光明ノ神子

 暑い。その一言につきる。
 板の間で寝転びながら、友美は、呆然と天井を見ていた。
「友美ほら」
 視界に光が表れ、冷たいペットボトルを友美の頬に当てる。
「冷たい……」
「これだけ暑いと、クーラーきいててものびるよな……」
 友美は、体を起こすと、ペットボトルを受け取る。
「ありがとう光」
「どういたしまして」
 炭酸水を開けると、友美は、飲む。
「うめぇー」
「おじさんになるのは、やめてくれ」
「いいじゃん!! それにこんな私を愛してるんでしょう??」
 光は、こまったかおをする。
「まぁね」
 友美は、炭酸水を飲むと、ペットボトルの蓋を閉め、立ち上がった。
「よし!!」
「友美??」
「暑いし、涼しいところ行ってくるわ」
「虚空ノ宮に??」
「そう!! 瑠花に頼まれてた、本もこの間来たしね!! 届けに!!」
 そういえば昨日段ボールが届いていたような。
 光は、友美にしては、珍しいと思っていたが、瑠花からの依頼なら納得がいく。
「光も来る??」
「子供達もお義母さん所だしな。ついていく」
「よし!! ならさっそくゴー!!」
 友美は、そういうとリビングを出ていこうとするので、光は、慌てて友美の肩を掴む。
「友美せめてレギンスは、はいて」
 友美の姿は、Tシャツにショートパンツだ。友美は、確かにこれだと瑠花に怒られると、思った。
「なら着替えてくるわ」
「お願い」
 友美は、そういうと和室にいき、すぐに戻ってきた。
「レギンスはいたぜ!!」
「そっか」
 とりあえずこれなら、怒られないだろう。友美は、胸を張り言うと、光とリビングをでた。
 納戸に置いてある段ボールを持つと陣の上に。
「レッツゴー!!」
 そして陣にのると虚空ノ宮に向かった。
 
