光明ノ神子
幼い頃から見ていたもの。ユニは、その光景をはじめは、怖いとおもっていた。
成長し彼女は、理解した。この未来をかえなければと。
「白野威さんお願いします」
学校の屋上。昼休憩にここに来て正解だ。
友美は、今用事で校長室にいっている。ならここに居るはずと思い足を運んだら居た。白銀の狼が。
白野威は、頭を下げるユニを見下ろしながら聞いた。
「なにがさ」
「……ご存知だと思いますが……私の一族には……」
「呪いがあるって」
やはり白野威は、知っていた。ユニは、なんとなく、白野威が凄い神だと感じていたが、その正体をようやくここ最近知った。
友人が黄泉に連れ去られた事件。黄泉にて対抗できる力を持つ神。そうすべての命が生きるのに不可欠な太陽を神天照だと。
「天照大御神お願いします。私にチャンスをください」
白野威は、気にくわない顔をしていたが、少し驚いた。
「へぇーそうくるとは」
ニヤリと笑うと白野威は、続けた。
「てっきり呪いを消してくれと言うと思った」
ユニは、真剣な眼差しで白野威を見上げる。
「それでは、意味がありません。そもそも呪いの始まりは、私なんですから」
ユニは、すでに認めていた。己の罪を。
「私は、この因縁を切らないといけない。ですが、八咫烏では、それは……」
「難しいね。だから、関係ある神じゃないとって」
「はい。私のこの魂に刻まれている力でなければ」
まさかこの娘は、その力を使い自らのやり方で切ろうとしているのだろうか。そのようなおごりがあるのなら今すぐにこの話は、切ろう。
白野威がそう思ったとき、ユニは、言った。
「天照大御神あなたのやり方でお願いします。この呪いを解くためにお力添えを」
白野威は、満足げに微笑む。
「よく言った。なら手伝ってやる」
白野威は、高いところから降りるとユニの前に座った。
「天照大御神……」
「あと白野威だから!! 間違ってないが、あまり天照って呼ぶな」
ユニは、頷くと、白野威は、溜め息をつき、言った。
「でだ説得するき??」
「はい」
「会えないのに??」
「だから先ずは、白野威様のところに来ました」
筋のとおしかたも知っているようだ。
白野威は、ならと話をした。
「なら高天ヶ原への通行手形を出す」
「それは……」
「ユニの魂の一部は、高天ヶ原に入れないんだ。あの事件のあと修羅とかした巫女は、入れられないと、高天ヶ原の奴らが通行禁止にしたらしい」
そこまでしなくてもいいのにと白野威は、思うがそれをやるのが高天ヶ原の連中だ。
「だから私が一時的に許可を出す。なら入れるからね。でもこれも一回限りの切符だ。しっかり説得してきな。あの二柱どちらか欠けても今回の件は、いけないからね」
白野威は、切ない顔をすると、ユニもまた悲しげな顔に。
「はい……それに謝らなくては、いけません……私は……」
ユニが自らの過去を認め悔いているのならあの神も力を貸してくれるだろう。
「そこから先は、あいつにいってあげな。あぁみえて、けっこう引きずるからね」
「そうですね」
ユニは、微笑むと、白野威から手形を受け取った。
「白野威様では、行って来ます」
「事は、今日動くからね。明け方までには、帰ってきな。でなければ、相殺の呪いが全て食い尽くす」
ユニは、頷くと、手形を使い扉を開いた。
「白野威様……」
「その気持ちは、大切にしな」
ユニは、頷くと、踏み出す。過去の罪を償うため、そして謝れなかった友達に謝りに行くために。
通路を抜けると広がっていたのは、豊かな緑の庭だった。
清らかな空気に包まれた日本庭園と小さな囲炉裏。
ユニは、深呼吸すると、中にはいった。
「こんにちは」
挨拶をすると、囲炉裏の中から金髪の女の子がでてきた。
女の子は、驚いた顔をすると踵を返そうとしたので、ユニは、慌てていった。
「蓮ごめんなさい!!」
蓮と呼ばれた女の子は、切ない顔をするといった。
