光明ノ神子

 こちらに遊学をしたはや半年が経った。
 学校帰り、刻清は、友人達と流行りのカフェに来ていた。
「ここの秋スイーツが美味しいんだから!!」
「そうなよね……」
 自分の祖国にそんなもんまだない。あったとしても高級店だけだなと刻清は、思っていると、目のはしに見覚えのある人物が。
「兄上……」
「刻清ちゃんどうしたの??」
「しかも兄上って古……」
 古くて悪かったなと、強引に着いてきたクラスメイトに思うなか、間違いなく兄がカフェにいる。
 イートインの席で本を読みながら。
「まさか本当にお兄さん??」
「えぇ。あそこの色そう薄い人」
 刻清は、指を指すと、クラスメイト達は、驚いていた。
「すごいイケメン!!」
「いいなぁー」
「紹介してよ!!」
 絶対にクラスメイト達は、光を大学生と思っているだろう。
「大学生かな??」
「けっこう私達に近そうだよね!?」
 やっぱり。あまり歳が離れてないと思っている。
 まぁそれもしかたがないだろう。そもそも光の身に起こったことは、普通の人には、理解しがたい事なのだから。
「やめておくわ。兄上に悪いし」
「なんで??」
 と会話していると、順番がやってきた商品を注文し、受け取りを待っていると、光が席から立ち上がり、お盆をもって、こちらにやって来た。
「刻清」
 気づかれ、声をかけられたらしかたがない。
「兄上」
 光は、妹の様子が変なことに気づく。そしてなにか察する。
「……また寄りなさい」
 それだけ言うと、光は、カウンターにお盆を返し、店を出ようとしたが、光に気づいたクラスメイトは、彼に話しかけた。
「刻清ちゃんお兄さんだよ!!」
 刻清は、戸惑う。どうすべきか、兄の気遣いを優先するべきか。
 刻清が悩むなか、光は、彼女をアシストするように動いた。
「こんにちは。妹がお世話になっているみたいで、ありがとう」
「いえ!!」
 にっこりスマイルを光は、浮かべると、クラスメイト達は、顔を桃色に染めていた。
 確かに兄は、顔がとてもいいが、まさかそれを武器に使ってくるなんて。
 普段の光からは、考えられない行動だ。
「じゃ僕は、これで」
 光は、そういうと微笑み、店を出ていった。
 あの兄が僕だってと刻清は、驚きを隠せなかった。そもそも裏表もなく、天真爛漫な兄が演技をすること事態驚くべき事だ。
「刻清ちゃんお兄さんすごく優しいね!!」
「めっちゃタイプ!!」
 クラスメイト達がそう話すなか、刻清は、一人笑いを堪える。
 あの兄があんな風に立ち回るなんて。これは、何かある絶対に。
 その後刻清は、クラスメイト達と分かれると、すぐに兄の家に向かった。
「あら刻清どうしたの??」
 インターフォンを押すと、義姉が出てきた。
「義姉上、兄上は、いる??」
「いるわよ。なかにはいって!! ちょうど美味しい月餅があるの!!」
「ならお言葉に甘えて」
 家にあがると、そのまま友美は、刻清をリビングに通した。
「兄上来たわ」
 光は、驚きもせずに、刻清を迎える。
「そこに座れ」
「ありがとう」
 座布団の上に座ると、友美がすぐにお茶と月餅を出してくれた。
「私は、とりあえず席を……」
「義姉上外さないで」
「そうだよ友美」
「分かったわ……」
 友美は、とりあえず光のとなりに座る。
「まさか兄上があそこに居たなんて」
「たまたま仕事帰りによっただけだ」 
 光は、茶を飲む。
「学校楽しいか??」
「一応はね」
「一応か……」
 光は、溜め息を着く。たぶん妹は、なにか抱えてる。間違いなく。
「兄上ありがとう」
「何が……」
「カフェでの件よ。お陰で、面白かったし、付き合いをやめた方がいいやつも分かったし」
 友美は、不思議そうに話を聞きながら、光をみる。
「光何したの??」
「たまたま帰りに寄ったカフェに刻清がクラスメイトと来てたんだ」
「青春!!」
「でその中の一人が俺に気づいて声をかけてきたから、挨拶しただけだよ」
 そう光は、挨拶しただけだが、それが重要だった。
「義姉上。兄上が一人称僕って言う??」
 友美は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔に。
「光が僕!?」
「兄上あえてそう言ったんだやっぱり。それにあの笑顔。普通の人は、気づかないけど、瞳が軽蔑してた」
「軽蔑……」
 友美は、光を見ると、彼は、何時もどうりだった。
「光が……」
「気のせいだろ」
「気のせいじゃないわ。げんに兄上がそんな目で見てたやつは、クラスの中でも厄介者だもの」
 友美は、ニヤリと笑った。
