光明ノ神子

 友美は、カレンダーを眺めていた。
「いい夫婦の日……」
 今年もやってきました。いい夫婦の日が。友美は、溜め息をつくと、ポテチを食べた。
「ポテチ食べまくって太ってやろうか!!」
「なんでそうなるのさ」
 白野威の突っ込みに友美は、むすっとした顔になる。
「なら光も写真撮らないかと!!」
「光は、友美が太ってるくらいなら普通に撮るつうのー」
 友美は、溜め息をつくと、ポテチの袋をゴムで縛った。
「よねぇ……」
 光は、侮れない。どんな姿でも妻を愛すると公言している光。その覚悟は、凄まじいものといえる。
「いい夫婦の日嫌だ~」
「理由としては、光の暴走??」
「うん」
 友美は、炬燵にはいると項垂れた。
「写真やら何時も付き合ってるけど本当は、嫌だもん……」
 我慢しているかといわれたら、正直違うが、SNSにあげられるのがやはり少し嫌だ。
 今年は、光にしっかり伝えなければと友美は、思った。
「まぁ光なら友美の嫌なことは、しないさ。はっきり伝えな」
「そうするわ!!」
 そしてその夜早速友美は、この事を光に訴えると彼は、友美の予想外の反応をした。
 目の前には、紅茶をのみけろっとしている光。
 友美の予想では、悲しそうな顔をすると思っていたのだ。
「分かった」
「光それだけ!?」
「それだけだよ。だって渋々してくれてたのも知ってたから。友美から無理っていわれたら、やめるつもりだったんだ」
 光は、申し訳なさそうな顔をし言った。
「ごめんなさい……限界まで付き合わせてしまって……」
「それは、いいの……でもSNSの方は、どうなるの??」
 じみに惚気を垂れ流していた結果光は、多くのフォロワーを獲得していた。
 友美もその事は、知っているし、なにより、その惚気を楽しみに皆は、フォロワーしている。
 光は、微笑むという。
「策は、考えている!! ただ……友美の協力が必要なんだ……」
「私の協力??」 
 思わず息をのむと、光は、言う。
「結婚指輪貸してくれる??」
「それは、いいけど……」 
 友美は、結婚指輪を外すと、光に差し出す。
「ありがとう!!」 
 結婚指輪でなにをするのだろうか。友美は、光の、様子を見ていると、彼は、和室からぬいぐるみを持ってくると指輪をぬいぐるみの前におき、花やおしゃれな小物を、ダイニングテーブルのうえに並べた。
「よし!!」
「ちょっとしたフォトスタジオみたい……」
「でしょう?? で後は、写真を撮る」
 スマホで光は、写真を撮ると、友美に見せた。
「おしゃれ……」
「でしょう?? なおかつ、ラブラブ夫婦感も出るんだ」
 友美は、たしかにそうだが、これでいいのかと思えてきていた。
「光これで大丈夫なの??」
「友美俺の投稿見てない!?」
「あまり見てるわけないわよ。本人目の前にいるのに」
 光は、少ししょぼんとする。
「ほら見て」
「光の投稿の写真いがいに……小物ばかり……」
「そう!! で時々友美に参加してもらって後ろ姿だけあげてたというわけ!! あと手とかもだけど……」
 にしても凄い反応をもらえてるなと友美は、感心しながら、光の話しを聞いていた。
「でも光」
「なに??」
「奥さん気になるとか言われない??」
「それがいがいに無いんだよ。それに言われたとしてもスルーだ。よそさまに俺の姫を見せる義理は、ないからな!!」
 光は、微笑むと友美を抱き締めた。
「だから安心して!! これでSNSに友美の写真は、あげないから!! でも……写真は、撮らせてね??」
 友美は、光の頭を撫でながら溜め息をついた。
「……それは、やめないのね」
「やめません!!」
 SNSに後ろ姿でもあげられるのが嫌なので、あげないのなら、それくらいは、いいだろうと友美は、思った。そしていい夫婦の日当日、友美も予想していなかったことが起こった。

 何時ものように仕事をしていると、昼過ぎ、玄関のドアが開いた。
「え??」
 子供達の帰宅には、早すぎる。白野威もいま傍らで寝ている。 
 まさか新手の強盗かと友美は、思い、恐る恐るリビングのドアを開け、拳を構え、振りかざした。
「友美ただいま!!!!」
 必死な光の声に友美は、止まると、光は、息を吐いた。
「殴られるかと……思った……」
「そりゃこんな時間に帰ってきてただいま言わなかったら敵襲かと思うわ」
 呆れた顔をする友美に光は、苦笑いを浮かべる。
「でわざわざ早引きしてきたのは、何故??」
 光は、友美にケーキと花束を差し出した。
「友美お家デートしよう!! いい夫婦の日だし、みずいらずで!!」
「白野威居るのにみずいらずになるの??」
「そこは、気にせずに!!」
 笑う光に友美は、目を細める。
「分かったわ。なら工芸茶いれようかしら」
「華やかでいいね!!」
 光は、そういうとリビングに入り、ケーキを炬燵のうえに置くと、花束を友美に渡した。
「チョコレートコスモスね」
「秋らしくていいかなぁーと!!」
「ありがとう」
 光は、微笑むと和室へ。友美は、その間に花瓶にチョコレートコスモスをいけると、リビングの棚のうえに置いた。
「いい感じね!! でも……黒松と並べられるとは、チョコレートコスモスも思わなかったでしょうね……」
