光明ノ神子

 何故楸には、恋人がいないのか。
 それは、彼の大学時代の話しに遡る。
「やっ!! 光!!」
 昼にキャンパス内のベンチに座り、弁当を食べていると確実にやってくる楸。学部も違うのによく探せるものだと光は、何時も思っていた。
「光合コン来ないかい??」
 光は、冷たい眼差しで楸を見た。
「断る」
「だよね……よかった……」
 楸の反応に光は、少し困惑した。
「意外な反応……」
 楸は、光の、横に座ると言う。
「私だって行きたくは、無いからね」
「なら付き合いと??」
「そう。花になるから来てくれってね。私がいるかいないかで参加する女性も変わるとか」
 楸は、やれやれという感じで言うなか、光は、所詮人は、先ずは、顔かと思い、弁当を食べた。
「楸顔は、いいもんな」
「君もそれを言う??」
 呆れ気味に楸は、そういうと、溜め息をついた。
「事実だろ」
「光に言われたくないんだが」
「なんだそれ」
 光は、弁当を食べ終えると片付けた。
「俺は、正直そんなくだらないことに時間をかけるのなら自分を磨くがな」
「くだらいって……」
「楸楽しいのか?? 合コン」
 光は、それだけ言うと去っていった。
 楸は、光の背中を見送ると目を伏せた。光に言われると痛い。なんせ彼は、実際に行動に移しているのだから。
「……誰しもが君のようには、なれないんだよ光……」
 楸は、そう呟くと去っていき、翌日ある噂がキャンパス内に広がっていた。

 光は、何時ものように講義を受け、次の講義まで図書館に行こうとしたとき、生徒達の会話が耳に入る。
「えっ!? 合コンで!?」
「マジマジ……水無瀬が……」
 水無瀬とは、確か楸の苗字だったはずだ。光は、珍しく聞き耳をたてると、話を聞き終え、立ち上がった。
「あのバカ……」
 そういい立ち上がると、光は、図書館に行かず楸を探した。
 さいわい楸は、普通の人だがその気配は、特殊な為すぐに探しだせた。
 彼は、キャンパス内にあるカフェテラスに一人いた。
「おい」
 声をかけられ、楸は、顔を上げると光に驚いた。
「栗花落……」
「珍しく苗字か」
 光は、ドンとトレーを楸の向かいに置くと座った。
「聞いた。昨日合コンで口論になって取っ組み合いの喧嘩になったって」
 楸は、何をも言わず目を伏せた。
「楸が人を傷つけともな。それ嘘だろ」
 皆が、噂を信じるなか、光は、違った。そもそも彼には、嘘など簡単に見通せるのだろう。
 見かけは、普通の人でも彼は、違うのだから。
「君は、信じないのか?? あの噂を」
「あんな馬鹿げた噂なん信じるか。それに楸が本気になればたぶん普通の人なら死ぬ。そうだろ??」
 楸は、背筋が凍りついた。彼は、ずっと隠してきたことを光は、知っているとこの時確信したからだ。
「……君は、知ってるのか」
「お前だけ俺の正体を知っているのは、フェアじゃないだろ」
 そうフェアじゃない。楸は、警戒した。この時光をはじめて。
「……確かに」
「手なら貸すぞ」
「対価は??」
「ソイツらの首」
 光は、冷たい眼差しで言う。この時楸は、その怖さに身震いした。
「それ本気か??」
「ならソイツらのムスコお釈迦でもいいぞ??」
「……君ってなかなか過激だね」
「俺は、そういうのが嫌いってだけだ。それに彼女の方がもっとやるが??」
 確かに彼の恋人は、もったえげつない方法を取ってくるだろう。
 楸は、光にことの経緯を話した。
「ならそいつら睡眠薬を女子に飲ませ、強姦しようとしたから止めたんだな楸は」
「殴ってきたもの相手だ」
 光は、ニヤリと笑うと、立ち上がる。
「光??」
「知り合いにちょっとばかし、こういうの得意なやつがいる」
「こういうの??」
「ついてくるか??」
「あぁ」
 いったい何処に行くのだろうか、楸は光についていくと、やって来たのは、大学の寮。しかも変人が多いといわれるオンボロ寮に。
 光は、慣れた様子で入っていくと、ある部屋の前に。そして扉を開けると、なかには、なんと、春翔がいた。
「春翔少しその合コン脳を貸せ」
 突然表れた光に春翔は、驚いたが、後ろの楸をみて、さらに驚いた。
「光なにする気だ!?」
「言いふらしていいんだが?? 陽キャラ春翔君がじつは、この寮に最近引っ越してきたって。家賃払えず」
 春翔は、アワアワと冷や汗をながだした。
「言わんでいい!! とりあえず分かったから!! なんでもするから!!」
「なんでもだな?? ならこの事について裏を取ってくれ」
 光は、メモ用紙を春翔に渡すと、春翔は、溜め息をついた。
「あいつらか……」
「知ってるのかい??」
 楸は恐る恐る聞くと、春翔は、言う。
「有名。華やかに見えてやることゲスいって」
 光は、靴を脱ぎ、なかに入ると座る。遠慮しないで。
 楸は遠慮がちに、部屋のすみに靴を脱ぎ、座ると、春翔は、呆れた顔をしていた。
「貴方が噂流されたって言う人もしかして」
「そうだけど……」
「なるほど」
 春翔は、パソコンに向かうと、なにやら画面をだした。
「だから掲示板でこんな事がかかれてたわけか……」
 光と楸はそれをみて、驚く。そこには、楸が合コンを断ったときには、制裁してやると書かれていたのだ。
「なんて幼稚な……」
「結局顔ってことか……」
 楸が、隣で落ち込んでいたが、光は、違った。
「春翔~コイツら社会的にも殺せる??」
 光の猫なで声は、不気味が悪い。春翔は、ニヤリと笑う。
「もちのろん~」
「ならやっちゃえ」
「こいつらムカつくしねー」
 なにより光と春翔が怖い。楸は部屋の隅で怯えることしか出来なかった。
「よし!! これでいいぞ!! 光!!」
「ありがとう!! 学食おごるわ!!」
「オッケー!!」
 春翔に光は、そういうと、楸を連れ、次に向かったのは、研究室が入っている建物だ。
 そしてあるゼミの部屋に入る。
「隆治ちょっといいか??」
「なんだ光」
 光は、隆二にメモを渡すと、隆治は、困った顔に。 
「なんで俺が呪い担当」
「春翔みたく、ネット詳しくないだろ。それに実家呪術の家系だろ」
「まぁそうだが……なに?? 神子に出来ないことでもあるのか??」
「いや。神子がやるとやりすぎるから、相談」
 どうやら、隆治は、光の正体を知っているようだ。  
 部屋の隅で楸は様子を伺っていたが、恐ろしい事が。
「それは、女運くそ悪くなるうえに、あっちもたたんくなる」
「ならそれでやるか……しかし人を呪えば穴二つというがそっちは、大丈夫か??」
「まぁ、アイツはのやってきた事への精算になるから問題ないだろ」
「まぁ最悪神パワー使う」
「神パワーってな……」
 隆治は、呆れ顔だが、光は、笑顔のまま。その顔がまた怖い。
 その後隆治に別れを告げ、次に、光は、図書館の類のところに。
「類いけるか??」
「任せて」 
 楸は光の恐ろしさに身震いし、その日は、これで終わったが翌日とんでもないことが起こった。
 
