後日談

 ただ仕事をしているだけなのに何故こうなるのか。
 どっかーん!!!
 何処かで爆発音が聞こえ、衝撃波で書類の山が全て雪崩れた。
 国広は、生気のない顔で何事かと廊下に出たとき、腹に衝撃を感じ、そのまま座り込む。
 視線を腹に落とすと浅葱色の羽織に白い肌が見えた。
「おい!!」
 誰か分かり、国広は、慌てて揺らすと、彼女は、目を覚ました。
「いっ……」
「何があった」
「国広殿……」
 正雪は、腕を押さえながら、体を起こす。
「突然軽快な音楽と共に爆発が……」
 国広は、ある報告書を思いだし、顔を青ざめる。 
「とうとう来たか……」
「なにが……」
「桃色の厄災だ」
 このままだと非常にまずい、しかし先ずは、怪我人の手当てだ。
「あんた治癒術は??」
「……あまり心得がない」
「分かった。薬研がちょうど戻ってきてたな」
 国広は、正雪を横抱きにし、めったに使われない医務室にいく。すると中は、珍しく多くの刀剣男士達がいた。
「国広君は、問題なかったのか」
「あぁ長義。だがこいつがな」
 どうやら今日の当番は、長義のようだ。奥から薬研の声も聞こえているので、すぐに手当ては、受けれそうだ。
「……姫が新しく契約した式か」
 確かに正しいのだが、長義の言葉に少しチクッと心が正雪は、痛んだ。
「おいその言い方」
「事実だろ??」
「だが物言いっていうのがあるだろ」 
 国広含めいた刀剣男士達から冷たい視線を向けられ、長義は、黙った。
「事実だから私は、気にしてない」
「嘘は、駄目だぜ」
 奥から薬研が出てくると正雪に向かっていう。
「薬研殿……」
「確かにあんたは、姫の式神かもしれないが、式神というには、すこしばかりな‥‥‥」
 国広に座布団の上に降ろされ、正雪は、どういうことかと思う。
「薬研爆発に巻き込まれ負傷している」
「分かった。国広」
 国広が状況把握のため医務室を出ていき、手当てを受けていた刀剣達も出ていった。
「すまなかった」
 刀剣の数が少なくなり、長義は、ぽつりと正雪にあやまる。
「……私こそ」
「君は、なにもしてないだろ。俺は、どうも少し物言いがきついみたいだ。姫にも言われている」
「貴殿は、事実をのべたのみ。それに本当は、優しいと私は、思う」
 国広と話していた長義の目は、とても優しいものだった。それに彼は、先程から正雪の為に手当ての準備をしてくれている。
「よそ者である私の事など放置していてもいいのに。貴殿は、しない。それだけ責任もあるということ。私は、そんな貴殿を凄いと思う」
 長義から桜の花びらが噴出し、正雪は、驚く。
「うむ!!??」
「すまないこれは……」
「刀剣男士は、嬉しいとこうなるんだ。正雪さん。だから気にするな。とりあえず手当てするぞ」
 照れてる長義を見ながら、正雪が微笑む。
「そうか。とても綺麗だ」
 着物の袖を持ち上げ、正雪腕を確認していた薬研が思わず笑いかけ、長義は、さらに顔を真っ赤に。
「ここだな」
「いっ!!」
 傷の手当てをし、痛みをこらえる正雪を見ながら、薬研は、思う。まるでうさぎだなと。
「よし!! オッケー!!」
「かたじけない」
 手当てをおえ、正雪は、立ち上がる。
「私もいかねば……桃色の厄災とやらをとめなくては……」
「あれを停めに!?」
 薬研の反応に正雪は、困惑していた。
「停めらぬのか??」
「停めれるが……捕まえられるかあれを……」
「捕まえる??」
 長義と薬研は、顔を見合わせたのち、長義は、懐なら一枚の写真をだし、正雪に見せる。
「桃の枝……??」
 そこには、変悦もない桃の枝が。
「これが厄災の元凶だ」
「むぅ!!??」
 まさかの桃の枝が元凶だったとは。正雪は、理解不能な出来事に困惑していた。
「月花ノ神子が作った桃の枝で、色々機能を拡張した結果とんでもないものが出来上がったんだ」
 長義は、ため息をつく。
