日常編2

 屋敷の台所では、珍しい刀剣が居た。
「うーん悩むな……」
「日向くんどうかな??」
「光忠さん浅漬けにするのは、どうかな??」
 台所の机には、畑でとれたなすとキュウリが。
「いいね!! なら糠漬けも作ろうかな!!」
「いいね」
 そんな話を光忠と日向は、していると、薄い青緑がかった髪が見えた。
「正雪さんどうしたんだい??」
 声をかけると正雪が壁の後ろ顔を出した。
「糠漬けと聞こえたゆえ……気になり……」
「確か漬物って江戸の世で更に発展したんだよね!!」
「そうそう。漬物じたいは、奈良時代からあるけどね!! そこから室町時代にさらに広がり、江戸で商業が更に発展し、野菜の種類も増えたからね!!」
 漬物一つでも歴史がある。やはり歴史とは、面白いなと正雪は、キュウリとなすをみた。
「なすとキュウリを漬けるのかな??」
「そのつもりだよ正雪さん」
 他に何か漬けたいものが正雪には、あるのだろうか。
「私も手伝っていいだろうか??」
「それは、いいけど……正雪さんどうしたんだい??」
 日向は、不思議そうにきく。
 正雪は、微笑むといった。
「実家というべきだろうか……私を引き取った家の漬物を久しぶりに食したいと思い……」
 光忠と日向は、生前の正雪の人生を思い出していた。
「確かに十代の時に武家に養子に出されたんだったよね……」
「さよう」
「武家なら糠漬けかな??」
 漬物の歴史は、古く、一番古いのは、奈良漬けであり、あとは、平安時代に糠漬け、塩漬け、醤漬け、かす漬け、酢漬けなどが作られるようになり、江戸に入ると更に発展した。
「日向君。駿府は、長野だからねぇ……わさび漬けやヤマゴボウ、味噌や、小梅かな??」
 なにやら凄い話になってきた。正雪は、困惑していると、蕪をもって光がやってきた。
「旦那その蕪は??」
「柚子で漬けようかと思って持ってきたんだ」
「千枚漬けだね!!」
「そうだ光忠」
 光が来たことにより、話題がそれた。
「光殿は、漬物は、普段から漬けてるのかな??」
「浅漬けなら時々な。糠漬けは、糠床の管理が大変だからやってないんだ」
「そうなのか」
「それにうちは、梅干しで占拠されてるから」
 光は、困ったように笑うと、日向がニコッとした。
「色々試行錯誤したいしね!!」
「日向君の梅干しは、美味しいからね!!」
 どうやら組織では、日向の梅干しは、好評らしいが、家では、違うことを正雪は、知っている。
 蛍が逃げるほどに、酸っぱいもから変わり種もあるからだ。
「光殿もしや……美味しいのは、ここへ持ってきているのか?? 日向殿は」
「というより正宗が作る標準のしか食べたないというべきかなここは」
「なるほど」
 変わり種を食べさせられる蛍が少し不憫だ。
「日向君梅干しも漬けてくれるかな?? 一応梅は、準備してるんだ」
「分かったよ光忠さん」
 日向は、そういうとさっそく梅干しを漬け始めた。
「僕は、浅漬けを作るよ」
「わかった。光忠」
 光は、そういうと蕪の処理を始め、一人残された正雪は、どうしたものかと悩む。
「正雪さん野菜洗ってくれるかな??」
「了解した」
 野菜を洗い正雪は、篭に置いていくと、光忠は、漬けていく。
「漬物とは、簡単に出来るのだな……改めて思うと……」
「物によるかな」
 慣れた手付きで光は、とっとと蕪を漬け終えていた。
「光殿早い……」
「旦那君は、料理にかんしても凄いからね」
 光と目が合い正雪は、思わず視線をそらした。
「蕪は、これで三十分ほどしたら出来上がりだ」
「浅漬けもかも」
「糠床には、漬けぬのか??」
「これからやるよ」
 光忠は、糠床の台所の隅から持ってくるとふたを開け、かき混ぜる。そしてキュウリとなすを入れた。
「食べれるのは、明日かな」
「そうか……」
