光明ノ神子
暑いと食欲がなくなるのも分かる。
「勇音さん……今日も……」
「今日は、蕎麦」
燕青は、顔をひきつっていた。食卓の前には、ドンっとざる大盛の蕎麦しかなかった。
「……蕎麦」
作ったもらっている分際でいうのは、おこがましいと分かっている。だが言わずには、いられなかった。
「ここ1ヶ月素麺か蕎麦しかでてきてないんだけど!!??」
勇音は、不服そうに燕青を見ると言った。
「なら食べなくていい」
「いや食べますがね!? 栄養素が片寄りすぎだろ!?」
「栄養素なんて食べてればなんとかなる!!」
燕青は、ここで思い知る。これが人外彼女と人間の自分の常識のさかと。
いくら神子といえど栄養が片寄ると大変なことになるのが人間だ。
何より食とは、楽しむもの。ここまで素麺か蕎麦続きだと飽きてくる。
「勇音今晩俺が作るわ」
勇音は、驚いた顔をした。
「……いい」
「えっ??」
「作らなくていい!!」
「なんでだよ。食とは、楽しむものだろ?? ここ最近まるで作業みたいになってるじゃねぇか」
勇音は、グサッと燕青の言葉が刺さった。いいたくない。しかし言わなければいかないかもしれない。葛藤の後勇音は、言う。
「……私夏は、食を楽しむ……気力は、ない……」
「というと……」
「暑すぎて、蕎麦か素麺を食べるのが低一杯なの。薬膳は、正直食べたくないし……食尽料理も私にとってはあまりだし」
簡単でなおかつ食べれるものとなると素麺か蕎麦に勇音は、なるようだ。
「そうか……なら尚更俺が作るわ」
「作れるの?? 国家資格をお飾りにしてるやつが」
燕青は、気に入らない顔でいった。
「料理できるか、出来ないかを国家資格で判断するなつうのー」
「弁護士なら困らないのに食いぶち」
「一応やってますが!?」
「ほとんどやってないじゃん」
「経営者つうのは、忙しいもんなのー」
「暇なくせによくいうわ」
真実なのでなにも言い返せない。
燕青は、ばつの悪そうな顔をし、言った。
「従業員が優秀すぎて……」
「まぁ悠々技適ともいえるか。燕青は」
「そう!!」
「おんぼろアパート燃えて、住むところ無くなってうちに転がり込んでるけど」
「勇音少しムチが多すぎるぞ!?」
「暑いのにこんなことに労力使えない。接客だけでていいっぱいなのに」
勇音は、もとから暑いのが苦手だ。昔の夏ならともかく、今の夏は、彼女にとって結構にキツい。
少しでも余裕を持つために、無駄なことを考えないことにしている。
燕青は、こいつなにも考えてないなと分かりながら、蕎麦を食べた。
「彼氏にもう少し優しくてもよくね??」
「神の恨みは、人より凄いこと忘れてる??」
「恨み!?」
「私を置いてぽっくり死んだんだからこれくらい我慢しなさい」
根に持たれている。燕青は、そう言われても困るんだがと思いつつ蕎麦を食べた。そして。
(前世の俺とんでもない業を残してくれたなアホ)
と己に思った。
「燕青もしいけるならお肉食べたい」
「はいるのか?? 素麺と蕎麦しか無理っていってたのに」
「それでも食べたい。羊でもいいから」
「勇音自分の仕える神が羊の姿してるのにいいのか!? それ!!」
「関係ないからいい。それに華澄様は、好きに姿変えてるし」
華澄は、本来は、人の姿をした貴婦人だが、よく動物の姿もしている。それも色々な。
燕青は、羊以外の肉を使うかと思いながら、蕎麦を食べた。
その後片付けやら用事を済ませ買い出しに出かけた。
「うーん何が安いのかわからん」
とりあえず広告の品は、安いよなとスーパーについた後、燕青は、思い見ていた。買うものを。
「燕青??」
声をかけられ、ふりかえると光と友美が。
「友美と光先生じゃん!!」
助け船キターと燕青は、思うなか、友美は、ニヤリと笑った。
「へぇー」