「こりゃ何かありますなぁ~」
 光は、視線をそらした。
「それにあえてここへ来るように言ってくるし……兄上何を見たの」
 友美の興味津々な視線も妹の視線が痛い。
 光は、観念し言う。
「喧嘩した後、一人が虐めをしそうだっんだ!! でそのターゲットが刻清になりそうだったから!!」
 友美は、優しく微笑み、刻清は、眉を下げていた。
「虐め……」
「あちらとこちらは、文明の発展も違う。刻清は、いわば過去から未来へ来てることになる。同級生からすれば、古風な刻清の話し方やふるまいが気に入らないとつま弾きにすると思ったんだ。それにそういうと変わったやつは、虐めのターゲットになる。友美のように強ければ安心できるが、刻清は、違う」
 光は、優しい眼差しで妹を見た。
「いくら異能を使えても普通の人だ。なにより貴族の大切な姫。いざ、虐めのターゲットになったとき対処が出来ないと思った。なによりそんなめにあって欲しくない。だからこ兄として出来ることをした」
 友美ならば相手にトラウマを植え付けるほどの事は、簡単だ。しかし刻清は、違う。
 両親や一族の者達に愛され大切に育てられてきた。自分とは、違い。
「兄上……」
「一族にとって俺は、長男なのに異能もない、いらないやつだったが、刻清は、違う皆から大切に育てられてきた。だから人の負の部分を見ることなんてしなくていい。むしろしないでくれ」
 あたたかく愛されたまま彼女には、幸せになって欲しい。
 こんな兄だが、光は、そう思っている。
「なにそれ……」
 刻清は、拳を握り言った。
「兄上は、そんなんじゃないわ!! 一族の者が兄上を短期的に見て、判断しただけじゃない!! 私にとって兄上は、大切な人!! だからそんなこと言わないで!!」
「刻清……」
「だから今度か、要らないやつとか言わないで!!」
「分かった。すまん」
「その……今回は、ありがとう。一応母上と、父上、蛍雪には、言っとく」
 光は、頷く。
「分かった」
 本当にこの兄妹は、仲がいいなと友美は、思いながら、見ていると、光と目があった。
「友美なでその……生暖かい目で見るんだ……」
「いやー兄妹っていいなぁーって!!」
 刻清と光は、苦笑いを浮かべる。
「義姉上そうでもないわ」
「そうだよ友美」
「そもそもその異能なら兄上、一族の皆をぐうの音も言わせない程かんぷなきまでに叩き潰せるのに何故しないのかしら……」
「アハハ……」
「一族で一番強いのに」
 そう光は、今一番の中でも一番力が強いを誰も越えられないほどに。
「まぁ光は、その一族が嫌いで抜けてきてるしねぇーなによりそんなことしたら、お義母様が笑い転げるからねぇ」
「母上に笑いだけは、絶対に提供しない。絶対、光ならやると思ったと言うぞ!! あの人!!」
 光と刻清の母は、なかなか変人だ。基本仕事人間で一族の事などどうでもいい人である。
 娘に遊学を進言したのも母、百合だ。
「母上前衛的だもの……でもこの世界では、普通でしょう??」
 友美と光は、顔を見合わした。
「全然」
「兄上それ本当??」
「本当だ」
 刻清は、腕を組む。もしかすると母は、自分が思ってるよりも色々すごいのかもしれないと。
「仕事は、出来るが私生活ダメダメだしな……」
「確かに」
 友美は、隣でずっと腹を抱え笑っていた。
「私を嫁にしてる光がそれ言う!?」
「友美より常識は、ない!! なんなら、常識なんて世間のもので、私のでは、ないと言う人だぞ!?」
「私も似たようなものだけど……」
「そんなことありません!! 義姉上!!」
 光と刻清が頭を抱え言うなか、友美は、笑っていた。たぶん気づいてない。この兄妹。
 異能を使い百合がずっとこの会話を見聞きしていることを。
「ふふふ。久しぶりに光の事が気になって見たけど……元気そうでよかったわ。それに刻清の事も……本当に私の息子か疑いたくなるくらいいいこ……」
 百合は、執務室で目を開け、呟いた。本当に二人の子供は、自分から産まれたとは、思えないほどにいいこに育っている。
「少しは、帰らないといけないかな……あの人のためにも……」
 百合は、そう呟くと珍しく屋敷に帰る気になったようだった。
 その光景を見ていた友美は、目を細めた。
「友美??」
「なにもないわ光」
 友美は、そういうと微笑む。いくら世界を越えようとも家族とは特別なもの。
 そう思いながら、友美は、楽しげに笑うのであった。よく似ている刻清と光の兄妹を見ながら。 


 
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