光明ノ神子

 早朝5時。 
 光は、眠そうな顔をし体を起こした。
「寝れなかった……」
 主に妨害により。その犯人は、今目の前にいる。
 はぁはぁと息をし、舌をだす狼。そう白野威だ。
「なんで夜中寝ないんだ!!」
「昼寝しすぎたんだよ。それに暇だし、友美起こすのは、可哀想となると残るのは、一人だけ」
 それが迷惑とも言える。
「だからって上に乗ってくるは、頭上で暑そうに息をはくな!!」
「暑いんだからしかたがない!! 光外つれてけー!!!!」
 朝日が少し障子から差し込む。光は、ため息をつくと言う。
「分かった」
 早朝からわがままに付き合わされるとは。
 光は、着替えると、白野威と家を出る。夏の早朝といえ、まだこの時間帯は、爽やかだ。
 散歩をするお年寄りや時おり見かける犬の散歩をさせる人たち。
 光は、早くから活動しているなと思いながら、少し汗ばむ肌から湿気の多さを感じていた。
「日本の夏は、湿気が多すぎだ……」
「毎年いってない??」
「いってる」
 もうそろそろ梅雨も明けるだろうが、そうなるとつぎは、この湿気と暑さが襲ってくる。
 光は、わざわざ散歩にいかなくてもと思いながら、白野威に付き合い歩いているとやって来たのは、近所の公園だ。
「ラジオ体操でもするのか??」
「はやすぎるつうの!!」
「確かに6時過ぎだったか……なら早いか……」
 ならなぜ公園に来たのか、光がそう思ったとき、けたたましい鳴き声が。
「シュシュシュシュ!!!!!!!」
 あまりの五月蝿さに光は、耳を塞ぐ。
「セミのシャウトだぜ!!!!」
「なにがセミのシャウトだ!! 白野威!!
あさからセミは、やめろ!!!! 暑くなるだろう!!!! 気分てきに!!」
 白野威は、つまらなさそうな顔をすると言う。
「昼間鳴かないからあいつら、だからこの時間帯じゃないと駄目なのさ」
 と言われても五月蝿いものは、五月蝿い。
光は、セミを忌々しそうに見ているも、木に白蛇が。
「白蛇なんて珍しい……」
「だね。ってあれ………」
 よく見てみると、見慣れた白蛇だ。
 光は、まさかと自分のなかを探ると、いない。白蛇では、なく白銀の蛇が。
「セミねぇーたしか食べると美味しいとか……」
「水郷美味しくないから!!」
 ツンツンとセミをつつき、セミのけたたましい声に水郷は、驚く。そしてむすっとしたかおをすると、セミをなんとずぶ濡れにした。
「セミー!!!!!」
「白野威様セミのどこがいいんです??」
 水郷は、叫ぶ白野威にこういうと、木を降り、光のところに戻ってきた。
「夏を感じるからさ!! にしてもあのセミ生きてる??」
「知りません!! ふん!!」
 蛇に飲まれるか、水をかけられるか。セミにとってとんだ分岐点だったといえる。
 光は、恐る恐る濡れたセミを確認すると動いていたので、ほっと胸を撫で下ろした。
「やっぱり食べようかしら……」
「水郷……やめてくれ……まるで俺達がちゃんとお世話してないみたいに、思えてくるから……」
 神には、それぞれ得意不得意な分野がある。得意な分野のことなら力を天利使わず、不得意の分野の事は多く力を使う。そのぶんお供えやらも多く必要になってくる。
 しかし水郷は、不得意な分野のことは、全くしていないので、そこまで日々の燃費は、悪くないはずだ。  
 光は、困った顔をし言うと水郷は、拗ねたように言った。
「光がお菓子食べるのと一緒よ!!」
「セミがお菓子だと!?」
 絶対に違うはず。本当に。白野威も隣で頷いている。違うと。
「水郷食べるならコオロギにしたら??」
「嫌です。バイ菌なみれなのに!!」
「それセミもだろ……」
 水郷にもこだわりがあるのかもしれない。
 光は、ため息をつくと、鞄か、貝柱を取り出した。
「水郷これで我慢して」
「貝柱!!」
 ホタテの貝柱は、水郷の大好物であり、光は、こうしていつも持ち歩いている。
 美味しそうに貝柱をほうばる水郷をみて、なんとか収まったと光は、胸をなで下ろした。
「白野威もふつうだったんだな」
「なにその言い方。私は、虫の声で四季を楽しむ方だつうの」
 いつもごろごろしている白野威だが、確かにぶっ飛んだ所は、あまりないような気がする。
「それに……誰かしらまともなのいないと神ってこだわり強いから……」
 白野威の本音が聞け、光も真顔になると、頷く。 
「確かに……こだわり強いよな……水郷は、まし方だよね??」
「まともさ。虫を食べることに興味をしめさなかったら」
 確かに。世の中昆虫食が噂されるようになり、水郷は、興味を示した。そこから、虫を見つけるの食べれると判断したものは、食べようとするように、なってしまった。
「いつブームが去るのやら……」
「まぁ最近は、飽きてきてるし、更なる美味しいものにはまったら落ち着くじゃね??」
「だな」
 ふつうの食べ物にはまってくれと光は、思いながら、遠い目をして、セミの声をきき、ようやく白野威が満足すると公園を離れた。
「雀が水浴びしてる!!」
 家の軒先に置かれているバケツで水浴びをしている雀。やはりこの時間日中より涼しいので、動物たちの活動時間になっているようだ。
「暑いもんな白野威」
「まぁね」
 白野威は、歩きだし、光もついていく。そしてたどり着いたのは、家だった。
「白野威もういいのか??」
「いいのー!! 光お腹すいた~!!!」
 光は、あきれた顔をすると言う。
「ご飯は、時間になったらだ」
「へいへい」
 白野威は、足を拭くと不満そうなリビングに。
 光も靴を脱ぎ、鍵を閉め、リビングに入ったとき、出汁のいい香りがキッチンからしてきた。
「光おかえりなさい!!」
 この声はとキッチンを見ると、友美が朝ごはんを作っているでは、ないか。
「朝ごはん作ってるからそのあいだに洗濯物干してほしいです……」
 光は、驚き動きが止まったが、すぐに頷き、洗濯物をとりに脱衣室へ。そして洗濯機から洗濯物を取りだし、すぐに干し始めた。
「友美が朝ごはんを……」
「そりゃ作るでしょう。光が日頃友美に手が荒れるから~っていって作らせないだけなんだから」 
 確かに白野威の言うとおりなのだが。
 光は、心配そうな顔をし、洗濯物を干しながらキッチンをみる。
「手切らないよね!?」
「……光心配しすぎ」
 さすがにそこまで、友美は、料理が下手では、ない。
「よし!! 卵焼きできた……」
 次はと友美は、光が白野威と話すなか、ちゃくちゃくと朝食を作っていた。
「よし!! これであとは、オッケー!!」
 朝食の支度を終え、友美は、光を手伝いにテラスへ。
「光これ干しちゃうね!!」
「ありがとう」
 二人ならんで洗濯物を干す。光は、この時間が好きだったりする。
 まぁ朝からこんないいことがあったのならいっかと、今は、白野威に起こされたことを少しばかり感謝していた。
「光今朝は、卵焼きと、ほうれん草のおひたしとワカメの御味噌汁だよ!!」
「そうか」
 やわらかく光は、微笑む。本当に今朝は、色々あったが、結果としてとてもいい朝になったと思いながら。
61/179ページ
スキ