 次女の大切な黒松の盆先と色味があっていることもなかなかの驚きだ。
「これは、和モダンかもしれかい……」
 違うがそういうことにしておく。
 友美は、着替えて出てきた光の方を見る。
「光これどう??」
 そしてチョコレートコスモスを指差した。
「いいと思う。にしても……色味があってるからいいが……チョコレートコスモスも黒松と並べられとは思わなかっただろうか……」
 友美は、光の言葉に思わず笑った。
「ふふふ」
「友美??」
「夫婦で同じこといってると思って!!」
「そうか……やはり夫婦って似てるな」
 しみじみと言う光に友美も頷く。
「やっぱり似てくるのかもね」
 去年よりも光は、テイションが低くて助かる。こうして穏やかにいい夫婦の日を味わえると友美も文句は、ない。
「光その服……」
 友美は、光の来ていた服が何時もと違い驚く。
「光がボーダーのカーディガン!?」
「可愛いでしょう??」
「可愛いし似合ってるわ」
「ありがとう!! 可愛くて買っちゃった!!」
 服にお金をかけたがらない光が珍し。こういうこともあるものだ。
「友美のもあるよ??」
 友美の顔が一瞬凍りたいた。
「え??」
「だから友美のもあるよー」
 聞き間違いかとおもったら違うらしい。友美は、これは、ペアルックがしたくて、買ってきたなと推測した。
「友美に似合うと思って!!」
 友美の考えが分かったのか、光は、慌てて付け足した。 
 友美は、不信げに光を見ると、言う。
「でカーディガンは??」
 友美は、簡潔にはなしをすすめたいたちなので、余計なきとは、言わずきいた。
 光は、慌てて和室へいき、紙袋を持ってきた。
「これ!!」
「ここ……そこそこするブランドじゃない!!」
「いい夫婦の日ですから!! 奮発!!」
 そこは、友美にきてもらうために、奮発したでは、ないだろうか。
 友美は、袋を開け、中を見て、カーディガンを取り出した。
「手触り最高……」
「でしょう??」
 値札をはかし、カーディガンに袖を通した。
「やっぱに似合う!!」
「さすが、光ね」 
 嬉しそうな夫に友美は、微笑むと、パシャとシャッター音が。
「光!!」
「可愛い妻を撮らないといけないから!!」
 友美は、不機嫌な顔になる。
「まったく」
 スマホ越しにニヤニヤしている光に友美は、寒気がしたが、たぶん撮れた写真がよくて笑ってるだけだろう。
「光……キモい……」
 しかし友美のこと呟きで光は、とたんに涙目に。
「だって友美が可愛いから!!」
 ほらと写真を見せに来たので、一応見るとなかなかいい感じだ。
「確かに」
「でしょう!!」
「とりあえず紅茶と珈琲どっちがいい??」
「珈琲かな」
「淹れてくるわ」
「ありがとう」
 友美は、キッチンにいくと、珈琲を淹れはじめた。
 少し光も元気になって一安心。
 珈琲のいい香りがしてくる頃、光がキッチンにやって来た。
「光??」
 後ろから友美を抱き締めると光は、言う。
「最近後ろからぎゅーしてなかったと思って」
「なにいってるの。昨日しに来てたじゃない」
 光は、そういえばと思いつつも言った。
「いいだろ?? 別に」
「まぁね」
 珈琲を淹れ終えると、光は、離れ、友美は、彼にマグカップを渡した。
「ペアのマグカップ!!」
「やたらとペアにこだわってそうだから」
 友美は、そういうと、リビングに戻り、光は、お皿のフォークそしてマグカップをもって戻ってきた。
「お皿ちょうだい」
「はい」
 二枚のお皿を受け取ると、友美は、炬燵のうえに並べ、ケーキの箱を開けると、ケーキを皿に乗せた。
「美味しそうな苺のショートケーキ!!」
「今回は、原点に戻りました!!」
「原点ねぇー」
 友美は、自分がはじめて作ったケーキを思い出した。
 彼のために作った苺のケーキ。友美は、微笑むという。
「いい夫婦の日だから??」
「そういうこと!! 写真撮りたいから少し並べるね!!」
「オッケー」
 可愛く光は、ケーキとマグカップを並べると写真を撮る。
「よし!! これをアップしてー」
 珈琲を飲みながら、友美は、隣で楽しそうな光をみて確りしてるなと思った。
「美味しい」
「ケーキ??」
「珈琲」
「それは、よかった」
 二人は、微笑み合うと、ケーキも食べた。甘酸っぱいケーキに顔を見合わせ言う。
「これ美味しい」
「だな。リピート確定」
 光のおめがねにかなってよかった。
 友美は、隣でケーキを食べながら、楽しげに微笑む光をみて思った。こういういい夫婦の日ならまぁいいかなと。
「幸せね」
「だね!!」
 その後も友美と光は、ケーキを食べ、他愛もない話をし、お家デートを楽しんだ。
「螢のお迎え!!」
「そんな時間か……」
「じゃ、光行ってくるわ!!」
「俺も行くよ」
 友美は、少し驚いたが、すぐに目を細めた。
「分かった」
「少しお散歩デートだね」
「そうね」
 二人は、微笑みあうとしたくをし、家を出た。仲良くてを繋ぎ、秋の空の下を歩く。
 やはりこういう時間も好きだなと友美は、思いう。
 秋の色づき始めた紅葉をみながら、二人は、お迎えに行くのであった。
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