光明ノ神子

 友美は、この日書店に来ていた。どうしてもほしい本があり、買いに来たのである。
 検索機で場所を調べ、地図を印刷すると、友美は、それをみながら、本を探す。
「ここね」
 ようやく記された場所にたどり着くと、本棚を見上げた。
「あった!! って……届かない……」
 この書店の本棚は、大きい。友美でも背が届かない程に。
 何処かで、台を見つけて、持ってこなければと思ったとき、背後に大きな影が出来た。
「はい友美」
 目の前には、取ろうとしていた本が。友美は、驚いた顔をするとお礼をいい受けとる。
「ありがとう光」
 なんと本をとってくれたのは、夫。まさかこんなところで会うなんてと思いながら、友美は、優しく微笑む光を見た。
「まさか友美と会うなんて……これも運命かな!!」
「かもしれないわね。光は、なんでここに??」
 友美は、素朴な疑問を光にぶつけると、光は、持っていた本を友美に見せる。
「今日は、早く仕事が終わったし、このお菓子のレシピ本が欲しくて来たんだ」
「そうだったのね」
 お菓子のレシピということは、また新作が食べられそうである。
 友美は、想像して思わず微笑むと、光は、いいものを見つけたように言った。
「友美任せて!! 美味しいの作るから!!」
 友美は、光に考えを読まれ、思わず恥ずかしそうに視線をそらした。
「何でわかるの……」
「友美は、分かりやすいから」
「そんなこと……」
「そんなことあります」
 友美は、恥ずかしそうにほほを染める。本当に可愛いと光は、友美をみて思いながら、優しく彼女の頭を撫でた。
「せっかくだし後でデートしよう!!」
 友美は、こくりとうなづく。
「えぇ」
 友美は、頷くと、光は、そっと友美の手を握った。
「他に見るものない??」
「今のところは」
 光は、微笑むと、ゆっくり友美の手を引いて歩き出した。
 友美は、引かれる手を見ながら思う。
(光……歩くスピードゆっくりだわ……)
 何故だろうか。何時もは、もう少し早く歩くのに。
 光は、友美の方を見ると、少し眉を下げた。そして彼の視線の先を追ったとき、友美は、ドキッとしてしまった。
 たぶん気づかれてしまった。ここに来る前の出来事に。
 友美は、書店に来る前、駅で、電車を降りたとき、後ろから押されてしまい、足を挫いてしまったのである。
 ヒールはいてきたのが、仇になったと思いながら、ここまで歩いてきたのだ。
「光その……」
「後で手当てさせてね」
「うん……」
 一先ず二人は、会計を済ませると、書店内にある休憩スペースにやって来た。
「友美座って」
「ありがとう」
 椅子に友美は、座ると、光を鞄を椅子におき、膝まづく。
 友美の足に触れると、腫れた足首をみて言った。
「捻挫だけみたいだ。骨折してなくてよかった」
「骨折してたら歩けないわよ」
「確かにな」
 足首に触れると緑色の光彼の指から出る。
「よし。後は、テーピングとこのリボンを」
「リボン??」
「本当ならヒールを脱いでほしいが、これ以外の靴は、今ないからこうしてと」
 光は、持っていたロキソニンテープを足首に貼ると、テーピングで足を固定し、そのごそれを隠すようにリボンでヒールと足首を固定した。
「でこっちの足も」
 無事な足の方にもリボンを巻くと、光は、微笑む。
「これでテーピング目立たないし、可愛くなった!!」
 友美は、ほほを赤く染める。
「ありがとう光」
「さて友美いこう」
「うん」
 差し出された手を友美は、取ると、光は、ゆっくりと歩き出す。
「近くのカフェでもいく??」
「そうね……」
 ふとあるものが目にはり、友美は、立ち止まると、光も友美の見ているものを見た。
 しばらくなにか考えると、光は、微笑む。
「見ていく??」
「いいの??」
「もちろん」
 友美が見ていたのもは、ガラスペンだった。店のなかにはいると、友美は、ガラスペンを見て顔を青ざめた。
「高い……」
「手作りだからね」
「たしかにそうだけど」
 友美は、少し落ち込んだ様子だ。
 それを見ていた光は、辺りを見渡し、あるのを見つけた。
「友美あれは??」
 光の指差す方には、美しい透明なガラスペンが。
「涼しげ……」
「買う??」
「やめとく」
 ここでいつもなら買うと光は、言い出すが、本日は、そっかといっただけ。
 そのご二人は、近くのカフェに入った。 
 辺りを見渡し、光は、相手にる席を見つけると、この時だけは、友美の手を話、空いている席へ。 
 友美は、ゆっくりとそこへ向かうと、光は、椅子を引き、友美を座らせた。
「光ありがとう」
「どういたしまして。これなら並んでくるから。何時ものでいい??」
「うん」
 目を細め光は、笑うと、商品を注文しにいった。
 列にならぶ光をみながら、友美は、机に伏せた。
「光……スマート……ギャップがヤバすぎる……」
 普段家だと甘えん坊の天真爛漫なのに、外だとスマートで天真爛漫だ。 
 甘えん坊がスマートに変わるだけで、ここまで破壊力があるとは。
 友美は、まさか光は、外面がいいのかと思っていた。
 列にならびながら、光は、そんな友美をみて苦笑いをした。
 読むつもりがなかったが、流れてきた友美の心の声。友美それは、外面とは、言わないと光は呟いていた。内心。
「光って……もとから、スマートだったわよね!? ならなんであんなに甘えん坊に??」
 友美は、昔の事を思いだし考えるが、結論。光は、昔から甘えん坊だったかもしれない。
 遠慮していたか、素直に出すかのちがいだけで。
「……どっちも俺だよ」
 頭上から聞こえる声に、友美は、顔をあげると、光が困ったように笑っていた。
「はい。アイスのホワイトモカ」
「ありがとう光」
「あと美味しそうだったから、ドーナツも注文しちゃった!!」
 テーブルに置かれた二つのドーナツ。友美は、楽しげに微笑む。
 光なら甘いものも注文してくると思っていたので。
「光ブラック??」
「友美と同じ」
 甘いものに甘いものとは、友美は、人の事は、言えないながらもなかなかハードでは、と思ってしまった。
「で友美さっきの話だけど」
 光は、改まった顔をしいう。
「スマートな、時も甘えん坊の時もどちらも俺です!! 外面とかじゃないから!!」
 友美は、アワアワと顔を赤くするの視線をそらした。
「なんでそこだけ知っているのよ!!」
「頭のなかに流れてきたから」
 光は、真顔で言うと、友美は、プルプルと体を震わせ、ホワイトモカを飲む。
「あま!!」
「そりゃホワイトモカだからな」
 この甘さが今は、少し嫌になる。まるで自分の心のようだから。
「光その……」
「なに??」
 にっこり余裕の笑みを浮かべる光。友美は、昔からそういえばこの笑みも好きだったなと思いながら、言う。
「今日も、かっこいいわ……」
 光は、驚いた顔をしたが、直ぐに微笑むといった。
「ありがとう!! 友美も可愛いし綺麗だよ」
 友美は、どこか歯がゆい顔をするとホワイトモカを飲んだ。
 今日は、光に流されてるそしてその事がどこかこそばゆく、ふわふわして甘いと思いながら。そして少しばかり悔しいとビターな想いも感じながら。
 
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