光明ノ神子

 まだこれは、友美が高校一年の頃の梅雨の時期だった。
「えっ!? 神子ってあと一人いる!!??」
 朝から白野威の何気ない発言に光と友美は、鳩が豆鉄砲を食ったよう顔になった。
 朝食を食べながら白野威は、いう。
「なにさおどろかなくてもいいだろ??」
「いや驚くからな!!??」
「初耳すぎるよ!!」
 光と友美の突っ込みが入るなか、白野威は、つづけた。
「とりあえず会ってきな」
「えっ!?」
「華澄が選定した神子だし、友美と光も関わるだろうしねぇ」
 白野威は、そういうと朝食を食べ終え、食器を器用に咥えるとキッチンに持っていった。
「とりあえず放課後いく??」
「だな」
 友美と光は、そのご打ち合わせんし、予定を合わせ、それぞれ高校と大学に向かった。

「友美どうしました??」
 昼休憩何気なく窓から校庭を覗いていると、ユニから声をかけられた。
「なんとなくみてただけ」
 ユニは、すこしばかり不思議な少女だったりする。彼女の家系は、代々神社の神主をしている。
 まさかユニも神子に選定されることごあるのだろうか。ふと友美は、そんなことを考えていた。
「なんとなくですか……それにしては、深刻そうな顔をしてます」
「そうかな??」
 彼女の瞳には、なにが写っているのか。
 友美は、そう思いながらユニに笑った。
「とりあえず次体育かー 適当にやろうー」
「友美らしい」
 笑うユニを友美は、横目で見ると、席に戻る。
 彼女は、あくまでも一般人。言って良いことと悪いことがある。
(華澄の選定した神子か……)
 はたしてどんな人物なのだろうか。
 学校が終わり、友美は、急いで学校をあとにした。  
 光との待ち合わせの公園につくと、彼は、ベンチに座り、本を読んでいた。
「光!!」
 友美が声をかけると、光は、顔をあげ微笑む。
「友美」
「お待たせ!!」
「そんなにまってないよ。とりあえず、行くか」
「うん!!」
 白野威も出てにたので、彼女の案内のもと、二人がやって来たのは、静かな住宅地にある和モダンな建物だ。
「レトロだな……」
「光薬って書いてる……」
「ここは、薬屋??」
 光が不思議そうにディスプレイを眺めるなか、白野威は、器用にドアを開けた。
「はやく」
「はーい!!」
 白野威に続き二人もなかにはいると、ほんのりツーンとした薬草の香りが鼻をくすぐる。
「こんにちは」
 なんとなく友美は、挨拶をして見ると、店の奥から声が。
「はーい」
 声の主が出てくるのを待っていると、出てきたのは、ゆるくパーマのかかったボブヘアーで着物姿が可憐な女性だ。
 彼女は、友美を見たとたん瞳を開き、手で口元を隠す。
 その姿は、まるで古い友人に再会したような感じだ。
 友美は、すこしそのようすに困惑したが、微笑むと、女性は、嬉しそうに微笑み返してくれた。
「白野威あの方が??」
「そうさ」
 光は、じっと女性を見る。確かに人では、ない気配がすると思いながら。
「えーとーはじめましての方がいいのでしょうか??」
 柔らかな声が女性から発され、友美は、もしやとあることに気づいた。
「勇音??」
 前世の自分と親しげに話していた女性。あの頃の彼女は、今よりも幼い姿だった。
 勇音は、ぱっと明るい顔になるという。
「そうです!! 瑠花!!」
「やっぱり!!」
 友美は、嬉しそうに微笑むと言った。
「瑠花呼び出した方がいい??」
「そこまでしなくてもいいです!!」
 勇音は、慌てて言うと、更につづけた。
「今は、友美って名前でいいでしょうか??」
「そう!! 改めて宜しくお願いいたします!!」
「こちらこそ!!」
 友美と勇音が親しく話すなか、光には、ある疑問が。
「前世……俺もあったことがあるよな?? 白野威」
「前水郷ノ神子は、早くに亡くなってるから知らないかもね。勇音が神子に選定されたのは、安土桃山時代だから」
 光は、そんなに新しい時代の神子だったのかとすこし驚いた。
「はじめまして栗花落光です」
「はじめまして蜂須賀勇音です」
 ひとまず光は、初対面と認識し挨拶すると、勇音もかえしてくれた。
「でも勇音ずっと神子だったんじゃ……」
 友美は、なぜ今さら白野威があんなことをいったのか、気になっていた。
 実は、ここにくるまえ、神子は、新たに選定されたと聞いていたのである。しかし彼女は、昔から華澄の神子だ。
