関係と言うのも色々あるんだなと正雪は、思いながら、微笑むのであった。どこか楽しげに。
山姥切長義は、それが気にくわなかった。政府で彼は、書類仕事なんかもやっていたのでこんなことにならないだろうと思っていたからだ。
「国広!!」
突然執務室に表れた長義に国広は、呆れていた。今度は、何をする気かと思いながら。
「俺にもやらせろ!! 国広、君の業務を!!」
国広は、しばらく思考が止まった。そういえばこいつは、この業務をやったことがなかったなと思いながら。
「分かった」
あっさり許可され長義は、拍子抜けした。国広なら駄目だというと思っていたからだ。
「とりあえず説明するからこれを見ろ」
国広が差し出したファイルを長義は、国広の説明を受けながら、全て読んだ。
「……想像以上にやることが多いな」
「当たり前だろ。この組織の運営から労働環境の管理、天照大神との連絡やらその他諸々あるんだからな」
それを一振でこなしている国広は、異常だと長義は、思ったが、彼に出来るのなら自分にも出来ると思った。
「俺は、長義が受け持ってる経理業務を今日は、してくる。困ったことがあったら正雪にでも言ってくれ。あいつならある程度のことは、分かると思うぞ」
国広は、そういうと、執務室を出ていった。
「何故正雪さんが出てくるのか……」
主が突然寄越した魔術師の少女。確かに頼りには、なるようだがそれでも国広が何故彼女を信頼しているのか不思議だ。
長義は、とりあえず目の前の書類を片付けることにした。国広に出来て、自分に出来ないなど彼に負けたようでしゃくにさわるからだ。
席に着き、いざ、書き物を長義は、はじめたがその内容に彼は、絶句するのは、そのしばらく後の事だった。
何時も長義が座っている席に国広がいる。財務と経理の責任者として長義と普段仕事をしている博多は、不思議そうに国広を見ていた。
「国広なんで居ると??」
「長義が業務を変われとな」
国広は、書類を確認し、計算しながら、話をする。
その早さに博多は、目を疑った。
「どうした??」
「国広はやすぎたい!!」
国広は、首をかしげながら、作業を続けた。そして終わると、すかさず博多は、全てを確認した。絶対に間違ってると思いながら。しかし全て確認を終え、博多は、目を見開いていた。
「あっとると!?」
「何故驚くか分からん」
こいつ常識がかけている。博多は、そう思うなか、国広が仕事をしているのを呆然と見ることしか出来なかった。
「博多君!! 食事の予算に関して……」
光忠が博多を訪ね部屋にやってきたが、国広の姿を見て驚く。
「国広君がここに!!??」
「長義に変われと言われた」
光忠は、すぐに顔が青くなる。
「それって大丈夫かい!? 長義君が!!」
光忠は、この組織で三番目に顕現した刀剣であり、初期からのことをよく知っている。
国広だけが生き残った友美のしごきあれを経験していない長義にこの組織の要は、なかなか重荷では、ないだろうか。
「しらん。だがあいつのやる気をむげにしたくない。まぁ最悪姫にやってもらえばいい」
国広は、簡単にいうが、その友美が来ればさらに大変なことになる。天照が。
「天照様がしばらくまた荒れそうだね……」
「それが日本の総氏神の役目だからな」
友美が終わらせた仕事が天照のところにまいこみ、それでさらに彼女は、多忙になる。
「姫にやらせたらそれこそ、高天ヶ原の中枢は、仕事まみれになると」
「まぁそれでいいだろ。どうせ主以外暇だからな。なんなら旦那を投下してさらに多忙にするか??」
光忠は、更に顔を青ざめる。
「それこそ、天照様倒れるから!!」
「まぁ平気だろう主なら」
「国広、天照様のことこき使いすぎ!!」
そうだろうかと国広は、思いながらもては、動かしていた。
「とりあえずこれで全て終わりだな」
博多の机の上に帳簿を乗せると国広は、立ち上がる。
「国広君どこに??」
「休む。まぁ屋敷のどこかには、いる」
国広は、そういうと、部屋をでていってしまった。
帳簿を確認し、博多は、いった。
「完璧」
「さすが国広君」
光忠は、そういいつつもやはり心配していた長義を。倒れないといいなと思いながら。
本日も屋敷に来ていた正雪は、何時ものように国広の執務室に向かっていた。
「姫から饅頭を貰ったし……国広殿と……」
何時もよくしてくれる国広に少しでもお礼が出来たらと正雪は、思ってもってきた。
執務室に入ると、見慣れた金髪は、なくあったのは、銀髪だった。
「なに!? 何故こうなる!!」
書類の山で唸るのは、長義だ。正雪は、驚いた顔をするとその場を離れようとし、視線に貫かれた。
「国広じゃなくてがっかりしたか」
苛立ちを隠しきれていない声色に正雪は、たじろぐ。
「邪魔をしては、いけないと……」
「邪魔ね」
彼女は、決して悪くない。長義は、ため息を着いたとき、頭に何か触れた。