「でこの枝を捕まえるのに、皆いまやっきになってるってこと」  
 薬研は、そう付け加える。
「俺と長義は、ここにいないといけないなら、もし捕まえにいくなら国広と合流するといいぜ」
「君がここで手伝ってくれるならそれでもいいけどね」
 長義の言葉は、嬉しいがいまは、やれることをしなくては。
「ありがとう。私は、捕まえにいくことにする」
 正雪は、そういうと、医務室を出ていった。

 医務室から戻ってからというもの国広は、疲労でまわらない頭をフル回転させていた。
 目の前には、屋敷の図面と、彼の手には、エナジードリンクが。
「国広くん!? そんなの飲んじゃだめだよ!!??」
 持っていたエナジードリンクを光忠に取り上げられ、国広は、むすっとする。
「……チッ」
「舌打ちしてもだめだからね!?」
 これは、そうとう疲れているようだ。
「なら誰がこの事態の指揮を取るんだ」
「それは……」
 天照は、忙しすぎて忙殺され、国広もこの状態。
 蛍に頼りたいが彼は、ナカツクニにおり、連絡を取っても時間がかかるだろう。
 この間にも屋敷のいたるところで爆発が起こっている。
「国広!! 風呂場を爆発された!!」
 国永の報告に国広は、真顔に。
「……人の癒しを破壊するとは万死にあたいする……」
 のろりと国広は、部屋を出ていこうとしたとき、正雪と当たった。
「すまない!!」
 国広は、ふと思い出す。いい指揮官がここにいたと。
「光忠いるぞ」
「いるってまさか……」
「そのまさかだ!! 軍師がいるじゃないか!! ここに!!」
 皆の視線が正雪に向けられた。
「確かに私は……軍師でもあったが……」
「正雪さんに危ないことは、させれないよ!?」
「光坊心配なのは、分かるが過保護になりすぎるのは、よくないぜ。それに今は、人手がほしい」
 国永と国広は、いまの状況を全て、正雪に話をした。するとある共通点が。
「この桃の枝……姫の術がかけられた場所と火の気のある所には、行っていない……」
 国広と国永そして光忠は、この時桃の枝の弱点を見つけた。
「姫だ!!」
 しかし友美は、今いない。三振は、肩を落とすが、ある可能性に気づく。
「正雪なら追い込めるのんじゃないのか!?」
 国永のひらめきに、国広も頷く。
「俺達と違い姫との直接契約だ。なにより姫から与えられてる力の量も多い」
「なら姫と騙せるかも??」
 正雪は、ムリムリと首をふる。
「さすがに……無理だ!! なら火を使い追い込むのは、どうだろうか……」
「追い込むか……」
 追い込むとなると、何処がいいだろうか。この屋敷は、無駄に広くなかなか追い込むにも手間がかかる。
「この離れは……」
 正雪は、なにもかかれていない離れを指差す。
「ここは、倉庫……」
「倉庫ならありだろ?? 姫が術をかけていたはずだし……」
「確かにそうだね!! 鶴さん!!」
 正雪は、頷く。
「ならここへ追い込み捕獲しよう」
「網なら任せろ!!」
 国永が網をもち、倉庫へ向かった。
「あとは、どう追い込むかだな……」
「国広殿火の術を使える刀剣男士は、いるか??」
「一応な。そいつらに声をかけ追い込んでもらおう」
「かたじけない。私も魔術で追い込む」
「ならさっそく実行だね!!」
 光忠そして国広、正雪は、それぞれの持ち場へと行き、すれ違う刀剣男士達に作戦を伝えると、皆が、すぐに動いてくれた。
「まさかこんな使い方をするなんてな!!」
 桃の枝を見つけた国俊が火の術で桃の枝を追い込んでいき、他の男士達は、松明や、何故か花火にそして爆竹まで使い、桃の枝を追い込んでいった。
 天国と地獄というクラシックを流しながら、サイレンを鳴らし走る桃の枝は、めだつ。
「兄貴!!」
「分かりました」
 庭に出ようとした桃の枝を太郎太刀と次郎太刀は、火炎放射器をつかい、桃の枝の動きを停めた。
「よし!!」