「友美詠んだな!? また!!」
「ノーコメント。とりあえず頑張ってね!!」
友美は、そういうとどこかに。燕青は、光とそれを見送る。
「光先生なんとかなんねぇ?? 友美」
「何ともならないよ。それより珍しいな燕青が買い出しなんて」
「俺だって買い出しくらい行くって」
燕青は、光ならなにか知ってるかもと聞いた。
「先生これお得??」
光は、頷く。
「広告の品だからな。だが、要らないもんかって腐らすな」
「だよな……」
たぶん安いからと買っても今の勇音なら使わない。自分も使いきれるか不明だ。
「冷やし中華なら……ピーマン使わないしな……」
「冷やし中華か……ならキュウリ、卵、トマトとかだか乗せるの」
「カニかまもいる??」
「家庭による。うちは、入れない。それなら豚肉いれる」
「ならハムを豚肉に変えるな、ありだな」
「今晩冷やし中華なのか??」
燕青は、頷く。
「俺が作ろうと思ってさ」
「珍しいな……」
「勇音ここ一ヶ月素麺と蕎麦しか作らなくてさぁ……」
「暑いしな。でも他に付け合わせあるんだろ??」
光は、何となく聞いたが、この時の燕青の顔で全て察した。太陽のように明るいこの男がここまで虚無になることがあるだろうか。
「汁ならある」
「それ付け合わせじゃないだろ……」
「栄養素なんて食えればなんとかなるらしい……神いわく……」
「人外彼女大変だな……」
「光先生にだけは、いわれたくない。友美もあんたも人外だろ……」
光は、じっと燕青を睨んだ。
「器は、人間だが!?」
「器ってな……」
「で栄養素問題で破局したのか??」
「するわけないだろ!? それこそ、もう無理別れますなんて言ってみろ!! 神の呪いは、恐ろしいと言われ、俺は、一生独り身のなおかつストーカーつくわ!!」
勇音は、そこまで執念深くないだろと思ったが、神だからそうでもないのかと思った。
「その栄養素問題もあるから俺が作ることにしたの!! 分かる!?」
「へぇー」
なんでつまらなさそうに返事をするんだ。この男は。
「で勇音に肉!! と言われ、かといって油濃いのは、食べれないだろうとなって冷やし中華ってわけ」
「なるほどな」
光は、ならとあるヒントを出すことにした。
「付け合わせでいい、わかめスープでも作れば??」
「ありだな……」
ならだし茶漬けにもできる。燕青は、そうしようと決めた。
「ありがとう光先生」
「いいよ」
「じゃまたな」
「頑張れよ」
光からのエールを浮けとり、燕青は、必要なものを買い、そして帰宅した。
「さて作るか!!」
卵を割り、まぜ、焼き錦糸卵を作り、トマトを切り、キュウリを切り、豚肉を茹で、その間にわかめスープも作り、麺を茹でる。
時刻は、18時だ。夕飯にもいい時間だろう。
店の方から勇音は、戻ってくると、冷蔵庫を彼女は、開けた。
「麦茶」
麦茶をとり、コップにいれると飲んだ。
「はぁー」
「おっさんくせえぞ……」
「いいでしょう。家なんだし」
勇音は、そう言うと、茹でられている麺を見ていった。
「冷やし中華??」
「当たり!!」
嬉しそうに勇音は、微笑むと食器の準備を始めた。
麺も茹で上がり、もみ洗いし、水を切ると、皿にのっける。
「勇音ここにあったキュウリ……って食べてる!?」
キュウリがなく、聞くと食べていた勇音が、ビール片手に。
「飾り用のキュウリがー!!!!」
「美味しい」
「冷やし中華用の残しとけよ!?」
急いで麺だけ乗った皿をちゃぶ台に持っていくと勇音は、キュウリを皿に乗せた。
「肉と卵と、トマトも乗っけて……」
「分かってる」
次々乗っけていき、付属のタレをかけると、ネギを乗せると、勇音は、いただきますといい食べ出した。
「どう??」
「美味しい。これな、食べれるわ」
これは、もしかすると素麺、蕎麦パラダイス脱却に繋がるかもしれない。