 光がはれ、陣の部屋を出ると涼しい空気が肌に触れた。
「高地だと涼しい……」
「友美瑠花は、何処に??」
「確か現代文学の宮に居るって言ってたわ」
「ならいこう」
 友美と光は、回廊を歩き、現代文学の本が所蔵されている宮に来た。
 扉を開け、なかに入るとすごい光景が。
「段ボールの山!?」
 友美の声がし、部屋の置くから瑠花の声が。
「友美よ!! すまぬが段ボールを掻き分けてきてくれ!!」
 友美は、段ボールを持ったまま浮き、光は、段ボールを掻き分け、奥に。
 瑠花は、部屋の奥で本の山のなかにいた。
「瑠花これは……」
「頼んでいた新刊やらが一気に来てしまってな……伊織に整理させるといつ終わるからからなぬゆえ……他の宮の整理を頼んでおる」
 光は、苦笑いを浮かべた。
「伊織は、のんびりしてるから……」
「さよう」
 瑠花は、そういうと友美の持つ、段ボールを見た。
「その段ボールは、その机の上に置いてをいてくれ」
「分かったわ」
 友美は、そういうと段ボールを机の上に置くと言った。
「手伝ってもいい??」
「頼む」
「なら俺も手伝うよ」
「かたじけぬ」
 三人ならいくぶんか、早く終わるだろう。 
 瑠花の指示のもと、友美と光は、分身を作り、どんどん段ボールを開けていく。
 棚に本を並べ、整理もしていき、あっというまに、宮は、綺麗になった。
「友美、光礼を申す。わたくしだけでは、片付けられていたか分からぬ」
「それは、いいけど、すごい最新の本も揃えてるのね瑠花」
「それこそがここの目的だからな」
 戦や災害で消えてしまう、書物を残すためとして、瑠花は、ここを作った。
 その目的は、今も変わらず、瑠花は、こうして新刊をあさっては、インターネットでポチり、買い漁っているのである。
「書物とは、叡知と文化の結晶。しかし戦かに巻き込まれればすぐに消えてしまうしろものじゃ。それを保護し、伝えるのがこの宮の役目じゃからの」
 だからこそ、毎月の宮からの経費申請金額が凄いことになっているが。
「確かに」
 友美と光は、そういうと、瑠花は、続けた。
「友美、光よ少し茶を共にせぬか??」
 せっかくのお誘いは、受けるべし、友美と光は、頷くと、瑠花は、すぐに、茶と菓子のしたくをし、三人は、宮の中庭にある東屋で茶をのみだした。
「ここは、涼しい~」
「地上に比べれば幾分かましじゃな」
「幾分かって……そうとうましだぞ。瑠花」
「そんなに暑いのか」
 瑠花は、少し驚いた顔をし言った。
「なら瑠花降りてきたら??」
「……とけそうだから断る」
 自分で言うともなんだが、瑠花は、暑さに弱い。寒いのは、耐えられてもだ。
 テレビでも35℃ごえと言われているのに、なぜわざわざいかなくては、ならないのか。
 瑠花は、呆れた顔をし言う。
「自ら火に飛び込むようなことせぬ」
「とけてる瑠花見たかったのに!!」
 友美の言葉に瑠花は、友美を睨む。
「戯言を申すな」
「ごめん」
 光は、二人の会話を聞きながら、のんびりと茶を飲む。
「この茶葉美味しいな……」
「ならよかった。冷茶に向いている茶葉ゆえ、氷だしにしたのが、よかったのかもしれぬ」
「だからの甘味か」
「そうじゃ」  
 確かに美味しい。友美は、満足げに飲む。
「やわらかいしね」
「えぐ味がないからの」 
「そうそう」
 友美と瑠花が話しているのを見ているとまるで双子のようだ。
 確かに前世と現世そして同じ血筋なのだからそれも納得がいく。
 光は、優しく目を細め二人を見ていると、友美達と目があった。
「光どうしたの??」
「わたくしの顔に何かついておるか??」
「二人とも似てるなと思って」
 友美と瑠花は、顔わ見合わす。
「そりゃわたくしが友美で」
「私が瑠花だもんね」
「だとしてもだよ」
 光は、そういうと微笑む。
「双子コーデとかいいかも??」
「双子……」
 友美は、それは、少しと思ったが、瑠花は、違った。
「アリじゃな」
「アリなの!?」
「巫女装束なら今すぐにできるぞ友美」
 友美は、想像してみたが言う。
「巫女装束は、なし!! 私が生け贄じゃないし」
「確かにな」
「なら着物は??」
 瑠花と友美は、口を揃え言った。
「なし」
「そっか」
 好みも似ているからいけるかと思ったが、違うらしい。 
「なら漢服ならあり??」
「まぁありじゃな。着物袴の方がよいが」
「でも着物は、なしでしょう??」
「戦国の頃のような着物は、嫌じゃというだけじゃ」
「ならハイカラならオッケー??」
「着物と袴ならな」
「ならなかなか可愛いの出来るかも!?」
「かもしれぬな」
 あれ案外いけそうだ。光は、友美と瑠花が楽しげに話しているのを見て、ほっこりしていた。
 やはり女の子は、このように楽しそうにしているのが一番可愛い。
「俺って幸せ者だな」
「惚気か?? 光よ」
「おっ!?」
 瑠花と友美にニヤリと笑いながら、聞かれ、光は、咳払いした。
「気にしないで」
「光気になるよ!!」
「そうじゃ」
 しかし友美と瑠花を相手にするのは、骨が折れる。  
 光は、そのまま黙って茶を飲むと、友美と瑠花は、つまらなさそうな顔に。
「せっかく光にキスしようと思ったのに~」
「友美よ。やるならよそでやれ」
「なら瑠花もイチャイチャしてきたら??」
「せぬ」
 これは、あらぬ方向に砲撃がいきそうだ。光は、やはり友美と瑠花は、同時に相手していい人物では、ないと思いながら、話を聞くのであった。
 楽しそうな友美と瑠花を優しく見守りながら。



164/179ページ
スキ