光明ノ神子
後悔などしても無意味だと分かっている。しかしさすがに、この光景を見さされたら、いやでも思い出す。
「何故……何故……アノ人ヲ……喰ラッタ!!!!!!」
燃える炎とぐちゃぐちゃにされたたくさんのあやかしの亡骸。
その地獄を赤黒くなった衣を引きずりながら、徘徊している女。
その光景は、三日三晩続き、女は、最後にいきたえた。
「……すまぬ」
炎が鎮火し、彼女は、女の亡骸の前に立っていた。
生前は、とても素敵な人だった。しかし呪いとは、ここまで人を変える。そして生きながらにして鬼にすることが出来ると実感した。
瑠花は、悔しそうに女の亡骸を抱き上げた。
「どうされるのです巫女姫」
「せめて……亡骸だけでも……共に埋葬することにする……」
愛する者は、確かにあやかしに食い付くされていた。しかしその後すこしばかり、体の一部を瑠花は、見つけ出すことが出来た。
この女には、伝えていなかったが、もしその事を伝えていたら、この未来を変えられたのかもしれない。
傍らにいた狼に瑠花は、そういうと、歩きだした。
「琳よ」
「はい」
「行くぞ」
瑠花は、その後女の亡骸を愛する者のとなりに葬った。
しかしその時瑠花は、見つけてしまった。女の後悔そして恩讐と怨恨を。
「……そなたは、わたくしと同じであったか」
これは、神が関わっている。瑠花には、どうにも出来ない。出来るとすればこの魂を作った者のみだ。
「しかし……失敗作とみなしたか……」
失敗作として捨てられた分霊は、どうすることも出来ない。
出来るとすれ、遥か先の未来でその神がこの分霊は、を認め、拾いまた同じにすること。それにより、この女のむくいは、ようやく終わる。
「……わたくしもこのように……将来なるのだろうか……」
自分もまた神の分霊といえる存在だ。瑠花は、生まれたときから何となくそれを感じていた。
ある洞窟に瑠花は、遥か未来に託す形で、この分霊を封印した。
「……適した場所が、わたくしが皆の集いの場所として作った社だったとは……」
ここは、皆が集まり、暖かな場所になるようにと瑠花は、作った。しかし皮肉にもこの分霊を静める場所として適した場所でもあった。
「だがそなたもわたくし達の仲間……」
静かにしまっている扉に瑠花は、そういうと歩きだした。
「瑠花かあさま!!!」
社に戻ると、元気な足音が聞こえ、かけてきたのは、薄い色素の髪をもつ女の子だ。
瑠花は、跪くと少女を抱き締めた。
「幸よ」
「どこに行かれてたのですか??」
「すこしな」
女とその愛する人の忘れ形見。色々あり、結局瑠花がめんどうをみている。
瑠花は、幸を抱き上げるとふと視線をかじ、そちらを見た。
「伊織……」
伊織が瑠花のなにかを察し切なく笑っていた。
「幸は、賢くまっていたよ」
瑠花は、幸をみめ微笑むといった。
「さようか」
「瑠花……」
「その話は、あとじゃ伊織」
屋敷に入り、幸が昼寝を始め、瑠花と伊織は、話を始めた。
「やはり怨恨は……」
「わたくしには、どうにも出来ぬ……幸の呪いも……受け継がれていくであろう……」
その原因が分かっているのに、神がなにもしないからこそ、解決が出来ない。ここまで歯痒いことがあるとは。
瑠花は、苦虫を噛み潰したよう顔をし言う。
「なにが造化三神じゃ。ただのくそでは、ないか」
「まぁまぁ……」
伊織は、なだめるようにいうと、心配そうに瑠花を見る。
「瑠花も無理は、いけないよ」
本当にこいつは、心配性だと瑠花は、思っていたが、伊織が心配するのも無理は、ない。
「身重だというのに……瑠花は、何時も無理をしすぎる……もし流産したらどうするの??」
「それは……」
「いくら天照様の力をない封してるからって無理は、いけないよ。もし悲しいことになったら俺号泣するから。世界をしばらく豪雨にするから」
そうなると色々こまる。伊織なら本気でやりかねないからだ。
瑠花は、しばらくおとなしくしようと思うが、やはりこの呪いをどうにかしたいとも思っていた。
