光明ノ神子

 神子と契約式は、普段は、彼らの影の中にいることが多い。
 影の中には、式専用の世界が広がっているようだ。
 障子の隙間から差し込む朝日。やからかな光で彼女は、目を覚ました。
「おはよう!! よく眠れた??」
 朝から元気がよく鈴のような可憐な声に六花は、眠そうな顔をし布団からからだを起こした。
「おはよう……マリー」
 美しいプラチナブロンドの髪の娘は、微笑む。
「素敵な天気よ!! 六花!!」
「そうか……」
 六花にとって天気などどうでもいいことだ。彼女が生きていくことに必要なことでは、なかったからだ。
 しかしマリーにとっては、重要なようで、毎朝こうして天気の話をまずは、してくる。
「六花モーニングを食べましょう!!」
「もーにんぐ??」
 マリーは、はっとした顔をするとすぐに言い直した。
「朝餉よ!!」
「朝餉か……」
「そう!!」
 主にも言われた事がある。横文字が分からない子達もいるからよろしくと。
 六花の話し方から推測して横文字に馴染みがないと思いつつも検証をかね、マリーは、使った。
「着替えるから待っていてもらえるだろうか」
「もちろん!!」
 マリーは、襖を閉めると、呟いた。
「マスターが言っていたとおりね……」
 珍しく友美から連絡があったと思ったら、六花について、色々気にかけてあげてくれと言うお願いだった。
 その時に彼女の生い立ちを聞き、マリーは、思わず泣いてしまった。そして彼女の中にある世話焼きな性格に火が着いたのである。
「マスターからの頼みごとだもの……頑張るわ!!」
 障子の向こうからマリーの気合いのはいった声が聞こえ、六花は、少し困惑していた。 
 ここに来てから思うことは、主と契約をしている式神たちは、世話焼きが多すぎると。
 少し困っていると分かれば、分かりにくさ、分かりやすさの違いは、あれど、皆世話を焼いてくれるのだ。
「私に……そのような価値など……ないというのに……」
 着物に袖を通すと、六花は、ポツリと呟き、着替え終えると、障子を開けた。
「待たせてしまいすまない」
「いいのよ!! 今日も素敵な着物だわ!!」
「お褒めの言葉感謝する」
 マリーは、暖かな笑みを浮かべると、少し困り顔な六花。六花は、ゆっくりとここの生活に慣れればいい。 
 マリーは、そう思いながら、歩きだした。
「今日は、サンドイッチよ!!」
「さんどいっち??」
「えーとー東洋のおにぎりみたいな!!」
 まさかサンドイッチが通じないとは。
 マリーは、驚いた顔をしたが、そんなマリーをみて、六花は、申し訳なさそうな顔に。
「舶来の物に関して……私は、疎い……だから……」
「大丈夫!! 見れば分かるわ!! それに美味しいもの!!」
「美味しい……」
「そう!!」
「私にはたして分かるのだろうか」
 マリーは、更に驚いた顔したが、すぐに深刻な顔になる。
「マスターの言っていた通りね……」
「というと……」
「生活に関しても食に関しては、まったくの興味無し!! あんな生活してたらそうなるわ!! ってマスターは、云ってたの!!」
「そうか……」
「こんなのあんまりだわ!! 六花これから食の勉強よ!! ひとまずモーニングを食べましょう!!」
「あぁ……」
 マリーの勢いに押され、六花は、困惑していた。
 そのままマリーにてをひかれ、食堂にやって来ると、テーブルの上には、サンドイッチが。
「これが……さんどいっち……」
「そう!! パンにハムや野菜、卵なんかをはさんで食べるの!!」
 マリーは、さっそく六花を椅子に座らせ、彼女も席に着くと、さっそけ朝餉を食べ始めた。
 サンドイッチを食べ、六花は、驚く。ふわふわとした食感に少し塩味の効いたハムにしゃきしゃきの野菜。
 食べていて、不快な気分には、ならない。もしかするとこれが美味しいと言うものなのかもしれない。
「これが……美味しいか……」
「そうよ!! それがおいしいなの!!」
 六花は、気づいてないが、少しだけ彼女は、笑っていた。
 マリーは、後でマスターに伝えないとも思いがら、サンドイッチを食べていると、食堂になんと青龍が首だけ入れてきた。
「マリーよ。私にもくれぬか??」
「もちろん!! 青龍さん!!」
 マリーは、サンドイッチを青龍の口に入れると、青龍は、美味しそうに食べ、去っていった。
「マリー……あのようや光景は……」
「日常茶飯事よ!!」
「貴殿は、驚かないのか??」
「驚かないわ。だって美味しいものは、あやかしでも、人でも、妖精でも、神でも食べたくなるものだもの!!」
 六花は、そういうものなのかと思いながら、サンドイッチを食べる。
 確かにこれが美味しいと言うのなら食べたくなるのも分かる。
「美味しい……とは……素敵なことなのだな……」
「とても温かくて、素敵なことよ!!」
 六花は、じっとサンドイッチを見ると、少しだけまた目を細めた。
「そうか」
 そして噛み締めるようにそういうと、またサンドイッチを食べた。

 友美は、仕事をしていると、目の前にマリーが表れた。
「マリー」
「マスター少しお時間いいかしら??」
 友美は、微笑み頷くと、マリーは、書類を友美に渡した。
「ありがとう」
 書類に目を通すと、友美は、楽しげに笑った。
「少しづつだけど、あの子も成長してるのね」
「そうよマスター」
 マリーは、そこから友美に朝餉の話をすると、友美は、ただ静かに効いていた。
「ありがとう分かったわ」
「マスター色々な所に連れていってもかまわないかしら??」
「それは、もちろん」
「ありがとう!! また予定を決めたら伝えるわね!!」 
 マリーは、そういうと、姿を消した。
「亡国の妖精の姫があそこまで世話焼きとはね……」
 マリーは、ある亡国の姫だった。国が滅び打ち首にされるところを友美に助けられた。 
 その時なにを感じたか知らないが、着いてきてしまったのである。
「妖精って皆あんな感じなのかしら」
 友美の疑問に白野威は、あきれた顔をし言う。
「マリーが変わり者なのさ。普通妖精は、己の欲に真っ直ぐだからね。あんなにも世話焼きの妖精は、なかなかいないよ」
 確かにと友美は、思いつつ再び仕事を始めた。
「六花とかいうやつも少しづつ変わってきてるみたいだね」
「みたいよ。まぁ純粋無垢な子だから余計にマリーに任せたのだけど、正解のようだったわ」
 純粋無垢は者は、直ぐに様々な色に染まってしまう。だからこそ、世話役の選定は、慎重にしなければ、ならない。
 友美ら、改めてそう思いながら、パソコンに目をむけたのであった。
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