光明ノ神子

 今年もクリスマスイブがやって来た。
「パパこれをクリボッチて言うんだね」
 隣には、なるほどと納得している遊李。しかし光は、言いたかったそれだけは、阻止したいと。
「なんで……クリスマスイブにこんなことになっているんだ!!!!」
 ことの始まりは、白野威の一言。
「高天ヶ原の饅頭が食べたい」
 はじめは、光も断ってたがあまりにしつこいので折れてしまった。
 あの時折れるんじゃなかった。そう思いながら光は、目の前を逃げる兎を追いかけていた。しかも雪の上で。
「パパ左!!」
「分かった!!」
 そりの前に遊李をのせ、犬ぞりのような形で光は、白虎にそりを引かせ兎を追いかける。
「まさか……高天ヶ原の饅頭がツクヨミの饅頭なんて思うか!?」
「しかも作ってもらう対価が逃げ出した兎を捕まえるだもんね……やっぱり普通の兎じゃないね!!」
 遊李は、楽しそうだが光は、険しい顔をしていた。このままだとクリボッチになる自分が。
「友美に怒られてそのうえクリスマスイブに一人って嫌だからな……」
 手綱を使い白虎に指示を出すと白虎は、あきれた顔をしさらにスピードをあげた。
 兎は、そんな気迫の光を見て青ざめると更にスピードをあげた。
「なに!?」
「パパよく考えたら僕といるからパパクリボッチじゃないよね??」
 光は、今その話をするかと思いながらも邪険にするなんてこと息子にできないと思い答える。
「そうだね。でも遊李クリボッチというのは、恋人もいない人のことを言うんだ。パパの場合は、違うかな」
「クリスマスイブやクリスマスに一人の人のことを言うんじゃないんだ!!」
「そう」
 兎のスピードが速すぎる。光は、どうしたものかと思ったときあることを思い出した。
「射る」
 遊李は、顔を青ざめる。
「パパ神の使いだよ!?」
「俺も同じだからな。問題ない。遊李しばらくそりに掴まってろ!!」
 父に言われた通り、遊李は、そりにしっかりつかまる。
 光は、術を使い感覚でそりを操れるようにすると弓を取り出した。
 神々しいオーラを放つ弓。これを操れるものは、光くらいだろう。
「パパそれ神話の神器だよね??」
「そうだ」
 あの時は、まさかあいつが裏切るなんてと思ってもいなかった。そう光の中で声が聞こえた。
 光は、弓を構え矢の照準を、定めると射る。鈍い音と共に矢は、消えた。
「パパ兎に当たってないよ!?」
「遊李大丈夫だ。もうすぐ」
 光が、そういったとき白銀の高原にウサギの声が響いた。
「主いくぞ」
「頼む」
 そして声のした方に行くとウサギが気絶をしていた。
 そりからおり遊李は、兎を抱き上げると確認する。
「パパ怪我してないみたい……」
「よかった。矢の歯をあえてつけないで射ったのがよかったみたいだな」
 光も兎を確認すると、兎をケージに入れた。
「羽月様のマークもあるしこれでいいよね!!」
「そうだね」
 遊李は、ケージを抱えてそりに座ると光は、手綱をもち、白虎に指示を出す。
 白虎は、白銀の高原を再び走り出した。
 
 荘厳なたてがまえの屋敷の門を抜け白虎は、入り口の前で止まった。
「パパ行ってくる!!」
「お願いします」
 遊李は、そりから降りると、屋敷のなかに。
 光は、白虎からそりをはずすと、片付けをし、中に。そして奥の和室に入ると、羽月が困った顔をし兎をつまみ上げていた。
「羽月さま……」
「まったく。水郷ノ神子に手間をかけさせて」
 兎を顔を青ざめガタガタ震えているが、羽月は、冷たい眼差しのまま兎をケージに淹れた。
「兎の肉にでもしようかしら。美味しいし」
 遊李は、かおをあおざめる。
「羽月さま食べちゃダメですよ!!」