 どうやら正雪は、糠漬けを食べたかったらしい。
「正雪さん糠漬けは、何時でも食事の時に出してるから安心して!! あるから!!」
「光忠殿……ありがとう」 
 しょぼんとしていたのがすぐに元気になった。光忠は、微笑む。
「光君せっかくだし、お昼は、おにぎりと漬物ってどうかな??」
「いいと思うぞ。なら米を炊くか……光忠炊飯器か?? それとも奥戸さんか??」
「おにぎりならおくどさんかな」
「ならやっておくから他のしたくを頼む」
 光は、そういうと台所を出ていった。
「光殿竈門も使えるのか……」
「そうだよ。光くんの炊くご飯は、美味しいんだ」
 正雪は、興味本位で光の後を追うことにした。
 台所をでて、あまり今は、使われていない竈門に。すると光がすでに支度をし、米を洗い米を炊く支度をしていた。
「正雪なんでここに……」
「その手伝えることは、ないかと……」
 光は、微笑む。
「ここは、間に合ってる。ありがとう」
「そうか……」
 釜に米と水をいれ、次に火をおこし、光は、慣れた手付きで米を炊き始めた。
「その……ここにいても??」
「それは、かまわないが、暇だと思うが……」
「久しぶりに見ていたい……」
 光は、眼を細めると、正雪が座っていた隣に腰を下ろした。
「ならこれでも食べるか??」
 光が着物の懐から出したのは、干菓子だった。
「可愛らしい……」
「千鳥の干菓子だ」
 包みごと正雪に渡すと、彼女は、見とれていた可愛らしい千鳥の干菓子に。
「しかし、こんな高価なもの……」
「そこまで高くないよ」
「そうなのか……」
「江戸の頃より砂糖が安価になってるから」
「本当に当世は、豊かだな」
 正雪は、そういうと眼を細め、干菓子を食べた。 
 口のなかですぐにとけた干菓子。彼女は、驚く。
「これ……和三盆!?」
「干菓子といえざ和三盆!! それ以外だと口どけがあまりよくないからな……」
「なるほど」 
 品のある甘味に正雪は、美味しいと思いつつ食べた。
「うまい」
「それは、よかった」
 こうして光と話すのは、久しぶりのような気がする。
 正雪は、何をはなそうかと考えていたとき、光に頭を撫でられた。
「四ヶ月ってあっという間だな」
「というと……」
「来た時に比べて表情が柔らかくなってる」
 まだ朝晩が冷える頃に彼女は、やってきた。もとから計画は、友美から聞いていたが、いざ、対面したとき、人形のようだと光は、感じた。
「光殿撫ですぎだ……」
「いいだろ。減るもんじゃないし」
 ついつい撫でていると溜め息が聞こえた。
「光撫でるのもほどほどに」
 正雪の眼には、白銀の蛇が見えていた。
「水郷、でもかわいくて……ほらウサギみたいで……」
「確かに」
 水郷は、納得してしまい、正雪は、そこさ、否定して欲しいと思ってしまった。
「光殿米は」
「まだ早い!!」
「そうか」
 頭を撫でられ、正雪は、小さくなることしか出来なかった恥ずかしくて。 
 光は、よく我が子の頭も撫でているが、こういう感覚なのかと正雪は、思った。
「後少しかな……」
 光は、撫でるのをやめ、立ち上がると、米の様子を見に行った。
 少し名残惜しかもと、正雪は、思ってしまったが、そんな彼女に水郷が今度は、寄ってきた。
「水郷様!?」
 気づいた時には、肩に水郷が乗っていた。いがいに重く、驚く。
「ずっしりくる」
「そりゃ私は、実体あるから軽くないわよ??」
「光殿は、何時も軽そうだったので……」
「光は、慣れよ慣れ!!」
 もうそろそろいいかなと光は、火加減を確認し、振り向くと、水郷が正雪の肩に乗っていて驚いた。
「珍しいな……水郷が他人の肩に乗るなんて」
「そうなのか……」
「いいじゃない別に!!」
「悪いとは、言ってないよ」
 光は、微笑むと、また釜のほうに。しばらくして米の炊けたいい匂いがしてくると、大きな桶に炊けたご飯を入れた。