わたくしが出来る唯一のこと。瑠花は、そう思いながら、すこし悲しげにみていた。
美しい青い空を。
「夢か……」
静かな部屋にて、瑠花は、目覚めた。目元から流れた雫に、少し驚きながらも、彼女は、笑っていた。
「なみだの流すのと無理は、ない……あの記憶は、苦しいもの……」
寝台から降りるの、瑠花は、近くの椅子にかけてあった羽織を取り、肩にかけると部屋をでた。
静かな虚空ノ宮は、人里はなれた所にあり、星空を眺めるのにも適している。
瑠花は、中庭にでると、先客が既にいた。
「伊織なにをしておる」
伊織は、爽やかに笑うとあるものを見ながら言う。
「瑠花天体観測だよ。光から望遠鏡というものを教えてもらってね。ここにもあったから使ったみようと……」
しかし伊織は、困ったように望遠鏡をみていた。瑠花は、溜め息をつくと、望遠鏡を組み立てた。
「組み立てれぬのなら諦めればよいものを」
「それは、したくないかな」
「そうじゃな」
組み立てられた望遠鏡をのぞき、伊織は、瞳を煌めかせた。
「とても大きく星が見える……」
「それが望遠鏡の、役目じゃ。ここには、ない、天体観測用の電波望遠鏡などは、さらに大きく見えるぞ」
伊織は、楽しげに笑う。本当にこの男は、昔から楽観的だ。だから助けられるともいえる。
「ほんに光に似ておるな」
「……そりゃ君が友美姫に似ているようにね」
瑠花は、確かにと思わず笑った。
「前世と現世だからな」
「そのうえ血縁と来た。そりゃ似てるよ」
「光とそなたは、違うがな」
「そこは、まぁ突っ込まない」
伊織は、楽しげに笑ったあと、心配そうに瑠花をみていう。
「……こんな時間に起きてくるなんて……悲しい夢を見たんだね」
瑠花は、めを伏せると言った。
「あぁ。初代空間ノ巫女と吹雪ノ覡の事をな……」
伊織は、悲しげに笑うと瑠花を抱き締めた。
「そっか」
「わたくしは、あの時……」
「瑠花は、やれることをしていたよ。だから今のユニさんとソーマ君がいる」
「……」
「友美姫が言ってたけど、あの時瑠花があの分霊を封印し、皆が集まるあそこで楽しいときを思い出させていてくれたから、簡単にいったって」
初耳の出来事に瑠花は、驚く。
「友美が……」
「瑠花にいうと照れ隠しで五月蝿いと言われるからって」
瑠花は、罰の悪い顔をしたが、あながち友美の言っていることは、はずれでは、ない。
「さすが友美じゃ……」
「だから大丈夫。瑠花は、やれることをした」
瑠花は、少しだけ心が軽くなった。
「幸のことも立派に育てた」
「……」
「寒猫神社のことも幸がやるといってあの子は、立派に一人立ちした」
「そうじゃな」
「あの時俺達は、出来ることをしっかりとした。だから瑠花後悔をしないで。幸が悲しむよ」
伊織思うことがある。光のように、本来の力を扱えたらと。しかしあれは、光だから出来ることだ。そして瑠花もまたしかり。
「そうだな。もし……と思うが、わたくしは、天之御中主の力を目覚めさせることすら出来なかった……」
「瑠花」
「だからわたくしに出来ることは、出来たと思うことにする」
瑠花は、そういうと、空を見上げた。
「ほんに綺麗じゃな」
「そうだね」
「昔と分からぬ」
「そうかな」
伊織は、そういうと、瑠花のてを握った。
「少しいい??」
「……少しだけならな」
伊織は、微笑むと、瑠花と共に星空を見上げた。
確かに生きていると後悔は、ある。しかしそれを引きずったままでは、いけない。
本来ならばこうして瑠花と再会など出来ないのに、出来た奇跡。
その事を考えると更に思う。
「瑠花幸せ??」
瑠花は、目を伏せるといった。
「あぁ」
そして短く答えるとまた星空をながめる。伊織には、これだけで伝わる。
本来ならば再会などかなわないはずが、こうして再会をはたせた。
瑠花は、この奇跡がもらえたということは、自分のやってきたことは、決して無駄では、なかったと思えた。
今は、愛する人との時間を思わなくては、過去を見ずに。
