光明ノ神子
照りつける太陽が暑い。光は、そんか中を困った顔をしていた。
「おい!! ホームが違うじゃないか!!」
「インドだとそれが普通さ!!」
彼の突っ込みに隣を走っていた地元民から突っ込みが入った。
「パパヒンディー語出来るの凄いわ!!」
背中から柊麗のそんな声が聞こえるなか、必死になり、ホームを走り、目的の列車がついているホームに。そして目的の車両に乗った。
「乗れた……」
肩で息をし、娘を降ろすと、光は、その場にしゃがみこむ。
「あんたじゃまだ!!」
「すまない!!」
つい座り込んでしまった。光は、慌てて立ち上がり、通路から柊麗をつれ、離れた。
「ここかな?? パパ」
指定の個室を見つけ、なかに入ると、光は、ようやく一息つけるの、部屋にあった寝台に腰を下ろした。
「パパクーラーついてる!!」
「これで少し涼めるね」
楽しげな柊麗を見てると、少しだけ疲れがましになった気がした。
列車が動きだし、風景が変わりだす。そもそも何故光と柊麗は、インドにいるかだが、それは、柊麗のたのみからだった。
「泳ぐラクダが見たい!?」
「そう!! パパインド行こう!!」
「インド!?」
インドは、発展が凄い国だが、日本と違い色々と水に関してそして治安に関しても気を付けなければならない国だ。
光は、野郎だけなら、ともかく、子供連れは、危険すぎると思った。しかし柊麗もまた諦めが悪い。
「パパ連れてってくれないとぐれてやる!!」
「えっ!?」
光は、それは、まずいと、ここでおれてしまい、こうして、来てしまったのである。
しだいに風景が塩田にかわり、柊麗は、驚いた顔をした。
「カッチ地方は、インドの中でも田舎だかで、そのうえ、もと海かんだ。だから塩田ができ、遊牧が盛んになったんだ」
「そうなのね!! パパ!!」
柊麗は、瞳を煌めかせると、再び車窓に目を向けた。
目的地まで少し時間がある。少し寝れるだろう。
光は、貴重品を厳重にしまうと、少し横になりそのまま寝てしまった。
「パパ!! って……寝ちゃってる……」
柊麗は、光の寝ているベッドに靴を脱ぎ上がるの、ぴったりと体をくっつけ横になった。
「パパ温い……」
微かに感じる水の香り。これは、父の力に由来する物だろう。
柊麗は、心地よさに思わず寝てしまい、気づいたときには、顔を青ざめる父が頭上にいた。
「今どの辺りだ!?」
ひとまず現在地を確認すると、光は、ほっと胸を撫で下ろした。
「おり過ごしてないな……」
「パパおはよう……」
起きた娘に光は、申し訳なさそうな顔をしいった。
「起こしてごめんね……」
「大丈夫……それより荷物は大丈夫??」
「それは、確認したから無事だったよ。柊麗偉いねそこをまず気にするのが」
日本だとどうしても平和で貴重品や手荷物に関して、手薄になりがちだ。
来る前に色々い聞かせて置いてよかった。
「でもママから教わったアルティメット玉蹴りは、使う機会無さそう……」
光は、顔を青ざめるといった。
「奥義とは、ここぞというときに使うからそれでいい!!」
妻がまさか、股間を蹴り飛ばす技を娘を教えているなんて。光は、その光景を思いだしながら、まっすぐに柊麗を見ていった。
「そうよね。でもそれでのたうち回って蔦で拘束した犯人を見てみたいわ!!」
何やら脳内な友美の顔が浮かぶ。
光は、娘から友美の遺伝子の強さをこの時感じ、そして思う。そんなことしなくていいと。
「柊麗それは、やっちゃ駄目だよ」
「ママやってたけど……」
「ママは、趣味なんだ!! でも駄目な趣味だから!! 柊麗は、禁止!!」
何やらこの時背後から鋭く冷たい気配を感じたが、光は、気のせいだと言い聞かせた。
「誰が悪趣味ですって??」
しかし気のせいでは、なかった。
背後から感じる気配と娘の嬉しそうな顔。この密室に入ることが簡単な人物は、彼女しか思い付かない。
