光明ノ神子
水底で揺蕩う感覚と、懐かしくも切ない記憶。これは、あの時のものだろうか。
残暑厳しいなか、外泊許可がおり、帰宅した時のことだった。
「……手持ち花火」
帰宅前によったスーパーで友美は、あるものを見ていた。
「これが花火!!??」
手持ち花火を見て、驚く光に友美は、思わず笑ってしまった。
かれこれ、二年ほど、彼は、日本にすんでるが、手持ち花火を見たことがなかったらしい。
「……花火と言えば、打ち上げ花火のイメージだが、ここまで小さくなるんだな」
「そうだよ」
「せっかくだし、買って帰るか??」
友美は、しばらく考えると頷く。
「うん」
心なしか、友美が明るい。やはり二泊三日とは、いえ家に帰れるのは、嬉しいようだ。
「無事に6クール目終わった打ち上げになるな!!」
友美は、思わずじとめになる。
「……後1クール残ってるけどね」
グサッと突っ込みを入れられ、光は、苦笑いを浮かべる。
相変わらず突っ込みがきついと思いながら。
「そこは、ほら!! まぁ次の治療のためと思って!!」
光は、とりあえず言い訳をしてみる。
友美は、そんな光を見て、ため息をついた。
「そうしといてあげる」
友美は、そういうと、他のものを見に歩き出す。その背中を見て、光は、切なく微笑んだ。
「たった……5ヶ月であんなにも弱々しくなるんだな……」
春の異変から入院医療とあっという間に過ぎ去っていった。
異変が起こる前、その背は、とても頼もしくしかしどこか寂しさを感じるものであった。しかし今は、とても弱く、儚い物へとなってしまっていた。
病とは、やはり人の大切なものを奪っていく。しかしそれだけでは、ないことも光は、知っていた。
「光はやく」
「わかった」
不機嫌なかをした友美に光は、慌てて彼女の側に。
「迷子にならないでよ??」
「どこそこ吏部侍朗と一緒にするな!!」
「よくいうよ」
友美に呆れられているが光は、ここは、気にしては、負けだと気にしないことにした。
「あっ蕎麦」
「今晩は、ざるそばにするか??」
「うん」
今晩の献立も決まり、光は、ホッとするなか、ふと気づいたとき、友美がいなくなっていた。
「あっ……」
これは、困ったことになった。光は蕎麦の乾麺をかごにいれると、友美を探しながら、他にいるものを買ったのであった。
無事に帰宅できたが、光の手には、なんと、大きな鯣が。
「まさかいなくなって見つけたのが、海鮮コーナーの鯣の前って言うのがな……」
その後鯣を買ってくれるまで動かないという友美に根負けし、光は、この鯣を買ってしまったのである。
はたして、食べきれるのだろうか。そう思いながら、光は、冷蔵庫に買ってきたものをつめていた。
「光お母さんは、いえ帰るって??」
「あぁ。また月曜に来るって」
この家に泊まればいいものを、まだ娘とのぎこちない関係を考慮し、友美の母は、自分の家へと帰宅した。
また来るのが大変そうだと思いながら、光は、冷蔵庫を閉めると、手持ち花火をもち、リビングに。
「そっか」
友美は、短くそういうと白野威に抱きつき、白野威は、そんな友美を優しく尻尾で彼女の背を撫でていた。
巫女でもない娘の側にずっといる女神。この娘と神の間に、たぶん親愛しかないのかもしれない。
光は、白野威の愛の深さにここ最近気づき始めていた。もとから深いなと感じることは、あったが。
「もしかして……お供えか??」
光は、冷蔵庫に入れた、鯣を取りに行くと白野威と友美の前に立った。
「友美これ白野威に??」
友美は、あきれたかおをする。
「違う!!」
「なら食べるため??」
「そう。それに……光のあてになるし……」
数日前にテレビで日本酒特集をしていたとき、光が久しぶりに飲みたいと言っていたのを友美は、覚えていたらしい。
光は、柔らかな笑みを浮かべるという。
「ありがとう」
「私には、ないの?? 友美??」
「白野威は、こっち」
友美が白野威に見せたのは、ホタテの貝柱だった。
「貝柱!!」
白野威は、貝柱を受けてると、それを咥え、リビングを出ていった。
「あれ日本酒見繕いにいったな」
「だとおもう」
