光明ノ神子

ふと思い出したことがある。
 妖精達の性格に関して。
 深い森のなか、光は、歩きながらフードをさらに深く被った。
 ここは、妖精達が支配している国。まさか神子である自分は、ここに来ることになるとは、光は、少しばかり驚いていた。
「……ここか」
 たどり着いたのは、森の奥にひっそり水を湛える湖だ。静かな湖畔と美しい緑。しかしこの湖は、今問題を抱えていると言える。
「確か……ウンディーネが水がおかしいと言っていたんだったよな……」
 水の妖精であるウンディーネ達がみなしておかしいと言うからには、何かある。
 光は、湖に近づくと、しゃがみそして水に触れた。
「……なるほど」
 光は、そのまま水を撫でたとたん湖は、一気にその様子を変えた。
 水は、黒く濁り、水しぶきと共に、大きな蛇が現れたのだ。
「お前は、何者だ」
 犯人は、こいつだろう。光は、どうしたものかと考える。
 大蛇は、おかしな者だと光に攻撃をしたが、光は、ひらりと攻撃をかわす。
 水の玉を放とうが、毒を飛ばそうが、ひゅるひと風のようにかわされてしまうのだ。
「お前妖精では、ないな」
 光は、しかたがないと、攻撃をかわしながら、太刀を抜くと、刃のないほうで、なんと蛇の頭を殴った。
 すごい衝撃に蛇は、そのまま気絶し、水のなかに。
 光は、水面に降り立つと、じっとその蛇をみる。
「あやかしの類いか……とりあえずモンスターっていった方がいいか」
 モンスターやあやかしの類いなら住み着いて、水を汚しているのも納得がいく。
「おい!!」
 蛇を起こすように光は、蛇の腹に攻撃を加えると、蛇は、顔を青ざめ光をみる。
「お主何者だ!?」
「ただの神子だ。それより単刀直入に言うが、ここ立ち退け」
 蛇は、困った顔をするという。
「ここ居心地いいんだ……」
「そりゃそうだろうな。しかしお前が住み着いてから妖精達が困ってるんだ」
「それは……」
 確かにこいつは、悪くない。光は、どうしたものかと思いながら、あることを思いついた。
「ならここの守人をやってくれないか??」
「守人だと??」
「この水は、力もあるし、なにより皆が使いたい場所だ。だが、守人がいない。ならお前がなればいいだろ?? 力もあるしな」
 蛇は、確かにと思いこの案に乗ることにした。
「分かった」
「よし。あとは、妖精だな」
 妖精とは、少しばかり困った種族とも言える。光は、すぐに妖精たちのもとへ。そしてこの事を説明した。
「なんだと!?」
「そんなやつ殺してしまえ!! それがお前の役目だろ!?」
 そんな声がするなか、光は、妖精達の前でいった。恐ろしいほど冷たい眼差しで。
「傲慢なお前たちからすれば、俺は、人でお前達のいいなりになるやつなんだろう。だが俺からすれば、お前たちは、ただのモンスターと一緒だ。何時でも消し飛ばせるぞこの世界ごとな」
 先程まで感じなかった恐ろしいほどの力の気配に妖精達は、怯える。
「神子とやらそれは……」
「生憎俺は、本気だ。少なくともここにいるやつらすべてを世界の根幹から存在そのものを消せるが」
 村長は、この時思い出していた。世界には、異界を渡るものがいる。そしてこの中でも神子と名乗り、フードを被った男は、怒らせるなと。
「まさか……水郷ノ神子なのか!? お主は……」
「そのまさかだ。長老」
 長老は、これは、いけないと急いで光の案を飲むことにした。
「分かった……受け入れよう……」
「ありがとう」
 光は、微笑むと長老にあるものを渡した。
「これは、水を清める薬だ。蛇の方には、彼の悪い力を反転させ、いい力にする魔法をかけたが、念のために」
 長老は、驚いた顔をする。
「そこまでやっての案だったのか……」
「当たり前だ。じゃないと対価を払った者に面目がたたないからな」
 光は、そういうと妖精達のもとを後にし、蛇にもさらに説明をした。
「分かった」
「なら頼む。万が一妖精達が何かしてきたら、水郷ノ神子がいってた。と言っておけ。たぶんなにもしてこなくなるから」
 蛇は、頷くとありがとうといい、水のなかに消え、水も美しい本来あるべき姿に変わった。
「光今回は、脅しパターンだったわね!!」
 出てきた白銀の蛇に光は、微笑む。
「水郷。妖精達は、基本傲慢だからな。話し合うより力で認めさせた方が早い」
「確かに」
「じゃ帰ろう」
「そうね!!」
 光は、指でなにかを描くとなにかを跨ぐしぐさをした。すると、彼は、光に包まれ、次の瞬間、世界を渡った。
 閉じていた目を開けると、見慣れた部屋にいた。
「光お疲れさま!!」
 待っていた愛する姫に光は、微笑むと言った。優しくまぶしい笑顔で。
「ただいま友美!!」 
と。
 
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