「次郎しゃがみなさい!!」
  太郎太刀がそういったとき、桃の枝からビームが。
 次郎は、慌ててじゃがむと、ビームは、なんと屋敷のはなれを破壊してしまった。
「火災だー!!! 鎮火準備!!」
 大包平の合図と共に、消火活動は、すぐにおこなわれたが、それでも人手が足りない。
「主なら火災なんて楽に……」
 鎮火できるのにと思ったとき、笛の音が聞こえ、屋敷をおおうように雨雲が。
 主の気配に大包平は、安心すると、自分の仕事に注視することに。
 その頃正雪の前には、光がいた。
「光殿!!」
「まったく鶯丸から連絡を受けてしてみたら、大変なことに……」
「この雨は……」
「俺が降らした。あの枝雨に濡れるのが嫌なんだ。これで更に追い込みやすくなる」
 光がそういった頃、国広の前に桃の枝が表れた。
 火とは、光の屈折で起こせる。国広は、大陽の力を使い屈折で桃の枝に火をつける。
 桃の枝は、慌てて更に走り出す。そしてその後も他の刀剣男士が指定の所には、桃の枝が向かうように追いたてた。
「正雪来たぞ!!」
「あぁ」
 光は、あえて手出しせずに、様子を見守る。
 桃の枝に手をかざし、正雪は、炎属性の魔術を放ち、桃の枝を追い込んでいく。
「せりゃ!!」
 桃の枝は、冷や汗を流しながら、さらに走り、とうとう倉庫までやってきた。
「いけ!!!!」
 刀身に炎をまとわせ、正雪は逃げようとする桃の枝を太刀を使い倉庫へと打ち込んだ。
「今だー!!!!」
「OK!!!」
 彼女合図と共に、国永と光忠は、網を使い、桃の枝を捕獲した。
「とどまれ」
 光がそう呟くと、桃の枝は、なんと場所転移が出来なくなっていた。
 無事に捕獲し、正雪は、その場に座り込み、国永と光忠もほっとしたような顔をした。
「これも正雪のお陰だぜ」
「さすがだね正雪さん」
「それは、皆がいたからだ」
 皆がいたから出来たこと。ふてくされ、拗ねている桃の枝を正雪は、持つと、何故か桃の枝は、身震いしていた。
「む??」
「もしかしてこいつ正雪が、怖いのか??」
「私は、なにも……」
「正雪さんが姫から与えられ力のせいかも??」
 そんなものあるだろうかと正雪は、思いながら、も倉庫を出た。
 光の姿を見た光忠と国永が驚いた顔をするなか、光は、正雪に微笑む。
「よくやった」
 撫でられる頭に正雪は、微笑む。
「光殿ありがとう」
 桃の枝は、光を見ると更に逃げようとしたが、光に、見事に捕まった。
「お前な……」
「旦那その枝……」
「ツクヨミ所に返してくる!! モアに渡したらまたデータ収集とかいって放し飼いにするからな!!」
 光は、そういうと、桃の枝を持ち、去っていった。
「ツクヨミ様ところか……」
「こりゃまた一騒動ありそうだなぁー」
 正雪の前を歩きながら、光忠と国永が話すなか、正雪は、そういえばここが高天ヶ原だったことを思い出していた。
「天照大神がいるのなら……ツクヨミノミコトもいるか……」
 通説では、男性とされているがこちらでもそうなのだろうか。
 国永と光忠と分かれ、国広がいるであろう執務室に向かうと、彼は、困った顔をしていた。
「国広殿お疲れ様」
「あぁ」
 国広は、書類を片付け追えると、正雪に文を渡す。
「天照から呼ばれてるぞ」
「天照大神から!!??」
 文を確認し、慌てて正雪は、指定された所に行くと、中には、光と天照そして見知らぬ女性が。
「お姉様ということですので、壊れた離れに関しては、私が直すわ」
 天照が緊張した面持ちで頷くなか、光は、正雪に気づくと、手招きをした。
「おいで」
 光に呼ばれ、彼のとなりに行くと、天照と話していた女性が正雪を見た。
 美しい藤色の髪の女性は、優しくは微笑む。
「今回の功労者ね」
「刀剣男士達もだぞ」
「分かってるわ光」
 光とも親しく話しているからには、知り合いなのだろうか。
