光明ノ神子

 仲秋の名月とは、月を楽しむ日ともいえる。
 窓辺に置かれた三宝の上には、月見団子が。
 その月見団子に伸びる白い前足。辺りを見渡し、いまだと思ったとき、首根っこを掴まれた。
「白野威!!」
 白野威は、ふりかえると光がいた。怒ったかおをして。
「いいじゃん!! 月見団子ー!!!!」
「三宝のを取るな!!」
「月見団子ー!!!!!」
 こりゃ困ったことになった。暴れる白野威に光は、対策をしていた。
「白野威の分は、ほら炬燵の上」
 白野威は、ぱっと明るくなると炬燵の上の月見団子に飛び付く。
 毎年思うがなぜこうも月見団子は。好きなのか。普通の団子なのに。
「白野威月見団子というが普通の団子だぞ??」
「なに言ってるのさ!! カスタードクリームいれてるじゃん!!」
「それは……」
「それがうまいの!! なにより光、お月見の時しか作らないもん!!」
 ある意味白野威にとっては、ご馳走のようだ。
 こりゃ時々作るかなと光は、思いつつ、キッチンに。日本酒と杯をお盆に乗せると、戻ってきた。
「今年も月見酒??」
「友美の楽しみだし」
「夫婦のだろ??」
「白野威もだろ」
 白野威は、頷く。
「もちろん!! 風流な飲み方だからね!!」
 光は、呆れながらいう。
「風流ってな……」
「なにさ!! 私だって風流くらいわかる!!」
 普段ズボラな白野威が何をいっているのやら。
 光は、半信半疑で聞いていた。
「光!! ケーキも今年は、あるわよ!!」
 子供達が寝たのか友美がリビングに入ってきた。
「ケーキ!?」
「昼間に私が作ったから!!
 友美は、自慢げに言うと、キッチンに。そして出してきたのは、オレンジのタルトだった。
「子供達が食べてた……」
「そう!! お月様にオレンジを見立てて!! でもお月様というより太陽だけど」
 友美は、そういうと、月見団子を頬張る白野威を見て、苦笑いを浮かべた。
「太陽が月を食べてる……」
「なにさ」
「何もないわ」
 白野威は、あっという間に月見団子を食べ終えた。
「光お酒!!」
「あれだけ食べてか!?」
「べつばら!! 友美タルトも食べる!!」
「すごい食べるわね……」
 友美は、炬燵の上にタルトを置き、光は、日本酒を杯にいれ、置くと白野威は、すごい勢いで飲み食べ始めた。 
 友美と光は、驚くが、二人は、テラスに。美しい満月を見ながら、長椅子に腰かけ、早速タルトを食べた。
「友美美味しい」
「それは、よかったわ!! 光の月見団子もなかなか!!」
「それは、よかった」
 団子とタルトを食べ終えると、杯に日本酒をいれ、二人は、飲む。
「今年も綺麗ね……」
 光は、微笑むという。
「月が綺麗ですね」
「いきなり夏目漱石」
「これも風流だろ??」
「確かに!!」
 二人は、微笑み合うと仲良く美しい月を見ながら、飲んだ。
 こうして過ごせるのは、やはり幸せだ。そう思いながら、口付けをし、今度は、普通の団子をあてに酒をのみ交わすのであった。
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