「謝るのは、私のほう……」
ユニは、蓮に近寄ると彼女を抱き締めた。
「そんなことない。蓮は、私を止めようとしてくれたのに……私は、呪いによって修羅に自ら落ちた……」
当世では、ユニには、人として生きてほしい。自分に関わればまた同じ過ちをしてしまうと、蓮は、思っていた。
なのにユニは、自ら会いに来てくれた。そして謝罪まで。
蓮の頬から涙が流れる。
「ユニ……私達友達ですか……??」
「蓮がそれでもいいなら」
蓮は、嬉しそうに微笑むと、彼女の体は、光りに包まれた。
「ならやることは、一つでーす!!」
猫になった蓮は、ユニの肩に乗る。
「ユニ神子になってください!!」
「神子って……」
「私の遣いです!!」
ユニは、驚いた顔をしたが、すぐにいった。
「お願いします。蓮力を貸して!!」
「もちろん!!」
蓮が待っていてくれたからこそ、すんなりと話が進んだが問題は、この後だ。
「蓮その……神子になるには、何かしなくては……」
「なにもないですよー??」
ユニは、おもわずポカーンとしてしまった。
「えっ!!??」
「初めてならともかく、ユニは、違いまーす。だから私がこうして触れて、魂の鍵を開けたのでこれで終わりでーす!!」
「あっさり過ぎませんか!?」
「あっさりでいいのです!! それに時間がおしい」
蓮が鋭い光を瞳に宿すなか、ユニは、息を飲んだ。
そうまだ気は、抜けない。
ユニは、行かなくてはと蓮の案内のもと、高天ヶ原の大地を走った。しばらく走り、やって来たのは、尊厳な門構えの屋敷だった。
ユニは、覚悟をし、屋敷の中にはいった。
「失礼します」
蓮より冷たい力の気配に身がすくむがわユニは、足を前に進めた。
美しい庭園を抜けたおくに彼は、座っていた。ユニを見据えるように。
「白野威様がここへ来るようにいったか」
「いえ。私の意志出来ました」
ユニは、冬の神を見据え言うと、彼は、立ち上がり、奥から出てきた。
「始まりの娘。本当にまたその道を歩むのか」
どことなく心配そうな冬の神に蓮は、言った。
「氷雪素直になったらどうなんですか!!」
「蓮……」
「ソーマの実情を知ってからそわそわしてるくせに!!」
蓮は、氷雪の前にやってくるとさらに言った。
「カッコ悪いと友美に嫌われますよー??」
氷雪があきらかにショックを受けている。
肩を落とす氷雪にユニは、苦笑いを浮かべる。
「たぶんソーマも氷雪様の力が必要だと思います。それに彼は、いきることを諦めてません」
氷雪は、目を伏せる。
「あいつは何時もそうだな」
「氷雪様……」
「分かった。とりあえずついては、いく。だがどうするから、ソーマ次第だ」
氷雪も説得でき、ユニは、ほっと胸を撫で下ろすが、すぐにまだその時では、ないと、思った。
「行くぞ」
「はい」
ユニは、決意を秘めた瞳で頷くと、歩きだした。帰れば更なる戦いが始まるのだから。
日が暮れ、友美は、苦しそうに眠るソーマを見ていた。
やはり予想どうり、夜のなるとなかの狐の力が増し封印が更に弱くなっている。
「相殺の呪いのお陰で……命も削られてるし……」
友美に出来る事は、確かにある。だがそれでは、意味がない。今回は。
「……ソーマにさせる必要があるから」
友美ならば中に入り、狐を倒すことなどぞうさもない。だが今回は、それでは、意味がない。
ソーマの肉体も魂も疲弊しきっている。狐をどうにかしたところで、たぶん彼は、死ぬ。助かる道は、皮肉にも恋人が取った方法のみ。
「光のように死ぬ一歩手前まで行かないでよね……」
光の場合は、運が良かっただけ。
友美は、溜め息をつくと、勇音が部屋に入ってきた。
「友美これをソーマに」
「ありがとう」
勇音が持ってきたのは、薬だった。これには、九尾の力を少しは、弱める働きがある。
友美は、ソーマの口に薬をいれると、飲ませた。
「少し落ち着いたかな??」
「薬もあくまでも一時しのぎ……朝方までに決着をつけないと……」