白野威は、どこでも変わらない。その事に二人は、ホッとしていた。
「光花火今日はする??」
「友美がそれでもいいなら俺は、いいぞ」
「分かった」
友美は、そういうと何かを考え始めた。
光は、家でくらい友美の好きなようにさせようとこのとき思った。
そして残っていた家事をし、夕食を食べたあと、花火をする準備を光は、していた。
「とりあえずバケツとライター……これろうそくの方がいいのか……??」
念のためにと蝋燭も用意し、準備が完了する頃、リビングの方を見ると、友美がいた。なにやらモゴモゴしながら。
「友美??」
気になり、中にはいると彼女の姿に驚く。
「光!?」
浴衣姿の友美に光は、目を伏せると優しく微笑む。
「いいと思う。花火と言えば浴衣だもんな」
光は、そういうと、浴衣の帯に手をかけた。
「ここが少しおかしくなってるな……直すから前は、自分でやってくれ」
友美は、頷き、光が後ろで少し帯を直している間に、前のおかしいところを直した。
「よし」
「ありがとう」
「どういたしまして」
何時もなら帽子をかぶっているのに、今は、ウィッグを着け、髪飾りもつけていた。
同年代の女の子ならこれが普通なのかもしれない。
光は、今だけは、普通に接しなければと自分言い聞かせていた。
さもなくば、彼女まえで辛いかおをしてしまうことになるからだ。
「光花火の準備ありがとう」
「いいよ。さっそくやるか??」
「うん」
白野威が貝柱片手に酒を飲むなか、光と友美は、リビングの明かりを消し、テラスで花火を始めた。
手持ち花火のスパークの勢いに驚く。思ったより勢いがあったので。
それを見ていた友美は、思わず笑った。
「光面白いふふふ」
「だって思ったよりも強くてだな……」
「確かに!! あっ! 火ちょうだい!!」
「あぁ」
友美は、光の花火か、火をもらうと吹き出した手持ち花火をみて、楽しそうに笑った。
手持ち花火が少なくなり、残りが線香花火だけとなり、二人は、静かに線香花火をしていた。
闇夜のなか静かな線香花火は、蕾から牡丹、松葉へと変わっていく。その時間は、長く感じられた。短いはずなのに。
自分は、友美のために何か出来たのだろうか。
そんな考えが頭をよぎる。彼女に、なんど捨てられかけても追いかけてきた光。しかし側にいたとしても何も出来ていないでは、ないか。
げんに彼女は、病に落ち、命と期限までつけられてしまった。
光は、ちり菊の華やかさと儚さを見ながら、それは、まるで友美の生のように感じてしまっていた。
気づけば、線香花火が、終わり、光は、ハッとする。
「光泣いてる??」
「え??」
気づけば、視界が潤み、滴がほほを流れていた。
光は、目を伏せると微笑む。どこか苦しげに。
「汗だこれは……」
友美は、ため息をつくと、短く言った。
「嘘つき」
友美は、立ち上がると光を抱き締めた。
驚きのあまり、光は、目を見開く。
「光嘘つくの下手なんだから……辛いなら私から離れればいいのに……」
何処か自嘲気味に友美は、いっている気がした。この、言葉は、己と光に向けた言葉だろう。
何度も光の、ことを思い捨てようとしたとに最後まで捨てられなかった自分と捨てられても追いかけてきて側にいることを選んだ光に。
光は、この時言葉にでそうなった想いを抑え込み苦しそうに言った。切なく瞳を揺らして。
「そんなことしてみろ……友美がいなくなる……だろ……何時も知らない間に……遠くへ行ってしまうのに……」
光は、細くなった友美の体に今すぐにでも彼女は、居なくなってしまうと恐怖を感じながら、彼女を抱き締める。力強く。
「光……」
光の言葉に乗せられた想い。気づかないようにしている彼の秘めた想いを友美は、このときばかり無視できなかった。
まだどうなるか分からないこの体。友美は、光の体温を感じながら言う。
「私は、自分の欲しいものは、自分で取りに行くからね」
「よくいう。その旅に俺は、どれだけ心配してるか」
光は、苦笑いをし、言うと、友美も笑っていた。しかし何処か悲しげに。
貴方には、普通の恋愛をして、結婚をして、人生を歩んで幸せになってほしいのにどうして、それを望んでくれないのか。