「貴殿は、頑張っている。私にも何か手伝わせてくれぬだろうか……」
撫でられる頭に長義は、少し困った顔をしたが、すぐに言った。
「ありがとう。ならこの件は、分かるかい??」
「これは……国広殿がたしか……」
国広の言ったとおり、正雪は、全てでなくてもしっかりとこの組織のことを把握し、国広が何を今進めていたかも覚えてした。
長義は、正雪のても借りながら、書類を片付けはじめた。
「まったく終わらん……」
昼過ぎになっても書類がまったく減らない。長義は、溜め息を着くと、正雪が茶を出してくれた。
「饅頭??」
「本当なら国広殿にと思ったのだが、貴殿に。疲労には、甘いものがいいから」
長義は、複雑そうな顔をし饅頭を食べた。
「うまい」
「よかった」
正雪は、長椅子に腰掛け、微笑むと、茶を飲む。
「長義殿昼食に行かれては……」
「それなら君もだろ」
「私は、平気だから」
長義は、饅頭を食べ、立ち上がると、正雪の手を掴んだ。
「ホムンクルスと君を一緒にするな!!」
「それは……」
「人の身は、食べなければ死ぬ。君は、自分をもう少し大切にしろ!!」
長義は、そういうと食堂まで正雪を引っ張っていく。
国広がこの少女に過保護になる理由が分かる。まだ自分がホムンクルスだと思っている節がある。確かに生前のあり方では、そうであった今は、違う。
長義に手を引かれ、正雪は、目を伏せた。まだ自分でも信じられていない節がある。死んだはずの自分が肉体を与えられ生きていることが。しかも人として。
「長義殿……そのすまない……」
「謝られる筋合いは、ない」
前から聞こえる長義の、声は、どこか悲しげだ。
正雪は、胸が痛む。目の前の刀剣のつくも神は、とても優しい神。なのに彼を悲しくさせてしまったと。
食堂に着くと、光忠と国広がいた。
「長義君待ってたよ!!」
「ありがとう光忠」
長義は、手を離すと、正雪から離れ、席に着き、光忠が出してくれた食事を食べはじめた。
残された正雪は、気まずそうに立ち尽くしていると、国広が声をかける。
「姫から饅頭を貰ったんだろ??」
「何故それを……」
「姫から聞いたんだ。今朝旦那に怒られて少し正雪が凹んだるだろうからと連絡があったぞ」
そう今朝長義と同じことを光に言われた。
正雪は、左手首に触れた。
「……」
「正雪さん??」
「光忠殿……なにもない……本当に……」
しかし彼女の表情から何もないわけがないと分かる。
国広は、立ち上がる。
「光忠台所借りるぞ」
「分かったよ国広君」
国広は、正雪をつれ、台所に。そして椅子に彼女を座らせると、おにぎりを握りはじめた。
「何があった」
「……それは……」
彼にならはなしてもいいだろう。正雪は、思い口をひらいた。
「今朝包丁を使ったときに……手首を切ってしまって……そのままにしてしまい……光殿に……」
不注意で包丁が、床に落ち、その際にかるく手首を切ってしまった。
正雪からすればこれくらい治ると思っていたが、それを発見した光に言われた。
「何故言わないんだ!! 手首は、へたをしたら出血多量でショック死するぞ!!」
正雪からすればすぐに塞がると思った。しかしその後光は、その事に気づいたのか更に言った。
「もう……ホムンクルスじゃないんだ。正雪頼むから……怪我をしたら言ってくれ……すぐに手当てしないと人の体は……思ったよりも弱いんだから」
その時の悲しげな表情は、正雪が嫌いと思っている事だった。
「私は……悲しませてしまった……」
「だから昼食の時も来てなかったのか」
「その、昼食に関しては、長義殿を手伝っていたゆえ……」
「腹は、減ってなかったのか??」
「……」
黙る正雪に国広は、溜め息を着く。
「減っていたが、長義に気を遣ったのか」
「……うむ」
出来上がった小さなおにぎりを国広は、皿に乗せ、正雪にだした。
「一口サイズ……」
「少食のあんたには、とりあえずこういうのもありかなと。普通のものがいいなら作るが」
「気遣いいたみいる」
出されたおにぎりを食べると、少しだけ気持ちがホッとした。
「腹が減ると気が滅入るものだからな」
「そうだな」
「そういえば何故朝から台所に立ったんだん??」
「その……おみおつけを作ろうと……」
国広は、頭の中の辞書をひらいた。
「おみおつけ……味噌汁か」
「さよう。せてめそれくらいしたいと……」
「で見事に失敗したと」
「うむ……結局光殿が作ってしまったから……」
「旦那なら治ったらやっていいと言わなかったか??」
「言っていたが……はたしてやらせてもらえるか……」
「旦那ならやらせたくれるだろ」
「本当だろうか……」
「本当だ。旦那も姫も自分のマイナス面を認めて、変わろうとするやつには、手を貸してくれるからな」
自分もそうだったように。二人なら正雪にもそうだろう。