「私達の仕事が増えるってね。明日学校だから困るんだけどー」
「俺もレポートか……」
光が疲労困憊といった感じで、部屋にやってきた。
「レポート終わった??」
「まだ!! とりあえず……明日大学爆発しないかな……」
「それは、無理ですよ。光さん……」
光は、肩を落とすと、またレポートをしに部屋をでていった。
「友美も休んでください」
「勇音大丈夫??」
「見張るくらいなら。それに狐を惑わせることも私なら出来ますから」
友美は、頷くと、勇音にまかせ、部屋をでた。
「この声は……」
そして声のするほうに向かうとユニが戻ってきていた。蓮と氷雪をつれて。
「友美」
「ユニ頑張って」
ユニは、瞳を揺らすと目を伏せた。友美は、信じてくれている。ならやることは、一つだ。
「友美扉を開けましょう」
友美は、頷くが、奥から嘘だろと声が聞こえた。
「レポートが!!!」
「光諦めて」
「諦められか!! もういいこうなったらとっととやっておわらす!!」
すでに疲労がおかしなことになっている光だがまだ元気そうだ。
「ユニ」
「お母さん」
アリアは、頷くと、ユニは、微笑みいう。
「行って来ます」
ユニは、その後そのまま、友美と光そして蓮と共に、扉の前までやってきた。
「あの……」
「勇音は、ソーマのほうが適任だから」
「扉の維持なら俺と友美でなんとかなる」
ユニは、頷くと、扉の前に足を踏み出した。
足元の陣が輝きだし、ユニは、蓮と顔を見合わすと、扉の鍵を開けた。
扉が開かれたとたん禍々し気配が辺りに立ち込めるが、友美と光が力を陣に注ぐことにより、強い結界が出来ていた。
「ユニ必ずあって!! あの神に!!」
ユニは、頷くと、扉の中に。そして静かに扉は、閉まり、こうしてユニの戦いは、始まった。
暗い闇の中は、悲しくそして寂しい空気で満ちしていた。
この感覚私は、知っている。
蓮も悲しげなおをしており、ユニは、安心さすように蓮に微笑みかけた。
「大丈夫」
「ユニ」
ユニは、そのまま闇を突き進むと、不思議な陣があった。
その上にのり、力らを注ぐと悲しげな女性が姿を見せた。
血に染まった体と赤い瞳。間違いなく自分だ。
「……私ヲ消シニキタノカ」
ユニに飛びかかるように女性は、来ると、ユニの首を絞める。
「ユニ!!」
蓮が女性を消そうとしたとき、ユニは、蓮にやめるように念じた。
なぜこいつは、苦しまないのか。女性は、困惑していた。
「……貴女は、認めたようですね」
凛とした女性の声が聞こえたとたん目の前の女性の姿は、消えた。
「神産巣日神」
ユニは、とうとうでてきたと思ったとき、神産巣日神もまた同じことを思っていた。とうとうこの日が来たと。
「私は、これを捨てた……でも貴女は、それを拾い上げ認めた……これが代償の終わり……」
「はい。私で終わりにします」
神巣産日神は、なにかいいたげだったが、今は、いいと姿を消した。
「空間ノ神子よ。はやく行きなさい。同じ過ちを犯さないためにも」
陣の輝きが消えたとに全て終わったのだとユニは、悟った。
急いで来た道を戻ると、友美と光が外で待っていた。
「レポート出来る!!」
「光いきなりそれは、失礼」
友美は、ユニをみて安心した顔をした。
「ユニよかった。後は、彼しだいよ」
「はい。ですが私に出来ることがありますかからそれをやります」
「そうね」
友美も頷くと、そのまま三人は、家に戻った。
呪いの気配が消え、勇音は、全て終わったのだと少しほっとした。しかし目の前の戦いは、これからだ。
「秘術……夢花……」
勇音の手には、美しい花があらわれ、それを勇音は、ソーマの頭の上におくと、花は、消えた。
勇音は、目を瞑ると潜った彼の深層心理に。
目の開けると必死に狐に抗うソーマがいた。
九尾は、ソーマの捕まえようと必死だ。狐にとって彼を消せばここからでれるのだから。
「許サン!! ヨクモ!!」
