光明ノ神子

 春の月夜。ミモザの花が夜風に揺れるなか、水郷は、テラスで珍しく酒を飲んでいた。
「おや。本来の姿とは、珍しい」
 テラスの入り口から声が聞こえ、ふりかえると、白野威がいた。
「白野威様」
「光がうるさくて避難??」
「というより邪魔したくないだけです」
 水郷の隣に白野威は、座ると持ってきていた盃に酒をいれた。
「白野威様ちょっと!!」
「少しくらいいいじゃん!!」
「知りませんからね??」
 どう言うことだろうと思いつつ白野威は、飲んでみると体に電気が走り抜けた。
「電気ブランデー!!!???」
「はい」
「度数あるのに飲むね……」
「あいにく強いですから」
 そういえば、何故か水郷は、拗ねている。白野威は、どうしたのかと思っていると、水郷は、とうとうしびれをきらせいった。
「なんで私に光のどこを認めてるのか聞かないんですかー!!!!!!」
「えっ??」
 きょとんとした白野威をしたので、水郷は、さらに不満げにいった。
「兄上から聞きました!! 白野威様が神々に神子の認めてるところを聞いてまわってるって!!」
「画竜のやつみみはや!!」
「そんなことないと思いますが!! とりあえず兄上から聞いて待ってたのに……まったく来ない!!」
「そりゃ……光と水郷に関しては、毎日見てるし」
 真顔でいわれ、水郷は、しゅんとなる。
「なんで落ち込むのさ!!」
「……私神子に関しては……他よりも認めてるって自負してるのに……」
「自負かよ」
「そんな皆が認めてくれるとおもいますー!!!???」
「まぁ危険分子としては、認めてるだろうね。覡と高天ヶ原を破壊し尽くした水神としてねぇ~」
 初代天照に仕えていた神々の中でも女傑と恐れられている水郷。戦場にたつと身の丈ほどの鉄扇で敵を殲滅し、神々を恐怖に陥れた。
 その水神が覡と暴れたら、そりゃ危険物として認定されるのも無理は、ない。
 水郷は、ばつの悪そうな顔をし言う。
「それは……そもそもあの馬鹿達が光を消そうとするから!!」
「……罪をでっち上げて水郷もろともねぇー。まぁ今思えば、それだけ強いから今の間に始末するつもりだったんだろうけど」
「迷惑なはなしです!!」
 水郷は、さらに酒を飲む。これは、そうとう聞いて欲しかったようだ。
 白野威は、呆れた顔をすると言った。
「で光のどこを認めてるのさ」
 水郷は、待ってましたと瞳を煌めかせる。
「全部です!!」
「……そこからどう掘り返せと!?」
 水郷は、ハッとした顔をし言う。
「確かに」
「まぁ光の全部を認めてるって言うのも分かるけどね」
 水郷が光と契約した当初から関係をしている白野威は、水郷が何故そういうのか分かっていた。
「手のやけるやつほどかわいいってやつ??」 
「それは、あるかもですが、基本あの頑張りに私も尻を蹴られてきましたから」
 はじめは、気まぐれだった。初代水郷ノ覡の生まれ変わり。
 現世では、静かに見守るだけにするつもりだったのに、手を伸ばしてしまった。
 まるで闇夜に灯りに惹かれ、いってしまう虫のように。
「純粋だからこそ、その光は、強い。とでも言いますでしょうか……」
「……だからこそ、闇に染まったら大変だけどね」
「光が染まると思います??」
「染まらないだろうね」
 白野威は、持ってきていた日本酒を開けると飲んだ。
「私も感服するほどですよ。あの根性と諦めの悪さ……なにより……優しさと聡明さには……」
 白野威は、目を伏せる。たぶん神を魅力出来るのは、魂の問題とも言えるがそれでも伊織は、ここまで水郷に認められていなかった。
「伊織にくて、光にあるのってなに??」
「……そうですね。伊織は確かに人当たりは、よかった。ですがそもそも生きる意欲が少なかった。それに比べ光は、生きるよくもあれば、夢も手に入れようとする。結局欲が強いと言うべきかと」
「なるほどね」 
 それ以外にもありそうだが、水郷が言わないのなら聞かないのがいいだろう。
「なら白野威様は、どうなんです??」
「なにが??」 
「瑠花になくて友美にあるもの」
 白野威は、思い浮かべると言う。
「おもいつかない。まぁしいて言うのなら瑠花は、あくまでも巫女として振る舞う。友美は、己として全てを実行するじゃない。神子だからとか言ってるけど、けっきょく我でてるし」
 水郷も確かにと思いながら月をみた。
「白野威様皆からこの関係を聞いて、どうされるんです??」
「はじめは、友美から聞いてきてと言われてしてたけど……面白かったし……形にしてまとめようかねぇ」
 水郷は、微笑むと言う。
「それは、素敵かと」 
「ならいいんだけど」
 友美には、報告を済ませており、その時に友美も水郷と同じことを言っていた。
「白野威ありがとう!! それ素敵だと思うわ!!」
 と。
「書にするのは、いかがです??」
「それが一難無難かな……」
 白野威は、さてどうまとめようかと考えだし、その顔は、とても楽しそうだった。
「白野威様楽しみにしてますね」
「あいよー」
 白野威と水郷は、そんなはなしをすると月を見ながら、酒を飲む。楽しげな顔をしなら。
 
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