光明ノ神子

 燕青は、悩んでいた。
「わかんねぇー!!!!」
 全く分からない。女性に送るお礼の品が。
ちまただとクリスマス時期にあでもない、こうでもないという情報が流れ出す。
 燕青は、それと参考にしたが頭がこんがらがってきていた。
「こういう時は、ヘルプだ!!」
 さっそく燕青は、あるところにメッセージを送ると、すぐに返信が。
「よし!! 今から行くか!!」
 思い立ったが吉日ともいう。
 燕青は、支度をすると、すぐに薬問屋を飛び出し、やってきたのは、友美の家だった。
「で勇音にお礼をしたいと」
「そうだ!!」
 客間で抹茶をのみながら、友美は、悩ましげな顔をするといった。
「燕青……そのお礼をしたいという気持ちは、素敵よ」
「なんだよその言い方」
「……相手は、あの勇音なのよ!! 私も何を贈ればいいか、分からないわ……」
 メッセージには、日頃のお礼をしたいから、贈り物について、相談したいと書かれていたが、いざ、燕青から詳しく話を聞いてみると、相手が相手なだけに友美も途方にくれた。
「やっぱり……」
「普通の女性ならその人の好きなものを贈ればいいと思うわ……でも……」
「勇音の好きなものは……」
 燕青は、悩ましげな顔をすると言った。
「薬の材料だからな……ツチノコ、カッパ……竜神の髭……」
「あと太陽神の毛よ」
 二人は、盛大なため息をつくと、客間に遊李が入ってきた。
「冬虫夏草も好きだよ……」
 燕青の笑顔が凍りついたのが分かる。
 友美は、そんな彼を放置し、息子の方を見た。
「遊李どうしたの??」
「ママこれについて教えて欲しいんだけど……」
 来客中に失礼かと思いつつも相手が燕青なので遊李は、聞きに来た。
 友美は、遊李がもっていた古書を見て、説明をすると、遊李は、分かったのか、説明が終わると、スッキリした顔をしていた。
「ありがとうママ!!」
「どうしたしまして」
 遊李は、客間を出ていったがすぐに戻ってきた。
「僕もまじっていい??」
 友美は、驚いた顔をしたが、頷く。
「もちろん」
 大人には、分からない子供視点の話が聞けるかもしれない。
 友美は、そう思い、了承すると、遊李は、友美のとなりに座った。
「遊李抹茶飲む??」
「飲む」
 抹茶を煎じ、友美は、遊李の、前にだすと、彼は、飲む。
「遊李子供なのに抹茶いけるのかー」
「普通に美味しいから……燕青さんもいけるのでしょう??」
「そりゃな……」
 しかし子供なのに渋い気もする。燕青がそう思っていると、友美は、話を進める。
「でどうするの??」 
「うーん。なんかこの世のレア薬草を集めて、贈ろうかと思うぜ……」
 確かに喜びそうだが、全て商売で使われそうである。
「勇音さんなら喜びそうだね……それ……数日後には、別のものに変わってそう……」
 遊李もこういうのだから、あながち友美の考えは、間違ってないかもしれない。
「だよなぁーもう笑顔で、わぁ!! これめっちゃ探してたやつ!! この薬調合できるわ!! この、お客さんに渡せる!! って普段の数倍顔輝かせて、ハイテーションでいうんだよ……絶対に……」
 燕青の裏声を聞くことになるとは、友美は、似合ってないと思いながらも、容易に勇音の姿が想像できた。
「……そんな虚しいの俺は、嫌だからな」
「分かってるわよ」
 使われるにしてもそういう使われ方は、少し嫌である。
 燕青は、抹茶を飲むと言った。
「もう俺あげる!! とか言う??」
 あれ、友美と遊李があきらかにどんびきしているのが、分かる。
 燕青は、冗談で言ったのにと思いながらも言った。
「そんな顔しないでくれるか!? 親子で!!」
「だって……パパでも言わないよ……」
「遊李、パパの場合は……色々ぶっ飛びすぎてるのよ……」
