光明ノ神子

 学校からの帰り道、柊麗は、あるものが目にはいった。
「メジェドだわ……」
 何故メジェドが公園のブランコで遊んでいるのか。ひとりでに揺れるブランコをみて、皆風が吹いていると思っているようだ。
(見えるっていいのか、悪いのか……分からないときがあるわ……)
 柊麗は、公園にはいるとメジェドに声をかけた。
「メジェドなにしてるの??」
 メジェドは、柊麗に気づくとブランコを降りた。
「遊んでいた!! 柊麗は??」
「私は、学校帰りよ」
 ここで別れてもいいが、さすがにそれは、寂しいかもしれない。
「メジェドお家来る??」
 メジェドは、キラキラとした瞳になると頷く。
「なら行こう!!」
 柊麗は、メジェドをつれ、帰宅する。家に着き、中に入ると、出迎えてくれた白野威が驚いた顔をした。
「なんでエジプト神話の神がいるのさ!?」
「公園であったから連れてきたの」
 メジェドは、頭を下げる。
「天照様失礼します」
 メジェドに挨拶され、白野威は、困惑していた。
「いいけど……」
 エジプトでは、太陽神ラーが最高神であり、同じ太陽神である天照とは、同格といえる。   
 メジェドにとっては、敬意を払う相手のようだ。
 柊麗は、ランドセルを部屋に置くと、メジェドとリビングに。
「ママただいま!!」
「おかえりなさい柊麗」
 友美は、メジェドを見ても特に驚いていない。
「なぬ!? 友美突っ込まないの!?」
 白野威は、思わず聞くと、友美は、言った。
「メジェドの事?? あの子がここに来るのは、よくあることだし、それに神出鬼没だし、なれたわ」
「なれていいの!!??」
「いいの」
 それに太陽神が家に住み着いているのに今更驚くことでもない。
 友美は、ふと他の家では、もし神なんて住み着いてたらなかなか大変なことになりそうだと考えていた。
「お供えとか大変そう……」
「お供え??」
「そう。他の家で白野威が住み着いた場合」
 白野威は、あきれた顔をする。
「住み着くかつうの。友美ところだから私は、いるのさ!!」
「なるほど」
 メジェドが河童に挨拶をし、友美は、そういえばとあることを思い出した。
「レタス!!」
「レタス??」
 レタスとは、あのシャキシャキの葉もの野菜だがどうしたのだろう。
 メジェドがリビングに戻ってくると友美は、話しかけた。
「メジェドこんにちは!!」
「マリカこんにちは!!」
 メジェド頭を下げると友美は、言った。
「レタスの件だけど帰りに渡すわね」
 メジェドは、瞳を煌めかすと頷き、跳ねた。
「友美マリカって誰??」
 白野威の質問に友美は、答える。
「固有名詞じゃないわ。この場合は、アラビア語で女王って意味よ」
「女王……」
 確かにエジプトの神々は、友美を神子として認知は、していない。どちらかというとその魂と力で認知している。
「創造神……で今は、女の子だから……マリカ……ってわけか……」
「みたいね」
 確かにメジェドからすればそうなのだろうが、白野威には、違和感があった。
「なんか変なの」
「エミーラの方があってる??」
「それもしかして姫ってこと??」
「そうよ」
「たぶんそれ。皆姫って呼ぶのに女王ってなんか聞きなれない感じ」
「私も」
 柊麗と共に今は、彼女の部屋にいっているメジェド。
 宿題が終わったらおやつといいそうなので今の間に準備をしよう。 
「ホットケーキでいいかな……」
「おっ!! 私も食べる!!」
「白野威さっきも食べたじゃない」
「別腹!!」
 友美は、困ったように笑うとキッチンに行き、ホットケーキを作り出した。
 ちょうど作り終わる頃、柊麗がメジェドとリビングにやって来た。
「ママいい香りがするわ!!」
「ホットケーキよ」
「やったー!!」
 何故かメジェドまで喜んでいる。友美は、楽しげに笑うと、皿にホットケーキを乗せた。
