光明ノ神子

 呪具とは、様々なものがあるが、どれも怪しいものというのが一般的なイメージだろう。
 納戸の整理をしながら、友美は、木箱を開けていた。
「友美なにそれ」 
「預かった呪具よ」
 白野威は、木箱をのぞくと思わずぎょっとした顔に。
「なにその面!!」
「白野威にも見えるのねぇ……」
 友美にも見えている。禍々しいオーラが。
「これタイの呪具らしくてねぇ……」
「タイは、日本よりも呪術が盛んだからねぇ……にしてもそれ人の匂いが……」
「確か……人の顔面の皮をはいで作ったデスマスクとか……」
 白野威は、ぎょっとすると木箱を急いで閉めた。
「友美これ誰から預かったのさ!!」
「えーとー……燕青……」
 白野威は、真顔になる。
「燃やしていい??」
「それは、燕青が困るから駄目よ」
 燕青もある人物から預かったらしいこれは、保管場所として、勇音に家に置くなと追い出され、ここきいたのである。
「なんでここは、変なものも集まるのさー」
「それは、力があるものが多いからでしょう」
 なにより神がいるのに。友美は、木箱を怪訝そうにみる白野威に溜め息をこぼした。
「その代表格がここにいるじゃない」
「代表ってなにさ」
「白野威よ!!」
 呪力と神力を一緒にするのは、よくないが、力の強い神が居るところには、尚更同じようなものが集まる。  
 白野威は、ポカーンとした顔をした。
「私が呼んだって言うの!?」
「まぁ違うけど、縁としてくるかなぁーと。まぁこのデスマスクは、発表会やらの前に、祀って成功をお願いするものらしいわ……」
 白野威は、更に嫌そうな顔に。
「なにそれ……」
「まぁ文化の違いよ……」 
 友美は、木箱を納戸の外に放り出す。
「燕青が引き取りに来るの??」
「引き取りに越させるのよ」
 友美は、そういうとその場を清め、そしてまた別の木箱を置いた。
「友美それは??」
「冠」
 友美は、箱を開けると、美しい冠が。白野威は、驚いた顔をする。
「なぬ!?」
「ということよ。デスマスクより遥かにいいものね」
 白野威は、そんなものと比べるなと言いたかった。なにせかの冠は、天之御中主が身に付けていた冠なのだから。
「最高クラスの神器を変なものと比べるなー!!!!」
 白野威の突っ込みが入るなか、友美は、それを無視し、片付けを終わらせた。
「さて燕青に連絡しよう~」
 納戸から友美は、出ると早速燕青にメールを送った。するすぐに取りに行くと連絡が。
「友美デスマスク取りに来るって??」
「そうよ白野威」
 ようやくこれで変なものが減ると友美は、思った。
「今から来る!?」
 まさか今から来ると返信来るとは。友美は、まぁいいかと、いいよと返信した。
「これ玄関先に出しとく~」
 しかし事件は、起こった。なんと、デスマスクの入っている木箱を鼻で転がし、白野威がデスマスクを家の外に出そうとしていたのだ。
「それよそ様の預かりもの!!」
 友美は、慌てて木箱を持ち上げる。
「いいじゃないのさ!!」
「よくないわ!!」
 例えいわく付きの物であっても。
 友美は、毛を逆立て、木箱を睨み付けている白野威をみて、思った。これ完全な狼では、と。
「やっぱりウルフドッグは、飼ってもいいけど、狼は、家で飼うのは、難しいわね……」
「なにがさ!!」
「ふと思っただけよ」
 そもそも普通家で狼は、飼わないかと変なことを考えながら、友美は、来客の準備をした。
 木箱を白野威が届かないところに置きながら。
 隙あらば、木箱を落として、玄関へ持っていこうとする白野威。
 さすがに太刀を咥え出したので、友美は、白野威に、一喝いれた。
「神器で変なものを切るな!!」
 友美の普段よりも低い声に白野威は、太刀を慌てて片付けた。
「ごめんなさい……」
 おとなしく白野威がなった頃、インターフォンが鳴った。
「はーい!!」
 友美は、出ると、画面には、燕青が映っている。
「友美引き取りに来たぜ」
「ありがとう。ひとまず待っていて」
 玄関に行き、ドアを開けると燕青がなにやら風呂敷を抱えたっていた。
「それなに??」
「モアが友美と頃へ行くなら持っていけってな。いちご大福だと」
 風呂敷を燕青は、友美に渡すという。
「いちご大福!! とりあえずあがって」
「おじゃましまーす」
 相変わらず元気な男だ。友美は、リビングに燕青を案内する。
 リビングに入った燕青は、痛い視線に気づいた。
「白野威様……」
「よくも変なものをうちに置いていったな!!」
 ご立腹な白野威に燕青は、どうしようかと考える。
「白野威いちご大福、燕青くれたよー」
 いちご大福という単語に白野威は、瞳を煌めかす。
「白野威様これは、色々あったんだ!!