二人は、互いに微笑むと、また星空をみた。互いに再会できた奇跡に感謝をしながら。
「何故……何故……アノ人ヲ……喰ラッタ!!!!!!」
燃える炎とぐちゃぐちゃにされたたくさんのあやかしの亡骸。
その地獄を赤黒くなった衣を引きずりながら、徘徊している女。
その光景は、三日三晩続き、女は、最後にいきたえた。
「……すまぬ」
炎が鎮火し、彼女は、女の亡骸の前に立っていた。
生前は、とても素敵な人だった。しかし呪いとは、ここまで人を変える。そして生きながらにして鬼にすることが出来ると実感した。
瑠花は、悔しそうに女の亡骸を抱き上げた。
「どうされるのです巫女姫」
「せめて……亡骸だけでも……共に埋葬することにする……」
愛する者は、確かにあやかしに食い付くされていた。しかしその後すこしばかり、体の一部を瑠花は、見つけ出すことが出来た。
この女には、伝えていなかったが、もしその事を伝えていたら、この未来を変えられたのかもしれない。
傍らにいた狼に瑠花は、そういうと、歩きだした。
「琳よ」
「はい」
「行くぞ」
瑠花は、その後女の亡骸を愛する者のとなりに葬った。
しかしその時瑠花は、見つけてしまった。女の後悔そして恩讐と怨恨を。
「……そなたは、わたくしと同じであったか」
これは、神が関わっている。瑠花には、どうにも出来ない。出来るとすればこの魂を作った者のみだ。
「しかし……失敗作とみなしたか……」
失敗作として捨てられた分霊は、どうすることも出来ない。
出来るとすれ、遥か先の未来でその神がこの分霊は、を認め、拾いまた同じにすること。それにより、この女のむくいは、ようやく終わる。
「……わたくしもこのように……将来なるのだろうか……」
自分もまた神の分霊といえる存在だ。瑠花は、生まれたときから何となくそれを感じていた。
ある洞窟に瑠花は、遥か未来に託す形で、この分霊を封印した。
「……適した場所が、わたくしが皆の集いの場所として作った社だったとは……」
ここは、皆が集まり、暖かな場所になるようにと瑠花は、作った。しかし皮肉にもこの分霊を静める場所として適した場所でもあった。
「だがそなたもわたくし達の仲間……」
静かにしまっている扉に瑠花は、そういうと歩きだした。
「瑠花かあさま!!!」
社に戻ると、元気な足音が聞こえ、かけてきたのは、薄い色素の髪をもつ女の子だ。
瑠花は、跪くと少女を抱き締めた。
「幸よ」
「どこに行かれてたのですか??」
「すこしな」
女とその愛する人の忘れ形見。色々あり、結局瑠花がめんどうをみている。
瑠花は、幸を抱き上げるとふと視線をかじ、そちらを見た。
「伊織……」
伊織が瑠花のなにかを察し切なく笑っていた。
「幸は、賢くまっていたよ」
瑠花は、幸をみめ微笑むといった。
「さようか」
「瑠花……」
「その話は、あとじゃ伊織」
屋敷に入り、幸が昼寝を始め、瑠花と伊織は、話を始めた。
「やはり怨恨は……」
「わたくしには、どうにも出来ぬ……幸の呪いも……受け継がれていくであろう……」
その原因が分かっているのに、神がなにもしないからこそ、解決が出来ない。ここまで歯痒いことがあるとは。
瑠花は、苦虫を噛み潰したよう顔をし言う。
「なにが造化三神じゃ。ただのくそでは、ないか」
「まぁまぁ……」
伊織は、なだめるようにいうと、心配そうに瑠花を見る。
「瑠花も無理は、いけないよ」
本当にこいつは、心配性だと瑠花は、思っていたが、伊織が心配するのも無理は、ない。
「身重だというのに……瑠花は、何時も無理をしすぎる……もし流産したらどうするの??」
「それは……」
「いくら天照様の力をない封してるからって無理は、いけないよ。もし悲しいことになったら俺号泣するから。世界をしばらく豪雨にするから」
そうなると色々こまる。伊織なら本気でやりかねないからだ。
瑠花は、しばらくおとなしくしようと思うが、やはりこの呪いをどうにかしたいとも思っていた。
わたくしが出来る唯一のこと。瑠花は、そう思いながら、すこし悲しげにみていた。