ソーマに九尾の鋭い爪が刺さろうとしたとき、勇音が間に入り、九尾に毒霧吹き掛けた。
「あんたは……」
「私は、霞ノ神子です」
勇音は、短く名乗ると、ソーマを少しはなれた所へ運んだ。
「狐は……」
「一時的な足止めです。あいつを叩くには、貴方が殺らなければならない」
勇音も本気を出せば、倒せるがそれでは、意味がない。
友美にいわれたことを思い出しなら、勇音は、続けた。
「その魂に刻まれた記憶と力を解き放って!!」
「……」
ソーマは、目を伏せる。そうしたいがやり方が分からない。
どうすればいいのかと思ったとき、目の前に男が立っていた。
「氷雪……」
ソーマは、驚いた。男のなが自分の口から出てきたからだ。
氷雪もまた驚いた顔をしていた。
「……全てを差し出せと言ってもおまえは、また俺の手を取るのか??」
深い記憶。ソーマは、そういえばそんなこともあったなと思った。
ソーマは、ニヤリと笑うという。
「いわない。それをいうと氷雪が怒るからな」
ソーマは、立ち上がるといった。
「だが俺は、生きたい。力を貸してほしい」
氷雪は、満足げに微笑むと、ソーマの頭を撫でる。そのとたんにソーマの中でなにかカチッと音をたて開いた。
「さぁゆけ」
ソーマは、頷くと、なにかを唱えた。そのとたん彼の手には、大太刀が。
懐かしいこの感覚。ソーマは、慣れた手付きで大太刀を構えると、姿勢を低くし、地面を蹴った。
襲ってくる九尾の爪を太刀で突き止めその隙に、氷柱で九尾のからだ。いぬいた。
九尾は、氷ずけになり、そのまま砕け散った。
「感覚で使えるものだな」
「それは、ソーマが感覚で覚えていたからだ」
「氷雪ありがとう」
氷雪は、微笑むと告げた。
「先程のでソーマは、俺の遣いとなった。今後ともよろしく頼むぞ」
ソーマは、頷くと、氷雪は、満足そうに消えた。
「えっ!? 神子の契約ってこんなにあっさりでした!?」
勇音は、自分のときのことを思い出したが、確かにあっさりしていた。
「まぁいいだろ」
「ですね……改めまして私は、蜂須賀勇音です……」
「俺は、ソーマだ」
「よろしくお願いいたします……」
勇音は、そういうと頭を下げ、消えた。
本当に不思議な事が起こった。しかしソーマにとっては、普通の事といえる。
氷雪のお陰で、前世の記憶がはっきりと思い出せた。
「……今度は、神子か……まぁいい。氷雪といられるなら」
ソーマは、1人そう呟くと目を閉じた。色々思いに更けながら。
翌朝朝日と共に目を覚ますとソーマは、体を起こした。
重かった体は、軽くなり、代わりに懐かしい力が満ちている。
布団から抜け廊下にでる。そして家のなかを歩くといまにユニが寝ていた。
「……」
ソーマは、優しい眼差しでユニを見ると彼女のそばにいき、言った。
「ありがとう」
今回助かったのは、ユニ、アリアそして他の神子達のお陰だ。
「あの……」
「すまない。起こしたか……」
「はい……」
「改めてだが今日から世話になるから、よろしく頼む」
ユニは、眠たい顔をしていたが、ソーマの言葉で頭が起きた。
「はい!?」
「だから居候するからよろしく」
ユニは、まさかソーマと同じ家にすむなんてと顔を真っ赤にし思った。
ソーマは、そんなユニを見て思う。お互い恋人でもないのにどうしてかと。
あわあわするユニと不思議そうに首をかしげるソーマ。そんな様子を離れていたところから見ていた友美と勇音は、苦笑いを浮かべていた。
「こりゃまた前途多難」
「ですね……」
そんな二人の後ろで光は、レポートができたとニヤニヤしており、こちらもまた大変なことになっている。
「友美これから更に賑やかですね!!」
「だね勇音」
友美は、微笑むとほっとした顔をしているアリアのほうを見た。彼女にとっても重荷が降りた瞬間といえる。
この家は、これから幸せになる。友美は、そう思いながら、微笑むとこれからの楽しい出来事に想いを馳せたのであった。
