光明ノ神子

オレンジ色の灯りが部屋を照らす。ここは、友美の家の書物室であり、多くの書籍が所蔵されている。
 元は、ただの納戸だったが、当時の彼氏兼居候が部屋を書籍で埋め尽くそうとしていた。
 さすがにこれは、まずいと友美が納戸を書物室に変えたのである。
「どれ読もうかな……」
 久しぶりに小説でも読もうかと、友美は、本棚を物色していた。
「女の子が頑張るお話とか……純愛もの……」
 さてライトノベルの棚にやって来た。
 友美は、本当に夫は、色々読んでいるなと感心しながら、どれにしようかと本をみる。ふとその時友美は、あるものに目が止まった。
「……こんな話し合った??」
 ふと目に止まったのは、中華ファンタジーの話だった。
 手に取り、友美は、あらすじを確認する。
「ある女官が皇帝に才能をみいだされ、官吏になってと言われるはなし……」
 棚に戻すと、友美は、もうひとつ気になる本を手にとる。
「こっちは、十三歳の誕生日に后妃になったお話か……」
 どちらも面白そうである。念のため、友美は、スマホで作品を調べ、棚を確認した。
「全巻揃ってる……さすが光……基本売らないから残ってるわよねぇ……」
 どちらも夫が好きそうなジャンルだ。友美は、とりあえず気になる二つの話を読むことにした。
 一冊ずつ本を取ると、書物室においてある机に本をおき、椅子に座ると読み始めた。
 パラパラと本をめくるおとが部屋に響く。
本とは、その世界に入り込める素晴らしいものとも言える。
 友美は、一通り読み終えると本を閉じた。
「この主人公見事に皇帝の手のひらで転がされながらもがいて、自分の想いや、夢をゆっくり見つけていく感じねぇ……」
 悪くない話であった。
「こっちは、うん……后妃が可愛すぎる。本当に純粋だけど頭がきれる。皇帝が色々心配するのもわかるわ……」
 友美は、立ち上がると、本を棚に戻した。
「とりあえず二巻をとって……リビングでゆっくり読むことしよう……」
 本を二冊友美は、てにもつと、書物室の灯りを消し、リビングに。
 暇を見つけては、少しずつ読み進めていると、その日の夜。何故夫にじっと見られていた。
「友美がそのシリーズを!?」
 友美は、不服そうな顔に。
「光なに?? 悪い??」
「びっくりしただけ……友美恋愛小説って……」 
 なんと失礼な。友美は、溜め息をつくという。
 何故友美が恋愛小説を読まないのか、その原因は、目の前の男だったりする。
「そりゃ現実で小説以上のことを毎日されてたら、小説も読まなくなるわよ」
 光は、困惑しながらも視線をそらした。色々思い当たる節があり。
「その……ごめんなさい……」
「謝ることじゃないでしょう。それに読むも読まないも私しだいだし」
 友美は、栞を挟みそしていった。
「この后妃になる方は、なんだかヒロインが光なのよねぇー」
「はぁ!?」
 光は、この時唖然としていた。それは、どういうことかと。
「皇帝のために一生懸命なところとか!!」
 光は、確かに可愛いと思ったが、何故自分がヒロインの立ち位置なのかと、理解できずにいた。しかし彼は、思い出す。十三歳の時の友美のことを。
「……なんで友美は、年相応の女の子じゃなく大人びてたんだー!!!!!」
 友美は、隣で唸っている光を横目にいう。
「修羅場と戦場をくくり抜けてきてたからねぇ。まぁ私も花よ蝶よと育てられてたら、そのヒロインみたいになってたかもね」
 光は、それは、それで可愛い真っ直ぐな友美だったかもしれないと少しだけ萌えていた。
「友美は、そもそもあの時無理をしすぎだ!! 生活も荒んでだし!!」
「そりゃ必死に生きてたから」
「あと何度俺は、捨てられたか!!」
「それは、光を巻き込まないためよ。それがまったく捨てても捨てても追っかけてくるし、挙げ句の果てには、私を庇って死にかけるわ。死にかけたときに、覡になる契約してるし……普通神に自分をあげるから女を助ける力くれ!! なんてしないから……」
 しかしそれをしてくれたからこそ、今の自分があるとも友美は、思っている。
「よそは、よそ!! 俺は、俺だ!! いいじゃないか!! あの時それしか術がなかったんだから!!」
「まぁそうかもそれないけど」
 友美は、困ったように笑うという。
「でもそういうところが、このヒロインみたいだと思ったの。まぁ光の方が数倍色々すごいけど」
「そう??」
「そうよ」
 光が嬉しそうに微笑むなか、友美は、言った。
「純粋で真っ直ぐな人って本当に可愛くて、素敵」
 だからこそ、惹かれるともいえる。
「友美もそうだと思うけど……」
「私は、違うわよ」
 決して真っ直ぐでもなければ、純粋でもない。
 友美は、そう答えるとまた本を読み出した。
 光は、隣で、そんな友美を見ながら本の内容を思い出していた。
「友美も十分真っ直ぐで純粋なのにねぇ……」
 自分のことは、やはりなかなか見えないものとも言える。
 光は、自分だけは、友美の真っ直ぐで純粋なところを何度も見てきたと目を細めた。
「さて次~!!!!」
「もう読んだのか!?」
 確かに友美は、本を、読み出すと早い。光は、驚いていると次々と友美は、本を読み進め、最新刊まで読み終えると言う。
「皇帝惚れてるじゃん!!! なるほど……確かにずっと好き好き言われてたら惚れるわよね……」
 じっと見られ、光は、首をかしげる。
「友美??」
 結局自分も真っ直ぐに追いかけてきた彼に最後は、惚れてしまったのだから。
「光後ろにG」
 友美の言葉に光は、顔を青ざめると振り返る。
「友美いないじゃないか!!」
 はめられた。光は、そう思いむすっとしたかおをするが、友美は、笑いをこらえていた。
「友美ー!!!!」
「ふふふ」
 光は、友美を捕まえようとすると、のらりくらりとかわされる。
「ごめんなさい。でもついつい困らせたくて!!」
「もっと他の方法を考えてくれー!!!!」
 ぜはぜはと肩で息をする光に友美は、楽しげに笑うと思う。やっぱり光は、このヒロインとそっくりだと。
「可愛いからいじりたくなるのよねぇー」
「可愛くないから!!!」
「いい加減認めなさい!! 光は、可愛いもん!!」
 頬を膨らませ怒っている光。しかしすでに可愛い。友美は、楽しげに微笑みながら愛おしそうに光を見るのであった。


 
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