「遊李でもこの子は、悪い子なの。もう何回も逃げ出してるんだから」
 もう食べるしかないと羽月は、本当に思っていた。
「羽月なら料理は、俺がするぞ。しめるのは、やらないが」
 そして部屋に入ってきた光の言葉に遊李は、悲しそうな顔に。
「パパだめだよ!!」
「でも神がそう決めるならそうするのがいいと思うぞ。それに俺達は、羽月の神子でもないから、つべこべ言えないから」
 モアならともかく自分達は、部外者なのだから。
「でも……」
 羽月は、悲しげな遊李をみてあることを思い付く。ある意味食べられるより大変で怖いことを。
「遊李ならこの兎を引き取ってくれる??」
「えっ!?」
 遊李は、驚くが、光は、顔をひきつっていた。
「羽月さんうちには、貴女のお姉さんがいるんですが!?」
「光姉上がいけるなら兎くらいいけるでしょう??」
「アマビエとカッパもいるんですが!?」
「なら大丈夫じゃない!! 妖怪も兎も同じよ!!」
「同じじゃない!!」
 光が、突っ込みをいれるなか、遊李は、じっとケージの中の兎を見ていた。
「食べられちゃうし……」
 食べられることを考えると引き取るべきだろうか。
 遊李は、しばらく考えると頷く。
「羽月様僕契約します!!」
「契約!?」
 光と羽月が驚くのも無理は、ない。契約というのは、式としての契約を意味するからだ。
「遊李この兎は、やんちゃなのよ!?」
「分かってます。だからこそ式として契約をして縛ってそこから仲良くなりたいなって!!」
 この子は、やはり頭がいい。
 羽月は、満足げな顔をすると豪快に笑った。
「分かったわ。いいでしょう。何かあったら何時でもわたしにいいなさい」
「はい!!」
 兎は、困惑していたが、光もた困惑していた。
「なんでうちは、「普通」の動物がいないんだ……」
「それは、神に縁が深いからよ」
 水郷に今さら何をいっているとあきれられた顔をされた。
「光これ姉上のお饅頭」
「羽月ありがとう」
 羽月は、風呂敷を光に渡すと、遊李にいった。
「私からのクリスマスプレゼントかしら」
「かもしれません」
 遊李は、ケージを持つと言う。
 さてもうそろそろ時間だ。
 羽月に挨拶をし二人は、帰路についた。色々と贈り物。持ちながら。

 その夜光は、盛大な溜め息をつき、枕に顔を押し当てていた。
 帰ってきてから色々ありすぎだ。
 兎は、子供たちのアイドルになっていたが友美に説明と許可をとるのに難航。その後不機嫌と来た。
「せっかくのクリスマスイブなのに踏んだ。蹴ったりだー!!!! 毎年何故あやかしやら、神関連で振り回されるんだ……」
 満足そうに饅頭をたべ、寝ている白野威が、少し忌々しい。
 光は、いけないと思うと起き上がりリビングへ。しかしそこに友美の姿は、なく、光は、気配を探り書物室へ行くと友美がいた。なにかごそごそしながら。
「友美??」
 声をかけると彼女は、慌てて光の方を向く。背中になにかを隠して。
「光まだ起きてたの!?」
「……そりゃ愛する姫がいないから寝ないよ。それより背中に隠したのなに??」
 友美は、溜め息をつくとしかたがないと背中に隠した箱を光にわたした。
「クリスマスプレゼントよ。さっき渡せなかったし寝てる間に枕ものと置こうと思ってて」
 書物室に置いてある鳩時計が日付を変わったことを告げた。
「ありがとう。ピッタリだったね」
 友美は、頷くと微笑む。しかしすぐに申し訳なさそうな顔に。
「光……兎の件ごめんなさい……あのあと羽月からも説明があったわ」
 クリスマスに謝罪から入るのもどうかと思ったが、友美は、謝った。