新たな神子二人と紡ぐ想い出を。
成長し彼女は、理解した。この未来をかえなければと。
「白野威さんお願いします」
学校の屋上。昼休憩にここに来て正解だ。
友美は、今用事で校長室にいっている。ならここに居るはずと思い足を運んだら居た。白銀の狼が。
白野威は、頭を下げるユニを見下ろしながら聞いた。
「なにがさ」
「……ご存知だと思いますが……私の一族には……」
「呪いがあるって」
やはり白野威は、知っていた。ユニは、なんとなく、白野威が凄い神だと感じていたが、その正体をようやくここ最近知った。
友人が黄泉に連れ去られた事件。黄泉にて対抗できる力を持つ神。そうすべての命が生きるのに不可欠な太陽を神天照だと。
「天照大御神お願いします。私にチャンスをください」
白野威は、気にくわない顔をしていたが、少し驚いた。
「へぇーそうくるとは」
ニヤリと笑うと白野威は、続けた。
「てっきり呪いを消してくれと言うと思った」
ユニは、真剣な眼差しで白野威を見上げる。
「それでは、意味がありません。そもそも呪いの始まりは、私なんですから」
ユニは、すでに認めていた。己の罪を。
「私は、この因縁を切らないといけない。ですが、八咫烏では、それは……」
「難しいね。だから、関係ある神じゃないとって」
「はい。私のこの魂に刻まれている力でなければ」
まさかこの娘は、その力を使い自らのやり方で切ろうとしているのだろうか。そのようなおごりがあるのなら今すぐにこの話は、切ろう。
白野威がそう思ったとき、ユニは、言った。
「天照大御神あなたのやり方でお願いします。この呪いを解くためにお力添えを」
白野威は、満足げに微笑む。
「よく言った。なら手伝ってやる」
白野威は、高いところから降りるとユニの前に座った。
「天照大御神……」
「あと白野威だから!! 間違ってないが、あまり天照って呼ぶな」
ユニは、頷くと、白野威は、溜め息をつき、言った。
「でだ説得するき??」
「はい」
「会えないのに??」
「だから先ずは、白野威様のところに来ました」
筋のとおしかたも知っているようだ。
白野威は、ならと話をした。
「なら高天ヶ原への通行手形を出す」
「それは……」
「ユニの魂の一部は、高天ヶ原に入れないんだ。あの事件のあと修羅とかした巫女は、入れられないと、高天ヶ原の奴らが通行禁止にしたらしい」
そこまでしなくてもいいのにと白野威は、思うがそれをやるのが高天ヶ原の連中だ。
「だから私が一時的に許可を出す。なら入れるからね。でもこれも一回限りの切符だ。しっかり説得してきな。あの二柱どちらか欠けても今回の件は、いけないからね」
白野威は、切ない顔をすると、ユニもまた悲しげな顔に。
「はい……それに謝らなくては、いけません……私は……」
ユニが自らの過去を認め悔いているのならあの神も力を貸してくれるだろう。
「そこから先は、あいつにいってあげな。あぁみえて、けっこう引きずるからね」
「そうですね」
ユニは、微笑むと、白野威から手形を受け取った。
「白野威様では、行って来ます」
「事は、今日動くからね。明け方までには、帰ってきな。でなければ、相殺の呪いが全て食い尽くす」
ユニは、頷くと、手形を使い扉を開いた。
「白野威様……」
「その気持ちは、大切にしな」
ユニは、頷くと、踏み出す。過去の罪を償うため、そして謝れなかった友達に謝りに行くために。
通路を抜けると広がっていたのは、豊かな緑の庭だった。
清らかな空気に包まれた日本庭園と小さな囲炉裏。
ユニは、深呼吸すると、中にはいった。
「こんにちは」
挨拶をすると、囲炉裏の中から金髪の女の子がでてきた。
女の子は、驚いた顔をすると踵を返そうとしたので、ユニは、慌てていった。
「蓮ごめんなさい!!」
蓮と呼ばれた女の子は、切ない顔をするといった。
「謝るのは、私のほう……」
ユニは、蓮に近寄ると彼女を抱き締めた。
