光明ノ神子

 友美は、頭を悩ませていた。
「どうしよう……」
 また今年も来る。夫の誕生日が。
 毎年自分の誕生日を盛大に、祝ってくれる夫。流石に手を抜くわけには、いかない。
 書物室で色々調べながら友美は、机の上にうなだれた。
「光何欲しいのよ……なんか、聞いても友美から貰えるものならなんでもいいよー!!!! とか友美なら何時でもwelcome!! とか言いかねない……」
 ふと友美なら何時でもwelcomeと言う言葉にひっかかる。自分でいっておきながら。
「光まさか性欲の鬼??」
 友美がそういったとき、彼女の頭上から溜め息が聞こえ、恐る恐る顔をあげると、光が呆れた顔をし、友美を見下ろしていた。
「でたー!!!!」
「……なにが出た、だ」
 光は、友美の頭をポンポンと手でやると、友美の向かいに座った。
「後性欲馬鹿みたいに言うな!! 俺は、そんなに飢えてないし、そもそも性欲は、そんなにない!!」
 どうやら聞かれていたらしい。友美は、顔を青ざめる。
「ごめんなさい……」
「いいよ」
 光は、微笑むと持ってきた珈琲を飲む。
「光ありがとう」
「いえいえ」
 前におかれていたマグカップを持ち、友美も彼の入れた珈琲を飲む。
「友美何悩んでるんだ?? 夕食の時からおかしかったけど」
 光は、本当によくみている。友美のことを。友美は、どうしようかと悩みながら言った。
「光その……」
 サプライズにしなくてもいいのだろうか。ふとそんな言葉が頭をよぎる。
「……なんでもいいは、さらに悩ませるし……」
「光……」
 友美は、このとき確信した。光は、すべてわかってることを。
「なにがいい?? 誕生日プレゼント!!」
 もうここまで光が気をつかってくれてるのならいっそう聞いてしまえと、友美は、問う。
「うーん」
 悩ましげな顔をし、光は、いう。
「……書籍しか出てこない」 
「なら書籍でもいいわよ!!」
 光は、さらに悩ましげな顔をしそして言う。
「うーんやめとく」
「そう……」
 また振り出しに戻った。友美は、どうしたものかと光のじっとみる。
「かわいいぬいぐるみとか??」
「うーんぬいぐるみは、いいかな……」
「なら私!!」
 光は、困ったように笑うと言う。
「それも却下……」
「まさか……私……スイーツ以下!?」
「それは、ない!!」
 思わず突っ込むと友美は、困った顔をした。
「もう手作りお菓子しか出てこない……」
「俺は、それでもいいけどな……」
「なら一つは決まりね!!」
「そっか」
「光もし欲しいもの出来たらいってね!?」
「了解」
 友美は、一人スッキリした顔をし、書物室を出ていく。
 光は、オレンジ色の灯りを見ながら一人ため息を漏らした。
「光??」
 出てきた水郷に光は、微笑むと言う。
「幸せだな……って思っただけだ」
「あらでもそれだけじゃないでしょう??」
 光は、水郷の問いに困ったように笑う。
「俺の欲しいものは、正直友美にずっと貰ってるから改めてプレゼントなにがいい?? と聞かれると少し困ると思って……」
 追いかけ続けた姫を彼は、手に入れ、何気ない姫とそして我が子との生活が光にとっては、素敵な贈り物だ。
「贅沢な悩みね」
「そうだな」
 光は、必死に色々考えてくれている友美を思いだし目を細めた。
「何時もしてるけど……友美の時間をちょうだいと言ってしまいそうだ。去年みたいに」
「でもそれは、それで嬉しいんでしょう??」
「もちろん」
 しかし今年は、言わないでおく。友美が何をしてくるか楽しみと言うのもあるので。
「とりあえずトースターとでも言っておこうかな……あると便利だし……」
「それもいいかもね」
 たまたま書物室に忘れもとを取りに来たらいいことを聞いた。
 友美は、そっとその場を離れるとさっさくスマホを取り出す。
「よし!! 探すわよ!! でもトースターって……家族でつかうわよね?? 結局……」
 誕生日プレゼントにはたしてなるのだろうか。しかし今は、それを気にしている暇は、ない。