光は、恐る恐る振り向くとにっこり微笑む友美がいた。しかも実体で。
「友美さんその……」
「あれは、犯人が抵抗するからよ!! それに怯えてるより、楽しんでるように見せた方がいいと思ったからで!!」
「そうなのか……それより友美不法入国では!?」
光は、更なる疑問を投げつけたが、友美は、自信ありげにパスポートを見せた。
「ビザ出てる……」
「不法入国じゃないでしょう!!」
「確かに。って榎麟たちは!?」
「天照が、うちに突撃かけてきたから任せてきた!!」
まさかの襲来に光は、なんとなく友美がここへ来た理由が分かった気がした。
「逃げてきたか」
「まぁそれもある!! あとは、私もラクダみたいし!! お母さんが天照の監視してくれるから任せてきたの!!」
「ママ無賃案乗車じゃ……」
柊麗の言葉に友美は、はっとした顔をした。
「思わず、光に突っ込みいれたくて来ちゃったからそうだわ!!」
「ママそれまずいわ!!」
「そうね!! なら後で駅でね!!」
友美は、そう言うと姿を消したが、光は、溜め息を漏らした。
「相変わらず嵐のようだ……」
「でもそんなママが好きなんでしょう?? パパ」
「そうだよ」
だからこそもう少し一緒にいたかったともいえる。しかし無賃乗車は、いけないのでそうそうに姿を消すか、その分の運賃を払うしかない。
目的地に着いたら、これは、賑やかなになりそうだ。
光は、そう思いながら、車窓をみる。
しばらくして、目的の駅に電車は、着いた。
ホームにおり、駅の構内に入ると、友美が駅員と話をしていた。
「お客さん本当に乗ってたの??」
「少しだけ!! だからその分を……」
「そんな嘘いいから。さぁ!! とっとと消えな!!」
友美は、不服そうな顔をすると光と柊麗のところへやってきた。
「光、柊麗!!」
「ママ払えなかったの??」
「嘘だと思われたみたい。まぁ信じられないわよねぇ普通」
そう考えるとしかたがない。
友美は、数日ぶりの夫に抱きつき、次は、柊麗を優しく抱き締めた。
「ママ??」
「柊麗可愛い~!!」
「ありがとう」
これで充電完了。
友美は、満足げな顔をすると早速メモ帳を取り出した。
「先ずは、ジャット族を探すところからね」
「ジャット族??」
「泳ぐラクダと暮らしている民族だ」
どうやら友美も下調べをしてきているようだ。
「とりあえず先住民の保護をしているNPOに連絡をとってるからそこへいきましょう。でもその前に!!」
光と柊麗は、首をかしげる。
「その前に??」
「絨毯を買いにいくわ!!」
「絨毯!!??」
確かにカッチ地方は、ラクダの毛で作られた絨毯が有名だ。
光もみたいと思っていたが、まさか友美は、買う気があったとは、しかしそれには、ある疑問が。
「友美既存の物を買うの??」
「え?? 数ヶ月前に職人さんにコンタクトとって作って貰ってるのを取りに行くけど……」
光は、妻の行動力に驚く。忘れていた友美の行動力を。
「ママって欲しいもの為ならけっこう凄いわ……」
「だね柊麗」
それが友美ともいえる、一先ず、一行は、友美が絨毯を依頼した、職人のもとへ。
工房につくと、早速友美は、職人と仲良さげに話をしていた。
「これだ!! いいだろ??」
「めっちゃいい!!」
美しく織られた絨毯に光と柊麗も見とれていた。
「絨毯凄いわ!!」
「ありがとうお嬢ちゃん」
職人から絨毯を受け取り、代金を支払うと、早速一行は、NPOのもとへ、アポイントをとっていたのでスムーズに担当の者と会え、早速本題にはいった。
「ならここへ行くといい、こちらから、連絡をしておく」
「ありがとう!!」
友美がこの旅に合流してから、何もかもスムーズだ。
様々な世界を渡り、旅してきた、経験がいかされているのだろう。
「友美凄い……」
「惚れ直しちゃうやつ?? パパ」
「そうだよ。惚れ直しちゃうやつ」
