光明ノ神子

 今年の七夕も無事に天の川をみることができた。
 湿気を含んだ夏の風を感じながら、友美は、一人テラスに置いてある長椅子に座っていた。
 風に揺れる笹の葉の音が心地よい。ふと見えた短冊には、柊麗の字でメジェドと遊びたいと書かれていた。
 友美は、一瞬動きが止まる。
「メジェド……」
 うちによく来るお客様。光と仲がよくときよりお茶をしているのを見かける。
 友美は、頼むから危ないことだけは、しないで欲しいとこの時思った。
「友美お待たせ!!」
「光」
 テラスに光がやって来た。彼の手には、美味しそうなゼリーが。
「七夕ゼリー作ってみたんだ!!」
 星があしらわれた可愛らしいゼリーに友美は、微笑む。
「可愛い!!」
「それは、よかった!!」
 友美のとなりに座ると、光は、ゼリーの入った器を友美に渡す。
 いただきますと手を合わせ友美は、食べると言った。
「この時期学校の給食で七夕ゼリーが出てたわ。そういえば」
「そうなのか」
「そうなの。あれもなかなか美味しかったわ」
 アセロラゼリーに星の飾りがあしらわれただけの、ゼリー。いつも食べていたはずなのに、なぜか特別美味しく感じられた。
「なるほどな」
 ふと光は、あることを思った。
「友美は、小学生の頃短冊にどんなお願いを書いた??」
 友美は、悩ましい顔をしいう。
「そもそも書いてなかったかも」
「そうか」
 確かにあの幼少期なら書くことなど友美は、しなかったかもしれない。  
 切ない顔をしている光に友美は、困ったように笑った。
「光昔のことよ」
「だとしてもだ……」
 友美は、微笑む。
「少しだけ思い出したけど、たぶん光のことを考えてたかな」
 ふとしたときに次に会ったときなにを話そうかと友美は、考えていたことを思い出した。
 光は、その話を聞いて優しく微笑むと友美の頭を撫でた。
「そうか」
「そうかな!!」
 友美は、嬉そう笑う。
「光今年は、短冊に何かいたの??」
 光は、立ち上がると笹から短冊を取り、友美に見せる。
「家族が幸せでありますようにか……」
 次に見せてくれた短冊をみて友美は、目を細めた。
「光ったら……」
「友美も同じこと書いてるだろ??」
「まぁね」
 短冊には、好きな人が幸せでいられますようにと、書かれていた。
「光そういえば刻清のことも書いてたのね」 
 光は、罰の悪そうな顔になるという。
「一応な」
 友美は、楽しげに笑った。
「光ったら。ふふふ」
 本当に兄妹の事になると少し素直になれない光。
 友美は、おかしくて、笑っていると光は、不満げに言った。
「今の俺の家族は、友美達だから!!」
「一応刻清も家族よ??」
「そりゃそうだが。それでも!!」
 これは、これは、少し困ったことになった。  
 友美は、素直になればいいのにと思いながら、光を見ながら微笑むのであった。
 愛しい人と共に今年も天の川を見れてよかったと思いながら。
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