光明ノ神子

 ある春の朝のこと。
「光起きて!!!」
 体をゆすられ、光は、起こされた。
 眠そうな顔をし、起き上がると、目の前には、友美が。しかしその姿に光は、唖然とした。
「ウェディングドレス!!??」
 なぜ朝から妻は、ウェディングドレスを来ているのか。
 朝の清らかな光に照らされ、純白のドレスに身を包んだ友美は、とても美しかった。
「友美きれいだよ……」
「こりゃまだ寝てるわね……」
 光は、柔らかく微笑むが、友美は、困った顔をする。しかしさすがに自分のやり方も悪かったと言えよう。
「光!!」
「なに??」
「ちょっとお願いがあるの!!」
「お願い??」
 友美は、ここは、分かりやすく言うべしとはっきりと光に告げた。
「お姫様抱っこして??」
 光は、コクりと頷く。
「分かった……」
「ありがとう」
 光は、布団から出ると布団を畳むが、動きが止まった。
 次第に覚醒しだした頭で光は、振り返る。起きてから起こった出来事を。そしてみるみるうちに目を見開くと、スマホを構える。
「友美のウェディングドレス!!」
 しかも興奮ぎみに。
 友美は、顔をひきつらす。
「完全覚醒……」
「友美がまた俺手作りのウェディングドレスを着てくれてる!! なんという歓喜!!」
「あはは……」
「でお姫様抱っこだったね!! ということは……」
 そして光は、あることにも気づいた。
「タキシード着ないといけない……」
「まぁそうなるわねぇ……」
「出してくるか……」 
 別に着ることじたい嫌では、ないが、出してくるのが面倒だった。
 光は、布団をテラスに出し、干すと、和室を出ていった。
「光のやついいって??」
 入れ替わりに入ってきた白野威は、友美に聞くと、友美は、頷いた。
「うん」
「ならよかったじゃん」
 夢の中での思い付きだったが、お願いしてよかった。
 光は、友美のお願いを聞いてくれた。
 友美は、嬉しそうに微笑む。
「まさか光手作りのウェディングドレスまた着れて嬉しい」
 このウェディングドレスは、光手作りであり、彼のこだわりが隅々にちりばめられている。
 友美もこのドレスのデザインが好きだ。
「あれから二、三年くらいたってるのか……」
「白野威それ以上よ。経ってるの」
 あれからとは、光が友美の夢を叶えるため、内緒でウェディングドレスを製作し、結羽の工房のうらにある庭で、写真撮影をした出来事の事だ。
「また光のタキシード見れる~」
「タキシードは、友美手作りだったよね」
「そうそう~」
 上機嫌に友美は、答えていると、光が戻ってきた。大きな箱をもって。
「おっ!! タキシード!!」
「友美ひとつ疑問が」
「なに??」
「ウェディングドレスを着てるってことは、家のなかじゃなく、式場みたいなところで、お姫様抱っこをしたいのか??」
 友美は、しばらくポカーンとするとごまかすように笑った。 
「てへ!!」
「これは、考えてなかったんだな……そこまで……」
 光は、せっかくなら、シチュエーションも大切ではと思う。
「結羽に連絡いれるか……裏庭貸してもらえるといいが……」
 友美は、スマホをもち、結羽に連絡しようとしている光を見ながらふと呟いた。
「光……ネモフィラ畑でお姫様抱っこされたいです!!」
 電話をかけながら光は、驚いた顔をしたとき、結羽が出た。
「光様おはようございます。どうされました??」
 朝早くに突然電話が来たら驚くのも無理は、ない。光は、どうしたものかと思いながらもとりあえず聞いてみようと結羽に聞く。
「実は、結羽。友美がウェディングドレス姿でお姫様抱っこをして欲しいらしくて……」
「友美様が!? で私になにができます!!!???」
 相変わらず主大好き結羽なので、主のためとなれば勢いがすごすぎる。
 電話の声からも伝わる熱意に光は、ひきながらもいった。
「ネモフィラ畑で撮影可能な所を知っていると教えてほしい」
 なかなか見つからないだろうと思ったとき、結羽は、あっさりと言った。
「ありますよ。しかも私の土地ですから何時でもどうぞ」
「そっかー結羽の土地か……って……え??……結羽の土地!!??」
 まてまてそんなの初耳なのだがと光は、困惑するなか、結羽は、言う。
「海辺の土地をかってネモフィラ畑にしてるんです。ほらファションデザイナーなので、撮影場所もあると何かと便利ですし、利益もありますから」
 結羽は、ファションデザイナーであり、ウェディングドレスのデザインも多くしている。だから撮影のことも考え作ったようだ。
「相変わらず、すごいねぇ結羽」
「私の麒麟ですから!!」
「友美なに胸張ってるのさ。友美のことじゃないから」
 胸を張りどうだと友美は、やっているが、白野威は、そんな友美を呆れてみていた。