柊麗と楽しげに話している光に友美は、首をかしげる。なにかおかしなことでもあったかと思いながら。
「どうしたの??」
「なにもないわ!!」
「秘密」
柊麗と光の微笑みをみていると聞きたくなるが、友美は、我慢した。
「そう。それよりジャットに会えるわ。はやく行きましょう」
本当に恐ろしいほどにスムーズにいく。
その後早速ジャット族に関係する村に一行は、やってきた。
NPOの紹介もあり、村の村長に会えた。
ラクダの事について、友美は、話をすると、なんということだろうか。
「カライラクダなら俺も持ってぞ」
「なんですと!?」
驚きの事実に三人は、驚くと、さっさくジャット族とカライラクダに会いに向かった。
放牧地にある小さな集落にジャットは、いた。
村長の紹介を受け、さっそく友美たちは、目的を伝えた。
「カライラクダをみたいのか」
「そうなの。いい??」
友美とジャットが話をするなか、柊麗は、何かを感じていた。
「パパ何か変よ」
「変??」
「うん」
何か変。この感覚は、かんだろうか。
母とジャット族が話をしている方向。多分あちらにカライラクダがいるのだろう。
柊麗が変なものを感じていた方向と同じだ。
柊麗は、父の制止をきかず、その方向に走り出した。
「柊麗!!??」
走り出した娘を光は、追いかけるとたどり着いたのは、一頭のラクダを所だった。
座り込むラクダを心配そうにみている柊麗。光は、ラクダの足の違和感にこの時気づいた。
「パパラクダ足を……」
「怪我してるな……」
流石にこれでは、放牧されているとは、いえ自然を生き抜くのは、難しいだろう。
「パパなんとか出来ない??」
「……」
なんとか出来るが、問題は、代価だ。治療したとしてもその対価を何処から補うか。へたすれば、術者自身で補わなくては、いけなくなる。
「対価をどうするか……ね」
「そうだ」
「なら私が払う!! だからパパお願い!!」
必死に嘆願する柊麗だが、光は、決して首をたてには、振らなかった。
「パパ……」
「これもこのラクダの運命だ」
悲しげなラクダの瞳。助けたいが、どうすることも出来ない。
友美なら、治すといい、治すが、その時にしょうじる対価を娘に持たせるわけには、いかない。
「なら私が助けるわ!!」
「柊麗……」
「私は、まだ術者としては、未熟だもの。ラクダに治癒術をかけるのは、実験ってかたちにできる。なら対価の心配は、ないわ!!」
柊麗が一生懸命に考えたさく。光は、目を細めると言った。
「分かった。ならやってみなさい。パパがサポートするから!!」
「うん!!」
ラクダの足に柊麗は、手をかざすと、治癒術を使い始めた。
治癒術は、術のなかでも難しい。
治しながらもなかなか父のようには、いかないと柊麗は、焦りながらも深呼吸をし、さらに集中した。
「そう。そこでゆっくりと力を安定させて」
「はい」
バランスをとりながら、治癒していく、その光景を追いかけてきた友美とジャット族は、遠くからみていた。
「なにやってるんだ??」
「ラクダの観察かな」
ジャット族には、こういいながら、友美は、心のなかで娘を応援していた。
四人の子供のなかで唯一あの歳で神子選定されている柊麗。
彼女が得意とするのは、豊穣に関するものだ。
植物を扱い五穀豊穣を導く。そして食とは、生命の源だ。
柊麗ならば、ラクダを治すことが出来るだろう。
「インドの神に目をつけられたら、私の出番ね」
あまりインド神話の神と関わりたくないが。
「パパこれでいい??」
「OK」
無事に終わり、柊麗は、ホッとすると、ラクダは、恐る恐る立ち上がる。
痛くない足に驚いた顔をすると、柊麗に顔をすりよせた。
「あいつが珍しいな」
「もしかして頑固なの??」
「そうだ」
ジャット族と友美は、そんな話をし、ラクダと戯れる柊麗をみて笑った。
「よかった」
ラクダは、何処かに行ってしまい柊麗と光が友美のところへやってきた。