友美のお願いを光は、知っている。だが彼は、あえてそれを無視している。そうしてしまうと、近い未来で友美がいなくなることを知っているからだ。
「だからこそ、俺は、友美の側にいる。なんと言われようとな」
例え振り向いてくれなくとも自分は、彼女の側にいる。この時光の瞳には、強い意思が宿っていた。
思わず彼の瞳から目が話せなくなるほどの。
「馬鹿」
友美は、短くそう呟くと、リビングに入っていった。
残された光は、空を仰ぎ見て呟いた。
「馬鹿でけっこう」
その呟きを白野威は、聞きながら静かに人見を閉じたのであった。
声が聞こえる。
光の意識は、水の中から地上へと戻ってきた。
目をあけ、眠そうに目を擦ると、友美が居た。
「友美……」
「光怖い夢でも見たの??」
どうやら寝ながら泣いていたようだ。
光は、首を横に振ると友美を抱き締めた。
「よかった……友美がちゃんといる……」
友美は、優しくは微笑むと光を抱き締めた。
「居るわよ。だってここが私の居場所だもの」
温かな友美の声と体温に、光は、ホッとしていた。
「友美後で線香花火しない??」
「いいけど……あった??」
光は、友美から離れると、文机の引き出しから、線香花火を出した。
「子供たちが花火をしたときの残り。線香花火は、あまり人気がないんだ……」
「あの子達華やかななのが好きだものね」
「線香花火もいいのになぁ……」
しみじみという光に友美は、頷く。
「そうね。せっかくだし浴衣着ようかしら」
「いいかもね」
友美は、ならと浴衣を選びに和室から出ていった。
手にもつ線香花火を見ながら、光は、思う。あの時逃げなかったからこそ今の幸せがあるのだと。
「線香花火は、もしかすると、希望の光かもな……静に闇夜で輝きながらも強い光だから……」
線香花火をみて、光は、目を細めると、文机の上に置いた。
「浴衣どうしようかな……」
彼もまた浴衣を選びに和室を出ていき、文机の上に残された二本の線香花火仲良く二人のように寄り添うのであった。今の二人を表すかのように。
残暑厳しいなか、外泊許可がおり、帰宅した時のことだった。
「……手持ち花火」
帰宅前によったスーパーで友美は、あるものを見ていた。
「これが花火!!??」
手持ち花火を見て、驚く光に友美は、思わず笑ってしまった。
かれこれ、二年ほど、彼は、日本にすんでるが、手持ち花火を見たことがなかったらしい。
「……花火と言えば、打ち上げ花火のイメージだが、ここまで小さくなるんだな」
「そうだよ」
「せっかくだし、買って帰るか??」
友美は、しばらく考えると頷く。
「うん」
心なしか、友美が明るい。やはり二泊三日とは、いえ家に帰れるのは、嬉しいようだ。
「無事に6クール目終わった打ち上げになるな!!」
友美は、思わずじとめになる。
「……後1クール残ってるけどね」
グサッと突っ込みを入れられ、光は、苦笑いを浮かべる。
相変わらず突っ込みがきついと思いながら。
「そこは、ほら!! まぁ次の治療のためと思って!!」
光は、とりあえず言い訳をしてみる。
友美は、そんな光を見て、ため息をついた。
「そうしといてあげる」
友美は、そういうと、他のものを見に歩き出す。その背中を見て、光は、切なく微笑んだ。
「たった……5ヶ月であんなにも弱々しくなるんだな……」
春の異変から入院医療とあっという間に過ぎ去っていった。
異変が起こる前、その背は、とても頼もしくしかしどこか寂しさを感じるものであった。しかし今は、とても弱く、儚い物へとなってしまっていた。
病とは、やはり人の大切なものを奪っていく。しかしそれだけでは、ないことも光は、知っていた。
「光はやく」
「わかった」
不機嫌なかをした友美に光は、慌てて彼女の側に。
「迷子にならないでよ??」
「どこそこ吏部侍朗と一緒にするな!!」
「よくいうよ」
友美に呆れられているが光は、ここは、気にしては、負けだと気にしないことにした。
「あっ蕎麦」
「今晩は、ざるそばにするか??」
「うん」