「ならまた頼んでみることにする」
正雪は、少し笑うとおにぎりを食べた。
「そういえば……塩引きの鮭があったな……焼こうか??」
正雪の動きが止まり、国広は、まさかとあることに気づいた。
「……もしかして塩辛すぎて苦手なのか??」
「……うむ」
「なら光忠にも伝えておく」
「助かる」
一応嫌いなものもあるのかと驚いた。
「食に無頓着なわけでは、ないんだな」
「一応……食べては、いたから……栄養を吸収しなかったが……」
「ホムンクルスとは、難儀な生き物だ。それか魔術師だからか??」
「分からない……」
「そうか」
魔術師だからでは、ないとしたら、ホムンクルスだからなのだろうか。
国広は、生前の彼女を思い出しながら、考えていた。
「あとリンゴ食べるか??」
正雪は、頷くと、手慣れた手付きで国広は、リンゴを剥く。
皿に乗せられたリンゴは、うさぎの形をしていた。
「うさぎ……」
「食べてくれ。残されたら困る」
正雪は、頷くと、リンゴを食べた。なかなか甘く美味しい。
「うまい」
「それは、よかった」
正雪がおにぎりとリンゴを食べ終えると
国広は、食器を片付けた。
「国広殿ありがとう」
「少しは、元気になったようでよかった」
正雪は、頷くと、立ち上がる。
「長義殿を手伝わなくては!!」
「その件だが俺がやるから問題ないぞ」
「なんと!?」
国広は、そういうと食堂にいき、長義と何かをはなした。
「国広君は!!」
「長義たすかった。お陰で休めた。後は、任せろ」
何故長義が突然あんなことを言い出したのか、国広には、彼の意図が分かっていた。
「次は、長義が休め」
「国広……そういう君こそ、休め分かったな!!」
「終わればな」
国広は、そういうと食堂をでていき、どうすべきか、正雪は、おろおろしていると、国広に担がれた。
「国広殿!?」
「あんたは、こっちだ。まったくほっとくと一人でまたしょぼんとしてそうだからな」
あながち間違いでは、ない、国広に担がれながら、正雪は、困った顔をしていると、長義が、追いかけてきた。
「国広休む気ないだろ!! 俺も手伝うからな!!」
「はぁ……」
増えた。また正雪だけでも大変なのに。
国広は、なんとかなるかと思いつつ執務室に。そして仕事をはじめると、長義に指示を出しつつ次々に仕事を片付け、正雪は、その間国広に任された仕事をしていた。
あっというまに書類の山は、消え、机の上には、営業終了の立て看板だ。
「はやい……」
「さすが国広殿」
国広が茶をいれている間長義と正雪は、そう言った。
「とりあえず休憩にするか」
「そうだね」
「姫からの饅頭もあるからよければ」
長椅子に腰掛け長義と国広そして正雪は、お茶をはじめた。
緑茶と饅頭が疲れた体に染みる。
「国広もう少し君は、休めないのか!!」
「努力する」
淡々としている国広にたいし、五月蝿い長義。もしかすると、長義なりに国広が心配なのだろう。
「長義殿は、本当に優しいな」
正雪に言われ、長義は、ほほを赤く染めた。
「口は、悪いが面倒みがいいのが、長義だからな」
「確かに」
正雪が笑い、国広が言うなから長義は、気まずそうに茶を飲んだ。
「ありがとう」
「そういえば姫が長義殿に関して言っていたことが……」
まさかあの事かと長義は、顔を青ざめる。
「山姥切りの逸話について、気にしているからと……」
「……姫!! 余計なことを!!」
「私は、その逸話は、長義殿のものと思っている。だから……貴殿は、消えたりしない」
友美は、言っていた刀剣とは、その逸話そして歴史から人格が形成される。
そして山姥切長義は、自分のよりも有名になった写しである山姥切国広の事が気にくわないと。
その理由としては、山姥切と名付けられた逸話も写しに取られてしまうと思っているからと。あくまでも友美の推測だが、正雪もこの話を聞いてなんとなく納得は、していた。
「君は……」
純粋だからこそ真っ直ぐに自分を見てくることができるのか。
長義は、目を伏せる。
「まったく自分の写しなら実力を認め、臆するなとこいつは、思ってるんだ正雪」
国広の言葉に長義は、顔を真っ赤にした。
「国広!!」
「ほらな」
「違う!!」
正雪は、楽しげに笑った。
「本当に仲のよいことだ」
歴史的にもこの二振の関係は、色々ある。そしてそれが彼らの形に関わってきている。
正雪は、改めてそう思いながら、言った。
「刀剣とは、やはり奥が深い。刀の歴史、そして逸話や持ち主がが関係してくるのだから」
正雪の言葉に頷く長義とどうでもよさげな国広。
そんな国広に長義が気に食わん様子だが、彼にとっては、今が大切なだけである。
また長義が国広につかかっているが、国広は、涼しげに無視していた。
刀の関係と言うのも色々あるんだなと正雪は、思いながら、微笑むのであった。どこか楽しげに。