すまん!! とりあえずいちご大福で……」
「今回ばかりは、許してやる」
 いちご大福で許すってとんだ、ちょろい女神だろうか。
 友美は、あきれた顔をし、お茶のしたくをしていた。
「にしても……ここは、居心地いいなぁ……」
 燕青は、座布団の上に座ると言った。
 清浄な空気に満ちているからというのもあるが、この日当たりと空気にこだわりのインテリアがいい感じにマッチし更に居心地がよい。
 燕青に茶をだしながら、友美は、いう。
「ありがとう」
「光さんのこだわりを感じる」
「まぁ半分正解かしら」
 いちご大福を乗せた皿もこたつの上に置くと、友美は、木箱も置いた。
「友美ありがとうな!!」
「どういたしまして。とりあえずこれデスマスク!!」
 燕青は、木箱を開け、中身を確認すると顔をひきつり、蓋を閉めた。
「確かに……とっと返してこねぇと……」
「いわく付き??」
「いや……神子と相性悪すぎってだけだ……」
 確かにそう言われるのそうかもしれない。
 友美は、茶をのみながら木箱を見つめる。
「呪術って呪いみたいなもんだしねぇー」
 いちご大福を食べながら、白野威は、いうと燕青も頷いた。
「相手としては、神と繋がりのあるやつに預けたら呪力が強くなるかも!! と思ったらしいんだが……」
「神子の体液使ってない時点でまったく強くならないわよね……力を注いでも浄化するだけだし……」
 友美がそう言うと、燕青は、溜め息をこぼす。
「そうそう~といっても俺達の血を落としたら大変なことになるかもしれないしなぁーこれー」
 友美は、苦笑いを浮かべる。
「だと思うわ」
 普通の人の体液でも呪力は、強くなるといわれているのに、神子のものとなると色々大変なことになりそうでもある。
「とりあえずこれは、送ってと!!」
 燕青は、そういうと持ってきたメモになにか書き、そして木箱にはりつけ、それを放り投げた。すると木箱は、どこかに消えた。
「次元転送!?」
「友美どうだ!! 凄いだろ!! 俺が編み出した術だぜ!!」
「それ……初歩よ……」
 燕青は、驚いた顔になる。
「なんだって!?」
「神子って皆神から術を手解きされて、研鑽積んでるはずなのに……」
 友美の呟きに白野威は、あきれた顔をしいう。
「燕青は、そもそも豪快かつ不器用、力任せだから桜花が教えようとして諦めたのさ……」
 燕青が視線をそらすなか、友美は、苦笑いを浮かべる。
「そっか……」
「よくもこれで神子で来てるのが不思議だよ。私からしたら……」
「白野威様それをいわないでくれるか!?
