光明ノ神子

 光は、不満だった。可愛いと言われることが。
 友美から事あるごとに可愛いと言われ、思う。少しは、格好いいと言ったもらいたいと。
「楸どうすれば格好いいと思ってもらえる!?」
 居候の部屋に光は、朝から転がり込んでいた。
 寝起きな楸は、あきれた顔をする。
「友美に聞いたら??」
「それだとなんだか……」
「へんな維持張らないで聞いてこい!!」
 ほいっと部屋のそとに出されてしまった。
 光は、溜め息をつく。
「楸の言葉にも一理ある……聞いてくるか……」
 また可愛いといわれそうだが、光は、立ち上がるとリビングに。そして朝から家事をし、一段落すると友美のところに。
 彼女は、今執務室におり、書類とにらめっこしていた。
「うーんだからここがこうで……あった!! よかったー!!」
 どうやら計算が合わなかったようだ。無事に解決し、友美は、ほっとした。
「友美少しいいか??」
 神妙な面持ちの光に友美は、頷くがわかる。なんとなくたいした問題では、ないと。
「なに??」
「友美は、俺を格好いいと思ってる!?」
 友美は、ポカーンとする。本当にたいしたことでは、なかった。  
 しばらく沈黙が落ち、光は、緊張した面持ちで彼女の発言を待ったが、友美は、間違いなくこの時光を放置していた。
「よし!! これで……」
「友美さん」
「はい」
「俺を放置してますよね!?」
「えぇ」
「あっさり認めた!?」
「そりゃ認めるわよ。こっちたら書類整理で忙しいもの」
 光の問いを考えるのが面倒だった。そのリソースをほかに使いたいと云うのが今の友美の考えだ。 
 光は、溜め息をつくと書類に手を。
「俺も手伝う」
「ありがとう。ならそっちお願い」
「分かった」
 光がやる気になれば後は、簡単。あっというまに書類が片付いた。
「ありがとう!!」
「どういたしまして」
「さて!! ならお茶ねー」
 友美は、そういうと執務室を出ていき、光もその後をおう。
 リビングに入りと、友美が紅茶をいれていた。
「光このクッキー食べていい??」
「いいよ」
「ありがとう!!」
 紅茶をいれ、クッキーを準備し、友美は、キッチンからリビングにその手にあるお盆には、マグカップぎ二つ乗っていた。
「さて!! さっきの答えいわないとだし!! 光座って!!」
「わかった」
 光は、椅子に座ると、友美は、ダイニングテーブルにクッキーとマグカップをのせ、席に着く。
「はい光」
「ありがとう」
 友美のいれた紅茶は、美味しかった。クッキーを食べる友美を見ながら、光は、微笑む。
「可愛い」
「ありがとう!!」
 友美は、クッキーを食べると言った。
「さっきの答えだけど、正直光全部格好いいわ」
「えっ!?」
 予想しない答えに光は、驚く。てっきり仕事中などと言われると思っていたからだ。
「あらそんなに意外だった??」
「日頃から可愛いと言われてるお陰で……」
「なにそれ」
 友美は、困ったように笑う。
「光の場合は、格好いいが先にくるわよ。でも私の前で見せてくれる素の光は、とても天真爛漫で素直でおしゃれ。そのギャップが可愛いってなるの」
 光は、恥ずかしそうに頬をそめる。
「とりあえず……格好いいと思われててほっとした……」
「あら。ならもっとオタクスイッチいれるべきかしら」
 友美の発言に光は、顔を青ざめた。彼女のオタクモードは、色々と大変だ。
 石像を掘り出すのだから。もしさらにパワーアップしたら、今度は、銅像を作りそうだ。
「それはやめてくれ!! 石像だけでも大変なのに!!」
「まだ木像は、掘ってないわよ?? なんなら、漆のやつとか……」
「あさかやる気か!!??」
「流石にねーでもやると面白そうよね」
「……それを玄関におかれる夫のみにもなってほしい」
「なら油絵で裸の絵を描く??」
「何故裸!?」
「体の美のためよ!! ほらミケランジェロだって裸のダビデ像だし!!」
「芸術の為とは、いえ嫌だからな!?」
「あら脱がすのは、好きなのに??」
 友美は、恥ずかしそうにいうが、その目は、妖しげに光っていた。
「……そこでそれをいわないで」
「認めるのね」
「認めますよ……そもそも夫婦の関係なんだから……そういうのもな……」
 恥ずかしがる光も可愛いなと友美は、思う。
「確かにね!! 因みに洋服と和服どっちがいいの?? 脱がすとき」
 光は、飲んでいた紅茶をふきかけた。そして取り乱し、慌てる。
「なんでそこまで聞くんだ!! まだ大陽さんさんですが!!??」
「やるとき大陽さんさんでもやるものよ??」
「だとしてもだ!!」
 駄目だ。また友美にまんまと遊ばれている気がする。
 友美は、楽しげに笑っている。光は、溜め息をつくと、紅茶を飲んだ。
「私もしかしてたまってる……??」
「知りません」
「あら相手してくれてもいいじゃない。側室もいないのだなら、光が相手になるんだし」
「側室って……」
「私本気になると側室ぐらい持てると思うわよ?? 今でいうとセフレってやつかしら」
 確かに友美なら選り好みできるだろう。この美貌を使えば。
 そう思うと何故自分が選ばれたのか光は、不思議に思えてくることもある。
「まさか……手っ取りばやかったから……」
 考えがもれ、友美は、溜め息をつく。
「本命とセフレを一緒にするな」
「友美がそもそもセフレなんて言い出すからなんだが??」
「確かに」
 友美は、おかしそうに笑う。
「まぁセフレなんて要らないし、光がいれば私は、いいもの」
「友美……」
「光が思ってるよりも私は、光が大好きなのよ。まぁ光より好きとは、言わないけれど」
 光が普段言いすぎているというのもあるが、友美は、それを見て、光が気の済むようにとほっているというのもある。
「いってると思うけど」
「光の半分くらいかしら??」
「たぶん」
 友美は、なら伝えられてるかと思いつつ言った。
「ならよかったわ」
「友美」
「なに??」
 光は、微笑むと言った。
「ありがとうー大好き」
 友美は、一瞬驚いたが言った。
「ありがとう!! 私も好きよ」
「好きなのか……」
「もう!! 大好きよ!!」
 光は、満足げに笑うが友美は、思う。こういうところが可愛いんだよなと。 
「イチャイチャしてるところ悪いけど、クッキー食べていい??」
 二人の甘い空気をあえて壊すように、白野威は、あえて、光の膝の上に乗るという。
「白野威前見えない!!」
「友美いい??」
「勿論!!」
「白野威!!」
「知らないもーん」
「降りてくれ!!」
「やなこった」
 光が溜め息をこぼすなか、友美は、それを見て笑った。
「こりゃ白野威の、反乱かしら」
「反乱じゃなくてひがみからくる妨害だよ……」
 本当に困った神だ。光は、もふもふの毛に顔を埋めるが、まったく白野威は、気にしていない。
「本当に毛並みいいな……」
「気持ちいいわよね!!」
「本当に……」
 これもまた己の縁が招いたことかと、光は、思いながらも楽しげな友美を見て笑うのであった。優しい顔をして。

 
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