光明ノ神子

 光は、顔を青ざめていた。
 本日は、ひな祭りだ。それは、いいとしてなぜこんなことになってしまったのか。
「総理大臣賞がー!!!!!」
「光そこ!?」
 隣で呆れる友美の事すら、突っ込む余裕がない。 
 目の前には、楽しげに動く雛人形達と、二胡を弾く柊麗が。
「お父さん気づいたときには、これ」
 困った顔をした榎麟は、ひなあられを食べながら言った。
「榎麟そのひなあられ……」
「おひなさんに要らん言われた」
「あらま」
 どうやら雛人形たちは、今踊りたいようだ。
「柊麗頼むから壊さないでくれ!!! それママの大切な雛人形だから!!!!」
「分かってるわ!! パパ!!」
 ならなぜ、動かし始めたのか。光は、そう思いながら、不安そうな顔をしていた。
「とりあえず甘酒持ってくるわ」
「なんでとりあえず!!??」
「こうなったら楽しまないと。とりあえず光は、ここで監視よろしく」
 友美は、そういうと、榎麟をつれ、和室を出ていった。
 残された光は、とりあえず部屋のすみに移動した。
 柊麗が楽しそうにしているのを見て、まぁいいかと思いつつも、光は、複雑そうな顔をしていた。
「パパ大丈夫!!」
「柊麗の大丈夫ほどあてにならないものは、ないよ」
 柊麗は、ほほを膨らますが、色々ぜんかもあるのは、事実だ。
 友美と榎麟が戻ってきた。
「さぁ甘酒飲みましょう!!」 
 友美は、そういうと、甘酒を入れた盃の乗ったお盆を畳の上に置くと、雛人形たちが、甘酒を飲み始めた。
「お母さんほんまにいける??」
「大丈夫よ」
 小声ではなす友美と榎麟に光は、首をかしげながら、様子を見ていると、しばらくして、柊麗の気も済んだ頃には、雛人形たちは、笑顔のまま動かなくなっていた。
「あれ??」
「作戦成功!!」
「お姉ちゃん何かしたの??」
「したのは、私よ柊麗」
 友美は、雛人形達をもとの場所に戻し言う。
「ママが??」
「甘酒に術をとく、術を仕込んでいたの」
 柊麗は、驚いた顔をすると友美の所へ。
「ママスゴイ!! 教えて!!」
「もちろん」
 友美が口頭で教えだし、柊麗は、慌ててメモをとると、そのまま和室を飛び出していった。
「友美いいのか??」
「いいのよ。簡単だし、なにかに使えるかもだしね」
 光も人形の片付けを手伝いながら言う。
「なにかに……」
「お父さんその心配は、分かる」
「そうか榎麟」
 やはり柊麗にふりまわされているからこそ、親子で思うところがあるのだろう。
「柊麗のあの性格誰に似たのかしら……」
「お母さんや」
「友美だな」
 親子揃って言わないでくれと友美は、思いつつやはりかと納得してしまった。
「あはは……」
「とりあえずお母さん今晩は、誕生日会やんな??」
「そうよ」
 桃の節句生まれの柊麗の誕生日は、いつも、ひな祭りと共にやっている。
 友美は、微笑み言うと、榎麟は、何か考える。
「お母さんその……」
 榎麟は、何か友美にはなすと、友美は、素敵な娘の考えに笑った。
「いいわね!!」
「お父さんもまぜて!!」
 寂しそうな光に友美は、呆れた顔をし、榎麟は、しかたがないと話をすると、光も笑った。
「それは、いいと思う」
「なら作成開始ね!!」
 その後友美と榎麟は、夜まであることをし、パーティーの時間になった。

 楽しいパーティーが始まり、プレゼントを贈る時間になった。
 柊麗は、緊張している姉にどうしたのかと少し心配になる。
「お姉ちゃん??」
「柊麗これ」
 差し出されたのは、二胡の楽譜だ。
「連奏しよ」
 柊麗は、瞳を煌めかした。
「お姉ちゃんありがとう!! やる!!」
 榎麟は、柊麗に二胡を渡すと、二人は、演奏を始めた。
 やはり柊麗は、うまい。小さい頃から好きで二胡を練習してきただけある。
 やはり付け焼き刃では、とうていかなわず、ついていくのがやっとだ。
 しかし自分からプレゼントにと選んだからには、最後までやらなければ。
 榎麟は、必死になり、演奏していると知らない間に終わっていた。
「お姉ちゃんありがとう!!」
 柊麗に抱きつかれ、榎麟は、ポカーンとしてしまった。
「連奏してみたかったから夢が叶ったわ!!」
「あんなんでよかったん??」
「お姉ちゃんうまいもん!! ママだと上手すぎて、連奏についていけないし……パパは、論外だもん!!」
「論外!? パパだって!!」
 地味に攻撃を加えられた、光に友美は、不憫に思いつつも制止にはいった。
「水さすな」
 普段より低い友美の声に光は、しょぼんとなる。
「ごめんなさい……」
「パパどんまい」
「お父さん撃沈」
 遊李からの励ましと、螢からの追撃に光は、なんとも言えない顔に。
「友美……最近パパあたり強くないか!? 子供達!!」
「平常運転よ」
「だよな……」
 子供達の楽しそうな様子を見ながら、友美と光は、話をしていると、螢の姿がない。
「ケーキ!!」
「螢お父さんが持っていくから!!」
 何時のまにやら、螢が冷蔵庫を開けていた。
 光は、慌ててキッチンにいくと、螢とケーキの準備を始めた。
「友美楽しそう」
「そりゃそうよ白野威」
 こうしてまた楽しいひな祭りと誕生日になった。本当に毎日の日々が愛おしく大切な日だ。
「こうしてまた幸せが増えるのね」
 友美は、そう呟くと笑った。目の前の光景を見ながら。楽しげにそしてどこか幸せそうに。大切な幸せに感謝をしながら。
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