光明ノ神子

「魔術か……」  
 友美は、そんな呟きをしながら、ある書物を閉じた。
「友美どうしたんだ??」
 後ろでコップを持った光に話しかけられ、友美は、振りかえるといった。
「魔術と魔法ってどう違うのかと思ってね」
  コップを炬燵の上に置くと、光は、友美のとなりに座り、書物を見た。
「なるほど」
「本には、魔術は、倫理的に考え、科学根拠から不思議なことを起こすこと。魔法は、潜在的に不思議な事を起こすことらしいのよね」
 友美は、つまらなさそうに言うと、光は、そんな友美を見ていう。
「神子の力と魔術は、また違うからね」
「そうそう」
 不思議は現象を起こす事は、一緒でも根本が違う。しかし他者からすれば自分達は、魔法使いや魔術師と言われるのかもしれない。
「でも才能や能力って所なら魔法使いになるのかしら……」
 悩む友美も可愛いと光は、思いながらいう。
「魔力は、使ってないけど」
「使うのは、通力というか……神力だからね」
「なぜまた魔術について調べてたんだ??」
「錬金術にかんしてよ……ホムンクルスの錬成ってどうなのかなって」
 光は、驚いた顔をするが、友美は、つまらなさそうに言った。
「結局出来たとしても、短命なものが出来るだけみたいだし」
「……人のような心は、ないと」
 友美は、頷くが、少し切なそうな顔をした。
「でも人の心を持つ個体もいるわ」
 この口ぶりからして、友美は、なにかを知っている。もしくは、見たようだ。
「それって異界の話だろ?? この世界では……錬金術パラケルススが作ったとされてるが、それでも出来たのは、小さな小人で、フラスコから出来るこは、出来ないとされてたし……」
「キリスト教的には、禁忌だしね」 
 その昔は、蒸留器人間の精液と、ハーブをいれ、40日密封し腐敗させ、それを馬の胎内と同じ温度で、なおかつ毎日人間の血を与え、40週間保存すると、小人が産まれたそうだ。
 この小人、もしくは、錬成の方法をホムンクルスというのだが、それでも実際に出来たかは、謎が多い。パラケルススのしご、成功したものは、いないのだから。
「パラケルススじたい錬金術の世界だと結構な有名人だものね」
 友美は、その世界には、疎いが、名前だけは、聞いたことがある。
 イギリスの友人が錬金術の話をしていたときに、名が出たからだ。
「そうだな」
 しかし何故友美がこんな話をするのか。光は、気になっていた。
「友美……新しい式と契約した??」
 友美は、驚いた顔をした。どうやらそうだったらしい。
「まぁね」
 友美は、楽しげに笑うと、本を持ち、立ち上がった。
「でも出てくることは、ないと思うわ」
「そうなのか」
「えぇ」
 友美は、短く答えると、リビングを出た。
 書物室にいき、本を片付けると、書物室を出た。
 リビングに戻り、また、炬燵にはいると、光が話しかけてきた。
「友美」 
「なに??」
「まさか……魔術を学ぶつもりか??」
 友美は、きょとんとした顔をするという。
「学びません!! そもそも学ばなくても、使えるもの」
 わざわざ科学証明に基づいてまで不思議なことを起こそうとは、思わない。
 そんなことしなくても出来るのだから。
「光は、やるの??」
「俺もやらないよ。感覚で出来るから」
 もし魔術なんて学びだしたら、白野威から熱烈な抗議が確実に来る。その事も考えるとわざわざやろうとは、思わない。
「でもあの魔術の本誰が買ったのかしら……」
「瑠花が置いていったのかもしれないよ」
「ありえそうね」
 友美と光がそんな会話をするなか、廊下では、白いローブで顔を隠した者がその話を聞いていた。
「……あんた何者」
 鋭い声が聞こえ、その者は、ふりかえると、白野威が全身の毛を逆立て、唸っていた。
「……」
 決して声を出すな。主の命に背くことは、出来ない。
 この廊下は、玄関に真っ直ぐ繋がっており、退路はない。
 ローブの者は、息を飲んだとき、白野威が飛びかかってきた。
 ドンと鈍い音な廊下きら聞こえ、友美と光は、眉を潜める。
「友美なにかいる??」
「さぁ……」
 友美は、まさかとはっとした顔をし、リビングのドアを開けると、目の前には、白野威にのしかかられている怪しい人物が。
「六花!!??」
 光も慌てて友美の背後からその光景を見た。
 美しい白銀だが、少しばかり、緑を帯びた髪が廊下に広がっていた。
