光明ノ神子

 ある夜のこと。
「買い忘れたわ……」
 友美は、冷蔵庫を開けながら、こう呟いた。
 昼間買い物に言ったもき、牛乳を買い忘れてくるなんて。
 シンクの上に乗っているフルーツグラノーラを友美は、見ると、悩む。
「食べたいし……行くか」
 冷蔵庫を閉め、キッチンをでると、和室へ。鞄を持ち、玄関へ行こうとしたとき、風呂からあがった光とすれ違った。
「友美お風呂あがりに何処へ??」
 何時もなら仲良く風呂にはいる二人だが、今回は、お互い別で、友美が先に風呂へ入った。
 友美は、シャンプーのいい香りがする光にクンクンと鼻をくっ付ける。
「いいかおりー」
「それは、お風呂あがりだから……じゃなくて、何処に行くんだ??」
「スーパーに!!」
「スーパー!!??」
 時刻は、午後九時を少しまわった頃。光は、悩ましい顔をし言う。
「危ないよ。こんな時間に」
「この時間に帰宅する人もいるし、大丈夫よ!! とりあえずスーパー行ってくるわ!!」
 友美は、そう言うと、玄関に向かうが、その時光に腕を掴まれた。
「光??」
「少し待っててくれ」
「えっ!?」
「いいから!!」
 すごい勢いで、リビングにとんでいった光。
 友美は、言われたとおりに待っていると、鞄をもった光がやって来た。
「光ついてくるき!?」
「護衛だ!! 護衛!!」
「護衛!?」
「友美は、要らないだろうけど、一応!! それに女性一人より男が隣にいた方がなにかと回避も出来るから」
 確かにそうである。
 友美は、しかたがないとここは、光のいうとおりにすることにした。
「分かったわ。でも子供達のことは……」
 さすがに子供達だけにするわけには、いかない。
 その時リビングから白野威が出てきた。
「私がいるから大丈夫さ」
「白野威ありがとう」
 留守は、白野威にまかせ、二人は、さっそくスーパーに向かった。

 夜のスーパーは、ある意味パラダイスといえる。
 さっそく二人は、スーパーにつくと、友美は、牛乳のあるコーナーへ。
「まぁこれでいっか。なんやかんやうちの子達牛乳飲むし……」
 大きい牛乳パックを二本かごにいれると、友美は、ふと気づく。
「……護衛と言い張っていた、旦那がいない……」
 辺りを見渡してもいない。友美は、ため息をつくと、光の気配をたどり、彼を探す。
「いた……」
 光を見つけたのは、スイーツコーナー。予想通りとも言える。
 友美は、気配を消し、光の背後にたつも言った。
「なにやってるのかな~」
 光は、体をビクッとさせた。
「友美怖い!!!!」
「あらそう??」
「気配を消すな!!」
「それは、護衛と言いはってた光がいなくなるからでしょう!!」
 光は、申し訳なさそうな顔に。
「すみません……」
「まったく。スイーツと私どっちが大切なのかしら??」
「友美だよ!! でもスイーツも大切です……」
 友美は、あまり光をいじめるのも悪いなと思い、今回は、これくらいにしておくことにした。
「本当に正直なんだから」
「それが俺の取り柄ですから!!」
「他にも取り柄あるわよ」
 友美は、光の見ていたスイーツを見て、顔色を変えた。
「定価の30%オフ!? こっちは、半額……さすが、夜のスーパー」
 後ろでそわそわしている光。友美は、知っている。こういうときの光は、おねだりをしたくて、でも我慢している時だ。
「……光どっちがいい??」
 友美が聞いたとき、光は、瞳を煌めかせた。
「こっちのイチゴケーキ2つの方で!!」
「こっちもモンブランもいいと思うけど……」
「友美さん両方いいですか??」
 友美は、思わず笑ってしまった。両方ほしかったのかと光に思いながら。
「ふふふ」
「駄目??」
「いいわよ」
 かごにケーキの入ったパックを二つ友美は、いれると、光は、今度は、プリンを見始めた。
「プリン……食べたい……」
「プリンは、駄目よ!! ケーキ買うんだから!!」
「明日の分ってことなら……」
 友美は、困った顔をする。
「うーん……なら子供達のぶんもかっておやつならいいわよ」
 光は、頷くと、プリンをかごにいれた。
「プリン~プリン~」
「歌ってるし……」
 本当にどれだけスイーツが好きなのか。
 友美は、嬉しそうに弾んでいる光を見ながら思う。
「さて会計してくるか」
 レジに向かい会計をしようとしたとき、友美がお金を出す前に、光が先に代金をだし、支払いを済ませる。
「光それ光のお小遣いじゃ……」
 家計用の財布を持ち、友美は、言うと、光は、微笑む。
「これくらいいいよ。それに女性に支払わせる男ってダサいしな……」
 そう言うと、光は、かごを持ち、サッカー台に。持ってきていたエコバックに買ったものを積める。
「さすが……つめかたもプロ……」
 隣で友美は、見ることしかやることがなく、光は、つめ終わるとエコバックを肩にかけた。
「さて帰ろう」
「そうね」
 差し出された手を友美は、とると、二人は、仲良く手を繋ぎ帰路についた。
 恋人繋ぎの手を見て微笑みながら。

 帰宅し、友美は、さっそくフルーツグラノーラを食べていた。
 念願のグラノーラに舌鼓をうちながら食べていると、視線を感じた。
「美味しそう……」
 友美は、光を見て、困惑していた。普通に食べているだけなのにと思いながら。
「光が買ってきたグラノーラよ??」
「だとしてもだ……何故か美味しそうに見える……」
 ケーキを食べ終えたあとに、グラノーラもとなると、カロリーが気になるところでは、ある。
 光は、困った顔をしなにやら思案したが、もう我慢できないと、キッチンに行き、グラノーラの入ったお皿をもってリビングに戻ってきた。
「いただきます」
 光は、そう言うと、さっそくグラノーラを食べる。
 やはり美味しさがアップしている気がする。
 光は、これも友美の効果かと思いながら食べていると、友美に見られていた。
「なんでニヤニヤ笑いながらグラノーラ食べてるの??」
 まさかの理由に光は、衝撃を受けた。笑ってるつもりは、なかったのにと思いながら。
「これも友美への愛がさせるのか……」
「……ニヤニヤ笑いながらグラノーラ食べることが??」
「たぶん……あと間違いなく美味しくなってるんだ……グラノーラ……これも友美効果だな……」
 一人光は、納得していたが、友美は、苦笑いを浮かべるしかできなかった。
 流石の神子でもそんなご利益は、ないと思いながら。
「美味しい」
「ならよかった」
 しかし隣で幸せそうな光を見ていると、そんなことは、どうでもよくなる。
「まぁ光が幸せならいっか……」
 友美は、そう呟くと微笑む。愛しい人の幸せは顔を見ながら。
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