「ぶっ飛びすぎてる……」
 確かに父は、色々斜め上の事をしてくるとも言える。
 ここ最近だと、友美が喜ぶかもと、家中をクリスマスローズで飾ろうとし、その中の一つがあやかしの花で、大変なことになった。
「光先生……やること凄いからかぁ……」
「まぁそれが光だからねー」
 そうそれが光なのである。その後あやかしは、光の手で抹殺されていたが、そのあとが大変。しょぼんとする光を元気にするのが。
「なら着物とかどう??」
「着物か……」
「勇音好きでしょう??」
 彼女は、普段から着物を着ている。燕青は、悩ましげな顔をすると言った。少し恥ずかしげに。
「……洋服着てくれないかな」
「洋服!?」
 遊李は、少しばかり不憫そうに燕青をみる。この顔は、見たことがある。
 父が母に似合うと買ってきた服を着てもらえなかった時に似ていた。
「燕青さんでも勇音さん洋服着ないよね??」
 遊李の問いに、燕青は、頷く。 
「全く、着ないんだよなぁ……欲しそうに見ててもやっぱりやめとくっていうんだ」
「もしかして勇気がでないとか??」
 友美は、そういうと、遊李は、不思議そうな顔をしていた。
「勇気??」
「だってママ江戸末期の人達で洋服を着た人達は、けっこう先進的だったでしょう??」
「確かにそうね……まぁ女性ならでは、の悩みもあるだろうしね」  
 女性ならではらの悩みとは、なんだろうか。燕青は、そう思いながら、聞いた。
「それってなんだ??」
「例えば背が小さいとか、猫背とか、胸が小さいとか色々あるのよ。まぁ勇音は、神だから自分の思う姿になれそうだけどね」
「なるほどな……」
「パパが女の子は、難しいって言ってたのもなんとなく分かる気がする!!」
「遊李ー光先生の女の子が難しいっていうのは、母ちゃん限定だと思うぞー」
 友美は、呆れた顔をする。
「なにそれ……」
「だって光先生は、友美LOVEだからな。なんなら、友美の事しか考えてないだろ……」
「失礼な!! 家族の事も考えてくれてるわ!!」
 友美が燕青に言い返すなか、遊李は、確かに考えてくれてるが、おおかた母の事しか眼中にないと思っていた。
「遊李そんなこと思ったら、パパ泣くわよ!!??」
「ママ考え詠むのやめて!!」
「ごめんなさい」
 つい癖でやってしまった。
 友美は、咳払いをすると続ける。
「ならもう洋服贈ったら??」
「それ好みとか、あるから地雷だろ!!??色々と!!」
「なら適当に漢方の材料の詰め合わせでいいじゃないの!! タンポポとか!!」
 燕青は、先日タンポポを見つけて、薬とはしゃいでいた勇音を思い出していた。
「間違いなく喜ぶが立つ瀬がないだろ!!??」
「立つ瀬ねぇ……」
 友美は、どうしたものかと悩んでいたとき、客間の扉が開いた。
「あのー」
 顔をだしたのは、光。
 友美は、驚いた顔をした。
「光仕事は!!??」
「早く終わったから帰ってきたんだよ……」
 何時も驚かれるのも困ると光は、思いながら、燕青に言った。
「立ち聞きするつもりは、なかったが、話しは、聞いていた」
「光先生なんかいい案ある??」
「茶葉のセットは、どうだ??」
 変哲もない提案だが、これがいいのかもしれない。
「光先生普通だな……」
「普通で悪いか!!」
「でも燕青光の意見もアリだと思うわ」
「僕もそう思う!!」
 燕青は、確かにと思いながらもならなにを贈ればいいのかとさらに悩む。
 茶葉といっても凄い種類があるからだ。
「知覧茶とか??」
「勇音さんよく緑茶飲んでるもんね!!」
 燕青は、友美と遊李の会話からあることを思い出した。
「光先生」
「なんだ??」
「ちょっといい??」
