日常編2

 暑さで夜中目が覚めた。見慣れない天井を正雪は、みながら、そういえば今日は、屋敷に泊まったと思い出す。
 仕事の件で色々あり終わったのは、深夜。主に連絡をするとなら泊まってゆっくりしなさいなと言われ、久しぶりにここで一晩泊まることにした。
 体を起こし、枕元に置いてあった水を飲むと、手拭いで汗を拭いた。
「……クーラーとやらつけるべきだな」
 立ち上がり、リモコンを操作するとピッと音がなり、エアコンが動き出す。
「厠……」
 起きたついでに厠に行こう。障子を開け、正雪は、廊下に閉めると厠に向かった。
 この屋敷の厠は、正雪が使っている部屋から少し離れている。
 深夜だが最低限の灯りがともされており、そこまで廊下は、暗くない。
 厠につき中に入ろうとしたとき、背筋がゾクッとした。
「……なんかいるのか??」
 視線を感じた気がしたが、正雪は、気のせいだと思うことにした。
 中に入り、ようをたし、手を洗っていたとき、鏡に何か写った。青白い何かが。
 正雪は、顔を青ざめると慌てて持ってきた手拭いで手を拭き、急いで厠をでた。
「高天ヶ原に幽霊など……」
 出ないと信じたい。しかし真実は、分からない。
 正雪は、また背筋がゾクッとし首筋に冷たい何かが触れ、跳び上がった。
 そして凄い勢いで走ると、一目散にある部屋に向かい襖を開けるとそのまま閉め、勢いでダイブした。
「国広殿!!!!」
 寝ていたのに突然飛び付かれ、国広は、間抜けな声をあげ起きる。
「うっ……あんた何時か分かってるのか……」
 体を起こすと怯えるウサギのようにプルプル体を震わせている正雪が腹に乗っている。 
 彼女の姿に国広は、ため息をつくと言った。
「はぁ……正雪こんな時間に男の部屋に薄着で飛び込んでくるな」
「でた……」
「なにが??」
「幽霊が……」
「はぁ??」
 一先ず部屋の灯りをつけ、国広は、あえて正雪から距離をとる。
「幽霊って……正雪平気じゃないのか??」
「あやかしは、斬れるが、幽霊は、斬れぬでは、ないか!!」
「……旦那みたいなこと言うな」
「と申すと??」
「旦那は、虫が苦手なんだ。理由としては、斬ったか斬ってないか分からないって事なんだ。蟲は、斬れるから平気らしいが」
 理由が理由なだけに正雪は、思わず笑ってしまった。
「ふふふ」
「ちなみに姫は、ホラー映画が苦手だ。理由は、叩きのめせないからだ」
「……姫らしいな」
「だろ」
 とりあえず正雪が落ち着いたようで国広は、ホッとした。
「でこのまがりなりにも神の住まいで幽霊だって??」
 付喪神がまがりと、言っていいのかと疑問に思いながらも頷いた。
「さよう」
「何処に出たんだ」
「厠……」
 国広は、困った顔に。
「入れんな」
「そこをなんとか!! そもそも女人用は、今私しか使ってない!!」
「だとしても入ったら倫理観的に問題だろ」
「国広殿!!」
 俺は、幽霊を斬った逸話は、無いんだがと思いつつ立ち上がる。
 刀掛けに置いてある本体を手に持った。
「国広殿……」
「どうにかして欲しくて寝巻きなのに来たんだろ??」
「……というか思わずここに……」
「……とりあえず丑三つ時だしな。今は、あの世とこの世が一番近い時間だ。やるならとっととやるしかないな」
 正雪は、立ち上がるとちょこちょこと国広の後ろに。
「何故後ろ……」
「うむ……」
 おまけに浴衣の袖を掴まれている。
 しかたがない。国広は、そのまま部屋を出ると厠に来た。
「変な気配は、ないが……」
 小さくなっている正雪以外とくに変なところもない。しかし正雪は、違ったまた背筋に悪寒を感じていた。
「いる……」
「幽霊くらい江戸でもいただろ……」
「それとこれは、別だ!!」
「別ってな……」
 国広は、しかたがないと切り替えた。そして辺りをみると確かにいた。女が、正雪の背後に。
「おい」
 しかし見覚えのある人物だった。
「国広殿……??」
 国広は、本体でなんと幽霊をぶっ叩いた。
「うぎゃ!!」
 幽霊は、間抜けな声を出す。
「天照大神なにやってる」
 まさかの正体に正雪は、国広の後ろから顔を出した。
「幽霊にしか見えぬが……」
「正雪今の状態を神を見るためのモードに切り替えてみろ」
「なんだそれは……」
 とりあえず集中してみると、なにやらレバーが中にある。
 これは、もしかして友美が言っていた普段は、幽霊などを見えないようにするレバーというやつだろうか。
 真ん中に今は、されているレバーを神が見えるモードとやらに切り替えると見えた。
 薄いが天照の姿が。
「む!?」
「恥ずかしい!!」
 天照は、そういうと顔をかくした。
「本当にな。日の登ってる間時間がないからと、丑三つ時に分霊をとばすな」
「だって!! 女官が五月蝿いし……正雪に会えないし……でも今日は、たまたま発見できたから話しかけてたのよ??」
 どうやらあの悪寒は、天照が話しかけていたが、正雪が視認できずき、悪寒として感じていたようだ。
「国広殿、天照大神は、何故このような……」
「白野威様と違い、天照大神は、日中しか動けないんだ」
「というと……」
「太陽神といいつつも本来の太陽神じゃない反動らしい。夜は、活動が出来ないから、時々こうして丑三つ時に魂を飛ばして徘徊してるんだ」
 天照は、困ったように笑うと正雪は、不憫そうに天照を見ていた。
「姫ならなんとかならぬのか??」
「友美にお願いなんてしたら、白野威様からなんとか自力でしろと、背負い投げされるわ!! あと何とかする策も一応あるのだけど、これのためだけに使うのもね」
「なるほど……」
「とりあえず天照大神はやく戻れ。正雪にとってもこの時間は、よくない」
「そうね……でももう少しお話ししたいわ……」 
 正雪は、ならと言いかけたが、国広がそれを遮った。
「いいから!!」
 どすのきいた国広の声に天照は、ショボンとし、消えた。
「まったく」
「国広殿あれは、さすがに……」
「だとしてもだ。丑三つ時は、神の加護も薄くなる。そんな時にあんたは、起きとくべきじゃない」
「そうか」
「部屋まで送る」
「ありがとう国広殿」
 部屋まで国広に送ってもらい、おやすみなさいといい彼を見送った。
 言われた通り、正雪は、すぐに布団にはいると眠った。
 そして翌日朝早くに、着替えると、正雪は、天照の生活している区画に。すると庭を歩く天照と会えた。
「天照様」
 声をかけると天照は、うれしそうなかおに。
「正雪!!」
「その……あの時は、ご無礼を……誠に申し訳ありません」
「それを言うのなら私よ!! そうだ!! 少しお茶に付き合ってくれる??」
「天照大神の誘い断る事などなんと失礼な。私なのでよければ是非お供を」
 天照は、一瞬悲しげな顔をしたが、すぐに微笑む。しかたがない。天照とは、こういう生き方をしなければならないのだから。
「なら行きましょう」
「はい」
 その後天照と朝から軽くお茶をし、正雪は過ごした。しばらくはなしをし、その後屋敷の方に戻ったのであった。
 今日も頑張ろうと気合いをいれながら。

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