「光忠所へ運んでくるから正雪は、そこにある桶にご飯を入れてくれるか??」
「わかった」
 正雪は、立ち上がると、言われたとおりに桶にご飯を入れていく。
「米が艶があり、たってる……」
 なによりいい香りだ。これは、美味しそうだ。
 桶に全てご飯を入れおえ、光と最後の桶を持ち、台所に行くと、すでに光忠がおにぎりを作り始めていた。
「光君は、ゆっくりしてて!!」
「だが……」
「いいから!!」
 何故か光は、台所から追い出されてしまった。
「光忠殿私も共にしても……」
「もちろん!!」
「ありがとう」
 台所の外から正雪は、いいのかと光は、不思議そうに会話を聞いていた。
「……とりあえず結界の調整でもやっとくか」
 光は、屋敷の縁側に移動すると庭に。龍笛を取り出すと、奏で始めた。
 結界にかんしては、とくに綻びもなさそうだ。なら、ツクヨミから依頼されていたことも片付けてしまおう。
 台所に聞こえてくる笛の音は、とても美しく綺麗だ。
「この笛は……」
「光よ。たぶん時間が出来たから、結界の調整と、ツクヨミ様の依頼を片付けてるんだと思う」
 水郷の話を聞いて凄いなと正雪は、思いながら、おにぎりを作る。
 漬物を切り、おにぎりも皿に乗せると本日の昼食が出来た。
「正雪さん後は、僕と日向くんでなんとかなるから、いっておいで」
 光忠がそういうと、正雪は、頷き、お盆におにぎりと漬物、皿を乗せ、台所を後にした。
「うむ……どこにいる……」 
 屋敷を探しても彼は、居ない。笛の音も今は、ないので探せない。
 困っている正雪を見かね、水郷は、言った。
「あっちよ」
「あちらは……」
 正雪の向かった先は、苔むした美しい庭に面した縁側だった。
 光は、琵琶を奏でいた。静かに。
「琵琶まで……」
「珍しいこともあるものねー」
 光は、水郷と正雪の声が聞こえ、演奏をやめた。
「どうしたんだ??」
「光殿その……共にどうだろうか??」
 正雪は、そういうととりあえず笑った。光は、微笑む。
「なら一緒させてもらう」
 正雪は、光の隣に腰を下ろすと、水郷は、さっそくおにぎりと漬物を食べ出した。
「水郷様!?」
「美味しい」
「水郷は、何時もこうだから」
 光は、気づく。正雪のおにぎりより自分の分がでかく少しいびつなことに。
「俵形……」
「それ正雪作」
 水郷は、自慢げに言うと正雪は、アワアワと慌て出す。
「何故申すのですか!?」
「隠すことでもないでしょう??」
 光は、笑った。
「ありがとう」
「その……干菓子の礼……として……」
「そうか。ならいただくよ」
 光は、そういうと食べた。
 少し塩分も少ないがこれも悪くない。光は、続けた。
「美味しい」
「誠か??」
「本当だよ」
 正雪は、ほっとした顔をしていたが、光は、とっとと食べ終えた。
「光殿??」
「これは、早めに食べてしまわないと、厄介なやつはに知れたら大変だから」
 光は、そういうと漬物を食べた。
「厄介というと……」
「国広、長義その他諸々だな」
 漬物もうまい。光は、そういうと、食べた。
 おにぎりと漬物を食べながら、正雪は、何故厄介のなのだろうかと考えていた。
「この漬物うまい」
「それは、よかったな」
「光殿何故厄介なのだ??」
「知らぬ神に祟りなしだ」
 光は、そういうと、漬物を食べる。正雪は、ならこれ以上深く聞かない方がいいと思い、聞くのは、やめた。
「こういう昼もいいものだな」
 そう呟くとおにぎりを食べ、微笑む。久しぶりにどことなく実家の味に、にている漬物もいい。
 正雪と光は、そこからも時々水郷に突っ込みを入れられながら、昼食を食べたのであった。楽しそうに話しながら。
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