「うーん水蒸気か、 カリカリでさらに美味しく焼けるやつか……今のトースターってたしかこの美味しく焼けるたつの古いのよね……デザイン的には、こっちの水蒸気の方がかわいい……」
 調べながらレトロなデザインに心が引かれる。
「よし!! 光もこういう、かわいいの好きだしこっちにするか!! 今のも使えるからとりあえず持ってない方で!!」
 早速友美は、トースターを注文し、誕生日に向けて、行動を開始した。

 誕生日当日、家族でパーティーをし、無事に終わった。和やかな雰囲気で今年もよかったと胸を下ろす。
 片付けを終え、光がゆっくりしだしたころ、友美は、今だとダンボールをもち、光の前に。
「光!!」
 のんびりと座布団の上に座り、テレビを見ていた光は、しかいを友美に遮られ、少し驚く。
「友美??」
「もうひとつ誕生日プレゼントがあります!!」
 光は、首をかしげる。
「そのダンボール??」
「そう!!」
 友美は、こたつの上にダンボールを置く。
「光開けてみて!!」
「うん」
 ダンボールを開けると、光は、驚いた顔をした。
「トースター!?」
「そう!! レトロかわいくてうちに今は、ない性能のやつ!!」
 光は、微笑むという。
「ありがとう」
「光もしかして買ってた??」
 光の様子が少しおかしいと友美は、思い聞くと、光は、首を横に振った。
「買っては、いない。ただ予約しようとは、してた……」
「まさかそれの上位機種??」
 不味いことをしてしまったと友美は、おもうが、光は、さらに首を横に振った。
「いいや……これ……」
 なんだろう、光の反応があまりよくならない。
 友美は、どうしたのかと不安になるなか、いう。
「これ発売前なんだ……」
 友美は、キョトンとしたのち驚く。
「えー!!!???」
「知らなかったのか!?」
「知らないわ!! とりあえずこのメーカーのトースター可愛い!! から、知り合いに問い合わせて、ならこれがって……すすめてくれたからこれにしたの……」
 知り合いとは、誰だろうかと思いながら光は、聞いた。
「その知り合いって……」
「珊瑚だけど……」
 まさかの疾風ノ神子だった。
「珊瑚!!?? 確か……私は、ただのしゃちくとか言ってたが……」
「このメーカーのデザイン部の部長だものね」
「部長……さすがといえるが……」
「珊瑚みかけによらず、仕事できるから!!」
「そうだな……じゃなくて!! トースター問題なかったのか!?」
 友美は、そのまま伝えることにした。
「光どうせこれ、使ったらSNSにアップするでしょう??」
「あぁ……」
「で光なかなかフォロワー多いじゃない?? だから珊瑚がそれ使ったらついでにSNSに使用感をアップしてくれって!!」
 光は、微笑む友美をみて、驚いていた。さすが神子姫色々とうまく回りすぎてると。
「分かったよ」
「さて!! さっそく焼きましょう!! 食パン!!」 
 キッチンに向かった友美を見送りながら光は、嬉しそうに笑っていた。
「光よかったわね!!」
「そうだな水郷」
 驚きもあったが、今年もいい誕生日になったともいえる。
「手作りマカロニに、発売前のトースターって……友美って本当にすごいよ……」
「光も似たようなものよ??」
「そうか??」
「そう!!」
 キッチンで食パンを準備する友美を見ながら光は、微笑むとおもう。
 本当にいい奥さんだと。
「さて手伝ってくる……」
 そういいかけたとき、キッチンから破裂音が。
 顔を青ざめ、光は、キッチンにいくと、吹っ飛んでいた食パンが。
「げほ!! 食パン……が爆発した……」 
「なんで!!??」
「わからない……とりあえず食パンの袋を開けようとしら……」
「ちからいっぱいあけちゃったのか」 
 とりあえず食パンは、食べれそうである。
 光は、手を洗い、さらに食パンをおく。
「てへへ」
「さぁ焼いて食べようか!!」
「うん!!」
 互いに微笑み合うと、二人は、おもう。いい誕生日になったと。
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