燕青は、よかったとほっとし、自分のも作り、わかめスープと共にちゃぶ台に。
勇音にわかめスープを出すと、彼女は、完食してしまった。
「じー」
「俺のまでとないでくれます!?」
「ケチ」
「わかめスープなら食べていいから!!」
燕青は、そういうと勇音は、しかたがないと、わかめスープに冷やご飯をいれ、食べた。
「燕青ありがとう」
「どういたしまして」
燕青は、冷やし中華を食べながら、食欲戻ってよかったとホッとしたが、翌日またもや大変なことに。
「勇音さん……夕飯お茶漬けだけって……」
「燕青出汁茶漬けだよ」
「腹満たされないんですが!? もう!! 蕎麦茹でるからな!?」
「なら私の分も!!」
「食べるのかよ!!」
「作るの面倒だけど、作ってくれたら食べるよ」
燕青は、この時決めた。夏は、絶対に夕飯は、これから自分が作ると。
じゃないと壊滅する。この家の食卓が。自分の体が。
蕎麦を茹でながら、薬味を準備していると、後ろから笑い声が。
「ふふふ」
「なんだよ」
「こういうのが幸せだなと思って」
燕青は、一瞬驚くが、すぐに微笑む。
「そうだな」
本当に困った女神だが、そこがまたいいともいえる。
燕青は、これも惚れた弱みかよと思いながら、いった。
「そら出来たぞ」
「ありがとう!!」
燕青は、ざる蕎麦をもっていくと、汁は、すでに勇音が準備していた。
薬味をいれ、さっさく蕎麦を食べると、勇音は、いう。
「鮎の出汁が食べたい……」
「……それお願い??」
「願望」
それお願いだろうと、燕青は、おもったが、素直じゃないのと勇音だ。
「光先生に頼んでみる」
「光さんの美味しいんですよねぇ」
「確かに」
なんだろう勇音の胃袋を掴んでそうな光が羨ましい。
燕青は、これが恋だなと思いながら、蕎麦をすするのであった。目の前から自分を蕎麦が消えていくのを呆然と眺めながら。
「勇音さん……今日も……」
「今日は、蕎麦」
燕青は、顔をひきつっていた。食卓の前には、ドンっとざる大盛の蕎麦しかなかった。
「……蕎麦」
作ったもらっている分際でいうのは、おこがましいと分かっている。だが言わずには、いられなかった。
「ここ1ヶ月素麺か蕎麦しかでてきてないんだけど!!??」
勇音は、不服そうに燕青を見ると言った。
「なら食べなくていい」
「いや食べますがね!? 栄養素が片寄りすぎだろ!?」
「栄養素なんて食べてればなんとかなる!!」
燕青は、ここで思い知る。これが人外彼女と人間の自分の常識のさかと。
いくら神子といえど栄養が片寄ると大変なことになるのが人間だ。
何より食とは、楽しむもの。ここまで素麺か蕎麦続きだと飽きてくる。
「勇音今晩俺が作るわ」
勇音は、驚いた顔をした。
「……いい」
「えっ??」
「作らなくていい!!」
「なんでだよ。食とは、楽しむものだろ?? ここ最近まるで作業みたいになってるじゃねぇか」
勇音は、グサッと燕青の言葉が刺さった。いいたくない。しかし言わなければいかないかもしれない。葛藤の後勇音は、言う。
「……私夏は、食を楽しむ……気力は、ない……」
「というと……」
「暑すぎて、蕎麦か素麺を食べるのが低一杯なの。薬膳は、正直食べたくないし……食尽料理も私にとってはあまりだし」
簡単でなおかつ食べれるものとなると素麺か蕎麦に勇音は、なるようだ。
「そうか……なら尚更俺が作るわ」
「作れるの?? 国家資格をお飾りにしてるやつが」
燕青は、気に入らない顔でいった。
「料理できるか、出来ないかを国家資格で判断するなつうのー」
「弁護士なら困らないのに食いぶち」
「一応やってますが!?」
「ほとんどやってないじゃん」
「経営者つうのは、忙しいもんなのー」
「暇なくせによくいうわ」