「分かった……」
「善は、急げ!! です光様!! 早速今日は、いきましょう!!」
「今日!?」
 そんな急遽いいのだろうかと思ったとき、友美の期待に満ちた瞳を見て、光は、いいんだとわかり言う。
「分かった」
 急遽予定が決まり、その後光と友美は、朝食を食べ、子供たちを学校と幼稚園へそして光は、仕事を分身に任せ、友美も仕事をとっとと終わらし、朝する家事をすべて終わらすと、結羽との約束の場所へと向かったのであった。

 海の見える場所。そこにネモフィラ畑は、あった。
 さすがデザイナーといえる。センスがとてもいい。一面の青いネモフィラとそして空と海の青がとても素敵だ。
「凄い結羽!!」
「ありがとうございます友美様」
 結羽は、主を見ながら思う。まさか家からウェディングドレスを来てくるなんてと。
「結羽起きてすぐからウェディングドレスを友美は、着てるみたいだ」
 結羽は、光の発言に驚くが、主ならあり得るかとふにおちた。
「友美様楽しみなことがあると、すぐにそれができるようにしてますものねぇ……」
「そうそう」
 誰もいないかっこうの撮影場所。
 持ってきたカメラを友美は、取り出したが、ふと気づく。
「どうやってとろう……」
「撮影なら私がします」
「ありがとう結羽!!」
 友美は、嬉しそうに微笑む。
「光様、着替えは……」
「とりあえず後は、上を着るだけだよ」
「わかりました」
 光もタキシードに身を包む。
 さてこれで友美のお願いを叶えられそうだ。
「ならこちらに」
 結羽に案内をされ、やって来たのは、美しいネモフィラ畑の真ん中。海がよくみえそして美しい空も広がっている。
「SNSでみた光景!!」
「でしょう?? でもこういう白いウェディングドレスには、ここが一番かと」
 青と白のコントラストが美しく、更にウェディングドレスがきれいに見えるだろう。
「ここ本当に凄い……」
 ついてきた白野威も広がる花畑をみていった。
「ありがとうございます。白野威様」
 結羽は、礼を言うと、友美と光に言う。
「光様友美様を持ち上げて!!」
「持ち上げる!?」
 光は、とりあえず思い付く方法で友美を抱き上げることにした。
「友美いい??」
「いいよ!!」
 友美は、光の肩に手を置き、光は、友美の腰を持つと、彼女を抱き上げた。
 ふわりと舞うドレスの裾と、ウェディングベールが美しい。
 しかしやったる方は、なかなか大変だ。
「ありがとうございます!! さぁつぎ!!」
 結羽は、そういうとカメラをまた構えるが、光は、ゆっくりと友美を下ろすと彼女に言った。
「苦しくなかった??」
「大丈夫!!」
「ならよかった」
 嬉しそうな友美を顔をみているとこちらも嬉しくなる。 
 愛しい姫を光は、お姫様抱っこすると、言った。
「これでよろしいでしょうか?? 俺の姫」
「ありがとう光!!」
 友美は、幸せそうに笑うとそのまま光に口づけをした。
「友美ったら……」
 それをみていた白野威は、目を細目、これは、逃すまいと、結羽は、シャッターをきる。
 口づけをされ、光は、驚くが、すぐに微笑む。
「友美ったら……」
「いいでしょう??」
「もちろん」
 ゆっくり友美を降ろすと、今度は、光から口付けをした。
「さて戻るか」
「そうね」
 二人は、結羽と白野威のところに戻ると、結羽は、興奮を隠しきれない様子でいった。
「友美様、光様このデータ私に預けてください!!」
 友美は、凄い勢いに頷く。
「いいけど……何に使うの??」
「お楽しみです!!」
 その日は、これで解散となったが、後日凄いものが家に届けられた。
「結羽これ……」
「写真集です!!」
 なんと結羽は、この日の写真を使い写真集を作ってしまったのである。しかもすごくできがいい。
「いい記念かな」
「だけど光……なかなか恥ずかしいかも……」
 友美は、ほほを赤く染め言うが、光は、なかなかこの写真集が気に入っていた。
「なかなかいい感じ……結羽ありがとう」
「いえ光さま!! あとこちらは、写真です。リビングに飾られるかと一応プリントしました。そしてこちらがお借りしてたメモリーカードです」
 結羽から写真とメモリーカードを受け取り、友美は、恥ずかしそうだが、どこか嬉しそうに笑った。
「ありがとう」
 写真集も恥ずかしいが嬉しい。
 早速写真をリビングに飾り、友美は、満足げに微笑む。
「これでまた思い出が増えたね!!」
「そうだな」
 ネモフィラ畑で仲良く微笑みむ二人の写真。
 友美と光は、互いに見つめ合い微笑むと思う。のであった。
 改めてこの人と出会えてよかったと。
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