光明ノ神子

 ある春の雨の日、傘をさし、友美は、歩いているの変なものを見つけた。
 既存感のある緑色の体と丸々としたボディー。なにより頭に皿が乗っている。
「まさか翠逃げ出した!?」
 そう河童だ。慌てて落ちている河童を拾うと河童は、酷く弱っていた。
「あら……」
 どうしたものか家に連れ帰るわけにも行かない。
 とりあえず治癒術を使うとすぐに河童は、元気になった。
 河童は、友美の顔をみて驚くと、友美の腕から離れる。
「元気になってよかった!!」
 さて河童ともこれでお別れだ。
「きおつけてね」
 友美は、そういうと歩き出した。
 河童は、彼女の小さくなる背中を見ながら、何かしらのお礼は、しなければと。
 しばらく考え、あることを思い付くと、さっそく行動に移した。
 
 翌日の事光が朝、新聞を取りに、玄関を開けた時見知らぬかごが置かれていた。
 新聞を取ると不審げにその、かごを光は、見た。
「微かにあやかしの気配だな……」
 光は、かごを持つと、中には、大量のヨモギが。
「このヨモギ……」
 誰が持ってきたのだろうか。
 光とりあえず、かごを家の中にいれ、友美に確認をすることにした。  
 友美が起きてくると、光は、さっそく友美に確認をした。
「あやかしを助けたかって??」
「そう」
「もしかして河童かしら」
 友美は、ヨモギを見ながら言う。
「河童昨日倒れてて助けたから……そういえば仄かにヨモギの香りもしてたし……」
 これは、なかなか上質なヨモギだ。春の新芽の柔らかいところだけ摘んでいる。
 友美は、テラスからこちらを見ている河童を見た。
「翠よりもしかすると律儀かも??」
「……ただ胡瓜を食べまくるだけだもんな……翠……」
「まぁね」
 ガラス越しに翠は、ショックを受けていたが、事実である。
「友美これどうする??」
「使っていいわ」
「ならかごだけまた外へ置いておくよ」
「文つきでね!!」
 これは、美味しい草餅が食べられそうだと友美は、うきうきした。
 その後ヨモギは、光により、美味しいヨモギ餅にかわり、友美は、ヨモギ餅と手紙をかごにいれ、玄関先に置いた。
 しばらくすると河童が表れ、かごにあるヨモギ餅をみて、ビックリ。
 手紙をよみぱちくりさせると、ヨモギ餅み食べその美味しさに小躍りすると、かごをもち何処かに消えた。
「やっぱり河童ね」
「あそこまで、喜んでくれたなんて」
 さてこれで河童も満足しただろうと思ったが翌日には、今度かごに竹の子が入っていた。
「竹の子!?」
 光は、朝から驚く。しかもなかなか良いものだ。  
 まさかあの河童かとおもいつつ、その日のうちに茹で、竹の子ご飯をつくり、おにぎりにしてかごの中にいれ、手紙もかき、置いておくと案の定あの河童が受け取りに来にきた。
「これで終わりだよな……」
 そう思ったが、翌朝にはこんどは、かごに苺が。
 友美は、新聞とかごをもつと中に入った。
「光こんどは、苺」 
「……河童律儀すぎる」
「本当ね」
 想像するとなかなか可愛らしい絵面だ。 
 光は、次にいちご大福をつくり、また玄関先に置いておくことにした。
 すると案の定またあの河童が取りに来ていた。
「友美河童に懐かれてる??」
「かもしれないけど、光が胃袋つかんだのかも……」
 どちらもありえそうなので深く考えないようにした。
 翌日も河童が律儀に早朝竹の子をもって来てくれたが、その日は、少し何時もと違った。
 光が今度は、竹の子を煮物にし、かごにいれようとしたとき、テラスの方から悲鳴が聞こえたのだ。
 慌てて家の中に入り、テラスに出ると、アマビエがアワアワしていた。
「アマビエどうした!!」
 アマビエの視線の先には、凄い形相の胡瓜を葉巻がわりに、咥えている翠と、そんな翠に乗っかられ、半泣きになっている河童が。
 事態の収集が先と、光は、翠を術で水の牢獄に閉じ込めた。
「アマビエ河童をこっちに!!」
 アマビエは、半泣きの河童を家の中にいれた。
 それを確認し、光は、術を解くと、翠は、怒っていた。 
「翠!!」
 普段優しい光が怒り、翠は、顔を青ざめる。
「なんであんな酷いことをするんだ!!」
 翠は、必死に訴えた。
「え?? あいつの方が俺達の役に立ってて喜ばれてたから、嫉妬した!?」
 翠は、頷く。
「だって……翠睡蓮バチに入って胡瓜食べてるだけだし……何時も……」
 ガーンと音が聞こえるが、光は、無視した。
「何か役に立ってるだろ!! って?? うーんとくにない」
 さらに翠は、落ち込む。
「とりあえず翠先ずは、謝りなさい!!」
 翠は、頷くと、半泣きの河童に謝り、睡蓮ばちに戻った。
「河童ってなかなか嫉妬深いのか??」
 河童に関しては、まだまだ謎が多い。
 光は、家の中にはいると、アマビエが今度は、テラスに出て、何か、翠と話をはじめた。
 テイッシュを河童に光は、差し出す。
「翠がごめん」 
 河童は、ペコリと頭を下げるとテイッシュで涙を拭う。そして光に手紙を渡した。
「俺でいいのか??」
 河童は頷くので、さっそく手紙を読むと、そこには、美味しい料理をありがとうと綴られていた。
「こちらこそ、美味しい食材をありがとう」 
 微笑み河童の頭を撫でると、河童は、嬉しそうな顔に。
 河童は、光から、手当てを受けたのち、帰っていった。
「光あいつ……」
「白野威どうした??」
 河童とすれ違った白野威は、驚いた顔をした。
「有名な行商河童じゃん!!」
「えっ!?」
「いい審美眼を持っていて食材選びならあいつから買えっていうほどの!!」
 まさかの河童の正体に驚いた。
「友美が助けた河童が……まさかの神とあやかしには、有名な行商河童なんて……」
「ここ数日更に美味しいと思ってご飯食べてたけど納得」
 さすが友美ともいえるが、どうやら、河童は、友美と光どちらも気に入ってしまったらしい。
「こりゃ行商ルートになってるかも」
「そうだといいなたぶん」
 食材にこだわるからこそ美味しいものが更に美味しくなる。
 光は、また気が向いたら来るだろうと思っていたが、翌日の朝驚くべきことが。
「光増えてるんだけど……」
 友美の言葉にまさかと光は、思ったが増えていた河童が。
 翠は、胡瓜で手懐けられ、行商河童は、家財道具一式持ってきて引っ越してきてしまった。
「光行商ルートどころか本拠地にされたけど!!??」
「……まさかのまさかだ」
 行商河童は、友美と光をみて、テラスの窓のガラスを叩く。
 鍵をあけ、窓を開けると、河童は、中にはいってして、ふきのとうが入ったかごをこたつの上に置いた。
「もしかして家賃とお礼????」
 河童は、頷く。
「ありがとう」
 河童は、友美に頭を下げると、テラスに出ていき、商売道具をもつと何処かに消えた。
「光これは……」
「なんでうちには、変なあやかしが住み着くんだ!! 基本無害だが!! アマビエしかり、河童しかり!! しかも押し掛け!!」
 それは、ここが居心地のよいところだからだろう。 
 友美は、また増えたなと思いつつも笑っていた。楽しそうな顔をして。
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