 燕青は、あることを光に相談すると、光は、しばらく悩み、客間を出ていくと、缶を持って戻ってきた。
「これなら飲みやすいと思う」
「なるほどな……」
 燕青は、写真を撮ると、頷いた。
「決まったみたいね」
「あぁ友美!!」
 燕青は、立ち上がる。
「今日は、ありがとうな友美、友美、遊李!! それに光先生」
「頑張ってね」
「おうよ!!」
 燕青は、そういうと、帰った。
「光うまくいくかな??」
「うまくいくといいな」
 少しでも燕青の恋路が進めばいいが。二人は、そう思いながら、微笑むが、遊李は、また両親が二人の世界になっていると思うのであった。

 友美の家に行ってから数日後、燕青は、緊張した面持ちで、机の上の箱を見ていた。
「これでいいよな??」
 色々頑張ってみたが、不器用な自分には、なかなか難しかった。
 燕青の後ろで、白銀の猿が、歩くなか、燕青は、猿の事など気にせず、今度は、手紙を書き出したが。
「燕青……文下手……」
「ほっとけ!! 桜華!!」
 桜華が少し呆れた顔をしているが、燕青なりには、頑張っているのでおおめにみてほしい。
「想いは、こもってるか」
「ならいいんだけど……」 
 桜華がこういうのだから、少しばかりは、想いがこもっているのだろう。しかしそれが伝わるかが問題である。
 念のためにもう一つあるものを用意したが、こちらの方が喜ばれそうだ。
 昼になり、勇音が休憩をとった頃、燕青は、居間に行き、勇音に声をかけた。
「勇音」
 名を呼ぶと、彼女は、何事かと怪訝そうな顔になる。
「燕青なに??」
 何故勇音がこんな顔をしたか、それは、燕青がぎこちない笑みを浮かべていたからだ。
 緊張した面持ちで、燕青は、ぶっきらぼうに、勇音に、綺麗にラッピングされた、箱を差し出した。
「これは??」
「日頃のお礼……」
 勇音は、受け取ってくれるか。燕青の胸が早鐘を打つ。
 恐る恐る勇音は、箱を受け取った。
「開けてくれ!!」
「分かったけど……」
 送り主から開けてくれといわれるとは、勢いにおされ、勇音もぎこちなくなる。
 箱をちゃぶ台の上に置くと、開けた。
「紅茶……」
「喜ぶかなと……」
 あの燕青からこれが出てくるのは、なかなか、信じられない。たぶん裏で、友美が協力したに違いない。 
 勇音は、悩む燕青を想像し、思わず笑った。
「燕青らしからぬ贈り物だね」
「えっ!!??」
「でも嬉しい。ありがとう」
 勇音は、微笑むと、紅茶を戸棚に片付けた。その間燕青は、勇音の笑みを可愛いと思ってしまっていた。
「……あとこれも……」
 持っててもしかたがないので、燕青は、もう一つの贈り物も勇音に差し出す。  
 勇音は、すぐに開けると、中身に目が点になっていた。
「タンポポの根と高麗人参……」
「ほら!! こっちもいいかなって……あはは……」
 勇音の反応にこちらを先に出さなくてよかったとこの時燕青は、安堵した。
「ありがとうございます……とりあえず売れそう……」
 勇音は、そういうと、高麗人参とタンポポの根が入った箱の蓋をした。
「とりあえずお昼にしよう」
「だな」
 二人は、昼食を食べ、燕青が食べ終え、居間からいなくなると、勇音は、入っていた手紙を読んだ。
 本人の前で読むのは、少し気まずいと後にしてよかった。
 一通り読み終えると勇音は、目を伏せた。
「神と……人では……時間の流れが違うのに……」
 しかし神子もまた人とは、時の流れが違う。
 勇音は、手紙を片付けると、食器を洗い出した。
「……恋心か」
 そう呟くと、勇音は、黙々と作業し、仕事へと戻ったのであった。
 どことなく切ない顔をして。
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