今晩の献立も決まり、光は、ホッとするなか、ふと気づいたとき、友美がいなくなっていた。
「あっ……」
これは、困ったことになった。光は蕎麦の乾麺をかごにいれると、友美を探しながら、他にいるものを買ったのであった。
無事に帰宅できたが、光の手には、なんと、大きな鯣が。
「まさかいなくなって見つけたのが、海鮮コーナーの鯣の前って言うのがな……」
その後鯣を買ってくれるまで動かないという友美に根負けし、光は、この鯣を買ってしまったのである。
はたして、食べきれるのだろうか。そう思いながら、光は、冷蔵庫に買ってきたものをつめていた。
「光お母さんは、いえ帰るって??」
「あぁ。また月曜に来るって」
この家に泊まればいいものを、まだ娘とのぎこちない関係を考慮し、友美の母は、自分の家へと帰宅した。
また来るのが大変そうだと思いながら、光は、冷蔵庫を閉めると、手持ち花火をもち、リビングに。
「そっか」
友美は、短くそういうと白野威に抱きつき、白野威は、そんな友美を優しく尻尾で彼女の背を撫でていた。
巫女でもない娘の側にずっといる女神。この娘と神の間に、たぶん親愛しかないのかもしれない。
光は、白野威の愛の深さにここ最近気づき始めていた。もとから深いなと感じることは、あったが。
「もしかして……お供えか??」
光は、冷蔵庫に入れた、鯣を取りに行くと白野威と友美の前に立った。
「友美これ白野威に??」
友美は、あきれたかおをする。
「違う!!」
「なら食べるため??」
「そう。それに……光のあてになるし……」
数日前にテレビで日本酒特集をしていたとき、光が久しぶりに飲みたいと言っていたのを友美は、覚えていたらしい。
光は、柔らかな笑みを浮かべるという。
「ありがとう」
「私には、ないの?? 友美??」
「白野威は、こっち」
友美が白野威に見せたのは、ホタテの貝柱だった。
「貝柱!!」
白野威は、貝柱を受けてると、それを咥え、リビングを出ていった。
「あれ日本酒見繕いにいったな」
「だとおもう」
白野威は、どこでも変わらない。その事に二人は、ホッとしていた。
「光花火今日はする??」
「友美がそれでもいいなら俺は、いいぞ」
「分かった」
友美は、そういうと何かを考え始めた。
光は、家でくらい友美の好きなようにさせようとこのとき思った。
そして残っていた家事をし、夕食を食べたあと、花火をする準備を光は、していた。
「とりあえずバケツとライター……これろうそくの方がいいのか……??」
念のためにと蝋燭も用意し、準備が完了する頃、リビングの方を見ると、友美がいた。なにやらモゴモゴしながら。
「友美??」
気になり、中にはいると彼女の姿に驚く。
「光!?」
浴衣姿の友美に光は、目を伏せると優しく微笑む。
「いいと思う。花火と言えば浴衣だもんな」
光は、そういうと、浴衣の帯に手をかけた。
「ここが少しおかしくなってるな……直すから前は、自分でやってくれ」
友美は、頷き、光が後ろで少し帯を直している間に、前のおかしいところを直した。
「よし」
「ありがとう」
「どういたしまして」
何時もなら帽子をかぶっているのに、今は、ウィッグを着け、髪飾りもつけていた。
同年代の女の子ならこれが普通なのかもしれない。
光は、今だけは、普通に接しなければと自分言い聞かせていた。
さもなくば、彼女まえで辛いかおをしてしまうことになるからだ。
「光花火の準備ありがとう」
「いいよ。さっそくやるか??」
「うん」
白野威が貝柱片手に酒を飲むなか、光と友美は、リビングの明かりを消し、テラスで花火を始めた。
手持ち花火のスパークの勢いに驚く。思ったより勢いがあったので。
それを見ていた友美は、思わず笑った。
「光面白いふふふ」
「だって思ったよりも強くてだな……」
「確かに!! あっ! 火ちょうだい!!」
「あぁ」
友美は、光の花火か、火をもらうと吹き出した手持ち花火をみて、楽しそうに笑った。
手持ち花火が少なくなり、残りが線香花火だけとなり、二人は、静かに線香花火をしていた。
闇夜のなか静かな線香花火は、蕾から牡丹、松葉へと変わっていく。その時間は、長く感じられた。短いはずなのに。