 あのあと羽月から説明があり、兎の件に関して友美は、納得できたが、罪悪感にも襲われていた。光に冷たくしちゃったと。
「ごめんなさい……」
 光は、箱を机の上に置くと友美を抱き締める。
「大丈夫。でも友美があそこまで反対するなんてビックリした」
「だって分かるもの。あの兎がただ者じゃないもの」
 悪い兎では、ないと分かるが、感じるオーラが普通と違う。羽月も悪いこでは、ないが困ったこであると言っていることを、考えると侮れない兎なのは、間違いない。
「それに子供たちが危ないめにあったら……」
「そうか」
 光は、優しく微笑むと友美を抱き締める。
「大丈夫だよ。遊李は、あぁ見えて恐ろしいから……」
「確かに……」
 遊李は、規則を守らない式には、とても厳しいことを二人は、知っている。
 たぶん息子なら大丈夫だろう。たぶん。
「友美プレゼント開けてもいい??」
「もちろん」
 光は、さっそくとプレゼントを開けてみる。
「やっぱり変だった!?」
 友美は、おろおろするなか光は、箱を持つと目を煌めかせた。
「マグカップ!! しかもペア!! しろくまさん!!」
 友美は、光の反応をみてガッツポーズをしていた。よかった。光の好みドストライクだと。
「友美ありがとう!! そうだ!! 俺もこれプレゼントです!!」
 光は、何時渡そうかとおもって持っていた箱を友美にわたした。
「まさか……アクセサリー!?」
「まぁ見てください」
 友美は、これ以上アクセサリーが増えても困ると思いながらも箱を開けると中には、可愛らしいく上品なデザインの腕時計が。
「時計??」
「友美最近ネットやら雑誌やらで時計を見ていたから!!」
 友美は、少しビックリしたが嬉しそうに微笑むといった。
「ありがとう。嬉しい!!」
「よかった」
 光は、ようやく友美と仲直りできたと思い友美を抱き締めようとしたとき友美にするりとかわされてしまった。
「友美!?」
「光恒例のやつ」
「そうだった……」
 これから一仕事がある。
 光は、気合いのいれた顔をすると、友美と顔を見合わせ書物室を出た。
「子供たちが起きませんように……」
「さっさとやるわよ!!」
「うん」
 そして二人は、子供たちの寝ている部屋に行くと枕元にプレゼントをおき、部屋から退散。そして何事もなかったかのように部屋に戻ったとき昨年と同じことが。
「サンタさん!?」
「おほほほ神子姫よ久しぶりじゃな」
「お久しぶりです」
 サンタ襲来。そして驚く光とちがい友美は、楽しげにサンタと話をし、お茶までするとサンタは、帰っていった。
「サンタさん……ここを中継地点にしてないか!?」
「してるかもねー!! さて光寝よう」
 歯磨き、友美は、和室へ。光もそうだなとそのあとは、特になにもなく、就寝した。


 翌朝子供たちの嬉しそうな声が聞こえるなか二人は、楽しそうに微笑んでいた。
「ママ!! 新しい顕微鏡だわ!!」
「よかったわね柊麗」
 顕微鏡をもち喜ぶ柊麗に、新しいゲームソフトをみて嬉しそうに微笑む榎麟。
「うちにも普通のクリスマスが……」
「光嬉しいのわかるけどとりあえず落ち着いて!!」
 光がこのままだと小躍りしそうなので友美は、そういうと光は、我慢した。
「新しいぬいぐるみだ!!」
 そして遊李は、ぬいぐるみだを持って嬉しそうな顔をしそして螢は、フラスコをもって喜んでいた。
「フラスコ割らないでね!! 螢!!」
「はーい!!」
 プレゼントをいつもリビングに持ってきて開ける子供たち。今年もこうして楽しいクリスマスが幕を明けたのであった。
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