「柊麗グッジョブ!!」
「ありがとうママ!!」
友美は、光に微笑みかけると、光も笑顔で返してくれた。
「泳ぐラクダの件だが、雨が降れば見せれるぞ」
「本当にありがとう!!」
「ラクダのお礼だ」
ジャット族も何があったのか感覚的に感じているらしい。
友美は、先程お願いしていたことがこう、してかなうなんてと、感激し、同時に光の方をみた。
「よろしく!!」
友美の笑みに光は、圧を感じ、頷くことしか出来なかった。
「今ラクダは、貴重なんだ。十年そこらで、塩田がさらに増え、マングローブが減ってるお陰で、6000頭から2000頭にラクダも減ってきてるんだ」
「そうなのね……」
ヒトコブラクダは、昔は、海辺で暮らしていたが、人が家畜としてラクダを使いだし、彼らは、砂漠へと進出していった。
今先祖のように海辺で暮らしているラクダは、カライラクダだけなのである。
貴重なラクダに会え、助けられてよかったと柊麗は、思った。
その夜三人は、ジャット族の集落にお世話になり、夜中に清らかな笛の音共に、雨が降った。
翌朝になり、ジャット族がこれならいけると判断し、さっそくラクダを放牧させに行くことになった。
塩田を抜け、汽水域にやってきた。川を泳ぎ渡るラクダをみながら、柊麗は、瞳を煌めかせた。
「凄いわ!!」
「一緒に泳ぐのは、やめておこうね!!
うんちまみれで、パパ発狂するから!!」
まさかの事実に柊麗は、驚き、光は、顔を青ざめるていた。
川も渡り、放牧されるラクダをみて、柊麗は、満足な顔をしていた。
「今回さ、ありがとう」
「こちらこそ、ありがとう」
友美は、ジャット族とこんな話をするなか、柊麗は、今回の旅は、とても楽しかったと思いながら、父と微笑み合う。
「パパありがとう!!」
「楽しかった??」
「うん!!」
「ならよかった!!」
そんな会話をし、二人は、楽しげに微笑むとラクダを見るのであった。
今回の旅を振り返りながら。
「おい!! ホームが違うじゃないか!!」
「インドだとそれが普通さ!!」
彼の突っ込みに隣を走っていた地元民から突っ込みが入った。
「パパヒンディー語出来るの凄いわ!!」
背中から柊麗のそんな声が聞こえるなか、必死になり、ホームを走り、目的の列車がついているホームに。そして目的の車両に乗った。
「乗れた……」
肩で息をし、娘を降ろすと、光は、その場にしゃがみこむ。
「あんたじゃまだ!!」
「すまない!!」
つい座り込んでしまった。光は、慌てて立ち上がり、通路から柊麗をつれ、離れた。
「ここかな?? パパ」
指定の個室を見つけ、なかに入ると、光は、ようやく一息つけるの、部屋にあった寝台に腰を下ろした。
「パパクーラーついてる!!」
「これで少し涼めるね」
楽しげな柊麗を見てると、少しだけ疲れがましになった気がした。
列車が動きだし、風景が変わりだす。そもそも何故光と柊麗は、インドにいるかだが、それは、柊麗のたのみからだった。
「泳ぐラクダが見たい!?」
「そう!! パパインド行こう!!」
「インド!?」
インドは、発展が凄い国だが、日本と違い色々と水に関してそして治安に関しても気を付けなければならない国だ。
光は、野郎だけなら、ともかく、子供連れは、危険すぎると思った。しかし柊麗もまた諦めが悪い。
「パパ連れてってくれないとぐれてやる!!」
「えっ!?」
光は、それは、まずいと、ここでおれてしまい、こうして、来てしまったのである。
しだいに風景が塩田にかわり、柊麗は、驚いた顔をした。
「カッチ地方は、インドの中でも田舎だかで、そのうえ、もと海かんだ。だから塩田ができ、遊牧が盛んになったんだ」
「そうなのね!! パパ!!」
柊麗は、瞳を煌めかせると、再び車窓に目を向けた。
目的地まで少し時間がある。少し寝れるだろう。
光は、貴重品を厳重にしまうと、少し横になりそのまま寝てしまった。
