光明ノ神子
冬の眠りからは、目覚める春は、冬に比べ様々な香りがする。
テラスに置かれているベンチに座りながら友美は、大きく息を吸った。
「ミモザのいいかおり……」
優しいミモザの香りは、まるで春の日溜まりのような香りとも言える。
そばに咲くミモザを友美は、みて微笑む。
「この香りは……」
風が優しく友美の頬を撫で運んできた香りに友美は、覚えがあった。
香りのする方をみると、テラスの入り口に光がいた。珈琲の入ったマグカップを二つもって。
「友美飲む??」
「ありがとう!!」
光は、テラスに出てくると、友美のとなりに腰かけ、マグカップを彼女に渡した。
「これは、雨の香りかしら……」
「雨??」
友美は、楽しげに微笑むと言う。
「光って雨の臭いがするときがあるの」
光は、柔らかい笑みを浮かべると言う。
「どんなとき??」
「うーん例えば水郷に頭を叩かれてるとき!! あの時けっこう雨の臭いがするのよねぇー」
光は、飲んでいた珈琲でむせた。
ごほごほ咳をし、突っ込む。
「なんでそこ!?」
「だってそうなんだもん!! あとは……神子装束の時とか!! 柔軟剤にまじってかおるのよねぇー」
友美は、そういうと珈琲をのむが、光は、他にましなシーンは、無いのかと思っていた。
「もしかして、雨の香りって水郷がするんじゃ……」
「かもしれないわ!!」
「なら水神の力の影響もあって俺も雨の香りがするんだな」
「かもね!!」
友美は、楽しげに微笑むと続けた。
「春は、晴れの日も雨の日も風の日も、いいかおりがする!! 本当に素敵な季節よね!!」
隣で笑う友美をみて、光は、微笑むと言う。
「そうだね」
貴女からも春のかおりがしますよ。
光は、心のなかで友美に向かっていうと、優しく彼女の髪に触れた。
「光??」
「春の日溜まりのように何時でも優しくわらっててくださいね。俺の姫」
友美は、この時頬を赤くすると頷く。
胸が早鐘をうち五月蝿い。しかし格好いい光が。
「光……もう一度……」
「それは、駄目」
「けち」
「ふふふ。なんだそれ」
「ふふふ。だってそうだと思ったから!!」
青い空のした二人は、嗤う。春の優しき風と香りを感じながら。