光明ノ神子

 高天ヶ原にある、すすきの美しい草原にたつ月ノ宮。ここは、ツクヨミの居城だ。
 白野威は、団子片手に妹を訪ねていた。
「ヤッホー羽月」
 執務室にはいると、羽月がなにやら難しい顔をしていた。
「姉上!!」
 ここに来て助っ人到来に羽月は、泣きそうな顔になる。
「助けてください!!」
「なにがあったのさ」
 妹が珍しいと白野威は、羽月が差し出してきた紙を見た。
「モアやりやがったな……」
 羽月は、頷くと、いった。
「大国主と仲のいい、ウサギに怪我をさせたなんて……」
「まぁあのへたれ、五月蝿いからな。ヘタレのくせに」
「でもスサノオの娘と結婚したへんな度胸だけは、あるのよ……」
「海翔許したなーよく」
「まぁ色々あったみたいです。姉上」
 白野威は、正直大国主もニギギもあまり、好きでは、ない。しかし色々あるのでそれを表だって公言は、していない。
「でウサギ丸焼きにする??」
 白野威の発言に羽月の手伝いをしているウサギ達は、顔を青ざめていた。
「姉上」
「ごめん」
「とりあえずモアに謝らしに行くことにします。それにいい実験もできるだろうし……」
 白野威と羽月は、こういうとき配下は、姉妹だと思うことがある。それは、よからぬことをたくらんでいる時の顔だ。姉妹揃ってそっくりなのだ。
 白野威は、モアには、そういえば、とんでもないダークホースがあったと思い出した。
「桃の枝……」
「神相手にどれだけやれるのか知れる機会ですしね」
 羽月は、なにを考えているのか、白野威は、顔をひきつりながら、いった。
「羽月こわ」
「フフフフ。高天ヶ原の神をあまく見ないでもらいたいですもの」
「ひえー」
 ツクヨミは、怒らせない方がいい。白野威は、そう思いながら、あるものを羽月に渡した。
「姉上が訪ねてきた理由は、これでしたか……」
「そう。ちょっとした調査」
 紙には、モアの好きなところか、かっているところを教えてと書かれていた。
 羽月は、しばらく考える。
「このウサギ美味しそうだよねぇー」
「姉上暇だからってウサギを食べようとしないでください」
 しばらく考えていると暇だからと白野威がウサギの首を手でつかみ恐ろしいことを言い出した。
「モアのかっているところは、とりあえずあの好奇心と探求心です」
 羽月は、そういうと、白野威は、ウサギを離し、彼女の方に体を向けた。
「ほう」
「とんちんかんなものをよく開発してますが、大本としては、少しでも、現状改善ですし、なによりあの好奇心があるから、色々作れるんですから」
「でもその好奇心が凄まじい事件を勃発させてるけど」
 羽月は、咳払いするといった。
「その事は、一先ずおいときます」
「おいとくんかーい!!」
 羽月は、更に理由をのべようとしたとき、どこからか桃の枝が落ちてきた。
 白野威と羽月は、顔を青ざめると、桃の枝は、空気を読み、踊り出した、フラメンコを。
「なんでフラメンコ!!??」
「空気を明るくするためにかとー!!!」
 しかし五月蝿い。白野威は、桃の枝を掴むと窓のそとにぶん投げた。
「よし!! 静かになった!!」
「……姉上……あっちの方角……天照の神殿が……」
 白野威は、真顔になると次第に顔を青ざめた。
「……ヤバくね??」
「ヤバイです」
 しばらくして、天照の神殿のほうから神々の悲鳴と警告音のサイレン、そして爆発音が聞こえてきた。
「羽月!!」
「私は、しりません」
「私も知らないよ!!??」
 無責任な三貴神の二柱は、聞こえてくる悲鳴に思わず笑った。
「そういえば」
「私らもあんなことしたなぁー」
「ねぇ!! モアといると、本当に楽しいんです」
「騒動を巻き起こすから??」
「はい!! それにふんぞりかえってる神々には、いいお灸になりますしね??」
 あとでオモヒカネから苦情が来そうだなと白野威は、思いながらも頷いた。
「確かに」
 見た目は、おしとやかで神々しい羽月だが、その性格は、とても面白いことが大好きな元気でおてんばだ。
 羽月にとってモアは、日常に面白さや驚きをもたらす存在らしい。
 楽しげに笑う羽月に白野威は、目を細める。妹が楽しいのならまぁいいかと思いながら。
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