「パパ!! って……寝ちゃってる……」
柊麗は、光の寝ているベッドに靴を脱ぎ上がるの、ぴったりと体をくっつけ横になった。
「パパ温い……」
微かに感じる水の香り。これは、父の力に由来する物だろう。
柊麗は、心地よさに思わず寝てしまい、気づいたときには、顔を青ざめる父が頭上にいた。
「今どの辺りだ!?」
ひとまず現在地を確認すると、光は、ほっと胸を撫で下ろした。
「おり過ごしてないな……」
「パパおはよう……」
起きた娘に光は、申し訳なさそうな顔をしいった。
「起こしてごめんね……」
「大丈夫……それより荷物は大丈夫??」
「それは、確認したから無事だったよ。柊麗偉いねそこをまず気にするのが」
日本だとどうしても平和で貴重品や手荷物に関して、手薄になりがちだ。
来る前に色々い聞かせて置いてよかった。
「でもママから教わったアルティメット玉蹴りは、使う機会無さそう……」
光は、顔を青ざめるといった。
「奥義とは、ここぞというときに使うからそれでいい!!」
妻がまさか、股間を蹴り飛ばす技を娘を教えているなんて。光は、その光景を思いだしながら、まっすぐに柊麗を見ていった。
「そうよね。でもそれでのたうち回って蔦で拘束した犯人を見てみたいわ!!」
何やら脳内な友美の顔が浮かぶ。
光は、娘から友美の遺伝子の強さをこの時感じ、そして思う。そんなことしなくていいと。
「柊麗それは、やっちゃ駄目だよ」
「ママやってたけど……」
「ママは、趣味なんだ!! でも駄目な趣味だから!! 柊麗は、禁止!!」
何やらこの時背後から鋭く冷たい気配を感じたが、光は、気のせいだと言い聞かせた。
「誰が悪趣味ですって??」
しかし気のせいでは、なかった。
背後から感じる気配と娘の嬉しそうな顔。この密室に入ることが簡単な人物は、彼女しか思い付かない。
光は、恐る恐る振り向くとにっこり微笑む友美がいた。しかも実体で。
「友美さんその……」
「あれは、犯人が抵抗するからよ!! それに怯えてるより、楽しんでるように見せた方がいいと思ったからで!!」
「そうなのか……それより友美不法入国では!?」
光は、更なる疑問を投げつけたが、友美は、自信ありげにパスポートを見せた。
「ビザ出てる……」
「不法入国じゃないでしょう!!」
「確かに。って榎麟たちは!?」
「天照が、うちに突撃かけてきたから任せてきた!!」
まさかの襲来に光は、なんとなく友美がここへ来た理由が分かった気がした。
「逃げてきたか」
「まぁそれもある!! あとは、私もラクダみたいし!! お母さんが天照の監視してくれるから任せてきたの!!」
「ママ無賃案乗車じゃ……」
柊麗の言葉に友美は、はっとした顔をした。
「思わず、光に突っ込みいれたくて来ちゃったからそうだわ!!」
「ママそれまずいわ!!」
「そうね!! なら後で駅でね!!」
友美は、そう言うと姿を消したが、光は、溜め息を漏らした。
「相変わらず嵐のようだ……」
「でもそんなママが好きなんでしょう?? パパ」
「そうだよ」
だからこそもう少し一緒にいたかったともいえる。しかし無賃乗車は、いけないのでそうそうに姿を消すか、その分の運賃を払うしかない。
目的地に着いたら、これは、賑やかなになりそうだ。
光は、そう思いながら、車窓をみる。
しばらくして、目的の駅に電車は、着いた。
ホームにおり、駅の構内に入ると、友美が駅員と話をしていた。
「お客さん本当に乗ってたの??」
「少しだけ!! だからその分を……」
「そんな嘘いいから。さぁ!! とっとと消えな!!」
友美は、不服そうな顔をすると光と柊麗のところへやってきた。
「光、柊麗!!」
「ママ払えなかったの??」
「嘘だと思われたみたい。まぁ信じられないわよねぇ普通」
そう考えるとしかたがない。