 正雪は、緊張した面持ちで女性をみる。
「私は、ツクヨミ」
「ツクヨミ……」
「そうよ。今回は、桃の枝が、ごめんなさい」
 正雪は、数泊したのち驚いた顔に。
「貴殿がツクヨミノミコト!!?? その私は……」
「正雪よね。姉上から聞いてるわ」
 姉からは、面白い子と聞いていたが、確かにからかいたくなるような子だ。
「光後の事は、また追って伝えるわ」
「分かった」
 ツクヨミは、微笑むと去っていった。
「疲れた……」
 天照が項垂れるなか、光は、ため息をつく。
「天照それほどの事か??」
「事よ!! 相手は、ツクヨミよ!? 私をお姉様と呼んでるけど、あっちの方が年上だし!!」 
 天照には、悪いが、何故自分が呼ばれたのか気になり、正雪は、光に聞いた。
「その私が呼ばれた理由は……」
「ツクヨミが謝りたいからって事だよ。天照は、癒し求めてだが、気にしないでくれ。ウサギでも撫でさせといたら復活するから」
 光は、そういうとウサギのぬいぐるみを天照の目の前におく。
「うさちゃん!!」
 ぬいぐるみをもふもふする天照。正雪は、大陽神にこの扱いは、いいのかと少し不安になる。
「光殿もう少し……その……やりようが……」
「最適解がこれなんだ」
 確かにすぐに仕事をまた始めた天照。正雪は、そんな天照にお茶くらいならいれてもいいだろうと、したくをし、出す。
「その……よろしければ……」
 正雪は、天照にお茶を出すと、天照の筆が止まった。そしてのろりと立ち上がる。
 まさか逆鱗に触れたのかと正雪は、不安になったが、その時天照が正雪に抱きついた。
「ありがとうー!!!!!」
「いえ……」
「可愛い……もうここに置いておきたい!!」
 その発言に光が溜め息をつくと、天照を正雪から引き剥がした。
「正雪動け!!」
「動く!?」
 言われた通りにとりあえず一歩下がると、天照は、悲しげな顔に。
「光なんて事を!!」
「ひとの眷属を拐おうとするな!!」
 正雪は、驚いた顔に。発言か、して神隠しに自分は、あいかけていたことになる。
「まったく!!」
「癒し……」
「癒しならぬいぐるみにしときなさい!! あとは、こんのすけだ!!」
 ぬいぐるみとこんのすけを押し付けられ天照は、しょぼんとしながら、撫で、また仕事を始めた。
 光は、溜め息をつくと天照の側から離れた。
「正雪行こう」
「わかった」
 天照に挨拶をすませ、二人は、刀剣男士達のいるところに。
 台所に顔を出すと、光忠がお菓子を作って待っていた。
「旦那君も」
「ありがとう」
  台所のテーブルに並んでいたのは、美味しそうなバウムクーヘンが。
「正雪さんも!!」
「かたじけな光忠殿」
 いつのまにか国広もやって来て椅子に座るバウムクーヘンを食べ始めた。
「そうとう国広疲れてるな……」
「光君わかるのかい??」
「わかるよ。光忠」
 光は、微笑む。
「友美と同じだから。友美も疲れると無心にケーキやら食べて、回復したら、はっとしてるから」
 国広を見ていると彼もある程度バウムクーヘンを食べると我に返っている。なにをしていたのかという顔をして。
「無心でバウムクーヘン食べてた……」
「国広君休んで!!」
「……仕事か終わったらな」
「仕事より休日だよ!!」
 光忠が国広にそういうなか光もバウムクーヘンを食べていた。
「美味しい」
「光忠殿の菓子は、何時も旨い」
「そうだな」
 思わず光は、また正雪を撫でる。
「光殿……??」
「なにもない」
 本当になにもない。そしてなんとなく国広と光忠を光は、見ると彼らも分かるという顔をしていた。
「む??」
 正雪は、一人理解できないと思いながら、首をかしげ、バウムクーヘンを食べのであった。
 こうして桃の枝事件は、終結し、平穏がまた訪れた。
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