「そんなことない。蓮は、私を止めようとしてくれたのに……私は、呪いによって修羅に自ら落ちた……」
当世では、ユニには、人として生きてほしい。自分に関わればまた同じ過ちをしてしまうと、蓮は、思っていた。
なのにユニは、自ら会いに来てくれた。そして謝罪まで。
蓮の頬から涙が流れる。
「ユニ……私達友達ですか……??」
「蓮がそれでもいいなら」
蓮は、嬉しそうに微笑むと、彼女の体は、光りに包まれた。
「ならやることは、一つでーす!!」
猫になった蓮は、ユニの肩に乗る。
「ユニ神子になってください!!」
「神子って……」
「私の遣いです!!」
ユニは、驚いた顔をしたが、すぐにいった。
「お願いします。蓮力を貸して!!」
「もちろん!!」
蓮が待っていてくれたからこそ、すんなりと話が進んだが問題は、この後だ。
「蓮その……神子になるには、何かしなくては……」
「なにもないですよー??」
ユニは、おもわずポカーンとしてしまった。
「えっ!!??」
「初めてならともかく、ユニは、違いまーす。だから私がこうして触れて、魂の鍵を開けたのでこれで終わりでーす!!」
「あっさり過ぎませんか!?」
「あっさりでいいのです!! それに時間がおしい」
蓮が鋭い光を瞳に宿すなか、ユニは、息を飲んだ。
そうまだ気は、抜けない。
ユニは、行かなくてはと蓮の案内のもと、高天ヶ原の大地を走った。しばらく走り、やって来たのは、尊厳な門構えの屋敷だった。
ユニは、覚悟をし、屋敷の中にはいった。
「失礼します」
蓮より冷たい力の気配に身がすくむがわユニは、足を前に進めた。
美しい庭園を抜けたおくに彼は、座っていた。ユニを見据えるように。
「白野威様がここへ来るようにいったか」
「いえ。私の意志出来ました」
ユニは、冬の神を見据え言うと、彼は、立ち上がり、奥から出てきた。
「始まりの娘。本当にまたその道を歩むのか」
どことなく心配そうな冬の神に蓮は、言った。
「氷雪素直になったらどうなんですか!!」
「蓮……」
「ソーマの実情を知ってからそわそわしてるくせに!!」
蓮は、氷雪の前にやってくるとさらに言った。
「カッコ悪いと友美に嫌われますよー??」
氷雪があきらかにショックを受けている。
肩を落とす氷雪にユニは、苦笑いを浮かべる。
「たぶんソーマも氷雪様の力が必要だと思います。それに彼は、いきることを諦めてません」
氷雪は、目を伏せる。
「あいつは何時もそうだな」
「氷雪様……」
「分かった。とりあえずついては、いく。だがどうするから、ソーマ次第だ」
氷雪も説得でき、ユニは、ほっと胸を撫で下ろすが、すぐにまだその時では、ないと、思った。
「行くぞ」
「はい」
ユニは、決意を秘めた瞳で頷くと、歩きだした。帰れば更なる戦いが始まるのだから。
日が暮れ、友美は、苦しそうに眠るソーマを見ていた。
やはり予想どうり、夜のなるとなかの狐の力が増し封印が更に弱くなっている。
「相殺の呪いのお陰で……命も削られてるし……」
友美に出来る事は、確かにある。だがそれでは、意味がない。今回は。
「……ソーマにさせる必要があるから」
友美ならば中に入り、狐を倒すことなどぞうさもない。だが今回は、それでは、意味がない。
ソーマの肉体も魂も疲弊しきっている。狐をどうにかしたところで、たぶん彼は、死ぬ。助かる道は、皮肉にも恋人が取った方法のみ。
「光のように死ぬ一歩手前まで行かないでよね……」
光の場合は、運が良かっただけ。
友美は、溜め息をつくと、勇音が部屋に入ってきた。
「友美これをソーマに」
「ありがとう」
勇音が持ってきたのは、薬だった。これには、九尾の力を少しは、弱める働きがある。
友美は、ソーマの口に薬をいれると、飲ませた。
「少し落ち着いたかな??」
「薬もあくまでも一時しのぎ……朝方までに決着をつけないと……」