友美は、数日ぶりの夫に抱きつき、次は、柊麗を優しく抱き締めた。
「ママ??」
「柊麗可愛い~!!」
「ありがとう」
これで充電完了。
友美は、満足げな顔をすると早速メモ帳を取り出した。
「先ずは、ジャット族を探すところからね」
「ジャット族??」
「泳ぐラクダと暮らしている民族だ」
どうやら友美も下調べをしてきているようだ。
「とりあえず先住民の保護をしているNPOに連絡をとってるからそこへいきましょう。でもその前に!!」
光と柊麗は、首をかしげる。
「その前に??」
「絨毯を買いにいくわ!!」
「絨毯!!??」
確かにカッチ地方は、ラクダの毛で作られた絨毯が有名だ。
光もみたいと思っていたが、まさか友美は、買う気があったとは、しかしそれには、ある疑問が。
「友美既存の物を買うの??」
「え?? 数ヶ月前に職人さんにコンタクトとって作って貰ってるのを取りに行くけど……」
光は、妻の行動力に驚く。忘れていた友美の行動力を。
「ママって欲しいもの為ならけっこう凄いわ……」
「だね柊麗」
それが友美ともいえる、一先ず、一行は、友美が絨毯を依頼した、職人のもとへ。
工房につくと、早速友美は、職人と仲良さげに話をしていた。
「これだ!! いいだろ??」
「めっちゃいい!!」
美しく織られた絨毯に光と柊麗も見とれていた。
「絨毯凄いわ!!」
「ありがとうお嬢ちゃん」
職人から絨毯を受け取り、代金を支払うと、早速一行は、NPOのもとへ、アポイントをとっていたのでスムーズに担当の者と会え、早速本題にはいった。
「ならここへ行くといい、こちらから、連絡をしておく」
「ありがとう!!」
友美がこの旅に合流してから、何もかもスムーズだ。
様々な世界を渡り、旅してきた、経験がいかされているのだろう。
「友美凄い……」
「惚れ直しちゃうやつ?? パパ」
「そうだよ。惚れ直しちゃうやつ」
柊麗と楽しげに話している光に友美は、首をかしげる。なにかおかしなことでもあったかと思いながら。
「どうしたの??」
「なにもないわ!!」
「秘密」
柊麗と光の微笑みをみていると聞きたくなるが、友美は、我慢した。
「そう。それよりジャットに会えるわ。はやく行きましょう」
本当に恐ろしいほどにスムーズにいく。
その後早速ジャット族に関係する村に一行は、やってきた。
NPOの紹介もあり、村の村長に会えた。
ラクダの事について、友美は、話をすると、なんということだろうか。
「カライラクダなら俺も持ってぞ」
「なんですと!?」
驚きの事実に三人は、驚くと、さっさくジャット族とカライラクダに会いに向かった。
放牧地にある小さな集落にジャットは、いた。
村長の紹介を受け、さっそく友美たちは、目的を伝えた。
「カライラクダをみたいのか」
「そうなの。いい??」
友美とジャットが話をするなか、柊麗は、何かを感じていた。
「パパ何か変よ」
「変??」
「うん」
何か変。この感覚は、かんだろうか。
母とジャット族が話をしている方向。多分あちらにカライラクダがいるのだろう。
柊麗が変なものを感じていた方向と同じだ。
柊麗は、父の制止をきかず、その方向に走り出した。
「柊麗!!??」
走り出した娘を光は、追いかけるとたどり着いたのは、一頭のラクダを所だった。
座り込むラクダを心配そうにみている柊麗。光は、ラクダの足の違和感にこの時気づいた。
「パパラクダ足を……」
「怪我してるな……」
流石にこれでは、放牧されているとは、いえ自然を生き抜くのは、難しいだろう。
「パパなんとか出来ない??」
「……」
なんとか出来るが、問題は、代価だ。治療したとしてもその対価を何処から補うか。へたすれば、術者自身で補わなくては、いけなくなる。
「対価をどうするか……ね」
「そうだ」
「なら私が払う!! だからパパお願い!!」
必死に嘆願する柊麗だが、光は、決して首をたてには、振らなかった。