「友美こいつ何者!!」
「……私の式よ」
 白野威は、驚いた顔をすると、その者から降りた。
「……」
 六花と、呼ばれた者は、起き上がると、身なりを整えた。 
「友美口が聞けないのか??」
「話せるけど、一先ず、話すなと言っていたの」
 友美もまさか表に出てきているなんてと驚きを隠せなかった。
 白野威は、怪しげに六花を見るが、とうの六花は、少し困ったように眉を下げていた。
「何故」
「この子がそうしたいと言ったからよ」
 友美にも詳しい事情は、分からないが、彼女は、そういい、友美は、ならと望むようにしたのである。
「六花」
 友美に名を呼ばれ、六花は、頷くと口を開いた。
「迷惑をかけて、すない」
「いいさ。友美の式って確認も出来たからな」
 白野威は、そういうと、リビングに入った。
「姫あれは……」
「白野威的にとりあえず認めてやるってことね」
「そうか……」
 六花は、その場に正座する。
「姫私は……」
 彼女が、なにを言いたいか友美には、分かる。 
 友美は、目を伏せると言った。
「私は、嫌いよ。人のえごで生命を擬似的に作るなんて事」
「……」
「でもそれで生まれてきた子達に罪はないわ。だから六花は、このままでいいの」
 六花は、頷くと、姿を消した。
「友美まさか……」
「そのまさかよ光」
 友美がなぜ魔術や魔法そして錬金術に関して調べていたのが全ての答えがあの六花だ。
「六花は、ホムンクルスであってホムンクルスでは、ない。少し変わったそんざいなのよ」
「まさかこの間の異界へ渡ったときに……」
「そう。式としても使えそうだから、契約してしたの。それにあの子には、これから楽しいこと、綺麗なことをしって欲しいから」
 たぶん六花という名も友美が与えたものだろう。
 雪のように美しい髪とあの美しい瞳水色の瞳からとった。
「本当は、神子の前に出すつもりは、なかったのだけれど。あのこ基本純粋無垢で興味のあることは、気になるみたいなのよね」
 光にも存在を伝えるつもりは、なかった。場合によっては、存在を消されると友美が思っていたからだ。
 光は、目を伏せると言う。
「……信じてくれても」
「光のことは、信じてるわ。でも神子としては、話しは、別」
 友美は、真剣な顔をし言った。
「神が消せと言えば、動くのが神子ってもの。だから念には、念をね」
 友美は、微笑むが、光は、背筋がゾクッとした。幼い頃から神々の中にいるからこそ、友美は、知っている。
 少し変わっているからと、すぐにその存在を消そうとする神がいることを。
「友美って本当に慎重だな」
 光が眉を下げ言うと、友美は、そんな光の頭を撫でた。
「ごめんなさい。式の契約が完了したか、シビアな所でもあったから。でもこれからは、大丈夫!!」
 光は、驚いた顔をした。
「まさか……憑霖と同じ契約を……」
 式の契約にもいくつか種類がある。今回友美が施した契約は、とても危険なあやかしや神を縛る時に使うものだ。
「えぇ。あの契約は、式を縛る代わりに、式を守れるから」
 けっして六花は、危なくない。だが様々なことを考え、友美は、そうした。彼女を守れるように。
「でも憑霖と少し違うわよ!! 憑霖は、そもそも私しか扱えないし……憑霖の契約は、あの子を止めるためのもの!! 今回のは、守るためのだから!!」
「分かったよ」
 思わず彼は笑うと、友美を抱き締める。
「本当に友美は、優しいよ」
「……私悪魔かもよ??」
「なら見捨ててる」
 つららの時もそう。友美が助けると譲らなかったこそ今ここにいる。
「友美は、そのまま真っ直ぐそして純粋でいて」
 友美は、自分は、純粋無垢では、ないと思いながらも口にしなかった。
「さて友美お茶にしよう!!」 
 友美は、微笑むと頷く。
「そうね」
 さてこの話しは、これで終わりと、光は、キッチンにお茶をいれにいき、それを見ながら、友美は、思った。
 光だからこそ、すんなりと話が進んだと。
「私にも隠す必要なかったよね??」
「ごめん白野威」
 拗ねている白野威に友美は、謝ると、白野威は、機嫌を直した。
「まぁ今回は、認めてやる。あの式のこと」
「ありがとう」
 私の周りは、本当に優しい者たちばかりだ。
 友美は、改めてそう思うと笑った。幸せそうな顔をして。  
 
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