後日談

 当世で日本刀を持ち歩くとなると少し手間がかかる。
 竹刀を入れる袋に、正雪は、太刀をいれ、街を歩いていた。
「ここか」 
 主に頼まれ、この日やってきたのは、研ぎ師の所だった。
 店内に入り、伝票を渡すと、店主は、奥からあるものを出してきた。
「頼まれていた物です」
「ありがとうございます」
 頼まれていたものを受け取ると、正雪は、担いでいた太刀を店主に見せた。
「もし研いだ方がよいのならお願いしたいんだが……」
 鞘から抜き、刃をみると研ぎ師は、おどろく。
「これは、また……」
「何かあっただろうか……」
「古いものだと思いまして……」
 正雪が店主に見せた刀は、彼女が将軍家から下賜されたあの刀剣だ。
 確かに古いものかと思いつつ店主の反応をみていると、店主は、鞘に刃を納めた。
「これは、今のところ研ぐ必要は、ないですよ」
「ありがとうそうか」
「姫君がとても綺麗に手入れされているようですね」
「そうなのか……」
「みていて分かりますから」
 今の時代でここまで刀の手入れをする人は、珍しいと店主がいうほどに主は、刀を大切にしているようだ。
 正雪は、礼をいい店を後にすると約束の場所に向かった。
 桜舞う公園で待っていると、蛍が走ってきた。
「正雪!!」
「蛍殿」
「本当に鍛練が好きだね」
「日々の積み重ねだからな」
「まぁそうだけどさ」
 今日もまた少しばかり正雪に蛍は、付き合うことになった。
 公園の広いところに行くと、蛍は、結界を張った。
「蛍殿そこまでする必要は……」
「念のため。友美に今日は、結界を張るのには、いいひねぇーって言われたから」
 主がいうのならなにか絶対にある。正雪もそう思った。
 結界を張り終え、さっそく鍛練をはじめた蛍と正雪。
 蛍の太刀筋か、力づよくもその小柄な体を活かし打ち込んでくるので読みにくい。だからこそ、鍛練になる。
 正雪も本来ならば魔術で仕掛ける攻撃をやめ、あえて剣だけで挑む。
 カキーンと金属音がし、また正雪は、刀を手からうちあげられてしまった。
「うむ……」
「よくなってるから落ち込まない!!」
「ありがとう。今日こそは、とは、思ったのだが……」
「簡単に負けてたまるか!!」
 蛍と正雪は、微笑むと、片付けをし、結界をといた。
 そのとたんに邪気が。
「……また!!??」
「またとは??」
「俺いつもこういう感じの邪気がするとき刀剣拾うの!! 色々面倒だから嫌なのに!!」
 蛍は、無視しようかと思ったが、その時先程まで隣にいた正雪がいなくなっていた。
「正雪!!??」
「ならば私が行く!! 放置は、よくないからな!!」
 友美から正雪のお守りも任されている蛍は、ため息を着くと荷物を持ち、正雪の後を追う。
 しばらくして林の中にはいると、金属音が。
蛍は、仮の本体をだし、構え、音のする方にいくと、正雪が戦っていた遡行軍と。
「蛍殿こやつらは……」
「歴史改変主義者っていう刀剣男士の敵」
 襲ってきた遡行軍を蛍は、切り伏せたが、少し違和感を感じた。
 敵は、蛍ではなく何故か正雪を狙ってきてる。
「まさか……主認定されてる……??」
 刀剣にくらべ、審神者は、非力な者も多い。むしろ刀剣より強い主の方が少ないくらいだ。
 蛍は、ニヤリと笑うといった。
「正雪!! 解放していいと思う!!」
 正雪は、ならと彼女には、珍しく悪人がおをした。
「ならば全力でいくとする」
 遡行軍から一歩さがると、刃に炎をまとわせ、正雪は、敵隙をつき切り伏せた。
 見たことがない剣に遡行軍達は、たじろぐ。
「手加減は、むよう。来い」
 次々に消されていく遡行軍を見ながら、蛍は、欠伸をした。
「ふぁ~」
 確かに自分や国広には、負けるが、彼女は、弱くない。
 蛍は、さてとと辺りを散策し、見つけた。倒れていた刀剣男士を。
「今回は、加州清光ね」
 折れかけている刀をとりあえず直すと、加州は、目を覚ました。
「ここは……」
「令和だよ」
「……遡行軍は!?」
 加州は、慌てて起きると、見てしまった。塵になり、消えていく彼らを。
「僕の姉が退治してるよ。とりあえずはやく帰った方がいい。君も主も心配してるだりうから」
 蛍は、そう言うと加州のもとを去ったが、加州は、不思議な少年と蛍を見送ることしか出来なかった。
 刀剣も救出し、蛍は、正雪のところへ戻ると遡行軍は、全ていなくなっていた。
「刃こぼれは……大丈夫そうだな」
「派手にやったね」
「この体に慣れるためにも動かせるときに動かさねば」
 正雪は、そう言うと太刀を鞘に収めた。
「蛍殿その……刀剣男士は……」
「助けたから大丈夫。あと今後何かあったら俺は、正雪の弟っていうことになってるからよろしく!!」