「実は……皆さんが亡くなられてから、わたしは、一度神子を仮の契約解除と言うかたちで、おりたんです。ですがこの時代にようやく新たな神子が選定され、それにともない、私も契約が戻されたんです」
 華澄の事だ、念のために契約を解除していたのだろう。勇音の今後も考えて。
「でもようやくこれで霞ノ神子として名乗れます」
 勇音は、嬉しそうに微笑む。
「そうだ!! お茶にしませんか??」
「する!!」
「では、お言葉に甘えて」
 友美は、嬉しそうに跳ねるなか、勇音は、店の奥に。
 白野威も足を拭き、中にはいったので、二人もなかに。
「そこへどうぞ」
 案内されたのは、縁側だった。美しい紫陽花を見ながら待っていると、勇音がケーキをもってやって来た。
「どうぞ」
「ありがとう勇音」
「ありがとうございます」
 いただきますと手を合わせると友美は、さっそくケーキを食べて幸せそうに笑った。
「友美可愛いですねぇ」
「???」
 友美は、首をかしげると更に勇音は、友美のかわいさに目を細める。
「光ライバル出現じゃね??」
「白野威俺もそう思った……」
 友美が勇音にとられないかとハラハラしながら、光は、ケーキを食べる。
「ライバル?? 私は、そんなつもりありませんよ??」
 勇音は、にっこり笑みを浮かべると言うが、光は、疑いの眼差しを向けていた。
「だって……また友美幼さが残ってるでしょう?? だから可愛くて」
 光もそこには、同意だが、それでも怪しいと勇音をみていた。
「人って本当に私達とは、感覚が違いますねぇ……」
「なら貴女は、何者です。確かに人の気配では、なく神の気配がするが……」
 光は、鋭い視線を勇音に向け言うと、彼女は、驚いた顔をした。
「正体を見破られるとは!! 貴方なかなか強者ですね」
「ありがとうございます」
 神ならなんとなく分かる気がする。水郷含め、友美を小さい頃から知っている神は、よく可愛いと言うので。
「久しぶりに他の神子にあえて嬉しい!! ゆっくりしていってくださいね!!」
「ありがとうございます」
 勇音は、そういうと、部屋の方に言ってしまった。
「光なんだか勇音おかしくない??」
「俺は、初対面だから何とも言えないが……」
 友美が違和感を感じているのなら何かあるかもしれない。
 この違和感は、実は、当たっており、友美が悩んでいる頃、部屋の奥で勇音は、口で手を押さえ、泣いていた。
「勇音大丈夫かい??」
 この声はと顔をあげると華澄が心配そうに自分をみていた。
「大丈夫です……ただ嬉しくて……まだ光明ノ神子は、小さいですが……あと数年すれば確りとした神子になるでしょう……それも瑠花を越える……」
「友美は、瑠花以上に潜在的な力が強いからねぇ」
「それに話しに聞いていた水郷ノ神子にもようやく会えました……空気だけでわかります。とても優しくて、強い人だって」
 一柱残り皆を見送った。最後の瑠花も見送った後勇音は、高天ヶ原に、登ろうかとも考えた。
 なんとなく彼女には、分かっていたからだ。瑠花の奥に眠っているある神の存在が。
 しかしその神が出てきたところで、瑠花では、ない。
 ならこの長い生を、新たな生を歩む神子たちに出会うために使ってみようと彼女は、思ったの。
「ようやく私は……生きてきた意味が叶いました。これからは、また皆さんと楽しく生きていきたい……」
 もちろん勇音には、他にも生きる意味がある。しかしそれが増えることが彼女には、とても嬉しいことであった。
「わたしが友美のことをもっと早く教えればよかったわね……」
「いえ!! 自分で探すといったのは、私ですから!!」
 勇音は、そういうと涙を拭き、そして言う。
「さて!! お二人ところへいかなくては!!」
「いってらっしゃいな」
 華澄は、微笑むと姿を消す。勇音の止まっていた時がもしかすると動き始めたのかもしれないと。
「お二人ともお饅頭も異かがですか??」
 友美は、瞳を煌めかせ、光は、困惑していた。
「もうそろそろおいとまを……」
 光がそういったとき、勇音は、寂しそうな顔に。
「そうですか……」
「わかりました。なら饅頭だけ……」
 勇音が嬉しそうに微笑むなか、光は、ため息をこぼした。
「神子ってまさか個性的なのか!?」
「どうなんだろうね光!!」
 本当にこれからどんなメンバーが増えるのやら、光は、この時胃が痛いと思っていたが、友美と勇音は、楽しげに微笑むのであった。
 


 
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