「ママ運ぶわ!!」
「お願いします!!」
 皿を柊麗は、リビングに運び、次にフォークとナイフも持っていく。
「白野威の分も!!」
「ありがとう!!」
 座布団の上に座ると白野威にも声をかけ、おやつをメジェドと食べ始めた。
「美味しいー!!」
「うまうま!!」
 気に入ってくれてよかった。友美は、美味しそうに食べる娘をみて、笑った。
「メジェド凄い食べる……」 
「マリカのこのホットケーキは、ウマウマ!!」
「マリカ??」
「日本語だと女王ってこと」
「女王……」
 柊麗は、友美をみて確かにと納得してしまった。よく父は、母にペコペコしてる。なにより母は、強く、神々の知り合いと多い。
「ママ……女王だったのね……ムチ振り回すのかしら……」
 キッチンで話を聞いていた友美は、思わず突っ込む。
「振り回さないわ!!」
「パパ喜びそうなのに??」
「パパ喜ばないわよ!!」
 何故そんなことを知っているのかと友美は、思ったが、あえて深く追及しなかった。 
 その仕事は、光に残しておこうと思ったから。
「 私だと余計なことを言いそうだものね……」
 もし言ってしまったら光に怒られる。友美は、その後もメジェドと柊麗の様子を見ていた。
「メジェドミイラ作れる??」
「僕は、無理。アヌビスなら作れるよ」
「冥府の神様よね……会えるかしら……」
 友美は、顔をひきつる。
「柊麗やめておきなさい!!」
「でもママ……」
「アヌビスは、やめておい方がいい」
 メジェドも頷きいうと、柊麗は、諦めた。
「ならやめとくわ」
 友美は、胸を撫で下ろした。
 柊麗を神子としてる蔦は、五穀豊穣の神であり、アヌビスとは、真逆の性質ともいえる。
 もし何かあっても蔦が助けられない可能性が高いのだ。
「メジェドならもっとエジプトのこと教えて!!」
 メジェドは、頷くと色々教えてくれた。仲良しのセトの事や気まぐれなバステトの事等を。
「そっか!! エジプトだと猫は、とても偉いのね!!」
「そう!!」
 犬は、墓を掘り起こし、古代エジプトでは、死の神とされ、猫は、鼠を獲るなどの有益をもたらしたので、守護の力があるとされ崇められてきた。
「ある意味ミイラに悪いことするかしないかが、基準なのかも……」
「エジプトでは、ミイラは、大切なものだからね」
 友美は、そういいつつメジェドの前で言えなかった。ミイラがヨーロッパでは、顔料や燃料とされていたとは。
「マリカその事は、知ってる」
「そうメジェド」
 柊麗は、首をかしげるが、とくに聞かなかった。聞いては、ならないと思ったから。
「マリカもうそろそろ帰る」
「水郷ノ神子に会わなくていいの??」
「お昼にお茶してきた」
 友美は、驚いた顔をした。
「パパ暇なのね」
「パパは、暇な方がいいのよー」
「そっか!!」
 友美は、頷くと、メジェドにレタスを渡した。
「レタス!!」
 メジェドは、嬉しそうに弾む。
「ママレタスなにに使うの??」
「メジェドが食べるのよ。でこっちの種は、ミイラ製作に使うレタスの種」
 メジェドは、更に嬉しそうに弾む。
「ありがとう!! マリカ!!」
 メジェドは、布の中にしまった。
「柊麗またね!!」
「またねメジェド!!」
「天照様、マリカまた!!」
「またねメジェド!!」
「また」
 メジェドは、ペコリと頭を下げると帰っていった。
「柊麗よかったわね!!」
「うん!! ママ!!」
「また来るなあいつ」
「そりゃね白野威」
 白野威としては、面倒そうだが、柊麗としては嬉しいこと。
 友美は、楽しげに微笑むとキッチンに向かったのであった。
 今度メジェドは、いつ来るのだろうかと思いながら。
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