「私達の仕事が増えるってね。明日学校だから困るんだけどー」
「俺もレポートか……」
光が疲労困憊といった感じで、部屋にやってきた。
「レポート終わった??」
「まだ!! とりあえず……明日大学爆発しないかな……」
「それは、無理ですよ。光さん……」
光は、肩を落とすと、またレポートをしに部屋をでていった。
「友美も休んでください」
「勇音大丈夫??」
「見張るくらいなら。それに狐を惑わせることも私なら出来ますから」
友美は、頷くと、勇音にまかせ、部屋をでた。
「この声は……」
そして声のするほうに向かうとユニが戻ってきていた。蓮と氷雪をつれて。
「友美」
「ユニ頑張って」
ユニは、瞳を揺らすと目を伏せた。友美は、信じてくれている。ならやることは、一つだ。
「友美扉を開けましょう」
友美は、頷くが、奥から嘘だろと声が聞こえた。
「レポートが!!!」
「光諦めて」
「諦められか!! もういいこうなったらとっととやっておわらす!!」
すでに疲労がおかしなことになっている光だがまだ元気そうだ。
「ユニ」
「お母さん」
アリアは、頷くと、ユニは、微笑みいう。
「行って来ます」
ユニは、その後そのまま、友美と光そして蓮と共に、扉の前までやってきた。
「あの……」
「勇音は、ソーマのほうが適任だから」
「扉の維持なら俺と友美でなんとかなる」
ユニは、頷くと、扉の前に足を踏み出した。
足元の陣が輝きだし、ユニは、蓮と顔を見合わすと、扉の鍵を開けた。
扉が開かれたとたん禍々し気配が辺りに立ち込めるが、友美と光が力を陣に注ぐことにより、強い結界が出来ていた。
「ユニ必ずあって!! あの神に!!」
ユニは、頷くと、扉の中に。そして静かに扉は、閉まり、こうしてユニの戦いは、始まった。
暗い闇の中は、悲しくそして寂しい空気で満ちしていた。
この感覚私は、知っている。
蓮も悲しげなおをしており、ユニは、安心さすように蓮に微笑みかけた。
「大丈夫」
「ユニ」
ユニは、そのまま闇を突き進むと、不思議な陣があった。
その上にのり、力らを注ぐと悲しげな女性が姿を見せた。
血に染まった体と赤い瞳。間違いなく自分だ。
「……私ヲ消シニキタノカ」
ユニに飛びかかるように女性は、来ると、ユニの首を絞める。
「ユニ!!」
蓮が女性を消そうとしたとき、ユニは、蓮にやめるように念じた。
なぜこいつは、苦しまないのか。女性は、困惑していた。
「……貴女は、認めたようですね」
凛とした女性の声が聞こえたとたん目の前の女性の姿は、消えた。
「神産巣日神」
ユニは、とうとうでてきたと思ったとき、神産巣日神もまた同じことを思っていた。とうとうこの日が来たと。
「私は、これを捨てた……でも貴女は、それを拾い上げ認めた……これが代償の終わり……」
「はい。私で終わりにします」
神巣産日神は、なにかいいたげだったが、今は、いいと姿を消した。
「空間ノ神子よ。はやく行きなさい。同じ過ちを犯さないためにも」
陣の輝きが消えたとに全て終わったのだとユニは、悟った。
急いで来た道を戻ると、友美と光が外で待っていた。
「レポート出来る!!」
「光いきなりそれは、失礼」
友美は、ユニをみて安心した顔をした。
「ユニよかった。後は、彼しだいよ」
「はい。ですが私に出来ることがありますかからそれをやります」
「そうね」
友美も頷くと、そのまま三人は、家に戻った。
呪いの気配が消え、勇音は、全て終わったのだと少しほっとした。しかし目の前の戦いは、これからだ。
「秘術……夢花……」
勇音の手には、美しい花があらわれ、それを勇音は、ソーマの頭の上におくと、花は、消えた。
勇音は、目を瞑ると潜った彼の深層心理に。
目の開けると必死に狐に抗うソーマがいた。
九尾は、ソーマの捕まえようと必死だ。狐にとって彼を消せばここからでれるのだから。
「許サン!! ヨクモ!!」
ソーマに九尾の鋭い爪が刺さろうとしたとき、勇音が間に入り、九尾に毒霧吹き掛けた。
