光明ノ神子

 光は、悩んでいた。
「うーんガラスの茶器にするか……このわびさびを感じる……茶器にするか……」 
 本日光は、デパートに来ていた。デパートにある台湾雑貨のお店。そこに茶葉と茶器を見に来た。
「でもこれもかわいい……」
 まるいガラスの茶器。なかをよく見るとハートの形になっている。
 可愛い。光は、そう思いながらもコップの縁が可愛らしい花のようになっている。ものも気になっていた。こちらもまた捨てがたい。
「この茶器とこの急須がセットなのか……」
 さらに悩む。光は、売場をうろうろしながら考えていると、ツンツンと誰かに背中をつつかれた。
「はい何か……」
 振り向くとにっこり微笑む居候が。
 光は、驚きのあまり、目を見開く。
「楸!!?? なんでここにいるんだ!!」
 予想よりも驚かれ楸は、すこし楽しげに笑った。
「妹のお使いかな」
 彼が妹というのは、一人しかいない。光は、気にくわないと言わんばかりにため息をついた。
「友美俺に頼んでくれたらよかったのに……」
 拗ねる光に楸は、半ば呆れながら言う。
「言おうとしたら光がすでに家を出ていたと友美は、言っていたんだが……」
「で暇をしていた楸に頼んだと」
「暇とは、失礼な。私もこのお店に用があって買い物に行くと伝えたら、なら買ってきてと頼まれたんだよ」
 楸は、これで光も納得がいくだろうと様子を見る。
 するの彼の予想道理とりあえずは
納得したようだ。
「因みに楸は、何を買いに??」
 何時も光にけちょんけちょんにされている楸だが、彼は、けっこう色々吟味し買っていたりする。
 ここにもたぶん彼の気に入った物があるのだろう。
「私は、茶葉をね」 
 光は、ポカーンとした顔をした。
「茶葉……??」
 楸は、眉間にシワを寄せる。
「私だって茶葉にこだわりがある!! 光みたいにね!!」
「そうなのか。俺は、台湾や中国茶に関しては、まったく興味が無いから」
 意外な返答に楸は、驚いた。
「あの光が!?」
「そんなに驚くことか??」
「驚くことだよ」
「茶器は、好きだが、茶葉に関しては、まったく興味がない。有名どころの茉莉花茶やプーアル茶は、知ってるが……それいがいは、まったく」
 紅茶にもなかなかこだわりのある光がまさか台湾や中国茶は、ノーマークだったとは。
 楸は、物珍しそうに光をみるなか、光は、茶器セットを手に取った。
「どっちも買うか。ガラスと陶器どちらもあって困らないしな」
「茶器に関しては、さすがの目利きだね……」
「そりゃどうも」
 光は、会計をすませにレジに向かい、会計を済ますの、買った茶器をもって楸の所へ。
「楸は、会計しないのか??」
「もう少しみてからするよ。それにお茶もしたいしね」
「ティーサロンがあるしな……」
「そうそう」
 楸は、この時あることを思い付く。
「光も一緒にどうだい??」
「……分かった。付き合う」
 楸は、微笑むと、すこしだけ他の商品をみて、会計したのち、ティーサロンの方に光と向かった。
 男二人でこんなところに来るのは、どうなのだろう。
 光は、そんなことを思いながら、向かいに座り、メニューを見ている楸の事を見ていた。
「光どうしたんだい??」
「いや……こう言うのってBLとかでありそうだな……と……」
 光の何気ない発言に楸は、思わず飲んでいた水を吐きかけた。
「ゴホ!!」
「まぁ普通は、そう思わないか……」
 楸は、頷きながら、咳き込む。
「普通そんな考えに行きつかない!!」
「だよな……最近……SNSでよくBLの広告を見るからつい……」
「確かに多い……」
 だとしても普通は、考え付かないと思う。
 楸は、メニューをみて、注文するものを決めると、店員に声をかけ注文した。
「東方美人ですね」
「お願いします」
 さて光は、どうするのか。彼ならスタンダードなお茶を頼むだろうと思った楸だが見事に裏切られた。
「このフルーツティーで」
「分かりました」
 店員は、そう言うと去っていき、楸は、思わず言う。
「フルーツティー!? 光ここは、普通に台湾茶を頼まないのか!?」
「飲みたかったのが、フルーツティーなんだからいいだろ!! お昼に焼きそばを食べたせいか、スッキリしたくて……」
 まさかの焼きそばのせいだったとは。
 楸は、心なしかうきうきしている光をみながら思う。
 こいつがせっかく来たからとスタンダードを頼むやつでは、ないと。
「しかし色々あるんだな……東方美人……なるほど……高級なやつ……」
「ヨーロッパでも人気な台湾茶だからね」
「東方美人だもんな」
 名前からして高級そうだなと、光は、この時思っていた。
「友美みたいなお茶とか??」