真実なのでなにも言い返せない。
燕青は、ばつの悪そうな顔をし、言った。
「従業員が優秀すぎて……」
「まぁ悠々技適ともいえるか。燕青は」
「そう!!」
「おんぼろアパート燃えて、住むところ無くなってうちに転がり込んでるけど」
「勇音少しムチが多すぎるぞ!?」
「暑いのにこんなことに労力使えない。接客だけでていいっぱいなのに」
勇音は、もとから暑いのが苦手だ。昔の夏ならともかく、今の夏は、彼女にとって結構にキツい。
少しでも余裕を持つために、無駄なことを考えないことにしている。
燕青は、こいつなにも考えてないなと分かりながら、蕎麦を食べた。
「彼氏にもう少し優しくてもよくね??」
「神の恨みは、人より凄いこと忘れてる??」
「恨み!?」
「私を置いてぽっくり死んだんだからこれくらい我慢しなさい」
根に持たれている。燕青は、そう言われても困るんだがと思いつつ蕎麦を食べた。そして。
(前世の俺とんでもない業を残してくれたなアホ)
と己に思った。
「燕青もしいけるならお肉食べたい」
「はいるのか?? 素麺と蕎麦しか無理っていってたのに」
「それでも食べたい。羊でもいいから」
「勇音自分の仕える神が羊の姿してるのにいいのか!? それ!!」
「関係ないからいい。それに華澄様は、好きに姿変えてるし」
華澄は、本来は、人の姿をした貴婦人だが、よく動物の姿もしている。それも色々な。
燕青は、羊以外の肉を使うかと思いながら、蕎麦を食べた。
その後片付けやら用事を済ませ買い出しに出かけた。
「うーん何が安いのかわからん」
とりあえず広告の品は、安いよなとスーパーについた後、燕青は、思い見ていた。買うものを。
「燕青??」
声をかけられ、ふりかえると光と友美が。
「友美と光先生じゃん!!」
助け船キターと燕青は、思うなか、友美は、ニヤリと笑った。
「へぇー」
「友美詠んだな!? また!!」
「ノーコメント。とりあえず頑張ってね!!」
友美は、そういうとどこかに。燕青は、光とそれを見送る。
「光先生なんとかなんねぇ?? 友美」
「何ともならないよ。それより珍しいな燕青が買い出しなんて」
「俺だって買い出しくらい行くって」
燕青は、光ならなにか知ってるかもと聞いた。
「先生これお得??」
光は、頷く。
「広告の品だからな。だが、要らないもんかって腐らすな」
「だよな……」
たぶん安いからと買っても今の勇音なら使わない。自分も使いきれるか不明だ。
「冷やし中華なら……ピーマン使わないしな……」
「冷やし中華か……ならキュウリ、卵、トマトとかだか乗せるの」
「カニかまもいる??」
「家庭による。うちは、入れない。それなら豚肉いれる」
「ならハムを豚肉に変えるな、ありだな」
「今晩冷やし中華なのか??」
燕青は、頷く。
「俺が作ろうと思ってさ」
「珍しいな……」
「勇音ここ一ヶ月素麺と蕎麦しか作らなくてさぁ……」
「暑いしな。でも他に付け合わせあるんだろ??」
光は、何となく聞いたが、この時の燕青の顔で全て察した。太陽のように明るいこの男がここまで虚無になることがあるだろうか。
「汁ならある」
「それ付け合わせじゃないだろ……」
「栄養素なんて食えればなんとかなるらしい……神いわく……」
「人外彼女大変だな……」
「光先生にだけは、いわれたくない。友美もあんたも人外だろ……」
光は、じっと燕青を睨んだ。
「器は、人間だが!?」
「器ってな……」
「で栄養素問題で破局したのか??」
「するわけないだろ!? それこそ、もう無理別れますなんて言ってみろ!! 神の呪いは、恐ろしいと言われ、俺は、一生独り身のなおかつストーカーつくわ!!」
勇音は、そこまで執念深くないだろと思ったが、神だからそうでもないのかと思った。