「あんたは……」
「私は、霞ノ神子です」
勇音は、短く名乗ると、ソーマを少しはなれた所へ運んだ。
「狐は……」
「一時的な足止めです。あいつを叩くには、貴方が殺らなければならない」
勇音も本気を出せば、倒せるがそれでは、意味がない。
友美にいわれたことを思い出しなら、勇音は、続けた。
「その魂に刻まれた記憶と力を解き放って!!」
「……」
ソーマは、目を伏せる。そうしたいがやり方が分からない。
どうすればいいのかと思ったとき、目の前に男が立っていた。
「氷雪……」
ソーマは、驚いた。男のなが自分の口から出てきたからだ。
氷雪もまた驚いた顔をしていた。
「……全てを差し出せと言ってもおまえは、また俺の手を取るのか??」
深い記憶。ソーマは、そういえばそんなこともあったなと思った。
ソーマは、ニヤリと笑うという。
「いわない。それをいうと氷雪が怒るからな」
ソーマは、立ち上がるといった。
「だが俺は、生きたい。力を貸してほしい」
氷雪は、満足げに微笑むと、ソーマの頭を撫でる。そのとたんにソーマの中でなにかカチッと音をたて開いた。
「さぁゆけ」
ソーマは、頷くと、なにかを唱えた。そのとたん彼の手には、大太刀が。
懐かしいこの感覚。ソーマは、慣れた手付きで大太刀を構えると、姿勢を低くし、地面を蹴った。
襲ってくる九尾の爪を太刀で突き止めその隙に、氷柱で九尾のからだ。いぬいた。
九尾は、氷ずけになり、そのまま砕け散った。
「感覚で使えるものだな」
「それは、ソーマが感覚で覚えていたからだ」
「氷雪ありがとう」
氷雪は、微笑むと告げた。
「先程のでソーマは、俺の遣いとなった。今後ともよろしく頼むぞ」
ソーマは、頷くと、氷雪は、満足そうに消えた。
「えっ!? 神子の契約ってこんなにあっさりでした!?」
勇音は、自分のときのことを思い出したが、確かにあっさりしていた。
「まぁいいだろ」
「ですね……改めまして私は、蜂須賀勇音です……」
「俺は、ソーマだ」
「よろしくお願いいたします……」
勇音は、そういうと頭を下げ、消えた。
本当に不思議な事が起こった。しかしソーマにとっては、普通の事といえる。
氷雪のお陰で、前世の記憶がはっきりと思い出せた。
「……今度は、神子か……まぁいい。氷雪といられるなら」
ソーマは、1人そう呟くと目を閉じた。色々思いに更けながら。
翌朝朝日と共に目を覚ますとソーマは、体を起こした。
重かった体は、軽くなり、代わりに懐かしい力が満ちている。
布団から抜け廊下にでる。そして家のなかを歩くといまにユニが寝ていた。
「……」
ソーマは、優しい眼差しでユニを見ると彼女のそばにいき、言った。
「ありがとう」
今回助かったのは、ユニ、アリアそして他の神子達のお陰だ。
「あの……」
「すまない。起こしたか……」
「はい……」
「改めてだが今日から世話になるから、よろしく頼む」
ユニは、眠たい顔をしていたが、ソーマの言葉で頭が起きた。
「はい!?」
「だから居候するからよろしく」
ユニは、まさかソーマと同じ家にすむなんてと顔を真っ赤にし思った。
ソーマは、そんなユニを見て思う。お互い恋人でもないのにどうしてかと。
あわあわするユニと不思議そうに首をかしげるソーマ。そんな様子を離れていたところから見ていた友美と勇音は、苦笑いを浮かべていた。
「こりゃまた前途多難」
「ですね……」
そんな二人の後ろで光は、レポートができたとニヤニヤしており、こちらもまた大変なことになっている。
「友美これから更に賑やかですね!!」
「だね勇音」
友美は、微笑むとほっとした顔をしているアリアのほうを見た。彼女にとっても重荷が降りた瞬間といえる。
この家は、これから幸せになる。友美は、そう思いながら、微笑むとこれからの楽しい出来事に想いを馳せたのであった。
新たな神子二人と紡ぐ想い出を。