 学食に楸は来たとき、でかでかと貼られた掲示物に顔を青ざめた。
 なんと顔写真付きで、こいつらは、性犯罪者とでかでかと書かれた紙が貼られていたのだ。
 そう楸を犯人に仕立て上げたあいつらの顔が。そのうえ、大学から来たメールにて、こいつらは、性犯罪かつ虚偽の発言した最悪なやつはと書かれたメールが来たのである。
 そこには、数々の悪行が証拠付きで書かれていた。
 楸はキャンパス内で光を、探し見つけた。図書館で。
「光……」
 光は、楸の、声で顔を上げる。
「これは……」
 携帯の画面を楸は光に見せると、光は、言う。
「あいつらがやって来た真実だ」
「まさかあれから調べ上げたのか……」
 楸と別れてから光は、更なる被害者がいないか調べ上げ告発したようだ。
「警察と大学にも伝えた。たぶん捕まる」
 神子を敵にまわすとこうかるのかと、楸は、恐ろしかった。
「本当にヤバイな……」
「なにを今更」
 これが神子なのだ。
 その後犯人達は、見事に捕まり、大学も退学となった。 
「光これだけ!?」
 学食で春翔は、叫んでいた。目の前の珈琲をみながら。
「おごった、だろ??」
「せめて定食だろ!?」
「バイトも紹介したのにか??」
 楸は、確かにおごるという、約束は、はたしているが珈琲だけは、どうなのかと思った。
「春翔諦めろ」
「光は、約束は、守ってる」
 隆治と類は、そういうと春翔の隣で定食を食べていた。
「なんで珈琲!!」
「ならバイト辞めるか??」
「それは、やるけど!!」
 ちなみに光が、春翔に紹介したバイトは、勇音の営む薬問屋の接客店員だ。
「あの薬問屋なんか時々悪寒がするんだよなぁ……」
 そりゃするだろう。あやかしや神が来店することもあるんだから。
 春翔は、霊感がないため、見えない。なら言わない方がいいのが得策だ。
「私が定食をおごるよ」
「水無瀬さん神!!」
「それくらいさせて欲しいさ」
 楸は、その後春翔に定食をおごり、昼ご飯を終えると、光と二人で図書館に。
「楸これを機に彼女とか、作らないのか??」
 光は、何となく聞いてみた。
「しばらくは、いいかな。どうせみな先ずは、顔で来るから」
「楸……」
「せっかくなら性格で勝負したいしね!!」
「そうか」
 光は、そういう微笑む。
 楸は、そんな素敵な人が表れるといいなとこの時思ったが、その後結局なかなか出会いがなくフリーなままに。
「顔でもいいからみてくれる彼女を作っとけばよかった!!」
 酔っぱらいこぼす楸に、光と友美は、苦笑いしていた。
「光まぁ大丈夫よね??」
「知らん」
 本当に困った居候に光は、呆れた顔をしていたが、どこか優しく彼は、微笑むのであった。
 泣いて彼女欲しいと言っている楸をみながら。
 
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