「なぜそうなるんだ……」
「だって東方美人といえば、友美だろ?? 黒髪、色白なにより可愛くて美しい!! そして強い!!」
 確かに友美は、そうだが東方美人は、そんなお茶では、ない。
「光東方美人は、フルーティーで甘味のあるお茶なんだが……」
「……友美と少し違うな」
「そうかもね」
 あいかわらずの妻へ愛が深い光。彼と話していると本当に友美がよく出てくる。
 楸は、たぶんこういうやつが色々最強なんだよなと思いながら、注文し来た急須にお湯をそそいだ。
「フルーツティーも来たね」
「ありがとうございます」
 店員から光もフルーツティーを受けてると礼をいいそして楸の方をみる。
「そうだな」
 いただきますといいさっそくフルーツティーをのむと、柑橘の酸味とお茶の苦味がマッチし爽やかな口当たりだ。
「美味しい……さすが900円……」
 値段を呟く友に楸は、さらにわらいかける。
 確かに値段に比例して美味しさが決まることもあるが、わざわざ口にすることだろうか。
 やはり家計を管理し、ひび節約といっている光らしいのかもしれない。
「でも900円なら特売の豚肉ロースを1kgちかく買えるんだよな……」
「光……デパートの物と、スーパーの特売は、比べては、ダメだよ……」
「確かに」
 しかし真剣に比べるのが光である。他にも野菜を大量に買えるとか、言い始め、楸は、お茶を飲みながら、笑いを我慢するのに必死だった。
「キャベツが……4つは、買える……なんなら
9つかもしれない……」
 とうとうキャベツまで出てきた。もしかすると光は、スイーツには、お金を惜しまないが、お茶となると話しは、別なのかもしれない。
「光茶葉は、安いのがいいのかい??」
「いや。ある程度のものを選ぶが……デパートの喫茶って高くないか??」
 楸の予想は、外れた。どうやら、色々なものを手作りする光からすれば、デパートのレストランや喫茶は、高いようだ。
「人件費と手間賃が入るからね……」
「やはり自分でいれる方が安くつくな……」
 ならなぜ今日は、ここに来たのかと楸は、いいたくなる。
 光は、そんな楸のことなど気にせずに、フルーツティーを飲むとなにやらメモをした。
「それは??」
「このフルーツティーに関する考察……後で家で作れるかと思って……」
「作る!?」
「この鉄観音茶がアクセントになるのか……でネーブルとレッドグレープフルーツで爽やかさと酸味を追加してと……たぶん白のグレープフルーツだと更に苦くなるから飲みにくくなりそうだ……」
 もしかするの探索のために楸の誘いを受けたのかもしれない。
「このお茶菓子は、胡桃のクッキーかな……いやちんすこうか……台湾と琉球は、交流もあったしな……」
 光が一人色々考えるなか、楸は、そんな友人をみて思った。本当に光は、マイペースかもしれないと。
「これも天真爛漫というべき……はたまた天然というべきか……」
 しかしこれが光らしい。知識の探求の為には、のめり込む。 
 まさか目の前でそれが展開されるとは、思わなかったが。
「光この後まっすがかえるのかい??」
「いや……スーパー寄ってく……」
 考えことをしながら、光は、答えるとまたなにやらメモをしペンとメモ帳をしまった。
「今晩の買い出し。柊麗にお菓子も頼まれたから」
 楸は、微笑むという。
「さすがパパだね」
「楸もパパになったら分かるぞー子育ての大変さ!! にしてもなんで柊麗は、あんなにお転婆なのか……」
 光は、ため息をつくがそのかおは、とても優しい顔をしていた。
「それは、友美に似たからだよ。きっとね」
 光さ、幼い頃の友美を思いだし苦笑いした。なるほどと。
「確かに」
「さてお茶ものみ終えたし帰ろうか」
「そうだな」 
 荷物を持ち、二人は、会計を済ますと、ティーサロンを出た。
「楸は、この後どうするんだ??」
「私は、服を見にいこうかなって」
「服か……」
 光は、また服を買いに来なくてはと思いながらも安いのを通販で買うのもありかとこの時思っていた。
「シャレオツだな……」
「光にそれを言われたくないよ」
 光もおしゃれだろと楸は、少し嫌味を言ったが、光は、それをスルーした。
「じゃ私は、これで」
「また後で」
 二人は、ティーサロンで分かれるとそれぞれの目的の場所へ。
「久しぶりに楸とこうして話すのも悪くなかったな」
「光と久しぶりだったな……水入らずで話すのも……なかなか楽しかったかな……」
 そして同じようなことを呟くと微笑んでいた。
「さて!! 買い物!! 買い物!!」
 光は、そう言うと足取り軽く、スーパーに向かい、楸は、同じデパートで洋服を見に向かったのであった。
 
84/179ページ
スキ