「弟!!??」
「そう!! 口裏を合わせるよろしくね!!」
 とりあえず頷くことにした。確かに瞳の色は、違えど髪色は、似ているので姉弟というのもつうじる人には、つうじるのだろう。
「うむ……」
「どうしたの??」
「姉弟なるものを私は、あまりしらないから……演じられるかと……」
 蛍は、ポカーンとしたのち、笑出す。
「普通でいいの!! 普通で!! ねぇ!!
お姉ちゃん!! でもここは、姉上の方がいいかな……??」
「うーんどちらでもいいと思うが……当世に合わせるならお姉ちゃんかな……??」
「だね!!」
 蛍は、楽しげに笑うと荷物を正雪に渡した。
「ほら」
「ありがとう」
「帰りにぜんざい食べて帰ろうよ!!」
 正雪は、気まずそうな顔に。蛍は、この顔をよく知っている時々光がこの顔をやり、そして体重計に乗っては、ムンクの叫びのような顔になるからだ。
 思わず正雪の腹を両手で掴むと、正雪は、顔を真っ赤に。
「蛍殿!!??」
「うーん痩せすぎ」
「これでも最近、食べすぎて太ってきてるのだが!!??」
「そういってもある程度身長あるんだから、これくらいまだ痩せすぎの方だよ。とりあえず気にせずいくよー!!」
 蛍は、正雪の手を掴むと、歩き出す。
「蛍殿!!」
「正雪スイーツ好きでしょう??」
「うむ……」
「なら決定!! ほらほら行くよー!!」
 国広と違い蛍は、親しみやすいが、少し強引なところがある。それも主にそっくりな。
 公園をで、ぜんざいの美味しい店につくと、さっそく中に。
 店内に見知った顔がいて蛍は、その人のところへ。
「ソーマ!!」
 和服の青年は、目を細める。
「ぜんざい目的か??」
「そう!! ソーマも??」
 ソーマは、頷くと、正雪を見た。
「……あの……」
「友美のやつまた変なのを式にしたんだな」
「狐の残滓式神にしてるやつにいわれたくないよねー」
 蛍は、ソーマの向かいに座ると、正雪を手招きした。
 とりあえず蛍の近くに正雪は、行く。
「座るなら座れ」
「かたじけない」
 ソーマの斜め向かいに正雪は、腰かけた。
 店員に蛍がぜんざいを注文してる間もソーマは、品定めするように正雪をみた。
 少し気味が悪い。そう正雪はかんじる。
「……友美のやつそういう理由か」
 ソーマは、そう呟くと微笑む。
「その……私に何か……」
 我慢できずに正雪は、聞くと、ソーマは、申し訳なさそうな顔に。
「すまん……癖で……」
「癖……」
「あぁ」
 ソーマは、そう言うと立ち上がった。
「ソーマ帰るの??」
「俺は、食べ終えたからな。じゃな蛍」
 ソーマは、会計をすませるとそのまま店を出ていった。
「あの御仁は……」
 微かに感じる力の気配は、普通の者にとっては、弱く感じるが正雪には、分かってしまった。
 彼は、強大な力を秘めてることに。
「ソーマは、神子だよ」
「神子って……彼は、神の遣いなのか……??」
 きたぜんざいを食べながら、蛍は、頷く。
「冬を司る神の遣い。それで神主」
「神職だったのか……」
「だから正雪のこと全部見たんだと思う。じっくり見てたのも見誤りがないようにかな」
 確かに正雪が話しかけてからは、じっくり見てくることは、なかった。 
 ぜんざいを食べながら、目を伏せる。
「……私は、彼から似たようなものを感じた……」
「全てが同じとは、いかなくても、似たような境遇だったとは、いえるかもね!! 友美が彼を助けたから!!」
「姫が……」
「そう!! というかそんなことよりもぜんざい食べようよ!!」
「そうだな」
 光以外にはじめて、遣いをみた。もしかすると正雪が知らないだけでまだ居るのかもしれない。そしてそれぞれに想像できない過去があるのかもしれない。
「……私は」
「まさかソーマのこと知りたいとか??」
「その……神子についてもう少し知りたいと……」
 蛍は、ぜんざいを食べながらいう。
「知っても得しないよ??」
「損得のもんだいでは、なく……」
「まぁ気持ちは、分かるけど。友美に関して深堀は、おすすめしない」
「何故??」
「……魔術師の言葉を借りるなら神秘に触れるからかな」
 たぶん探れば危険があると蛍は、伝えたいのだろう。
「……文献を読むくらいは」
「それくらいならいいと思う」
 正雪ほっとした顔をするとようやく止まっていた匙が動いた。
「うまい」
「それは、よかった」
 もしかすると正雪は、好奇心も旺盛なのだろうか。蛍は、そう考えながら隣でぜんざいを食べる正雪をみて笑うのであった。ようやく元気になったとほっとしながら。
 
  
 
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