「その栄養素問題もあるから俺が作ることにしたの!! 分かる!?」
「へぇー」
なんでつまらなさそうに返事をするんだ。この男は。
「で勇音に肉!! と言われ、かといって油濃いのは、食べれないだろうとなって冷やし中華ってわけ」
「なるほどな」
光は、ならとあるヒントを出すことにした。
「付け合わせでいい、わかめスープでも作れば??」
「ありだな……」
ならだし茶漬けにもできる。燕青は、そうしようと決めた。
「ありがとう光先生」
「いいよ」
「じゃまたな」
「頑張れよ」
光からのエールを浮けとり、燕青は、必要なものを買い、そして帰宅した。
「さて作るか!!」
卵を割り、まぜ、焼き錦糸卵を作り、トマトを切り、キュウリを切り、豚肉を茹で、その間にわかめスープも作り、麺を茹でる。
時刻は、18時だ。夕飯にもいい時間だろう。
店の方から勇音は、戻ってくると、冷蔵庫を彼女は、開けた。
「麦茶」
麦茶をとり、コップにいれると飲んだ。
「はぁー」
「おっさんくせえぞ……」
「いいでしょう。家なんだし」
勇音は、そう言うと、茹でられている麺を見ていった。
「冷やし中華??」
「当たり!!」
嬉しそうに勇音は、微笑むと食器の準備を始めた。
麺も茹で上がり、もみ洗いし、水を切ると、皿にのっける。
「勇音ここにあったキュウリ……って食べてる!?」
キュウリがなく、聞くと食べていた勇音が、ビール片手に。
「飾り用のキュウリがー!!!!」
「美味しい」
「冷やし中華用の残しとけよ!?」
急いで麺だけ乗った皿をちゃぶ台に持っていくと勇音は、キュウリを皿に乗せた。
「肉と卵と、トマトも乗っけて……」
「分かってる」
次々乗っけていき、付属のタレをかけると、ネギを乗せると、勇音は、いただきますといい食べ出した。
「どう??」
「美味しい。これな、食べれるわ」
これは、もしかすると素麺、蕎麦パラダイス脱却に繋がるかもしれない。
燕青は、よかったとほっとし、自分のも作り、わかめスープと共にちゃぶ台に。
勇音にわかめスープを出すと、彼女は、完食してしまった。
「じー」
「俺のまでとないでくれます!?」
「ケチ」
「わかめスープなら食べていいから!!」
燕青は、そういうと勇音は、しかたがないと、わかめスープに冷やご飯をいれ、食べた。
「燕青ありがとう」
「どういたしまして」
燕青は、冷やし中華を食べながら、食欲戻ってよかったとホッとしたが、翌日またもや大変なことに。
「勇音さん……夕飯お茶漬けだけって……」
「燕青出汁茶漬けだよ」
「腹満たされないんですが!? もう!! 蕎麦茹でるからな!?」
「なら私の分も!!」
「食べるのかよ!!」
「作るの面倒だけど、作ってくれたら食べるよ」
燕青は、この時決めた。夏は、絶対に夕飯は、これから自分が作ると。
じゃないと壊滅する。この家の食卓が。自分の体が。
蕎麦を茹でながら、薬味を準備していると、後ろから笑い声が。
「ふふふ」
「なんだよ」
「こういうのが幸せだなと思って」
燕青は、一瞬驚くが、すぐに微笑む。
「そうだな」
本当に困った女神だが、そこがまたいいともいえる。
燕青は、これも惚れた弱みかよと思いながら、いった。
「そら出来たぞ」
「ありがとう!!」
燕青は、ざる蕎麦をもっていくと、汁は、すでに勇音が準備していた。
薬味をいれ、さっさく蕎麦を食べると、勇音は、いう。
「鮎の出汁が食べたい……」
「……それお願い??」
「願望」
それお願いだろうと、燕青は、おもったが、素直じゃないのと勇音だ。
「光先生に頼んでみる」
「光さんの美味しいんですよねぇ」
「確かに」
なんだろう勇音の胃袋を掴んでそうな光が羨ましい。
燕青は、これが恋だなと思いながら、蕎麦をすするのであった。目の前から自分を蕎麦が消えていくのを呆然と眺めながら。