というか他の野郎達が繊細すぎるんだろ!?」
 友美は、残り三人の男性の神子を思い浮かべる。
「繊細じゃないと思うけど……」
「どこが繊細なのさ」
 光は、きっちりしていて、楸もまたきっちりしているだけ、ソーマは、適当にしてるともいえる。
 友美は、前世から異能を使っていたか、いないかで多きなさがでるのかと思った。
「友美それは、違う」
「そうなのね白野威」
 友美と白野威がそんな会話をするなか、燕青は、歯がゆかった。
「俺もそれで来たらなぁ……」
「心を詠むのは、初歩の初歩さ」
「だとしてもそれができないんだよ。白野威様」
 燕青は、そういうと茶を飲む。
「頭空っぽにして、相手に意識を向けると、聞こえてくるもんさ」
「友美そんなもん??」
「たぶん」
「たぶんかよ!!」
 友美も感覚でやっているため説明が難しかった。
 ひとまずものは、試しと、燕青は、気合いをいれ、白野威の言うとおりしてみたが、脳内には、燕青馬鹿という単語が。
「誰が馬鹿だって!?」
 白野威は、この時けらけら笑いだす。
「出来てるじゃ!!」
「白野威様かよ!!」
「私さ」
 白野威にせめてもう少しいいことを思えと友美は、思いながらいちご大福をたべた。
「にしてもそこまで力使えないのなら、呪具に頼るのもあり??」
 燕青は、白野威の言葉に不服そうな顔になる。
「それは、嫌だね」
「なんでさ」
「タイの呪具ってやべーのいっぱいなのに嫌だぜ」
「そこは、タイ限定なのね……」
「日本よりも呪術が盛んだからなぁー」
 友美は、さすが放浪しているだけは、あると燕青を少し見直した。
「あっちだも体液やら、胎児やら普通に術具にするからなぁ……」
「胎児を!?」
 白野威と友美は、驚くと、燕青は、続けた。
「胎児のミイラだったかな?? に、金箔はっつけたやつ。繁盛の効果があるとかで、金持ちに人気なんだ。今は、法律で禁じられてるから、胎児の遺骨や遺灰を混ぜ込み作ってるがな……だが闇では、胎児のミイラを使ったものが流れてるとかで……タイでは、事件になっていた……」 
 友美と白野威は、顔を青ざめる。
「確か墓がないから……その代わりもかねてるのよね……」
「そうそう。あっちは、輪廻転生がないと信じてるからなぁー死んだら魂まで全部なくなるってなってるから」
 友美は、改めて凄いなと思った。
「世界には、色んな呪術があるからなぁー」
「私には、理解しがたいものも多いけどね」
 白野威は、そういうと、いちご大福を食べた。
「まぁ神とは、似て非なる物だし……」
 燕青もそういうと、いちご大福を食べる。
「ちなみに友美の管理してる物に呪具ってないのか??」
「燕青そうね……」
 友美は、しばらく考えた後、いった。
「無いわね」
「意外」
「そもそもあったら白野威が騒いでるもの。なんなら、燃やされてるわ」
 そもそもそんな物よりよ凄いのがこの家には、いる。
「まぁ太陽神の本体がいるもんな……分霊じゃなくて……」
「そうそう」
 友美は、微笑むと、あくびをしている白野威の方をみる。
「ある意味羨ましがられる状況よね」
「そりゃな」
 まったく女神様感は、ないが。白野威は、二人の会話に耳を傾けながらも呆れた顔をしていた。
「そんなもん知るかつうの」
「確かにね」
 白野威は、立ち上がるとのびをし、そのままお気に入りの座布団に横になり、昼寝をはじめた。
「自由ー」
「それが白野威だもの。それに……数千年あやかしと間違えられて封印されて、縛られていたんだもの……その分も楽しんでもらわないと、日々をね!!」 
 燕青も詳しくは、知らない白野威の過去。彼女が天照として生き、殺され、その後の事は、他の神から聞くことがあっても白野威そして友美は、けっして話そうとは、しないのである。
 たぶん詳しいことを知っているのは、当代の天照と光くらいだろう。
「そっか……」
 燕青は、茶をのみ終えると立ち上がる。
「じゃ友美帰るわ」
「今日は、ありがとう」
 友美も立ち上がると玄関まで燕青を送った。
「こっちこそまたな」
「またね」
 燕青を見送ると、友美は、ドアにカギをかけ、リビングに戻る。
「凄く幸せそう」
 ふと座布団で昼寝する白野威が目に入り、微笑む。
 本当に気持ち良さそうに昼寝をしている。友美は、いちご大福を冷蔵庫にしまい、使った茶器を片付けた。
「また螢のお迎えね」
 友美は、ポツリと呟くと、したくをし、家をでた。螢のお迎えのあと白野威の好きなお菓子でも買って帰ろうと思いながら。



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