美しい青い空を。
「夢か……」
静かな部屋にて、瑠花は、目覚めた。目元から流れた雫に、少し驚きながらも、彼女は、笑っていた。
「なみだの流すのと無理は、ない……あの記憶は、苦しいもの……」
寝台から降りるの、瑠花は、近くの椅子にかけてあった羽織を取り、肩にかけると部屋をでた。
静かな虚空ノ宮は、人里はなれた所にあり、星空を眺めるのにも適している。
瑠花は、中庭にでると、先客が既にいた。
「伊織なにをしておる」
伊織は、爽やかに笑うとあるものを見ながら言う。
「瑠花天体観測だよ。光から望遠鏡というものを教えてもらってね。ここにもあったから使ったみようと……」
しかし伊織は、困ったように望遠鏡をみていた。瑠花は、溜め息をつくと、望遠鏡を組み立てた。
「組み立てれぬのなら諦めればよいものを」
「それは、したくないかな」
「そうじゃな」
組み立てられた望遠鏡をのぞき、伊織は、瞳を煌めかせた。
「とても大きく星が見える……」
「それが望遠鏡の、役目じゃ。ここには、ない、天体観測用の電波望遠鏡などは、さらに大きく見えるぞ」
伊織は、楽しげに笑う。本当にこの男は、昔から楽観的だ。だから助けられるともいえる。
「ほんに光に似ておるな」
「……そりゃ君が友美姫に似ているようにね」
瑠花は、確かにと思わず笑った。
「前世と現世だからな」
「そのうえ血縁と来た。そりゃ似てるよ」
「光とそなたは、違うがな」
「そこは、まぁ突っ込まない」
伊織は、楽しげに笑ったあと、心配そうに瑠花をみていう。
「……こんな時間に起きてくるなんて……悲しい夢を見たんだね」
瑠花は、めを伏せると言った。
「あぁ。初代空間ノ巫女と吹雪ノ覡の事をな……」
伊織は、悲しげに笑うと瑠花を抱き締めた。
「そっか」
「わたくしは、あの時……」
「瑠花は、やれることをしていたよ。だから今のユニさんとソーマ君がいる」
「……」
「友美姫が言ってたけど、あの時瑠花があの分霊を封印し、皆が集まるあそこで楽しいときを思い出させていてくれたから、簡単にいったって」
初耳の出来事に瑠花は、驚く。
「友美が……」
「瑠花にいうと照れ隠しで五月蝿いと言われるからって」
瑠花は、罰の悪い顔をしたが、あながち友美の言っていることは、はずれでは、ない。
「さすが友美じゃ……」
「だから大丈夫。瑠花は、やれることをした」
瑠花は、少しだけ心が軽くなった。
「幸のことも立派に育てた」
「……」
「寒猫神社のことも幸がやるといってあの子は、立派に一人立ちした」
「そうじゃな」
「あの時俺達は、出来ることをしっかりとした。だから瑠花後悔をしないで。幸が悲しむよ」
伊織思うことがある。光のように、本来の力を扱えたらと。しかしあれは、光だから出来ることだ。そして瑠花もまたしかり。
「そうだな。もし……と思うが、わたくしは、天之御中主の力を目覚めさせることすら出来なかった……」
「瑠花」
「だからわたくしに出来ることは、出来たと思うことにする」
瑠花は、そういうと、空を見上げた。
「ほんに綺麗じゃな」
「そうだね」
「昔と分からぬ」
「そうかな」
伊織は、そういうと、瑠花のてを握った。
「少しいい??」
「……少しだけならな」
伊織は、微笑むと、瑠花と共に星空を見上げた。
確かに生きていると後悔は、ある。しかしそれを引きずったままでは、いけない。
本来ならばこうして瑠花と再会など出来ないのに、出来た奇跡。
その事を考えると更に思う。
「瑠花幸せ??」
瑠花は、目を伏せるといった。
「あぁ」
そして短く答えるとまた星空をながめる。伊織には、これだけで伝わる。
本来ならば再会などかなわないはずが、こうして再会をはたせた。
瑠花は、この奇跡がもらえたということは、自分のやってきたことは、決して無駄では、なかったと思えた。
今は、愛する人との時間を思わなくては、過去を見ずに。
二人は、互いに微笑むと、また星空をみた。互いに再会できた奇跡に感謝をしながら。