「パパ……」
「これもこのラクダの運命だ」
悲しげなラクダの瞳。助けたいが、どうすることも出来ない。
友美なら、治すといい、治すが、その時にしょうじる対価を娘に持たせるわけには、いかない。
「なら私が助けるわ!!」
「柊麗……」
「私は、まだ術者としては、未熟だもの。ラクダに治癒術をかけるのは、実験ってかたちにできる。なら対価の心配は、ないわ!!」
柊麗が一生懸命に考えたさく。光は、目を細めると言った。
「分かった。ならやってみなさい。パパがサポートするから!!」
「うん!!」
ラクダの足に柊麗は、手をかざすと、治癒術を使い始めた。
治癒術は、術のなかでも難しい。
治しながらもなかなか父のようには、いかないと柊麗は、焦りながらも深呼吸をし、さらに集中した。
「そう。そこでゆっくりと力を安定させて」
「はい」
バランスをとりながら、治癒していく、その光景を追いかけてきた友美とジャット族は、遠くからみていた。
「なにやってるんだ??」
「ラクダの観察かな」
ジャット族には、こういいながら、友美は、心のなかで娘を応援していた。
四人の子供のなかで唯一あの歳で神子選定されている柊麗。
彼女が得意とするのは、豊穣に関するものだ。
植物を扱い五穀豊穣を導く。そして食とは、生命の源だ。
柊麗ならば、ラクダを治すことが出来るだろう。
「インドの神に目をつけられたら、私の出番ね」
あまりインド神話の神と関わりたくないが。
「パパこれでいい??」
「OK」
無事に終わり、柊麗は、ホッとすると、ラクダは、恐る恐る立ち上がる。
痛くない足に驚いた顔をすると、柊麗に顔をすりよせた。
「あいつが珍しいな」
「もしかして頑固なの??」
「そうだ」
ジャット族と友美は、そんな話をし、ラクダと戯れる柊麗をみて笑った。
「よかった」
ラクダは、何処かに行ってしまい柊麗と光が友美のところへやってきた。
「柊麗グッジョブ!!」
「ありがとうママ!!」
友美は、光に微笑みかけると、光も笑顔で返してくれた。
「泳ぐラクダの件だが、雨が降れば見せれるぞ」
「本当にありがとう!!」
「ラクダのお礼だ」
ジャット族も何があったのか感覚的に感じているらしい。
友美は、先程お願いしていたことがこう、してかなうなんてと、感激し、同時に光の方をみた。
「よろしく!!」
友美の笑みに光は、圧を感じ、頷くことしか出来なかった。
「今ラクダは、貴重なんだ。十年そこらで、塩田がさらに増え、マングローブが減ってるお陰で、6000頭から2000頭にラクダも減ってきてるんだ」
「そうなのね……」
ヒトコブラクダは、昔は、海辺で暮らしていたが、人が家畜としてラクダを使いだし、彼らは、砂漠へと進出していった。
今先祖のように海辺で暮らしているラクダは、カライラクダだけなのである。
貴重なラクダに会え、助けられてよかったと柊麗は、思った。
その夜三人は、ジャット族の集落にお世話になり、夜中に清らかな笛の音共に、雨が降った。
翌朝になり、ジャット族がこれならいけると判断し、さっそくラクダを放牧させに行くことになった。
塩田を抜け、汽水域にやってきた。川を泳ぎ渡るラクダをみながら、柊麗は、瞳を煌めかせた。
「凄いわ!!」
「一緒に泳ぐのは、やめておこうね!!
うんちまみれで、パパ発狂するから!!」
まさかの事実に柊麗は、驚き、光は、顔を青ざめるていた。
川も渡り、放牧されるラクダをみて、柊麗は、満足な顔をしていた。
「今回さ、ありがとう」
「こちらこそ、ありがとう」
友美は、ジャット族とこんな話をするなか、柊麗は、今回の旅は、とても楽しかったと思いながら、父と微笑み合う。
「パパありがとう!!」
「楽しかった??」
「うん!!」
「ならよかった!!」
そんな会話をし、二人は、楽しげに微笑むとラクダを見るのであった。
今回の旅を振り返りながら。