自分は、友美のために何か出来たのだろうか。
そんな考えが頭をよぎる。彼女に、なんど捨てられかけても追いかけてきた光。しかし側にいたとしても何も出来ていないでは、ないか。
げんに彼女は、病に落ち、命と期限までつけられてしまった。
光は、ちり菊の華やかさと儚さを見ながら、それは、まるで友美の生のように感じてしまっていた。
気づけば、線香花火が、終わり、光は、ハッとする。
「光泣いてる??」
「え??」
気づけば、視界が潤み、滴がほほを流れていた。
光は、目を伏せると微笑む。どこか苦しげに。
「汗だこれは……」
友美は、ため息をつくと、短く言った。
「嘘つき」
友美は、立ち上がると光を抱き締めた。
驚きのあまり、光は、目を見開く。
「光嘘つくの下手なんだから……辛いなら私から離れればいいのに……」
何処か自嘲気味に友美は、いっている気がした。この、言葉は、己と光に向けた言葉だろう。
何度も光の、ことを思い捨てようとしたとに最後まで捨てられなかった自分と捨てられても追いかけてきて側にいることを選んだ光に。
光は、この時言葉にでそうなった想いを抑え込み苦しそうに言った。切なく瞳を揺らして。
「そんなことしてみろ……友美がいなくなる……だろ……何時も知らない間に……遠くへ行ってしまうのに……」
光は、細くなった友美の体に今すぐにでも彼女は、居なくなってしまうと恐怖を感じながら、彼女を抱き締める。力強く。
「光……」
光の言葉に乗せられた想い。気づかないようにしている彼の秘めた想いを友美は、このときばかり無視できなかった。
まだどうなるか分からないこの体。友美は、光の体温を感じながら言う。
「私は、自分の欲しいものは、自分で取りに行くからね」
「よくいう。その旅に俺は、どれだけ心配してるか」
光は、苦笑いをし、言うと、友美も笑っていた。しかし何処か悲しげに。
貴方には、普通の恋愛をして、結婚をして、人生を歩んで幸せになってほしいのにどうして、それを望んでくれないのか。
友美のお願いを光は、知っている。だが彼は、あえてそれを無視している。そうしてしまうと、近い未来で友美がいなくなることを知っているからだ。
「だからこそ、俺は、友美の側にいる。なんと言われようとな」
例え振り向いてくれなくとも自分は、彼女の側にいる。この時光の瞳には、強い意思が宿っていた。
思わず彼の瞳から目が話せなくなるほどの。
「馬鹿」
友美は、短くそう呟くと、リビングに入っていった。
残された光は、空を仰ぎ見て呟いた。
「馬鹿でけっこう」
その呟きを白野威は、聞きながら静かに人見を閉じたのであった。
声が聞こえる。
光の意識は、水の中から地上へと戻ってきた。
目をあけ、眠そうに目を擦ると、友美が居た。
「友美……」
「光怖い夢でも見たの??」
どうやら寝ながら泣いていたようだ。
光は、首を横に振ると友美を抱き締めた。
「よかった……友美がちゃんといる……」
友美は、優しくは微笑むと光を抱き締めた。
「居るわよ。だってここが私の居場所だもの」
温かな友美の声と体温に、光は、ホッとしていた。
「友美後で線香花火しない??」
「いいけど……あった??」
光は、友美から離れると、文机の引き出しから、線香花火を出した。
「子供たちが花火をしたときの残り。線香花火は、あまり人気がないんだ……」
「あの子達華やかななのが好きだものね」
「線香花火もいいのになぁ……」
しみじみという光に友美は、頷く。
「そうね。せっかくだし浴衣着ようかしら」
「いいかもね」
友美は、ならと浴衣を選びに和室から出ていった。
手にもつ線香花火を見ながら、光は、思う。あの時逃げなかったからこそ今の幸せがあるのだと。
「線香花火は、もしかすると、希望の光かもな……静に闇夜で輝きながらも強い光だから……」
線香花火をみて、光は、目を細めると、文机の上に置いた。
「浴衣どうしようかな……」
彼もまた浴衣を選びに和室を出ていき、文机の上に残された二本の線香花火仲良く二人のように寄り添うのであった。今の二人を表すかのように。